決勝:末松 涼(緑トロン)vs. 奥平 孟夏(黒緑ミッドレンジ)
晴れる屋メディアチーム
晴れる屋メディアチーム
By Tsutomu Date
4月にグランプリ・横浜2019を控え、いつにも増して盛り上がりを見せるモダンフォーマット。今期のモダン東海王決定戦は参加者90名を数え、晴れる屋名古屋店では最大規模の大会となった。トップ8入りには最低でも5勝1敗1分が必要となる狭き門。決勝までたどり着いた2人は既に実力十分と言えるだろう。
スイスラウンドを3位で通過した奥平 孟夏は晴れる屋名古屋店をはじめとした市内の多くのショップ大会に参加しており、グランプリ・横浜2019への調整に余念がない。店内では気の置けない仲間たちとの会話も多く、明朗快活な姿が印象的だ。本大会も決勝戦というのに緊張のそぶりもなく、持ち前の明るさで決勝前の張りつめた空気を和らげている。
使用デッキはゴルガリカラーのミッドレンジだ。こう聞くと手札破壊と軽量クリーチャーからなる一般的なリストを想起させるが、奥平本人は「既存の黒緑とはそもそも出発点が違いますし、ミッドレンジよりはコントロールに近いかもしれません」と語る。
《桜族の長老》を採用することで5マナ圏へのアクセスを容易にし、《最古再誕》や《原初の命令》といったパワーカードが投入されている。加えて黒のプレインズウォーカーの定番である《ヴェールのリリアナ》の不採用等、相違が目立つ。
一方、スイスラウンド5位の末松 涼はモダンを主戦場としているものの、大会よりは友人達とのフリープレイが多いとのこと。以前は「親和」や「エルフ」を主に使用していたが、東海王決定戦にあたり「使ってみたかったから」と使用デッキを変更し、本大会へ向けてわずか1~2週間で仕上げてきたという。
短期間で一からデッキを理解し、決勝戦まで勝ち上がってくることから在野に眠る天才肌プレイヤーを思わせる。寡黙で思慮深さを感じさせる佇まいが印象的だ。
使用デッキは奥平とは対照的にオーソドックスな緑トロン。
一般的にコンボ系を苦手としているが、スイスラウンドでは不利を覆し「ストーム」を倒してここまで勝ち上がってきている。
黒緑系と土地コンボ系の対戦は一般的に後者有利となるが、結果はいかに。
先手の奥平は土地6枚のハンドを迷わずマリガンすると、続く6枚も緑トロンに対し効果の薄い《致命的な一押し》が2枚含まれており「実質手札4枚か」とダブルマリガン。結局《煙霧吐き》、《桜族の長老》、《ヴラスカの侮辱》と土地2枚をキープする。
末松は即キープを宣言。ウルザ土地2種を含む4枚の土地と、《ワームとぐろエンジン》、2枚の《精霊龍、ウギン》とまずまずの手札だ。
そのまま《煙霧吐き》、《桜族の長老》とマナカーブ通りに展開すると、ここで駆けつけてきたのは《不屈の追跡者》!ダブルマリガンを感じさせない素晴らしい展開をみせる奥平。
だが、末松の動きはそれを凌駕していた。そもそも末松が即キープした初手にはウルザ土地2種と《ワームとぐろエンジン》、《精霊龍、ウギン》といったフィニッシャーまで揃っていた。そこへトップから《彩色の星》と《森の占術》が降ってきたのだ!
