トップ8デッキリスト雑感

晴れる屋メディアチーム

By Takumi Yamasaki

 16回戦にも及ぶ長いスイスラウンドを終え、”栄光の優勝”を求めて争う8人が決定した。

 様々なデッキが存在する中で、トップ8のデッキ分布には予想を裏切られたという人も多いのではなかろうか。

 今回トップ8に残ったのは「白単タッチ赤アグロ」2名「ボロス・アグロ」4名「イゼット・ドレイク」1名「ジェスカイ・コントロール」1名という結果となった。そう、見渡すと6名もの白系のアグロデッキがトップ8を支配していたのだ。

 驚くべきはメタゲームブレイクダウン最も使用者の多かった「ゴルガリ・ミッドレンジ」の姿がないことだ。環境初期から猛威を振るっていたこのデッキは、参加者全員の仮想敵の一つとして意識されていたことは間違いない。

殺戮の暴君トカートリの儀仗兵不滅の太陽絶滅の星

 最近の傾向として「ゴルガリ・ミッドレンジ」は《殺戮の暴君》を用いたミラーを意識した構成になっていたり、ミラー以外のデッキでは《トカートリの儀仗兵》《不滅の太陽》《絶滅の星》など以前まで使われたことのなかったカードにスポットが当たり、結果「ゴルガリ・ミッドレンジ」はあらゆるデッキから包囲されることになった。事実トップ8の白系アグロのサイドを覗いてみると、《トカートリの儀仗兵》が合計で16枚採用されていたりと、勝ち抜くのは容易ではなかったのかもしれない。

 それではまず、今回の”勝ち組”である3名の「ボロス・アグロ」を見ていこう。

ボロス・アグロ

癒し手の鷹ベナリア史英雄的援軍

 前環境でのアグロデッキと言えば《熱烈の神ハゾレト》率いる「赤単アグロ」であったが、今環境は違うようだ。

 それぞれ細かな採用枚数は違えどほとんど同じリストで、赤を入れて《英雄的援軍》を採用しているのが「ボロス・アグロ」の特徴だ。1枚でトークン生成と全体強化を兼ねるこのカードの突破力は凄まじく、《ベナリアの軍司令》と組み合わされば更なる威力を発揮する。

ゴブリンの扇動者

 Jeremy Dezani選手のリストには《ゴブリンの扇動者》が採用されており、より横並び戦略に特化し《英雄的援軍》の力を引き出す構成となっている。

白単アグロ

短角獣の歩哨敬慕されるロクソドン実験の狂乱

 こちらは「白単タッチ赤アグロ」だ。メインに赤いカードはなくサイドからの使用にとどめられている。

 「ボロス・アグロ」との違いは《英雄的援軍》を用いる代わりに《敬慕されるロクソドン》が採用されているところだ。展開しながら「召集」により自身のクリーチャーを強化しながら登場し、盤面をより強固に築くことができる。

 アグロデッキ使用者のサイドボードに目を向けると、全てのデッキに《実験の狂乱》が採用されている。このカードの稼ぎ出すアドバンテージは凄まじく、デッキの構造上軽いカードがほとんどであるため、連続してプレイしやすくあっという間に盤面を制圧してしまう。

 アグロデッキの弱点となる息切れをカバーし、勝利に直結するキーカードだ。

 Channel Fireball総帥、Luis Scott-Vargas選手のリストは他のリストと違い独特な構成になっている。

レオニンの先兵アジャニの群れ仲間

 中でも目を引くのは《レオニンの先兵》《アジャニの群れ仲間》だろう。ライフゲイン要素を取り入れ、《軍団の上陸》《癒し手の鷹》を含め1ターン目から絆魂クリーチャーを展開し、《アジャニの群れ仲間》を序盤から育てていく。

 同型ではライフゲイン要素が多い分、ダメージレースを有利に運びやすく、決勝ラウンドでアグロデッキが多いことを考えるとLuis選手が一歩リードしているかもしれない。

イゼット・ドレイク

 さて、一通りアグロデッキの紹介を済ませたところで、日本が誇る殿堂、渡辺 雄也選手が選択した「イゼット・ドレイク」を見てみよう。

急進思想弧光のフェニックス航路の作成

 『ラヴニカのギルド』から《弧光のフェニックス》が登場し一躍メタゲームの上位に躍り出ることになったこのデッキは、軽量ドロースペルでデッキを回転させ、《弧光のフェニックス》《弾けるドレイク》《奇怪なドレイク》などで相手を攻め立てる。

 しかし、序盤にドロースペルなどで準備が必要になるこのデッキは、アグロデッキの猛攻を捌くことが苦手な傾向にあるので、それらの多い決勝ラウンドでは渡辺選手にとって厳しいフィールドになるだろう。

ジェスカイ・コントロール

(※編注11/12:《ドミナリアの英雄、テフェリー》を追加しました。)

 最後にトップ8唯一のコントロールデッキを紹介しよう。

ドミナリアの英雄、テフェリー轟音のクラリオン発展+発破

 歴代のプレインズウォーカーの中でも最強クラスとされる《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使用したコントロールは、以前として強力だ。

 今回の決勝ラウンドでは、いかにアグロデッキに対して効果的な《轟音のクラリオン》をいかに引き込めるかが重要になってくるだろう。

 気を付けたいのはコントロール・キラーとされる《アダントの先兵》だ。一度場に出てしまうと処理が非常に困難で、Wilson Mok選手のリストにはメインに追放除去が採用されておらず、《弾けるドレイク》で止めたり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》でデッキに戻したりと限られた手段でしか対処できない。このアグロだらけの決勝ラウンドを切り抜けることができるか注目である。


 さて、これでトップ8デッキリスト雑感は以上だ。今回のプロツアーは誰も想像できない白系のアグロが上位を埋め尽くすこととなったが、メタゲームの移り変わりというものは本当に早い。仮定の話に過ぎないが、もしも来週末にもプロツアーが開催されるとしたら今回とはまったく異なる結果になっているのだろう。

 今回活躍した白系アグロも、明日以降には”都落ち”しているかもしれない。「ゴルガリ・ミッドレンジ」が結果を出せなかったように、このプロツアーの結果を受けてメタゲームはまた新たに変化していくのだ。

 現在のスタンダードはまさに「多様性」を体現するかのような様相で、さながらモダンのようだという声もある。これからのスタンダードのメタゲームの変化からもまだまだ目が離せない。