Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2018/03/07)
マジック:ザ・ギャザリングは今年で25周年を迎え、それに伴い3人チーム構築戦のグランプリがいくつか開催される。そこには、これまでにレガシーフォーマットをあまりプレイしたことのないプレイヤーや、全くプレイしたことがないというプレイヤーもたくさんいることだろう。
読者のみんな、そしてマジックで最も華やかな制限カードのないフォーマットに飛び込もうとしているみんなのために、数百数千にしか起こらないような細かい事例を知らなかったとしても上位に食い込めるようなデッキをいくつか紹介したい。
一つひとつの決断の密度が他のフォーマットよりも高く、それが1ターン目から始まるゆえに、レガシーをプレイすることに気後れしてしまうという人もいるだろう。レガシーの呪文の多くは1マナかマナコストなしでキャストできるので、1ターン目から10個以上の選択肢が存在するなんてよくあることだ。《不毛の大地》、フェッチランドと後のドローサポート呪文などを加味すると、土地をプレイする順番だって非常に難しい。
止めようのない1ターンキルや2ターンキルなんかが頻発するからと、レガシーにあまり良くない印象を抱いている人もいるかもしれない。実際に、確かに1ターンキルは可能ではあるものの、《意志の力》と直面する可能性があるためそういった戦略は概してとてもリスクの高いものだとされている。
レガシーで最も人気があるデッキの多くは干渉手段に富んでおり、「グリクシス・デルバー」と「4色コントロール」が最もよくプレイされているデッキで、それに「青白奇跡」と「4色コントロール」ではない《トレストの使者、レオヴォルド》を使ったデッキが続く。ゲームが長引くと決定木は伸び続けてより複雑になり、経験の浅いプレイヤーは自らの手によって問題と直面してしまうことになる。
さあ、本日は大会を勝ちうる公算が高く、それでいて練習する時間が少なくても比較的学ぶのが簡単であろうと思われる5つのデッキをご紹介しよう。
ターボ・デプス
1 《冠雪の沼》
3 《Bayou》
1 《ドライアドの東屋》
4 《新緑の地下墓地》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《ボジューカの沼》
1 《セジーリのステップ》
4 《演劇の舞台》
1 《幽霊街》
4 《暗黒の深部》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (25)- 2 《森を護る者》
4 《吸血鬼の呪詛術士》
4 《Elvish Spirit Guide》
-クリーチャー (10)-
こちらは「伝説ルールの変更」に伴い実現するようになった、《暗黒の深部》と《演劇の舞台》のコンボを用いたオールインデッキ (コンボなどに全精力を費やす類のデッキ) だ。《演劇の舞台》で《暗黒の深部》をコピーすると2枚目の《暗黒の深部》が手に入るわけだけど、これは戦場に出たわけではないので「氷カウンター」がひとつも乗っていない。そして「伝説ルール」で《演劇の舞台》だった方を残すことを選べば《破壊不能と飛行を持った20/20のトークン》を出すために生け贄に捧げることができる。それもインスタントスピードでね。
デッキに含まれる大量の土地を探すカードは、安定性を高めるとともにサイドボード後に特定の能力を持った土地カードを探すことができる。《森を護る者》は《剣を鍬に》といった対象を取る単体除去呪文のみならず、自身を身代わりに《悪魔の布告》などからも《マリット・レイジトークン》を守ってくれる。《真髄の針》は基本的に《不毛の大地》を指定する。こちらのコンボはいずれも土地であるため《不毛の大地》は打ち消し呪文のように機能してしまうし、対戦相手にとって貴重な妨害手段なんだ。
《吸血鬼の呪詛術士》も《演劇の舞台》と同じく、《暗黒の深部》からトークンを出すために使用できる。《セジーリのステップ》は土地を探すカードの対象として最適なカードで、飛行持ちのブロッカーをくぐり抜けることが可能だ。《輪作》からならば除去呪文を打ち消すことだってできる。対戦相手の妨害に風穴を開けるため、または対戦相手のコンボの速度を落とすために、このデッキには複数枚の手札破壊呪文が採用されている。
1ターン目に《マリット・レイジトークン》を出すこともできるが、基本的には2ターン目か3ターン目が多い。それだけで容易にたくさんのゲームに勝つことができるし、このデッキはそれを実現させるにあたり信じられないほどに安定性が高く、おまけに対戦相手の妨害をしながらコンボを実行できるんだ。この戦略は非常に強力でここ最近で多くの人々を惹きつけているし、妨害するのがとても難しいコンボなんだ。
スニーク・ショー
