Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/9/15)
はじめに
さて、、、前回の記事を読んだ方は統率者戦を始めてみたいと思ってくれたでしょうか?しかし、ひとつ問題があったはずです。そう、始めるにはお金がかかる!!
では、少しお金をかけるだけでかなり良い統率者戦デッキが組めるとしたらどうでしょう?モダンやいつかのスタンダード環境をやっていて、カードコレクションをある程度持っている方なら、すでに所有しているたくさんの高額カードを使って、ワンランク上のデッキを目指せる可能性があります。
おすすめ統率者の評価基準
内容に入る前に、今回5枚のカードを選抜するに当たって設定した基準を解説させてください。あらかじめお断りしておきますが、マジックには伝説のクリーチャーがごまんと存在します。もっと優先して紹介すべき統率者もいることでしょう。それでも、みなさんが初めてデッキを組もうというときに部分的にでも参考にしていただければ、私としては本望です!
5位:《鍛冶の神、パーフォロス》
私の感覚では《鍛冶の神、パーフォロス》は「手に入りやすい」といえる範囲の上限価格ですが、マジック歴が長い方なら過去のスタンダード資産のなかにすでにあるかもしれません。
2点ダメージは各対戦相手に飛び、破壊不能は高い除去耐性になります。このデッキの魅力は、替えの利くカードが多く、以下のようなゴブリンを並べる呪文を入れていくだけでも形になることです。
以下の3枚は、とても楽しく、心から採用をおすすめしたいカードです。
《血染めの月》や《月の大魔術師》を入れるかどうかはご自身で判断しましょう。採用しないにしても、そういった選択肢があることは覚えておいてください。
無限コンボ
《鍛冶の神、パーフォロス》を統率者にするなら、以下の3つのようなコンボを組み込めます。
《鏡割りのキキジキ》+《士気溢れる徴集兵》
《鏡割りのキキジキ》と《士気溢れる徴集兵》のコンボは、それぞれのパーツが単体でも強いのが大きな魅力です。
《にやにや笑いのイグナス》+《鍛冶の神、パーフォロス》+《遁走する蒸気族》
《にやにや笑いのイグナス》は単体でも悪くないマナ加速になりますが、《鍛冶の神、パーフォロス》と合わせれば超強力。2ターン目に出す《遁走する蒸気族》も単体で申し分ないパワーがあります。
《二重詠唱の魔道士》+《双つ身の炎》
《二重詠唱の魔道士》はカードとしても強いですし、コンボも下準備なく唐突に決められるのが良いですね。
あとはマナアーティファクトやゴブリンのロードクリーチャーでデッキの枠を埋めましょう。これでもう完成です。
単色のデッキですから、マナベースは《山》を中心に、トークンを並べる特殊土地を添えれば問題ありません。
4位:《贖いし者、フェザー》
ひと昔前のスタンダードにも《贖いし者、フェザー》デッキありましたよね?あれとほぼ同じです。ただ、統率者戦なら《贖いし者、フェザー》を3ターン目に出せることが約束されています。
私が思うに、このデッキは大きく3つの要素に分けられます。
(1)追加のシナジークリーチャー
《贖いし者、フェザー》が3ターン目に出せるとはいえ、統率者戦では対戦相手の数が多くなります。呪文1枚1枚からより大きな価値を引き出すことがとても大切です。
(2)アドバンテージを稼ぐ呪文
《贖いし者、フェザー》の効果を活かし、手札を増やせる呪文です。クリーチャーを対象にとり、1~2マナであり、キャントリップがついてくる呪文であれば、デッキに入れてまず問題ないでしょう。
(3):強化呪文
このカテゴリーは、相手を早く倒すためだけに採用されたカード群です。《果敢な一撃》などもクリーチャーのサイズを上げますが、以下のような呪文のほうがより殺傷能力が高くなります。
念のため言っておきますが、統率者ダメージなら21点でプレイヤーを退場させられます!
