◆総合勝率
順位 | 名前 | 総合成績 | 勝率 |
1位 | 津村 健志 | 12勝3敗 | 80% |
3位 | 齋藤 慎也 | 17勝7敗 | 70% |
3位 | 小林 龍海 | 15勝9敗 | 63% |
参考:津村が計5回のドラフトで選択したギルドはグルール、オルゾフ×2、ラクドス×2
◆3-0アーキタイプまとめ
ドラフト | プレイヤー | アーキタイプ |
【1stドラフト A卓】 | 津村 健志 | グルール |
【1stドラフト B卓】 | 浦瀬 亮佑 | シミック |
【2ndドラフト A卓】 | 齋藤 慎也 | グルール |
【2ndドラフト B卓】 | 津村 健志 | オルゾフ |
【3rdドラフト A卓】 | イパン・アジズ・リーファト | グルール |
【3rdドラフト B卓】 | 小林 龍海 | オルゾフ |
【4thドラフト A卓】 | イパン・アジズ・リーファト | アゾリウス |
【4thドラフト B卓】 | 宇都宮 巧 | ラクドス |
【5thドラフト】 | 岡井 俊樹 | グルール |
【6thドラフト】 | 小林 龍海 | グルール |
【7thドラフト】 | 齋藤 慎也 | 5色 |
【8thドラフト】 | 浦瀬 亮佑 | オルゾフ |
◆ギルド別3-0回数
ギルド | 3-0回数 |
グルール | 5回 |
オルゾフ | 3回 |
ラクドス | 1回 |
アゾリウス | 1回 |
シミック | 1回 |
5色 | 1回 |
◆ギルド別の全体勝率
ギルド | 勝敗 | 勝率 |
グルール | 33勝24敗 | 58% |
オルゾフ | 34勝26敗 | 57% |
ラクドス | 24勝24敗 | 50% |
アゾリウス | 24勝30敗 | 44% |
シミック | 16勝23敗 | 41% |
◆予測と結果
『ラヴニカの献身』ドラフト練習会前に参加者へと環境のトップコモンに関する質問をおこなったところ、概ね3つの答えが返ってきた。《冷気をもたらす者》と《欲深いスラル》と《エアロムンクルス》だ。このうち《冷気をもたらす者》と《エアロムンクルス》を要するシミックは、5ギルド中最上位にくるものと思われた。
しかし、結果から言えばシミックが3-0したのは1stドラフトのみであり、ギルド別の勝率でもダントツの最下位となってしまった。確かにカード単体の強さとカードを使用する環境のミスマッチはあり得る。だが、ここまで予想が覆るのは珍しい。練習会前と後では一体何が変わったのだろうか。
◆トップコモン予測に隠された罠 ~《冷気をもたらす者》と《欲深いスラル》の差~
このカードはトモハッピー(齋藤 友晴)を筆頭に、宇都宮 巧、江原 洸太、浦瀬 亮佑、渡邉 公平と実に多くのプレイヤーから支持されていた。
だがその強さはシミックとアゾリウスの根幹を支えるだけにとどまらず、他のギルドにおけるフィニッシャーとしてタッチされるレベルのカードとなってしまった。特に門のおかげでグルール、オルゾフへのタッチは容易であり、テンポロスをいとわなければ《ギルド門通りの公有地》によりラクドスでも使用可能なのだ。
簡単に言えば、このカードはあまりにも強すぎたのだ。単色であり、青系統のギルドへ参入を決めるレベルのパワーカードは、タッチによる他ギルドの底上げにも通じてしまった。当然遅い巡目でピックする可能性は極めて低く、結果としてシミック、アゾリウスの2ギルドは想定されていたよりもカードパワー不足に悩まされ、大きく勝率を落とすこととなってしまった。
他方、予想と違わない強さを発揮したのは《欲深いスラル》だ。《冷気をもたらす者》と同じく5マナ域であり、ダメージレースを強力に後押ししている。江原 洸太、宇都宮 巧、阿部 倫央、渡邉 公平、平山 怜のお墨付きだ。
同じマナ域でありながら《冷気をもたらす者》との最大の違いは、2色という点だ。同レベルに近いカードパワーを持ちながら、使用ギルドが限られている。いくら門があったとしても、グルール、シミックといった緑系のギルドへのタッチは容易ではない。
