週刊デッキウォッチング vol.105 -ヘイトレッド-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 青黒コントロール



Suzawa Atsuki「青黒コントロール」
平日スタンダード17時の部(3-0)

10 《島》
7 《沼》
4 《窪み渓谷》
2 《詰まった河口》
1 《荒廃した瀑布》
1 《ガイアー岬の療養所》

-土地 (25)-

3 《遵法長、バラル》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《艱苦の伝令》

-クリーチャー (7)-
3 《致命的な一押し》
3 《手酷い失敗》
2 《否認》
2 《精神背信》
2 《闇の掌握》
2 《風への散乱》
2 《不許可》
3 《天才の片鱗》
2 《ヤヘンニの巧技》
2 《岸の飲み込み》
1 《潮からの蘇生》
2 《証拠の痕跡》
2 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (28)-
3 《金属の叱責》
2 《非実体化》
2 《破滅の道》
2 《餌食》
2 《策謀家テゼレット》
1 《致命的な一押し》
1 《否認》
1 《バラルの巧技》
1 《疑惑の裏付け》

-サイドボード (15)-
hareruya



遵法長、バラル不許可証拠の痕跡


 「機体」、サヒーリ・コンボ、黒緑アグロ……多角的な攻撃手段を持つ3つのアーキタイプが支配するスタンダードだからこそ、完璧なコントロールへの憧憬は尽きない。しかし除去もカウンターも重い現代では、攻撃側のスピードに対して対応側が完璧に受けるのは、それこそ《対抗呪文》でも存在しない限り難しい。ならばどうするか?そう、《対抗呪文》を作り上げるのだ。

 インスタントとソーサリーのコストを軽くできる《遵法長、バラル》がいれば、《不許可》《風への散乱》《対抗呪文》へと早変わりだ。さらに《精神背信》《思考囲い》《天才の片鱗》《知識の渇望》にも匹敵するようになる。

 《証拠の痕跡》はコントロール同型戦でのキラーカードとなることはもちろん、《艱苦の伝令》を隙なくプレイするためのサポートともなる。また、エンド前の《岸の飲み込み》からの《潮からの蘇生》は必殺のカウンターパンチとなるだろう。

 サイドボードでは【ヤソに見切られた】《策謀家テゼレット》が活躍の機会を窺う。コントロールの定型を守りながらも独特なカードチョイスのセンスが光るデッキだ。

【「青黒コントロール」でデッキを検索】





■ モダン: 青赤ストーム



GameOnSummerside「青赤ストーム」
Competitive Modern Constructed League(5-0)

2 《島》
1 《山》
2 《蒸気孔》
1 《神聖なる泉》
4 《沸騰する小湖》
3 《溢れかえる岸辺》
4 《尖塔断の運河》
1 《シヴの浅瀬》

-土地 (18)-

4 《遵法長、バラル》
3 《ゴブリンの電術師》

-クリーチャー (7)-
4 《手練》
4 《血清の幻視》
3 《思考掃き》
4 《捨て身の儀式》
4 《発熱の儀式》
4 《魔力変》
3 《差し戻し》
2 《ぶどう弾》
4 《けちな贈り物》
2 《炎の中の過去》
1 《巣穴からの総出》

-呪文 (35)-
3 《稲妻》
2 《巣穴からの総出》
2 《血染めの月》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《エメリアの盾、イオナ》
1 《破壊放題》
1 《摩耗+損耗》
1 《堀葬の儀式》

-サイドボード (12)-
hareruya



遵法長、バラルけちな贈り物炎の中の過去


 モダンの「ストーム」には、禁止カードとの戦いの歴史がある。《思案》《定業》《炎の儀式》を失い、《煮えたぎる歌》を失い、そして今《ギタクシア派の調査》をも失った。ならば「ストーム」は死んだのか?否、「ストーム」は何度でも蘇るのだ。

 復活の鍵となったのは新たなる《ゴブリンの電術師》こと《遵法長、バラル》。このカードの登場により《紅蓮術士の昇天》はその役目を終え、デッキコンセプトも「3ターン目に《けちな贈り物》を打ち、4ターン目に安定してコンボを決める」というものへと変貌を遂げた。

 サーチするのは《発熱の儀式》《捨て身の儀式》《魔力変》《炎の中の過去》。それぞれ1マナずつ軽くなっている状況では、どの2枚が手札に加わってもコンボがスタートできる。あとは理不尽な「ストーム」数の《ぶどう弾》を対戦相手に叩き込むだけだ。

 そして《けちな贈り物》を採用しているということは当然、サイドボードからの《堀葬の儀式》プランもオプションになる。《尖塔断の運河》でライフ水準が上がっていることも含めて、『カラデシュ』『霊気紛争』は「ストーム」にとっての福音と言えそうだ。