無限コンボ
ボロスカラー特有のコンボは知る限りでありませんが、赤が含まれているので《鍛冶の神、パーフォロス》デッキと同じコンボが使えます。
マナベースに関しては、フェッチランドからショックランドをサーチするのが理想的ですが、1マナ域が少ないデッキですから《ボロスのギルド門》のようなタップイン土地を多めにしてマナベースを整えることもできます。
このデッキにはマナアーティファクトを入れたいと思いませんが、各種モックス(《金属モックス》《モックス・アンバー》《モックス・ダイアモンド》)を持っている場合ならその限りではありません。
最後に、このデッキなら《神の怒り》系のカードを入れることをおすすめします。破壊不能を付与する呪文が多く採用されているため、相手のクリーチャーだけを破壊できるためです。ただ、 《陽光の輝き》は破壊不能を付与しなくても《贖いし者、フェザー》を破壊しない優れモノです。
3位:《最高工匠卿、ウルザ》
ウルザ、ウルザ……。この統率者を使うとみんなに冷たい目で見られるかもしれません。グループ内で《最高工匠卿、ウルザ》を使っても問題ないか確かめると良いでしょう。この統率者は本当に強いですからね!
ただ、このデッキをちょっと”えこひいき”している節があるのは確かです。というのも、《最高工匠卿、ウルザ》が登場したころにモダンでデッキを組んでいたことから、《オパールのモックス》や《最高工匠卿、ウルザ》本人といった高額かつデッキに合うカードを持っていたのです。
さらに、1枚しかないコレクションのなかに、このデッキにピッタリな高額カードがたまたま何枚かあったというのもあります。《求道者テゼレット》《サイクロンの裂け目》《リスティックの研究》《基本に帰れ》《サファイアの大メダル》《メムナーク》などですね。
包み隠さず言えば、こういった強力なカードを持っているに越したことはありません。とはいえ、お金をたくさんかけずとも、しっかりと回るウルザデッキを組むことは可能です。
無限コンボ
ウルザデッキは《劇的な逆転》+《等時の王笏》+《最高工匠卿、ウルザ》の超強力3枚コンボがあります。
この強力コンボはぜひ搭載したいところですし、コンボの安定化を図るカードもあわせて採用すると良いでしょう。コンボパーツを集めるカードはお手頃なものが多く、たとえばこんなものがあります。
《最高工匠卿、ウルザ》の能力の関係上、アーティファクト関連のテーマは自然とフィットします。以下に掲げたカードはお財布に優しいうえに、とても楽しいウルザデッキを作り上げてくれます。
コンボパーツを集めるうえでサーチ呪文を採用することから、アーティファクトによるヘイトカードを採用することもできます。
さらなる対策カードとして、《基本に帰れ》《静態の宝珠》《冬の宝珠》などを採用する選択肢もあるので覚えておくと良いでしょう。グループ内でこういった対策に理解があるかどうかはみなさんで判断してください。
あとはたくさんのマナアーティファクト、若干の妨害呪文を入れればデッキは完成です。ただし、統率者の固有色が青のみですから、「印鑑」や「タリスマン」は採用できないので気をつけましょう。それでも選択肢は豊富ですのでご安心ください。
今回のおすすめ統率者の1体に《最高工匠卿、ウルザ》を入れようと思ったひとつの理由は、このデッキを強化するカードのなかには、「決してお財布には優しくないけれど統率者戦で定番の強力なカード」があるからです。
高速のマナ加速をするアーティファクト(《魔力の櫃》《魔力の墓所》《モックス・アンバー》《金属モックス》)、ピッチカウンター(《意志の力》《否定の力》)、《マナ吸収》、《激情の後見》、《謎めいた命令》、《大魔導師の魔除け》などなど。これらはどれも高額ではありますが、将来的に青の統率者デッキを組もうと思ったときに必ず使えるカードです。
2位:《虎の影、百合子》
まだ統率者戦を遊んだことがないのであれば、《虎の影、百合子》を持っていないかもしれませんね。でも、その値段を見てください!とっても安くないですか?!
