みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの大久保です。
去る1月9日(月・祝)には【フロンティア神決定戦】が開催されました。
集まった参加者の数はなんと236名! 中にはご存知Hareruya Prosの齋藤 友晴や、【Team Cygames】所属の市川 ユウキ、【Dig.cards】所属の行弘 賢といったトッププロも多数参戦した本大会で見事に優勝を収めたのは、【BIGMAGIC】所属のシルバーレベル・プロ、松本 友樹でした!
さて、本記事では今回のフロンティア神決定戦の結果をお伝えしつつ、1月20日(金)に発売される新セット『霊気紛争』の注目カード、そしてフロンティアに関する注目のトピックなどについてお伝えしていきたいと思います!
目次
1. フロンティア神決定戦の結果
アタルカレッド
スゥルタイ昂揚
フライングジェスカイ
2. 『霊気紛争』とフロンティア
《守護フェリダー》
《致命的な一押し》
《ピーマの改革派、リシュカー》
《産業の塔》
3. 海外に波及するフロンティア
1. フロンティア神決定戦の結果
アタルカレッド
スゥルタイ昂揚
フライングジェスカイ
2. 『霊気紛争』とフロンティア
《守護フェリダー》
《致命的な一押し》
《ピーマの改革派、リシュカー》
《産業の塔》
3. 海外に波及するフロンティア
1. フロンティア神決定戦の結果
さて、さっそくフロンティア神決定戦で結果を残したデッキについて解説させていただく前に、まずは本大会のメタゲームについて考えていきましょう。
フロンティア神決定戦のメタゲーム
本大会のカバレージでは、参加者236名全員のメタゲームブレイクダウンが公開されています。
- 2017/01/09
- メタゲームブレイクダウン
- 井川 良彦
この記事で紹介されている使用率上位5つのデッキを抜き出してみると、当日のメタゲームは「アタルカレッド」「アブザンアグロ」「ダークジェスカイ」「4色先祖の結集」「魂込めビートダウン」といった様相を呈しており、【この記事】でも紹介させていただいたデッキが数多く使用されていました。
より詳細な分布については【こちら】の記事をご覧ください。
しかし、トップ8に注目すると「アタルカレッド」が3名、「魂込めビートダウン(青赤)」「フライングジェスカイ」「4色人間カンパニー」「パンハモニコンエルフ」「スゥルタイ昂揚」が各1名という結果に終わり、環境の本命と目され使用者数も多かった「アブザンアグロ」と「ダークジェスカイ」は0名となっていました。
このことから、現時点では勝ち組は「アタルカレッド」だったと言えるでしょう。そのほかのデッキに関しては非常に多様なデッキが勝ち残っており、フロンティア環境の懐の広さが窺えます。
さて、以下に今大会で特に優秀な成績を収めていた「アタルカレッド」と松本 友樹選手の「スゥルタイ昂揚」、市川 ユウキ選手の「フライングジェスカイ」をご紹介させていただこうと思います。
アタルカレッド
8 《山》 1 《森》 2 《燃えがらの林間地》 4 《樹木茂る山麓》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《吹きさらしの荒野》 -土地 (21)- 4 《僧院の速槍》 2 《鐘突きのズルゴ》 2 《稲妻の狂戦士》 4 《ケラル砦の修道院長》 2 《ゴブリンの熟練扇動者》 -クリーチャー (14)- |
4 《ドラゴンの餌》 4 《稲妻の一撃》 4 《アタルカの命令》 4 《軍族童の突発》 4 《かき立てる炎》 1 《強大化》 4 《密輸人の回転翼機》 -呪文 (25)- |
4 《焙り焼き》 3 《稲妻織り》 2 《自然のままに》 2 《粉々》 2 《トーモッドの墓所》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
※赤字はスタンダード当時との大きく差異のあるカードや新加入したカード。
【プロツアー『タルキール龍紀伝』】と【プロツアー『マジック・オリジン』】を二連覇した赤系のアグロデッキはフロンティア環境でも依然として強力だったようで、トップ8に3名ものプレイヤーを送り込みました。
どのリストも《密輸人の回転翼機》が採用されている点は変わりませんが、松浦選手のリストでは《強大化》が1枚だけ採用されています。
トークン+《アタルカの命令》による面の攻撃と《強大化》による点の攻撃によって対戦相手を二重に攻め立て、多色デッキが序盤のタップインでもたついている隙を突いて素早くゲームを終わらせる戦略は多色デッキの多いフロンティア環境では特に有効だったようです。
スタンダード当時からメインボード最強の呼び声が高かったアタルカレッド。今後は《悪性の疫病》や《正義のうねり》といった対策カードにサイドボードの枠を割く必要がありそうです。
スゥルタイ昂揚
