Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/10/24)
皆さん、ごきげんよう。
今回から「Magic Onlineグラインダー(※)になろう」というシリーズものを書いてみようと思う。
※編注:グラインダーとは、プロツアーに参加するなど何かしらの目的を持ち、次から次へと精力的にイベントに参加している人のこと。
まずお断りしておきたいのだが、この記事はMagic Onlineのクライアントの使い方を解説したり、初心者向けの解説をしたりするものではない。クライアントの使い方や大会スケジュール、賞品、アイテム(チケットやトレジャー・チェスト、プレイポイントなど)に関してはご存知のものとして話を進めさせていただく。また、構築の話しかしないため、カードをある程度持っている、あるいは揃える術があるという前提である。また、特定のフォーマット・環境に限定した記事ではないが、現在のメタゲームのカードを実例に取ることもある。 この記事をいつご覧になっているかわからないが、この記事は『ラヴニカのギルド』発売直後に書いている。
準備なくして成功することは滅多にない。そこで、実際にグラインディングする前にやっておくべき・理解しておくべき基本的な事項についてお話しよう。それは、資産管理・構築のグラインダーをやっていくうえで最善のイベントやデッキタイプ・その他のちょっとしたアドバイスだ。
まずはっきりさせておくべきことがある。ここでいう「グラインディング」とは、特定のデッキを使って技術を磨いていくことではない(やろうと思えばできるが)。また、楽しむ目的でもなければ、常に最善のプレイを求めようとするものでもない。グラインディングとは「最大の利益をできるだけ短時間で獲得しようとするもの」だ。
ここでいう利益とは、カードをコレクションすることでもいいし、Qualifier Point(QP)を獲得してMagic Online Championship Seriesに参加してリーダーボードの上位に入ることでも、なんでもいい。いずれにしても何らかの利益を獲得しようとするならば、コントロールのような遅いデッキで5マッチ消化するよりも、同じ時間で速いデッキを使って12マッチ消化する方が良い(ここでいう「速い」とは少ないターン数で勝てるという意味ではない。勝つまでのクリックにかかる時間を指している。したがって、アグロデッキが必ずしも「速い」わけではない。これについては後で触れる)。確かにコントロールデッキの方が5-0する確率が高いこともあるが、(早々に負けない限りは)各ラウンドが30~40分かかってしまう。30~40分もあればリーグを1回分消化できるデッキは多い。バナーにモットーを掲げるとすれば、これだろう。
資産の管理
ここで最も重要なのは、「グラインダーをやっていくならば、カードコレクションは道具になる」ということだ。職業上で使う道具一式なのだ。道具は良いものを選び、綺麗に保ち、そして常に整理整頓しておくべきだ。
間違った構築を大会に持ち込んでしまうプレイヤーがいるが、その8割は金銭面に起因している。4枚目の《再燃するフェニックス》を入れない理由が「マナカーブ的にいらないから」とか「《ヴラスカの侮辱》を使ってくるプレイヤーが多いと思うから」であるならばいいだろう。だが、4枚目を持っていないから3枚しか使わないというのは最悪だ。たとえば「25ドルをケチったせいで勝てたはずのゲームに負ける」なんてバカバカしいと思わないだろうか。「お金をかけずに、デッキの強さを維持する方法はないか?」と何度訊かれたか、もはや覚えてもいないが、はっきりさせておこう。そんな方法はない。
以前はMagic Onlineでカードレンタルサービスがなかったため、カードを使いたいなら買うしかなかった。私はデッキをいつでも変えられるようにカードを買い集めている。カードを借りたくないというのも大きい。レンタルサービスを試した私の友人たちは「気難しいロシア人じゃないんだから、レンタルで十分じゃないか」と口を揃えて言う。だが俺は制約なく自由にプレイしていたい――カードというお金に働いてもらいたいのだ。
プレイポイントの是非を問う
プレイポイントを良く思わない人もいるようだが、プレイポイントは別に悪いものじゃない。ウィザーズは新しいリーグシステムと同時にプレイポイントを導入したが、これを良く思わないプレイヤーたちがいた。そういったプレイヤーは以下の2つのグループに分けることができる。
プレイポイントの導入が気に入らない人たちを2つのグループに分けたが、実は3種類目のグループもあった。a)とb)の両方の反応が合わさったグループだ。「俺は今回の変更で問題ない。勝ちまくるし、プレイポイントも稼ぎまくる。でも参加費が12チケット/120プレイポイントは高すぎる。そんなに払いたくない!」といったようなものだ。
確かにプレイポイントは換金性が良くない場面もある。しかし長期間に渡ってプレイポイントを2,000以上も溜めておけることはほとんどないだろう。リミテッドのイベントに向けて練習しなくてはいけないこともあるだろうし、酒でも飲みながら気軽にドラフトをしたりすることもあるだろう。ここで覚えておいてもらいたいことは、プレイポイントが4桁以下なら問題はないということだ。
カードの集め方
カードを集めていくにあたって、いくつかアドバイスをしておこう。
具体的にグラインディングをどうやっていけばいいか
最もシンプルな回答は「競技リーグに参加する」だ。構築の競技リーグは4種類ある。スタンダード・モダン・レガシー・ヴィンテージだ。
スタンダード
古き良きスタンダードは、ある深刻な問題を抱えていた。デッキ選択で大体勝負が決まってしまうのだ。なんて哀れなことだろうか。いつもやっているのはジャンケンであって、ズルをする余地なんてほとんどありはしない。
また、問題というほどではないが、スタンダードはあるデメリットも抱えていた。環境が非常に遅いことが多いのだ。しかし、スタンダードにもメリットが多いのも事実だ。
モダン
モダンは私が群を抜いて好きなフォーマットだ。デッキ選択に幅があるため、柔軟に対応することができるのだ。そしてさらなる長所として、環境が非常に速く、マッチを駆け抜けるように終わらせることができる。私の1リーグ消化の最速記録は約20分だ。ここは気をつけもらいたい部分なのだが、大きい大会に向けて準備をしているわけではないのなら、モダンにおける最善のグラインディング方法は「アンフェアなデッキを使うこと」だ。楽に速く勝てる。これ以上に望むものはあるだろうか?
