さあ、クソデッキの時間だ。
【前回】は初めてのことで加減がわからずに「《骨の神託者》+《無限への突入》」というクソ of クソを生み出してしまった。ゼウスへの道はやはり険しい。
だがスタンダードにはまだまだ、クソデッキが作られるのを心待ちにしているような沢山の
ならば、片っ端から試してやろう。全ての可能性を確かめに行こう。
クソデッキの屍の山ができる頃には、きっとゼウスに近づけているはずだ。
そう。要するに。
今月も、マジックへの冒涜の始まりである。
1.妄想編
クソデッキ、ネタが尽きる。
金の鉱脈と言ったな。あれは嘘だ。
考えてもみて欲しい。
クソデッキに限らず、世界中のデッキビルダーの誰もが、他のプレイヤーを出し抜こうと日夜新しいアイディアを生み出そうと必死になっているのだ。
そんな中で、自分だけがそういつもいつも斬新なデッキを思いつくはずがない。
だから。これは仕方のないことだ。
《無限への突入》に辿り着いてしまった時点で、容易に思いつくであろうその先の展開。
そのカードに安易に飛びついてしまうのも、いわば必然と言うべきなのだ。
《無限への突入》がスタンダードの最高マナコストのスペルであるならば。
それと対をなす、最高マナコストのクリーチャーに手が伸びるのは、至極当然と言えるだろう。
そう、《世界棘のワーム》である。
《ドラコ》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》を引き合いに出すまでもなく。
それ以前、《ファイレクシアの巨像》が印刷されるよりも遥か昔から、プレイヤーは巨大なマナコストに挑戦したいという本能的な欲求を抱えてきた。
その起源は、もしかしたらこのカードにあるのではないかと考えているが……
それはともかく、「《世界棘のワーム》のマナコストを踏み倒したい」と考えることは、おそらく誰にとっても理解できる自然な発想だろうと思う。
さて。
そこで問題となるのは、いかにしてマナコストを踏み倒すか。
こうして思考は「クリーチャーの特殊召喚手段」へと移っていき。
ついにそれらのカードへと、たどり着いたのだ。
《ギルドの抗争》と《予想外の結果》。
おそらく説明されないと効果がわからないであろうほどの
簡単に説明すると、プレイすると一定の確率で《世界棘のワーム》が出る。それだけだ。
こうして特殊召喚手段に関しては解決(?)を見た。
だが、これだけではまだクソデッキには足りない。
クソデッキには、困難を達成したときの美しさが必要なのだ。
その点、現状ではたとえ「《ギルドの抗争》を設置する」という困難
遅い。あまりにも遅すぎる。
もっと。もっとだ。このデッキにはスラムダンクが足りない。たった1発のダンクで試合の流れを引き寄せられるような、そういう破天荒さが欲しいのだ。
そもそも何故このワームは「速攻」を持っていないのだろうか?
そうだ、このデッキには《ヤヴィマヤの火》が足りない。走れワーム。セリヌンティウスのもとへ。
だが、時代は今や
しかし、それゆえに。いや、だからこそ。
《ヤヴィマヤの火》を超えた《ヤヴィマヤの火》。まさしくこのデッキのために生まれたような「神」が、スタンダードには存在していたのだ。
この符合。
《世界棘のワーム》の15/15というサイズ。《歓楽の神、ゼナゴス》の持つ、「速攻」付与に加えてパワーを2倍にするという一見何のためにあるのかわからない能力。
そして<歓楽の神、ゼナゴス>はクリーチャーカードであり、<ギルドの抗争>で出せるという事実。
パズルのピースが今、全てピタリとハマった。
すなわち。
破天荒すぎる30点シュートの完成である。
いくらスラムダンクでもバスケのルールで30点入るには体育館の外からジャンプする必要がありそうだが、そんなことはどうでもいい。
あまりに完璧すぎて脳内では「世界が終るまでは…」が流れはじめる始末。
勝った…勝ってしまった。
PTQ「ニクスへの旅」シーズン終了直前(注:デッキ製作当時)になって駆けつけたブザービーター。
これでインターハイ優勝はもらった!