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■ レガシー: 白黒アグロ



Sakamoto Hiroyuki「白黒アグロ」
晴れる屋レガシー杯(4-2)

4 《沼》
1 《平地》
4 《Scrubland》
1 《Bayou》
4 《湿地の干潟》
4 《新緑の地下墓地》
1 《悪臭の荒野》

-土地 (19)-

4 《屍肉喰らい》
4 《墓所這い》
4 《死儀礼のシャーマン》
4 《才気ある霊基体》
4 《堂々たる撤廃者》
4 《惑乱の死霊》

-クリーチャー (24)-
4 《暗黒の儀式》
4 《致命的な一押し》
3 《陰謀団式療法》
2 《名誉回復》
4 《憎悪》

-呪文 (17)-
4 《外科的摘出》
3 《盲信的迫害》
2 《失われた遺産》
2 《真髄の針》
1 《強迫》
1 《陰謀団式療法》
1 《名誉回復》
1 《無のロッド》

-サイドボード (15)-
hareruya



憎悪堂々たる撤廃者惑乱の死霊


 黒というのはアグロ、コンボ、コントロールと様々な性質を持つ色である。そして黒いアグロの代表格といえば、日本選手権99で東野 将幸が優勝を飾ったスーサイド・ブラック、【ヘイトレッド】だろう。パワー2のクリーチャーに《暗黒の儀式》からの《憎悪》でライフ18点を支払って勝利という動きは、リスクを代償に大きなリターンを得ようとする色の特性をよく表している。そんな「ヘイトレッド」を18年という時を超えて現代版にアップデートしたのがこちらのデッキだ。

 「シャドー」クリーチャーの代わりに《屍肉喰らい》《墓所這い》という地上のタフなクリーチャーを採用し、戦線は最新の高性能除去・《致命的な一押し》でこじ開ける。こちらも『霊気紛争』の《才気ある霊基体》は絶妙なブロックしづらさで、初見ではほぼ攻撃をスルーされると思われるので、《憎悪》の対象にうってつけだ。

 マナベースに負担をかけてまでタッチしている《堂々たる撤廃者》はクリーチャーでありながら《意志の力》封じになるいぶし銀の性能を持っている。《陰謀団式療法》を絡めれば、相手の防御を突破することは容易だろう。

 《死儀礼のシャーマン》《暗黒の儀式》からの高速《惑乱の死霊》という、古典的ながらも強力な動きもある。最新セットのカードで懐古的なコンセプトに息を吹き込んだ、テーマ性溢れる素晴らしいデッキだ。

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■ フロンティア: 硬化した鱗



Kageyama Hiroki「硬化した鱗」
晴れる屋フロンティア杯(3-1-1)

6 《森》
1 《燻る湿地》
4 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
4 《花盛りの湿地》
4 《ラノワールの荒原》

-土地 (22)-

4 《搭載歩行機械》
4 《歩行バリスタ》
4 《エルフの神秘家》
4 《巻きつき蛇》
4 《毅然さの化身》
4 《マナ喰らいのハイドラ》
3 《ピーマの改革派、リシュカー》
2 《新緑の機械巨人》

-クリーチャー (29)-
4 《致命的な一押し》
4 《硬化した鱗》
1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》

-呪文 (9)-
3 《強迫》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《空への斉射》
2 《精神背信》
1 《再利用の賢者》
1 《顕在的防御》
1 《究極の価格》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya



硬化した鱗巻きつき蛇マナ喰らいのハイドラ


 スタンダードで絶賛大暴れ中の《巻きつき蛇》だが、その猛威はスタンダード環境だけにとどまらない。フロンティア環境から見れば、このカードは5~8枚目の《硬化した鱗》なのだ。ならばもともと《ドロモカの命令》のために白緑だったこのデッキも、黒緑へと変える価値があるというものだ。

 《エルフの神秘家》からの《マナ喰らいのハイドラ》というぶん回りは健在で、8枚の(X)(X)、《搭載歩行機械》《歩行バリスタ》は攻防の要となる。

 また、黒ベースのメリットはなんといってもフロンティア最強除去の一角、《致命的な一押し》を採用できる点にある。《ピーマの改革派、リシュカー》からの《新緑の機械巨人》はスタンダードでもお馴染みの動きだが、1ターン目《硬化した鱗》、2ターン目《巻きつき蛇》から綺麗につながると、もはや数えたくないほどのカウンターがばら撒かれることになる。

 『霊気紛争』のカードを15枚も採用したこのデッキは、フロンティア環境のトップメタにのし上がる力を十分秘めていそうだ。

【「硬化した鱗」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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