4 《沼》 2 《島》 2 《窪み渓谷》 1 《梢の眺望》 1 《燃えがらの林間地》 1 《燻る湿地》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 3 《風切る泥沼》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地 (25)- 4 《サテュロスの道探し》 3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (10)- |
2 《ウルヴェンワルド横断》 1 《強迫》 4 《闇の掌握》 2 《革命的拒絶》 1 《虚空の粉砕》 1 《餌食》 1 《本質の摘出》 3 《衰滅》 2 《残忍な切断》 4 《時を越えた探索》 4 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (25)- |
3 《死の重み》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《棲み家の防御者》 1 《再利用の賢者》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《強迫》 1 《否認》 1 《本質の摘出》 1 《失われた遺産》 1 《破滅の道》 1 《闇の誓願》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
※赤字はスタンダード当時との大きく差異のあるカードや新加入したカード。
松本選手が使用し優勝を収めた「スゥルタイ昂揚」。スタンダードでもおなじみの《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や《ウルヴェンワルド横断》といった「昂揚」カードに《時を越えた探索》+《奔流の機械巨人》の様式美が搭載された、事実上フロンティア発の新デッキと呼ぶことができそうです。
ご本人が【デッキテク】でも語っているとおり、フロンティア環境でも強力な《密輸人の回転翼機》を確実に除去できるカードとして4枚の《闇の掌握》が採用されています。
3色デッキで《闇の掌握》4枚? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、デッキには黒のマナソースが21枚も採用されており、《ウルヴェンワルド横断》や《サテュロスの道探し》も入っているため、よほどのことがない限り2~3ターン目に(黒)(黒)が捻出できることでしょう。
「昂揚」達成後の《墓後家蜘蛛、イシュカナ》の盤面制圧力はフロンティア環境でも類を見ない強さであり、【準々決勝】では「アタルカレッド」の戦線を完全に押しとどめる活躍を見せていました。『霊気紛争』リリース後も依然として強力なアーキタイプとして環境に留まりそうです。
フライングジェスカイ
2 《平地》 2 《島》 1 《大草原の川》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《感動的な眺望所》 4 《尖塔断の運河》 3 《戦場の鍛冶場》 3 《シヴの浅瀬》 -土地 (23)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《霊廟の放浪者》 4 《無私の霊魂》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 4 《カマキリの乗り手》 -クリーチャー (24)- |
1 《払拭》 4 《稲妻の一撃》 4 《ジェスカイの魔除け》 4 《密輸人の回転翼機》 -呪文 (13)- |
4 《流電砲撃》 2 《風番いのロック》 2 《石の宣告》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《鋭い突端》 1 《断片化》 1 《払拭》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
※赤字はスタンダード当時との大きく差異のあるカードや新加入したカード。
スイスラウンドを無敗の8-0-1(1位通過)で駆け抜けた市川選手の「フライングジェスカイ」。【フロンティアチャレンジカップ】で優勝を果たした鈴木 亨選手(※デッキ考案者は【伊藤 光英選手】)のデッキを独自にチューンナップしたようです。
フロンティア環境の青いデッキとしては珍しく《宝船の巡航》も《時を越えた探索》も《ヴリンの神童、ジェイス》も採用されておらず、航空戦力(+《反射魔道士》)のための青と割り切った構築になっています。
さながらモダンやレガシーのデルバー系デッキのようなこれぞテンポデッキといったリストになっており、《反射魔道士》や《呪文捕らえ》でテンポを奪い、《カマキリの乗り手》で攻守を入れ替えて《ジェスカイの魔除け》などの直接火力でライフを詰め切ります。
実際に準々決勝の第1ゲームでは長谷川選手の「魂込めビートダウン」を相手にわずか3分32秒で勝利を収めています。