問題なのは、メタゲームが日々変化しているということだ。同じことをし続けて勝てるようなものではないのだ。これに対してはシンプルな解決策がある。アンフェアなデッキをもっと用意しておけばいいのだ!個人的には3つあればよいと思う。ひとつは相手を妨害しない速いデッキ(親和や白緑オーラ、バーン)、もうひとつは墓地を使うデッキ(ドレッジやブリッジヴァイン)、そして最後は3ターンキルができるコンボデッキ(ストームや《クラーク族の鉄工所》デッキ)だ。また、ミッドレンジやコントロールも持っておくとよい(ジャンド、マルドゥパイロマンサー、青白系コントロール)。稀ではあるが妨害に弱いデッキばかりのメタゲームなった場合に、こういったデッキは有効な対策カードを使えるのだ。繰り返しになるが、アンフェアなデッキを使うのは勝率を誰よりも高くするためにあるわけではない。「プレイ時間あたりの期待値を最大化すること」にあるのだ。このようなやり方をする利点は明確だ。
しかし、アンフェアなデッキを使う方法にも実はデメリットがある。
メリットとデメリットを話してきたが、メリットの方がはるかに大きいと言っておきたい。Magic Onlineでグラインディングしていくならば、モダンを主戦場とすることをおすすめする。
レガシー
レガシーに関してはあまり語ることができない。リーグに参加している人はあまりいないし、マッチにかかる時間も非常に長い。思っているよりは安く始められるが、デッキを複数持つとなると話は変わってくる。レガシーの経験が豊富ならばレガシーでグラインディングしてみても良いかもしれないが、そうでないなら別のフォーマットを選ぼう。
ヴィンテージ
ヴィンテージも競技リーグ自体はあるのだが、参加人数が100人もいないので、ペアリングに時間がかかりすぎる。論外だ。
グラインディングに最適なイベントは?
ここまでの話だけでも他のグラインダーの人は私に感謝しているかもしれない。だがグラインダーにとって最高のイベントについてまだ話していない。それは、土曜日(日本時間では日曜)に開催されているヴィンテージと統率者戦(1v1)のチャレンジイベントだ。
参加人数はいつも大体45人ほどであり、参加費の還元率は破格だ。なんとトップ32に入れば参加費が返ってくる!ヴィンテージや統率者戦の経験がなくても、カードを集めてプレイし始めよう(ヴィンテージのドレッジならば150チケットで組めるし、トップ8の常連のアーキタイプだ)。ローリスク・ハイリターンとはこのことだろう。気をつけてほしいのは、おいしいのはヴィンテージと統率者戦のチャレンジイベントだけで、それも人数が少ないからだ。他のフォーマットのチャレンジイベントについては平凡な期待値なので注意しよう。
リミテッドのリーグに関しては言及しない。私はプロツアーに向けてやらなければならない身になってしまったが、私自身あまりリミテッドの経験がないからだ。グラインディングという観点でいえば、構築の方が合っている人の方が多いと思う。確かに世の中にはリミテッドでグラインディングしている人もいるが、私はそうではない。
ただ、競技リーグのドラフトをやる大きな魅力がひとつある。それは1位になるとQPが2点もらえることだ。QP35点を手っ取り早く集めたい人にはドラフトがおすすめだ。
まとめ
さまざまなことをお話ししてきたが、おそらくみなさんはプレイングに関する知識の方が多いだろう。こちらに関しては次回の記事で詳しく見ていく。
今回はここで終わりにしよう。今回お話したことはあまり新鮮味がないことが多かったかもしれないが、少しでもお役に立てたなら幸いだ。
ここまで読んでくれてありがとう。Magic Onlineで会おう。
ドミトリー・ブタコフ
この記事内で掲載されたカード
ロシアのプレイヤー。Magic Onlineを主戦場としており、オンラインプレイヤーの中で最強を決める大会である2012 Magic Online Championshipで優勝、翌年の2013 Magic Online Championshipでもトップ4に入賞して注目を浴びる。
2018年には2017 Magic Online Championshipで2度目の優勝を果たし、名実ともにMagic Online上で最強のプレイヤーとして堂々たる実績を残すと同時に、優勝の特典でプラチナレベル・プロとなる。こうした実績が認められ、2018年3月にHareruya Prosへと加入した。