3ターン目早々に3種のウルザ土地を揃えると、暴力的なマナを注ぎ込み黒緑ミッドレンジにとって厄介な《ワームとぐろエンジン》を召喚。続くターンには《精霊龍、ウギン》と脅威を連打する。
奥平はライフを減らしながらも、《ヴラスカの侮辱》で《ワームとぐろエンジン》を、《暗殺者の戦利品》で《精霊龍、ウギン》を捌いていく。
しかし末松は2体目の《ワームとぐろエンジン》を召喚し攻め手を緩めない。奥平も《黄金牙、タシグル》を着地させ《暗殺者の戦利品》の再利用を目論むが、末松の手から更なる《精霊龍、ウギン》がキャストされると、ライフの維持が不可能と判断し盤面を畳み始めた。
奥平 0-1 末松
トロンへの効果が薄いカードをアウトし、土地破壊や《外科的摘出》、手札破壊をインと大幅な変更を行う奥平。
対して、メインの構成から相性がいいと判断した末松は必要最小限の変更に留める。
先手の奥平は
と色マナの供給に懸念はあるものの、トロン阻害を期待できる7枚を「お願いハンドですね」とキープ。
末松は土地のない7枚のハンドをマリガンした後、
の6枚をキープ。土地は1枚のみだが、占術と《彩色の星》で2枚目以降を探しに行くプランだ。
末松が《彩色の星》で早々に引き当て《ウルザの塔》をセットしトロン完成を予期させると、静かに土地のプレイを続けていた奥平は《廃墟の地》を起動し《ウルザの塔》を叩き割ることでこれを阻止する。
そして《思考囲い》で《解放された者、カーン》を落とすと、《外科的摘出》で《ウルザの塔》を追放する!
これでトロンシステムの完成を阻むことに成功した奥平は、《不屈の追跡者》でクロックとリソース源の両方を手に入れイニシアチブを握る。これは末松の《歩行バリスタ》と相打ちとなるが、奥平は《永遠の証人》、《黄金牙、タシグル》と再展開し、対処を迫る。
一方末松は《大爆発の魔道士》の連打により、トロンの本領を発揮することができない。《大祖始の遺産》で《黄金牙、タシグル》による再利用は防ぐも6点クロックへの回答を用意することができず、勝負は第3ゲームへともつれ込んだ。
奥平 1-1 末松
互いにサイドボーディングは行わず、デッキのシャッフルに余念がない2人。初の先手を手に入れた末松の初手は
と、トロン完成からフィニッシャー到達への道筋が見える、文句ないもの。
対する奥平は土地1枚の初手をマリガン後、
と、土地を破壊しトロン完成を阻害できるハンドをキープ。問題は間に合うかどうかといったところか。
《ウルザの魔力炉》から《探検の地図》、続くターンには《森》をセットすると《森の占術》で《ウルザの鉱山》を手札へ加える。着々とトロン完成への道程を歩む末松だが、この《森》によりトロン完成が1ターン遅れることが確定してしまう。そう、奥平の《廃墟の地》は間に合ったのだ!
奥平は《集団的蛮行》で手札を確認すると《スラーグ牙》、《世界を壊すもの》に《解放された者、カーン》と対象外のものばかり。「ハズレか」と呟くも、《思考囲い》で《スラーグ牙》を叩き落す。
そのエンドステップに、末松は《探検の地図》を起動し《ウルザの鉱山》をサーチするが、奥平は想定通りと《外科的摘出》をキャスト!トロンシステムの崩壊を導くとともに、手札破壊にも成功する。ここまで冷静に試合運びをしていた末松も苦渋の表情。
追い打ちとばかりに《思考囲い》で《解放された者、カーン》を落とし、《永遠の証人》は《廃墟の地》を回収。末松のマナ基盤を攻めつつ、《樹上の村》と合わせ5点クロックを用意し、詰めにかかる奥平。
だが末松もダテに決勝まで勝ち上がってきたわけではない。トロンシステムは揃わないものの6枚の土地を用意すると、《ワームとぐろエンジン》をトップデッキ!
奥平は温存していた《最古再誕》で《ワームとぐろエンジン》の一本釣りを狙うも、《忘却石》により一掃。
更地となった盤面を見ながら「ここからはトップ勝負!」と奮起する奥平、《外科的摘出》で墓地の《世界を壊すもの》を追放し、フィニッシャーの循環を止めるが、その際に確認した末松の手札にはまだ見ていない《ワームとぐろエンジン》が!
気付くも時すでに遅し。末松は先ほどの《ワームとぐろエンジン》、トップデッキした《解放された者、カーン》とトロンらしくパワーカードを叩きつけ続ける。
末松は淡々と終わりに向け歩みだす。《解放された者、カーン》は《タルモゴイフ》を退け、《ワームとぐろエンジン》への道を開ける。止まらない、いや、止まることなどない。ここまで幾度となく末松を助けてきた《ワームとぐろエンジン》東海王へと導いたのだった。
『第6期モダン東海王決定戦』、東海王の座を手に入れたのは、末松 涼!おめでとう!