《冷気をもたらす者》を失ったシミックは、2種類の強力な5マナ域を要するオルゾフに対抗する術を持ちえなかった。後天的に《欲深いスラル》が使用可能なアゾリスがシミックよりも勝率が高いのもうなずける。
◆正解を探る
では、いったいどのようにピックすべきだったのか。特に複数勝利をあげることができなかった下位3ギルドのボトムアップを図るため、一つずつ可能性を探っていこう。
環境に順応できないシミック ~活路はマナ加速~
トップコモンの項でも語った通り、シミックは厳しい立ち位置となった。《冷気をもたらす者》や《エアロムンクルス》といった強力なフライヤーを要するギルドでも勝ち抜くことはできなかった。
ピックと環境の両面で不利を背負っているシミックは、どこで抜きに出ることができるのか。従来の序盤から殴る攻撃的な構成から一転、マナ加速を多用したランプシミックを作り上げたのが浦瀬だ。
3 《森》
3 《グルールのギルド門》
2 《シミックのギルド門》
-土地 (17)- 1 《フェアリーの決闘者》
1 《賢者街の学者》
1 《縄張り持ちの猪》
1 《エアロムンクルス》
1 《門破りの雄羊》
1 《円環技師》
1 《森の刷毛履き》
1 《激情のエイリンクス》
3 《冷気をもたらす者》
1 《暴れ回る裂き角》
1 《破壊獣》
-クリーチャー (13)-
《成長のらせん》や《シミックのロケット》を使用することでマナ加速をし、序盤の展開の遅れをマナ加速先のカードパワーで押し返す作戦だ。序盤はダメージを受けてしまうものの相手よりもクリーチャーサイズで先に優位に立てるため、サイズ対決でもグルールの《剛力の殴り合い》や《野蛮な一撃》によって一方的な場を作られにくい。ロケットのギルドを変えることでタッチできるカードも増え、デッキパワーの底上げともなる。
またシミックの派生形として門デッキもここで取り上げたい。鈴池 史康とイパン・アジズ・リーファトはギルド門や《成長のらせん》をトップコモンと位置付けており、別軸のゲームに着目していた。
7~10枚程度の門をピックし、タップインによるテンポロスを《成長のらせん》で補う。加速したマナは重いカードへと集約されるがベストパートナーは《門破りの雄羊》や《燃え立つ門》といった強力なアンコモンだ。門の枚数次第では5マナ以上のカードとも対等に渡り合え、これ1枚でゲームコントロールも可能。レアリティこそ高いものの、はまれば非常に強力なアーキタイプだ。
ラクドスマケガタリ
不調が続いたラクドスを何とかできないかとちょうど検討が行われていた。7thドラフトにおいて0-2ラインでラクドスミラーをおこなったトモハッピー(齋藤 友晴) と森山 真秀、そして観戦していた津村 健志と岡井 俊樹の4名だ。
トモハッピーは《槍播き》まで利用し「絢爛」の達成を最優先として《猪の祟神の炎》という突破するためのフィニッシュブローをもち、森山はすれ違いのダメージレースを《反逆の行動》により押し込もうとしていた。
2人のラクドスを見比べるなり、津村は除去の少なさを指摘した。クリーチャーの質はアンコモンレベルでも大差はないため、攻防をコントロールするためにピックするべきは除去であるとのことだった。事実、両名のデッキには軽重含め除去が不足していた。コモンのクリーチャーで押し切るラクドスは弱い。それこそ唯一3-0した宇都宮のラクドスは同じ押し切り系だが、除去と強力なアンコモンを複数枚持っていた。
また、卓一ラクドスが構築できた仮定の元、トモハッピーは自身と森山のデッキを合わせ押し切り系ラクドスの正解を見出そうとしたが、ここでは岡井が難色を示した。2人分のカードを合わせたことで先ほどよりは確実にデッキパワーは上がっているものの、それでも3-0には届かないだろうと。コモンクリーチャーたちだけでは安定して20点削り切るのは難しく、端的に言えば「弱い」とバッサリと切り捨てたのだ。
