ジェレミー・デザーニによるドラフト解説 ~ラクドスのすゝめ~

晴れる屋メディアチーム

By 富田 翼

 リミテッドにはボムレアというものがある。単体でゲームを決定づけてしまうようなカードだ。

天上の赦免生体性軟泥

 しかし、そのようなカードは毎回ピックできるわけではない。そこで必要とされるのは、デッキ全体として戦うこと、“シナジー”だ。

 そして今回インタビューしたのは、ジェレミー・デザーニ。彼はリミテッドのグランプリで7回もトップ8に入賞しているリミテッドの熟達者だ。

 2日目にドラフトした彼のデッキにはまさにシナジーが満載だった。意思が感じられる40枚。いや、正確にはサイドボードにも明確な意図があった。

 今回の記事を通し、その彼の洗練された意思を感じ取っていただければと思う。

メインデッキ解説

――「今回はラクドスをドラフトしたようですが、このギルドを構築する上で重要なことは何でしょうか?」

焦印奇怪な死

デザーニ「ラクドスにおいては、クリーチャーを追放できる除去が重要であると考えています。具体的には《焦印》《奇怪な死》が該当しますね。オルゾフと対戦する場合、『死後』を持つクリーチャーを追放できることが非常に大きな意味を持つのです」

――「なるほど、確かに今回も追放除去が3枚採用されていますね。初手にピックしたカードはなんですか?」

忘れられた神々の僧侶

デザーニ最初にピックしたのは《忘れられた神々の僧侶》で、初日と同じ展開になりましたね。このカードはクリーチャーを2体生け贄に捧げないと能力が起動できないので、リミテッドで上手く使うことは難しいんです」

――「そうなんですね。最終的には能力を生かせる構築になったのでしょうか?」

デザーニ《どぶ骨》がピックできたので、《忘れられた神々の僧侶》の評価が高くなりました」

どぶ骨

デザーニ《どぶ骨》を生け贄のコストに使った場合、相手がライフを失いつつ、2マナが生成されるので、《どぶ骨》を墓地から手札に戻せるわけです。そして再び戦場に《どぶ骨》を出せば、このプロセスを毎ターン繰り返すことができます。いずれもレアであるため、両者が入ったデッキができるのは珍しいですが、揃ったときには大きな期待ができます」

――「見事な相性ですね。《ゴブリンの集会》が3枚採用されているのも目を引きます」

ゴブリンの集会

デザーニ「このカードは枚数が増えるにしたがって相乗効果が期待できるので、機能させるには複数枚必要になるのです。唱えるにつれてゴブリンが2体、3体、4体と増えていくわけですね。それに《忘れられた神々の僧侶》とも相性がよく、ゴブリントークンを生け贄に捧げれば、相手のサイズの大きいクリーチャーを対処できるので非常に強力な動きです」

――「デッキ内のシナジーが大きいんですね。その他にも相性のよいカードはありますか?」

短剣使い焼印刃脚光の悪鬼

デザーニ《短剣使い》《脚光の悪鬼》《焼印刃》と相性がいいですね。接死を付与された《脚光の悪鬼》でブロックすれば、戦闘ダメージを与えたクリーチャーと、死亡時の誘発能力で1点ダメージを与えたクリーチャーの2体を除去できるのです。しかも《焼印刃》の効果でドローできますしね」

デザーニ《短剣使い》に接死を付与した場合には、相手のクリーチャーを全滅させることができます。具体的には、《短剣使い》の能力がスタックにある状況で、《焼印刃》で接死を与えるのです。そうすれば、相手のクリーチャーをすべて除去した上でドローできます。このコンボが決まれば、カードを1枚も減らすことなく、相手の盤面はまっさらな状況になるのです」