「スニーク・ショー」は長きに渡りレガシーで活躍してきたデッキだ。「スニーク・ショー」にはいくつかのバージョンがあり、数名のプレイヤーは《全知》を入れているが、僕個人としては可能な限り戦略を研ぎ澄ましたこのような形の方がいいと思う。このデッキのプランは《実物提示教育》か《騙し討ち》のいずれかで、デカブツのマナコストを踏み倒して戦場に出してしまうことであり、これがデッキ名の由来になっている。通常はいずれか1体を場に出せばゲームに勝利することができるだろう。
《思案》、《渦まく知識》、《定業》に《ギタクシア派の調査》、さらには “青い《Demonic Tutor》” こと《直観》と、コンボを揃えるためのドローサポート呪文は豊富にある。デッキの残りは打ち消し呪文で構成されているね。「スニーク・ショー」はとても簡単で恐ろしいデッキだ。打ち消し呪文を構えながら最速なら1ターン目にデカブツを提示できるんだからね。
このデッキのもうひとつの強みはサイドボードだ。正しいマッチアップにおいて、速やかなる《血染めの月》はそれ単体でゲームを終わらせることができる。《紅蓮破》はとても強力だし、《すべてを護るもの、母聖樹》は打ち消し呪文の入ったデッキに対して最高のカードとなりうる。ドローサポート呪文をキャストする順番は重要だけど、このデッキは対戦相手がやることを基本的に無視できるし、自身のコンボを押し通すことで複雑さのいくつかを取り去ることができるだろう。
以上の理由から、「スニーク・ショー」は3人チーム構築戦において最も人気のあるデッキのひとつになると思うし、ミラーマッチこそが《裂け目の突破》が必要となるマッチアップだ。《実物提示教育》はミラーマッチでキャストするにはあまりにも危険すぎるからね。
君がどんなデッキをプレイすることになったとしても、このデッキへの対策を怠らないようにしよう。
黒赤リアニメイト
2 《Badlands》
2 《Bayou》
3 《汚染された三角州》
4 《血染めのぬかるみ》
-土地 (13)- 1 《狂気の種父》
4 《別館の大長》
4 《グリセルブランド》
1 《潮吹きの暴君》
-クリーチャー (10)-
4 《思考囲い》
4 《納墓》
4 《信仰無き物あさり》
4 《再活性》
4 《死体発掘》
4 《暴露》
4 《動く死体》
4 《水蓮の花びら》
1 《金属モックス》
-呪文 (37)-
2 《真髄の針》
2 《強迫》
2 《突然の衰微》
2 《クラッシュ》
2 《恭しき沈黙》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《エメリアの盾、イオナ》
1 《花の絨毯》
-サイドボード (15)-
このデッキもまた、デカブツのマナコストを踏み倒して可能な限り速やかに戦場に出そうとするデッキだ。「スニーク・ショー」と比べて妨害に対する弾力性を犠牲にしているものの、その分スピードに特化している。とはいえ、その速度は感銘を受けるほどのものだ。
ゲーム開始時に公開できる《別館の大長》は《意志の力》を妨害できるし、大量に採用された手札破壊呪文も同様だ。また、手札破壊呪文はいざってときに手札のデカブツを墓地に落とすという役割も兼ねている。墓地のクリーチャーを戦場に出す手段は12枚あり、たいていの場合は1体を吊り上げればそれで十分だ。特に1ターン目の《狂気の種父》はほとんどのゲームを終わらせてくれるね。
《死儀礼のシャーマン》はレガシーで最も人気のクリーチャーではあるものの、このデッキを止める手段としては遅すぎる。このデッキは1ターン目にクリーチャーを吊り上げることに特化しているし、手札破壊呪文からゲームを始めるような展開であれ遅くとも2ターン目にはデカブツを戦場に出してしまえる。
サイドボードは “対策カードの対策” が満載だ。《クラッシュ》や《突然の衰微》は《墓掘りの檻》に、《真髄の針》は《死儀礼のシャーマン》に (サイドボード後は少しゲームの速度が落ちることが多いんだ)、《恭しき沈黙》は《虚空の力線》に、といった具合に対面の対策カードを止めることができる。
《大修道士、エリシュ・ノーン》と《エメリアの盾、イオナ》は正しいマッチアップにおいて吊り上げた時点でゲームが終わるクリーチャーたちだ。前者は「エルフ」、後者は「ストーム」などがそれに当たるね。
このデッキは「《ゴブリンの放火砲》」デッキの後継者とされている。速度は「《ゴブリンの放火砲》」デッキに匹敵するし、それでいて妨害手段が採用できて余力も残しやすいため、対戦相手の妨害手段に対する弾力性も高い。もしもラウンドとラウンドの間に多くの休憩時間が欲しいのであれば、「黒赤リアニメイト」はうってつけのデッキだ。
青赤デルバー
2 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
4 《汚染された三角州》
1 《乾燥台地》
-土地 (16)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《僧院の速槍》
4 《嵐追いの魔道士》
2 《騒乱の歓楽者》
-クリーチャー (14)-