2.爆誕編
最強のクソデッキ、完成。
《世界棘のワーム》をバスケットボールに見立て、相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!する快感。
その気持ちよさは、3ポイントシュートどころの騒ぎではない。何せ30点シュートなのだ。つまり10倍の爽快感が得られるということである。
まして、《予想外の結果》でシャッフルしてライブラリトップをめくる動きはさながら《精神の願望》。
つまりこのデッキは現代のデザイア。大礒 正嗣もご満悦だろう。
それでは、ご覧いただこう。
春の新作、名付けて「バトルワーム」だ。
3 《森》 2 《山》 1 《島》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《繁殖池》 4 《奔放の神殿》 4 《神秘の神殿》 -土地(22)- 4 《エルフの神秘家》 4 《森の女人像》 1 《マナ編みスリヴァー》 1 《ザル=ターのドルイド》 4 《ケイラメトラの侍祭》 4 《歓楽の神、ゼナゴス》 4 《森林の始源体》 4 《世界棘のワーム》 -クリーチャー(26)- |
4 《予想外の結果》 4 《天才の煽り》 4 《獣の統率者、ガラク》 -呪文(12)- |
4 《炎樹族の使者》 4 《骨の神託者》 4 《無限への突入》 2 《モーギスの狂信者》 1 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -サイドボード(15)- |
どこからツッコめばいいんだよ!
そう思うのも無理はないだろう。わかった、1つ1つ解説していこう。
まず《ギルドの抗争》についてだが、1人でワームが探せてワームが出せてしまう《獣の統率者、ガラク》というコンセプト的に完全上位互換を発見してしまったので、ベンチウォーマーとしてストレージの片隅で
そして、何やら見慣れないこのカード。《天才の煽り》……一体何をするのだろうか?
いや、改めて説明するまでもないか。見ればわかるだろう、11点シュートを飛ばすのだ。
だが、それだけではない。このカードはここからが本番だ。ついでに対戦相手にこう言ってやるといい。
「天才ですから。」
ただしやりすぎると対戦相手があなたの顔面にスラムダンク(物理)を決めてくるかもしれないので、煽りはほどほどにしよう。
その他、《森林の始源体》はどう見ても2mどころではない身長なのでセンターにぴったりだ。「到達」とかどう考えてもリバウンド用の能力である。
まあ、あとはごく普通のデッキだろう。
ちなみによく見るとこのデッキ、《予想外の結果》がマナブーストとして機能することもあるので、感覚的には2→4→6と動くイメージに近い。
そう、2→4→6といえば。
世界選手権11で彌永 淳也が使用してChannel勢をばったばったと薙ぎ倒した、あの最強のイヤナガケッシグと同じ構造なのだ!
つまりこのデッキは現代のデザイアであるだけでなく、現代のイヤナガケッシグでもあるということだ。何だ最強か。
おまけに、サイドボードには【前回】使用した《骨の神託者》+《無限への突入》ギミックを仕込んである。
そうは言ってもこのギミックはインフィニットクソであることが【前回】確認されたではないか、と思われるかもしれない。
大いに違う。
このデッキのサイド後にこの
確かに対戦相手は迷わず5/3速攻にするかもしれない。しかし、そうなれば5点か10点くらいはダメージを食らうだろう。
となれば、あとは《天才の煽り》の射程圏。
しかもこのカードの打点は、サイド後になると11点だけでなく12点に増えているのだ!
つまり何が言いたいのかというと。
このデッキで使えば《骨の神託者》というカードは、5/3で出ても3/1で出ても相手が死ぬという、不自由な2択……すなわちダブルバインドになるのだ。
さらに《無限への突入》は《予想外の結果》でめくれることもある。もしそうなったとき、《骨の神託者》が出ていない分『信心』が足りなくなるという事態を防ぐため、《ザル=ターのドルイド》という補欠も用意してある。
完璧だ。【前回】のクソデッキはまさしくこのためにあった。
全てはこの「バトルワーム」完成への伏線であり、布石だった。
失敗を踏まえて最高峰に昇華したこのクソデッキに弱点はない。
あとは勝つだけ。そう……
オレたちは強い!!
3.実戦編
クソデッキ、
◆第1回戦 VS青緑赤グッドスタッフ
・1戦目 相手がダブルマリガン。それでも4ターン目に《自由なる者ルーリク・サー》を出してくるが、返しで《獣の統率者、ガラク》から《世界棘のワーム》降臨。
そして(当然)チャンプアタックするグルールの族長。
そのまま相手は死んだ。
・2戦目 3ターン目の《炎樹族の使者》経由での《骨の神託者》が相手を悩ませる。はたして《無限への突入》は手札にあるのか……?悩んだ末に、5/3速攻がダメージを刻む。さらにたまたま手札に来ていた《モーギスの狂信者》が「信心」5点を与える大活躍!