『カラデシュ』で追加された対抗色ファストランドを最も強力に活かせるデッキで、~3ターン目まではほぼ確実に全ての土地をアンタップインできる非常に安定した挙動も魅力の一つと言えるでしょう。
さて、「アタルカレッド」と「スゥルタイ昂揚」、「フライングジェスカイ」の3つのデッキをご紹介させていただきましたが、いずれのデッキにも共通しているのが2~3色にまとまっているということでしょう。
色が減れば必然的にタップインの機会が減り、最初にご紹介したメタゲームブレイクダウンの結果を見ても分かる通り、「アタルカレッド」と「魂込めビートダウン」のような速いゲームプランで攻めてくるデッキに対して対応しやすくなります。
発足当初はKTK~BFZの頃のような多色ミッドレンジ環境になるのでは?と言われていたフロンティアですが、徐々にメタゲームはその姿を変えていることが分かります。
また、いずれのデッキも《密輸人の回転翼機》を使用する or 対抗する手段を備えていることにも注目です。
1月9日(月)に【スタンダードで禁止されることが告知されたばかり】のこのカードはフロンティアでも非常に凶悪な性能を誇り、環境を定義している1枚と言えるでしょう。
幸いにも、スタンダードと比較すると《断片化》や《粉々》、《再利用の賢者》といった対抗手段が各色にいくつか用意されていますが、今後はメインボードからこのカードを意識した構築は必須となっていきそうです。
さて、現環境について一通りの共通認識を持っていただいたところで、次は来週1月20日(金)にリリースされる『霊気紛争』で活躍してくれそうなフロンティア的注目カードを見ていきましょう。
2. 『霊気紛争』とフロンティア
いよいよ来週、1月20日(金)にリリースを控えた『霊気紛争』!
スタンダードは禁止改定の影響もあって環境に激変が起こりそうですが、フロンティアも同様に大きな変化を迎えることになりそうです。
本項では、数ある注目カードの中から厳選した4枚のカードをご紹介させていただこうと思います。
スタンダードでも話題沸騰中の《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》コンボですが、《時を越えた探索》のあるフロンティアではより強烈なデッキになりそうです。
2 《山》 1 《島》 1 《平地》 2 《大草原の川》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 2 《尖塔断の運河》 2 《感動的な眺望所》 -土地 (24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《無私の霊魂》 4 《反射魔道士》 4 《守護フェリダー》 -クリーチャー (16)- |
4 《焦熱の衝動》 1 《払拭》 4 《稲妻の一撃》 3 《時を越えた探索》 4 《密輸人の回転翼機》 4 《サヒーリ・ライ》 -呪文 (20)- |
除去とETB能力持ちのクリーチャーたちで盤面を築きながら《時を越えた探索》でコンボパーツを揃えるのが基本戦略になります。また、《密輸人の回転翼機》は「探査」との相性も良好な上に攻防に渡って優秀なカードなので、このデッキにも居場所がありそうです。
各所で「こんなに強い除去が許されるの?」と話題の《致命的な一押し》。モダンやレガシーでも注目が集まっている1枚ですが、同様にフェッチランドが使用できるフロンティアでも強力な除去です。
すでに本記事内でも散々ご紹介したフロンティア環境のキーカード、《密輸人の回転翼機》をわずか1マナで除去できるほか、「紛争」を達成していれば《包囲サイ》でさえも葬り、上で述べた《守護フェリダー》コンボに対する抑止力としての活躍も期待されます。
破壊不能や再生には弱いため、《無私の霊魂》などが横に立っていると機能しにくくなってしまうという弱点はありますが、今後は《闇の掌握》と枠を分かちながら黒いデッキの標準除去として活躍してくれそうです。
【フロンティア神決定戦】でもトップ4に進出していた【「パンハモニコンエルフ」】が新たにカードを得ました。
その名の通り《パンハモニコン》が採用されたエルフデッキで、《森林の怒声吠え》から《群れのシャーマン》を2枚サーチして一気に大量のライフルーズを狙うコンボが搭載されています。
詳しくは【BIG MAGIC協賛 フロンティアチャレンジカップ】のカバレージにもデッキテクが掲載されています。【エルフマスター・高野 成樹】と不肖私がともに調整したデッキで、圧倒的な爽快感が味わえるのでご興味がおありの方はぜひご覧ください。
- 2016/10/30
- Deck Tech: 大久保・高野・久保の「パンハモニコン・エルフ」
- 伊藤 敦
《ピーマの改革派、リシュカー》のETB能力は当然《パンハモニコン》とも相性がよく、単純に2~3ターン目のアクションを埋めるのにもうってつけのカードパワーを持っており、比較的軽いことから《召喚の調べ》のサーチ先としても優秀です。