サイドボード解説

――「ここまでのお話を聞く限り、とてもよいデッキになっているように思います。サイドボードの方は何か有用なカードはありますか?」

債務者の輸送

デザーニ「サイドボードにも選択肢が多く揃っています。《債務者の輸送》を入れれば太いデッキになりますが、個人的にいい選択肢だと思いません。確かに特定のデッキに対しては有効なプランになり得ますが、土地を17枚にしなければならないので、それがいいのかは確信が持てないですね」

――「強力な呪文である《死の歓楽》をサイドボードに置いたままにしているのはなぜでしょうか?」

死の歓楽

デザーニ《死の歓楽》はクリーチャーを2体回収できる呪文ですが、あまり使いたくはないですね。というのも、《ゴブリンの集会》が3枚入っているので、安定して回収できるだけのクリーチャーがいないのです。一般的なラクドスでは《死の歓楽》がぜひとも欲しい1枚なのですが、《ゴブリンの集会》を使う場合にはその限りではない可能性があります」

――「その柔軟な対応力はさすがですね。《忘れられた神々の僧侶》がいることを踏まえれば、サイドボードの《反逆の行動》も出番がありそうですね」

反逆の行動血液破綻

デザーニ「サイドボードには《反逆の行動》《血液破綻》があるので、コンボを狙って採用することができます。《反逆の行動》で相手のクリーチャーを奪い、《血液破綻》《忘れられた神々の僧侶》奪ったクリーチャーを生け贄に捧げてしまうわけです」

――「相手からすれば厄介なコンボですね。具体的にどんな相手に対して使うコンボなのでしょうか?」

トロール種の守護者暴れ回る裂き角破壊獣

デザーニ「このコンボが強いのは主に緑のデッキとのマッチアップだと思います。グルールやシミックは、サイズの大きいクリーチャーがいますからね。そういったクリーチャーのコントロールを奪って攻撃し、それから生け贄に捧げれば、相手にクリーチャーを返さずに済みます。そうすれば、相手にダメージを与えつつ、クリーチャーを除去し、アドバンテージも獲得できるのです」

地底街の抱擁

デザーニグルールに対して強いサイドボードカードといえば、《地底街の抱擁》も該当しますね。ただし、相手に『死後』のクリーチャーがいる場合には価値が大きく下がってしまいます。そこで、冒頭で述べたように追放除去がここでも活躍してくれるわけです」

――「これだけサイドボードに有効なカードが取れているのは素晴らしいですね。まだ他にもおすすめのサイドボードカードはありますか?」

燃えさかる炎災厄の行進

デザーニ「2枚目の《燃えさかる炎》《災厄の行進》です。これらは主に《ゴブリンの集会》との相性のよさが魅力ですね」

デザーニ《燃えさかる炎》は、大量に展開したクリーチャーに+2/+0の修正を与えることができます。《災厄の行進》は、コントロールデッキからすれば実に厄介でしょう。たとえば相手に0/4の壁が1体いるだけであれば、横に並んだゴブリンたちが大活躍してくれるのです」

最強のアーキタイプ

――「インタビューをご覧になった方に一言いただけますか?」

デザーニ「ぜひみなさんもこのようなデッキをドラフトしてみてください。きっと楽しんでいただけると思います。マーティン・ジュザ/Martin Juzaは今回紹介したようなタイプのデッキを初日で使い、強豪がひしめく卓で全勝をおさめました。また、ラファエル・レヴィも、これこそが最強のアーキタイプだと考えています

(かなり完成度の高いラクドスで3-0!)

――「わかりやすい解説ありがとうございました。健闘をお祈りしています!」

デザーニ「こちらこそありがとうございました。それでは本番に向かいます。どうなるか楽しみですね」


 リミテッドにはマジックの基礎が詰まっていると言われることがある。しかし、基礎でありながら、奥深く、一朝一夕では捉えられないものだ。だからこそ、確かな実力を付けたいという思いからリミテッドをするプレイヤーも多いのだろう。

 マジックが上手くなりたい。そんな熱い気持ちを持つプレイヤーにとって今回のインタビューがひとつの教科書になることを願おう。

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