そんなこととは全く関係がなく、次のターンの《予想外の結果》から《世界棘のワーム》がめくれて相手は死んだ。
〇〇
◆第2回戦 VS青白コントロール
・1戦目 こちらダブマリだが、通っても(平時は基本的にマナクリしか強化しないので)全く意味がない<歓楽の神、ゼナゴス>(笑)を囮にカウンターを使わせていく。
そして《太陽の勇者、エルズペス》の返しで《天才の煽り》(11点)→続くターンにも《天才の煽り》(11点)……はスタックで《スフィンクスの啓示》でかろうじてかわされる。
だがさらに《天才の煽り》(11点)!
……さすがに《解消》されて負け。
・2戦目 3ターン目《予想外の結果》から《獣の統率者、ガラク》がこんにちは。アドバンテージを取りながら《世界棘のワーム》を探す。5ターン目にはさらなる《予想外の結果》で《森林の始源体》をツモり、相手の土地を割りつつ《獣の統率者、ガラク》の-3能力で《世界棘のワーム》を降臨させる。
しかし相手も狙い澄ました《至高の評決》で盤面をまっさらに……いや、《世界棘のワーム》の忘れ形見、5/5トークンが3体も残っている。ということはつまり……
返しで《歓楽の神、ゼナゴス》出してスラムダンク。
・3戦目 相手マリガン。カウンターも何も引いてないらしく、開き直って《変わり谷》2体で殴ってくる。つまり何かしら撃てたら勝ちなのだが、盤面に5マナある状況で2ターン土地が止まってしまう。
ところで手札のマナコストが6・6・7・7・7・11なんだがこのデッキ大丈夫か?
44マナ分の呪文を抱えて大丈夫なはずもなく、そのまま《太陽の勇者、エルズペス》に延々とトークン出されて負け。
×〇×
◆第3回戦 VS青黒ヤソコン
・1戦目 ダブマリだが、《思考を築く者、ジェイス》の返しで《獣の統率者、ガラク》からの《世界棘のワーム》が炸裂。さらに《予想外の結果》が《世界棘のワーム》を呼び出し、対戦相手は理不尽な死を迎えた。
・2戦目 《思考囲い》からの《群れネズミ》。こんなのバスケじゃない!
・3戦目 トチ狂ってアグロサイド(笑)したら《無限への突入》が2枚ハンドに溜まって何も出来ない。
それでもどうにかライフで押して、通ったら勝ちの《天才の煽り》を2連打したけどどっちもカウンターされる。
湘北は3回戦で愛和学院に嘘のようにボロ負けした。
〇××
結果:1-2。
4.後悔編
安西先生……クソデッキがしたいです……orz
クソデッキとしては会心の出来だっただけに、この成績は悔しいところ。
だが同時に、実際に回してみて初めてわかった様々な改良点も見つかり、このデッキにはかなりの可能性を感じていた。
……そういえば、明後日(注:FNMに出たのは3月7日)PWC Championshipがあるな。
改良版のレシピを渡辺 雄也に渡してついでに調整してもらったら面白いかもしれない。どうせ今年もじゃんけんでデッキシャッフルするんだろうし、こういうデッキがあった方が盛り上がるだろう。
メール送信、っと。
その結果がこれだよ!!
それなりに手応えは感じていたとはいえ、まさかトップ8に残るとは思ってもみなかった。
また楽しそうに回してるんだこれが。いや本望だけれども。
ともあれ、今回はクソデッキとしては大成功と言えるだろう。
さて最後に、真面目に調整した「バトルワーム」の現在の形を載せておく。
3 《森》 2 《山》 1 《島》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《繁殖池》 1 《蒸気孔》 4 《奔放の神殿》 4 《神秘の神殿》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 4 《森の女人像》 4 《ザル=ターのドルイド》 3 《クルフィックスの狩猟者》 4 《森林の始源体》 4 《世界棘のワーム》 -クリーチャー(23)- |
3 《ミジウムの迫撃砲》 4 《予想外の結果》 3 《天才の煽り》 4 《獣の統率者、ガラク》 -呪文(14)- |
4 《ナイレアの信奉者》 3 《ショック》 3 《霊気のほころび》 2 《霧裂きのハイドラ》 2 《空殴り》 1 《ミジウムの迫撃砲》 -サイドボード(15)- |
《歓楽の神、ゼナゴス》にはチームの切り札としてトレード用ファイルを温める仕事に戻ってもらった。
ともあれ、このデッキを回して、少しでもクソデッキの楽しさを感じていただけたなら幸いだ。
それではまた次回。
良いクソデッキライフを!