もしも普通のクリーチャーの入ったデッキが好きで、なおかつモダンでこういったデッキを使った経験があるというのであれば、「青赤デルバー」はどうだろうか?これはモダンで横行している「《秘密を掘り下げる者》」デッキを最も能率化させたようなデッキだ。大きな見返りは《発展の代価》と《騒乱の歓楽者》で、どちらもマッチアップ次第によってはゲームに勝利できるほどの性能を秘めている。
このデッキにはたくさんの除去呪文兼本体火力呪文があり、コンボデッキを遅らせるための打ち消し呪文だってある。他の「《秘密を掘り下げる者》」デッキが《不毛の大地》を駆使して対戦相手を減速させながら《秘密を掘り下げる者》で少しずつライフを削るのに対し、このバージョンは自身の展開を容易に押し付けられるので対戦相手をまっすぐに攻め落とすことができるんだ。
レガシーのクリーチャーはとても小さいかとても大きいかのいずれかであることが多いため、《稲妻》はほぼ全てのクリーチャーを殺すことができるし、「青赤デルバー」では本体火力として使用することを躊躇う必要もない。
たくさんの果敢と速攻を持ったクリーチャー、それに飛行クリーチャーによって多くの予想外のダメージを叩き込むことができるし、他のフェアなクリーチャーデッキと比較して可及的速やかにゲームを終わらせることができる。
感染
3 《Tropical Island》
1 《ドライアドの東屋》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《樹木茂る山麓》
2 《霧深い雨林》
1 《ペンデルヘイヴン》
4 《墨蛾の生息地》
1 《不毛の大地》
-土地 (20)- 4 《貴族の教主》
4 《ぎらつかせのエルフ》
4 《荒廃の工作員》
1 《ヴィリジアンの堕落者》
-クリーチャー (13)-
最後に僕が今お勧めするデッキは「感染」だ。このリストは、《ギタクシア派の調査》が禁止になる前にモダンを支配していた「感染」デッキの上位互換と言える。レガシーはモダンと比べてクリーチャーが中心とは言えないため、概してクリーチャー除去呪文も少ない。また、《激励》や《狂暴化》はモダンにはないとんでもなく強力なオプションだし、他のクリーチャーを基調としたデッキが盛り込んでいる《渦まく知識》・《意志の力》・《目くらまし》パッケージも同様に強力だ。
「感染」は最速で2ターンキルもできることから、テンポを軸にしたデッキの中でもダントツで早いアーキタイプのひとつだ。その速度のために対戦相手への干渉手段を少しばかり犠牲にしているが、そうは言っても対戦相手のコンボをこちらより1ターン遅くするだけの十分な数の妨害手段を擁している。もしモダン環境で「感染」の技術や知識を習得しているのであれば、その技能を上手くレガシーにも移行できるだろうし、このデッキは君の役に立つだろう。
このデッキにとって特に重要なことは、ここ最近のリストを調べて対戦相手がどんな干渉手段を持っているのかを知っておくことだ。そうすることで、《悪魔の布告》のように最近人気の出てきたカードに負けてしまうことがなくなるだろう。
総括
もちろんこのフォーマットには、これからレガシーを始めようというプレイヤーに適したデッキが他にもある。「MUD」は真っ先に思い浮かぶし、《血染めの月》・《虚空の杯》の入ったデッキ、それに《騙し討ち》の入ったバージョンや「エルドラージ」など、他にもたくさんのデッキが存在する。それらのデッキには優勝を勝ち取るだけのポテンシャルがあるものの、私見では安定性に難があり、それによって大会中に被害を被る可能性があるように思われる。
したがって、これからこのフォーマットを始めてみようというプレイヤーには、その第一歩として今日紹介したデッキの中から自身の好みや技能に合ったデッキを選ぶことを強くお勧めする。
安定性、デッキパワーに干渉手段はレガシーフォーマットの特徴であり、多くのゲームはお互いのプレイヤーが1ターン目からありとあらゆる面でのリソースを交換することになる。土地も安全とは言えないし、クリーチャーだってそうだ。それに手札にある呪文やスタック上にある呪文も決して安全とは言えない。全ての軸、全ての方向からの攻撃と必死に戦わなければならないし、1秒たりともガードを下げちゃいけない。
だけど、レガシーは両プレイヤー間に無数の選択肢があるタフなゲームを乗り越えられたときに大きな満足感が得られるフォーマットなんだ。
間もなく25歳を迎え、それでいて今日においても依然として重要なカードが使えるこのフォーマットを試してみる機会があるのならば、ぜひとも遊んでみることをお勧めするよ。
マルク・トビアシュ
この記事内で掲載されたカード
ヨーロッパのプレミア・イベントで活躍を続け、注目を集めるドイツの強豪。デッキ・ビルダーとしての評価も高く、公式カバレージで【逆説的な結果ストーム構築への挑戦】が取り上げられた。
【プロツアー『アモンケット』】ではドラフトラウンドで全勝を果たし、その勢いのままトップ8入賞を果たす。