ラクドスに活路はないのか?そこで最終8thドラフト、津村は果敢な試みを行った。「コントロールラクドス」である。
8 《沼》
-土地 (17)- 1 《脚光の悪鬼》
1 《野生のマーカ》
1 《溶解区のイグナス》
1 《炎樹族の蛮人》
1 《ラクドスの人足》
1 《ヴィズコーパの吸血鬼》
1 《短剣使い》
2 《地下墓地のクロコダイル》
1 《オルゾフの強請り屋》
1 《ギルドパクトのスフィンクス》
-クリーチャー (11)-
軽いクリーチャー同士は相打ちゲームをスローダウンさせ、《的中》といった強力な除去で場をコントロール。ギルドの推す「絢爛」と反するようなデッキだが、結果は2-1と上々のものであった。《ギルドパクトのスフィンクス》や《囚われの聴衆》のような強力なフィニッシャーが必要となるが、ラクドスの進むべき道の一つなのではないだろうか。
アゾリウス ~《厳戒態勢》の限界~
ドラフト序盤に宇都宮、浦瀬が挑戦し、結果を出すことができなかったのがアゾリウスだ。《厳戒態勢》という明確にピックの指針となるべきカードを序盤にピックしつつも、勝ち切ることはできなかった。
通常、この手のパーマネント系のキーカードはサイドボードから対処手段を投入され勝ち切ることができないこともある。しかしこの環境にはコモンで《厳戒態勢》を対処する手段は《日晒し》しかなく、このために成績を残せなかったとは考えにくい。
一つの仮定としてはデッキの完成度とカードパワーの反比例からくるものではないかと思われる。例えば《厳戒態勢》を最大限活かすにはタフネスの高いクリーチャーを多用する必要があり、環境には《評議会の急使》や《大ムンクルス》、《アゾリウスの騎士判事》と相性のいいカードが多数揃っている。しかしこれらは《厳戒態勢》がないと、アタッカーよりは相手のクリーチャーを受け止めるブロッカーとしての側面が大きい。
ゆえに、序盤に《厳戒態勢》を引くことができなかった場合、ダメージレースで不利な展開を強いられる。相手のクリーチャーを受け止めつつもパワーの低さから一方的に打ち取れず、横からすり抜けるクリーチャーたちのダメージにより緩やかな死が待っている。ことグルールやシミック相手には、《厳戒態勢》なしでは直接戦闘をおこなうことすら不可能だ。
それでは、3-0したイパン・アジズ・リーファトのデッキを見てみよう。
7 《平地》
3 《アゾリウスのギルド門》
-土地 (17)- 1 《プテラマンダー》
1 《協約のペガサス》
1 《フェアリーの決闘者》
1 《評議会のギルド魔道士》
1 《迷える思考の壁》
1 《門道の密行者》
1 《債務の聖職者》
1 《評議会の急使》
2 《新プラーフのスフィンクス》
1 《アゾリウスの騎士判事》
1 《のし歩く城塁》
1 《暴風のドレイク》
-クリーチャー (13)-
《厳戒態勢》は1枚あるものの、それに頼りすぎず《新プラーフのスフィンクス》や《プテラマンダー》と飛行クリーチャーを多めに採用し、《思考崩壊》も2枚とコントロール力を高めた構築となっている。
《厳戒態勢》はアーキタイプの核というよりも《踏み荒らし》のようなフィニッシュ手段の1つと認識し、伝統的な飛行クリーチャーと壁役、除去と打ち消しによるコントロールこそが勝利のカギなのではないだろうか。
終わりに
この練習会は『ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019』を見据え、各々の目標へと近づくためのスタートラインだ。ここでの結果が正解ではなく、可能性の一つに過ぎない。
それこそラクドスやシミックのアグロ戦術は練習の余地があり、3~4色デッキの可能性も残されたままだ。『ラヴニカの献身』は発売されたばかり、プロプレイヤーでも未発見の戦略がまだまだあるはずだ。
一つの答えが提示される『ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019』までは、ご自身で未踏の世界の物語を紐解いていただきたい。