By Kazuki Watanabe
二日間に渡るPros&Hopesドラフト練習会では、長時間の休憩を一切挟むことなくドラフトが繰り広げられていた。
その合間に「環境の雑感」や「アーキタイプの感触」などを聞いてみたのだが、複数のプレイヤーから「青白、もしくは黒緑が強そう」という答えが返ってきた。
手元のメモを整理していると、休む間もなく次のドラフトが始まる。写真を撮りながらピックの光景を眺めていたところ、Hareruya Hopesの齋藤 慎也選手が、以下のようなピックをしていた。
まず、《鉄葉のチャンピオン》。続けて《臓腑抜き》。そこから、《死花のサリッド》《古えの憎しみ》《ウィンドグレイスの見習い》《ベイロスの大喰らい》……黒緑である。
7 《沼》
1 《島》
1 《内陸の湾港》
-土地 (18)- 1 《ラノワールのエルフ》
1 《ラノワールの斥候》
1 《荒々しいカヴー》
1 《死花のサリッド》
1 《クローサのドルイド》
1 《鉄葉のチャンピオン》
2 《ベイロスの大喰らい》
1 《サリッドの予言者》
2 《ウィンドグレイスの見習い》
1 《水底のドルイド、タトヨヴァ》
1 《孤独な王、グラン》
1 《新緑の魔力》
-クリーチャー (14)-
今回の練習会で3-0を達成したデッキリスト(パート1、パート2)を見てみると、掲載されている黒緑は2つ。そのどちらも、齋藤選手が使用したものだ。
どのようなアーキタイプで、どのようにピックすれば良いのか。そして、弱点はあるのか。早速、伺ってみよう。
■ 《苗木》とフィニッシャー
――「早速ですが、『ドミナリア』ドラフトの黒緑とは、どのようなアーキタイプなのでしょうか?」
齋藤「まずは《苗木》トークンをばらまいて、地上を固めていきます。その後は大型のフィニッシャーに繋げたり、《苗木》トークンを活かして押し切ったり、といった形ですね。トークンが非常に重要なので、『黒緑《苗木》』と称するべきかもしれません」
――「なるほど。大型のフィニッシャー、というのは緑が持つ定番の戦法ですよね」
齋藤「そうですね。《茨の精霊》や《始源のワーム》といったクリーチャーは十分強力です。《ベイロスの大喰らい》ならば『キッカー』のおかげで中盤でも終盤でも役に立ってくれます。この環境でも《灰からの成長》のようなマナ加速は存在していますし、《ラノワールのエルフ》という最高の1枚がありますからね」
――「対して、《苗木》トークンを活かして押し切る、というのはどういうものなのですか?」
齋藤「わかりやすいのは、《胞子冠サリッド》ですね。並んだトークンが一回り大きくして、そのまま押し切るわけです。その他にも、並んだトークンを活用することも可能です。《サリッドの予言者》で余分な《苗木》トークンを利用したり、《雑食のサリッド》がフィニッシャーになったり、といった感じです。《雑食のサリッド》はコモンなので、ピックしやすいのも良いですね」
■ 黒緑と言えば、あのファンガス
――「《苗木》トークンと、それを活かすファンガスたちが鍵なのですね。黒緑でファンガスと言えば、《密航者、スライムフット》が居ますよね。このクリーチャーの評価はいかがですか?」
齋藤「強いですね。本当に強力です。ピックできるならば、迷わず黒緑を選んで良いと思います。《苗木》トークンを活かすための能力が詰まっているので、とても重要な1枚です」
――「なるほど。あ、でも今回のデッキには入っていないんですね」
齋藤「残念ながらピックできませんでした。もちろん、《密航者、スライムフット》から黒緑へ、となればベストです。ただ、《苗木》トークンに依存しなくても、『フィニッシャーに繋げる』という動きは十分に強いですからね。生成するカードや活用するカードが確保していけば形になります」
――「トークンを生成するカードもフィニッシャーも緑が担っているので、緑に黒が足されているような印象を受けますね」
齋藤「そうですね。黒から入った場合は赤や白といった選択肢があるのですが、緑からの場合はほとんど黒一択、という結果になりやすい気がします。緑白でトークン戦略もあると思いますが、難しい印象です。緑の場合は『マナ加速。《苗木》で耐える。フィニッシャーを出す』というわかりやすい指針があって、そこにプラスするならば、除去を担ってくれる黒がベストなのかな、と」
■ そのカードは、アーキタイプに合っているのか?
――「その他に黒緑を目指す上で意識すべきことはありますか?」
齋藤「意識すべきこと……これは当然なのかもしれませんし、黒緑に限らず他のアーキタイプでもそうだとは思うのですが、『黒緑で高いカード』と『その他のアーキタイプで高いカード』はまったく別、ということは意識したほうが良いかもしれません。例えば《要塞の聴罪司祭》や《陰謀団の聖騎士》といったカードは十分なスペックを持っていますが、黒緑ではそこまで優先されるカードではないと思うんですよ」
――「『黒で評価が高い』と『黒緑で評価が高い』は別、と」
齋藤「もちろん《臓腑抜き》や《不純な捧げ物》のように単純に評価が高いカードもありますけどね。アーキタイプに合っているかどうかをしっかりと判断してピックを進めると良いかもしれません」
黒緑の天敵
――「黒緑はかなり人気が高く、強力なアーキタイプだと思うのですが、弱点はありますか?」
齋藤「飛行です。青白飛行は天敵ですね。今回の練習会でも青白と黒緑が人気を二分していたように思いますが、青白との対戦はかなり厳しいです」
――「たしかに、どれだけ《苗木》を大量に並べても、軽々と飛び越えて来ますよね……」
齋藤「そうですね。《マンモスグモ》や《空を射抜く》のようなカードはかなり重要です。黒緑をやる場合は《ウィンドグレイスの見習い》が重要かもしれません。5マナで3/2飛行、そして3点のライフゲインがじわりと効いてきます」
■ 練習会から、次の戦いへ
――「練習会はこれで終わるわけですが、今後の『ドミナリア』ドラフトにおける目標はありますか?」
齋藤「そうですね……今回の練習会では、赤の評価が低めです。例えば《シヴの火》は赤のトップコモンだと思うのですが、まだ完成形が描けていないので、つい避けてしまいがちだったんですよね。なので、赤を活かすドラフトを見つけるのが目標です」
――「なるほど。練習会を振り返ってみると、赤を避けたプレイヤーは多かったように思いますね」
齋藤「皆さん同じだったのかもしれません。結果、赤以外に人が集中し過ぎて黒緑を複数人が選ぶような展開もよくありました。今回も1度流した《空を射抜く》がまったく返って来なかったんです。案の定、卓にもう一人黒緑が居て、そのまま青白飛行にやられてしまいました。赤でしっかりと勝てる方法を探してみる。今回の練習会から次に繋げるとすれば、この点ですね」
ドラフト練習会が終われば、新たな戦いが始まる。プロツアー『ドミナリア』まで、1ヶ月を切っている。
今回の練習会で得た教訓を活かし、課題を見つけ、Pros&Hopesは次なる戦いへ。まだまだ始まったばかりの『ドミナリア』のドラフトがどのように変わっていくのか。そして彼らがどのように戦っていくのか、注目しておこう。
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