囮役
この統率者が本当に良いなと思うのは、回避能力を持った格安の1マナ域を15~20枚採用さえしていればデッキが回ることです。例として私が採用しているものを紹介しましょう。
「上忍術」の条件を達成するクリーチャー(囮役)を決める際は、自分が使えるマナベースを考慮しましょう。フェッチランドからショックランドをサーチするマナベースにできるなら、1ターン目に青マナ、2ターン目に青黒マナを揃えることができるはずですから、囮役を2マナにするのはもったいないですよね。2マナ域を採用したくなったとしても、別の1マナ域の採用を検討してみてください。
それに対して、《ディミーアのギルド門》のようなタップイン土地でマナベースを安定させるなら、《悪意の大梟》《サラカスの予見者》《物知りフクロウ》などのアドバンテージを生む囮役が候補になります。フェッチランド+ショックランドなしで《虎の影、百合子》デッキを組みたいなら、私見ではありますが、まず囮役に投資すべきだと思います。
忍者
そして、忍者パッケージは必須です。
《逆嶋の学徒》は《虎の影、百合子》デッキ専用のカードとしては高い部類ですが、その値段にふさわしい価値があると思います。《鬼の下僕、墨目》《月刃の忍び》《大牙の衆の忍び》は個人的にはあまり好きではないですが、もっと忍者テーマに寄せるために使いたいという場合は採用しても良いでしょう。
好きな要素を組み合わせる
上記以外の部分は本当にたくさんの選択肢があります。それぞれから好きなものを組み合わせることもできます。
《虎の影、百合子》のダメージ効果を上げる
《ドラコ》《ちらつき蛾の注入》など高マナのカードとあわせ、それらを積み込む《巻物棚》や《師範の占い独楽》を採用するパターン。
額面上のマナコストは高いものの、軽く唱えられるものもあります。こういったものなら、《虎の影、百合子》の大当たりを狙いつつ、手札から唱えることもできますよ。
コンボ
コンボ要素を強め、忍者をドローエンジンとして使うパターン。
《Demonic Consultation》と《タッサの神託者》によるコンボです。それぞれのコンボパーツの実質的な枚数を増やすために《汚れた契約》と《神秘を操る者、ジェイス》を採用することもできます。ただ、《汚れた契約》を採用するときは基本土地も1枚ずつしか使えないので気をつけましょう。
《汚れた契約》で1枚しか採用できない制約のなかでも、氷雪土地や《水辺の学舎、水面院》、《雲の宮殿、朧宮》、《セファリッドの円形競技場》、アーティファクト土地などを使えばマナベースを組むことは可能です。
また、《最後の審判》と《タッサの神託者》のコンボも入れられます。即死コンボではないものの、《最後の審判》で積み込めば《タッサの神託者》で勝つことは難しくありません。たとえば、《通りの悪霊》の「サイクリング」と《思考掃き》から《タッサの神託者》を出すなどすれば勝てます。
囮役の活用
個人的に《虎の影、百合子》デッキにおすすめできるカードはほかにもあります(採用する場合は2~5枚が適正です)。
デッキ内に多く含まれる、回避能力持ちの1/1クリーチャーに価値を持たせるカードたちです。私は《秘儀での順応》と《仮面林の結節点》を選んでいますが、とっても楽しいですよ!
追加ターン
《Time Walk》系を採用するパターンです。なかには非常に高額なものもありますが、《カーンの経時隔離》《アールンドの天啓》《時間の熟達》など、比較的安いものも存在します。
このようにさまざまな要素を組み合わせられるデッキですが、私としてはコンボを入れずに、各要素を少しずつ入れる構成が好みです。
自分のデッキはピッチカウンターや各種モックスで最適化してあります。戦闘でしか勝たないデッキだと仲間には伝えていますが、戦闘だけでもとても効率よく勝てるようにしてあるのです!
1位:《パルン、ニヴ=ミゼット》
さて、とうとう条件を全て満たすデッキのお出ましですよ!
このコンボはドローを挟むものであるため、各対戦相手のライフ合計が自分のライブラリーの枚数以下である必要があります。ライブラリー初期枚数99枚に対して、対戦相手はそれぞれライフ40点のスタートですから、別の勝ち筋を1つか2つ用意しておきましょう。たとえば、みんな大好き(あるいは嫌いな)《タッサの神託者》とかですね!
《最高工匠卿、ウルザ》のようにアーティファクトをコンセプトにしても良し、呪文をテーマにしても良し、全体除去や打ち消しによる純粋なコントロールにすることもできます。ドロー呪文や妨害呪文にも豊富な選択肢があります。
低予算でありながら、デッキとしての完成度が高いものから遊び始めたいというのであれば、私は《パルン、ニヴ=ミゼット》がベストだと思います。デッキを強化したくなったら、高額なカードは統率者戦の定番カードだけで済みます。そして購入したそれらのカードは今後もほかのデッキで使えるものですから、非常に良い買い物にもなるでしょう。
この記事を読んで、統率者戦の第一歩を踏み出していただければ幸いです。
ではまた次回お会いしましょう!
ゴンサロ・ピント(Twitter)