「パンハモニコンエルフ」は他にも《英雄的介入》などサイドボード用の全体除去対策カードも得ており、今後はますますの活躍が見られそうです。
「魂込めビートダウン」のマナ基盤がさらに強化されそうな1枚。
《アーティファクトの魂込め》のための 青 と《爆片破》のための 赤 を中心に、《スレイベンの検査官》と《模範的な造り手》のための 白 もしくは《無許可の分解》と《屑鉄場のたかり屋》のための 黒 が足されることの多いこのデッキにとって、タッチカラーを安定させる《産業の塔》の加入は非常に大きいです。
アーティファクトがなければ無色マナしか出すことができませんが、「魂込めビートダウン」がそのような状況に悩むことはほとんどないでしょう。
他にも「魂込めビートダウン」は『霊気紛争』から5枚目以降の《アーティファクトの魂込め》として活躍しそうな《テゼレットの手法》を得ています。これまでタッチ白型とタッチ黒型の分布はほとんど半々でしたが、今後はグリクシスカラーが中心になるかもしれません。
ここでご紹介した4枚の他にも「4色先祖の結集コンボ」で除去耐性持ちの《ナントゥーコの鞘虫》として活躍してくれそうな《不死の援護者、ヤヘンニ》や、「人間カンパニー」の5~8枚目のロードとなってくれそうな《金属ミミック》、「アブザンアグロ」の新たな2マナ域になり得る《緑輪地区の解放者》なども見られます。
いずれにせよ環境のほとんどのデッキは『霊気紛争』の加入で大なり小なりアップデートされそうですし、「サヒーリコンボ」のような新たなアーキタイプの台頭も期待されます。
はたして今後フロンティア環境はどうなっていくのか? 今後も目が離せません。
3. 海外に波及するフロンティア
ここまで国内のフロンティアのメタゲームや『霊気紛争』リリース後の話をさせていただきましたが、最近では国外でも徐々にフロンティアに注目が集まっており、イベントなども開催されています。
カナダの大型ショップ【FaceToFaceGames.com】が主催した【Frontier Sunday Showdown – 2017/01/08】には41名のプレイヤーが集まりました。
ここでもトップ8には「アタルカレッド」が4名入賞と日本と似たメタゲームが形成されていたようですが、上位に入賞したJeff Swaluk選手のデッキには《強大化》+《ティムールの激闘》のコンボを《顕在的防御》でバックアップする形など、国内では見られなかった新たなアプローチのデッキもありました。
7 《山》 2 《森》 2 《燃えがらの林間地》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《樹木茂る山麓》 2 《吹きさらしの荒野》 -土地 (21)- 4 《鋳造所通りの住人》 4 《僧院の速槍》 2 《鐘突きのズルゴ》 2 《ケラル砦の修道院長》 -クリーチャー (12)- |
3 《顕在的防御》 3 《乱撃斬》 4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 3 《ティムールの激闘》 3 《軍族童の突発》 3 《強大化》 4 《密輸人の回転翼機》 -呪文 (27)- |
4 《焙り焼き》 2 《棲み家の防御者》 2 《わめき騒ぐマンドリル》 2 《沸き立つ大地》 2 《溶岩の地割れ》 2 《前哨地の包囲》 1 《顕在的防御》 -サイドボード (15)- |
コンボスタート時に(緑)(緑)が欲しいこともあってか、「アタルカレッド」のリストとしては珍しく《森》が2枚採用されており、安定性よりも爆発力を取った新しい構成として今後研究が進んでいくことに期待されます。
優勝を収めたのは「アブザンアグロ」で、他にも「白単人間」のようなデッキもいたようです。トップ8のデッキリストは【こちら】からも見ることができます。
また、2017年に【Channel Fireball】で主催されるグランプリでもサイドイベントでフロンティアのイベントを開催することが計画されているそうです。
@sigfig8 @jtempkin @ssomers55 We're also running Frontier events at our GPs this year. 🙂
— ChannelFireball (@ChannelFireball) 2017年1月9日
他にも【MTG Frontier】という情報サイトが発足されていたり、【Channel Fireball】ではマジック・プロツアー殿堂顕彰者のEric Froehlich(Eフロー)が連載記事【Deck of the Day】にてフロンティアのデッキを紹介していたりと、海外でも徐々に認知が広まり、プレイヤー人口も増えつつあるようです。
今後は国内外でさらに研究が進み、開拓が進んでいくことになるでしょう。
ますます盛り上がりを見せるフロンティア、ぜひみなさんも遊んでみてくださいね!
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