【マジック対談】「15年ぶりのプロツアー出場」平林 和哉と「プロツアーを夢見る青年」きたしま

晴れる屋メディアチーム

晴れる屋のスタッフ、平林ときたしま。

6月、『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』にて、「孤高のデッキビルダー」こと晴れる屋の平林 和哉が優勝した。

人物紹介:平林 和哉

マジック歴29年、TC東京の立ち上げ当初から晴れる屋に関わってきた重鎮。10年前は晴れる屋で記事も書いていた。それらの記事はコアな人気を獲得しており、復帰も望まれる。豊富なマジックキャリアと屈指の理論派として知られるプレイスタイル、メタゲームに合わせた独自のデッキ構築術に定評があり「孤高のデッキビルダー」の異名を取る。

■主な戦績

マジック・スポットライト:FINAL FANTASY 優勝
『グランプリ北九州・07』 ベスト8
『プロツアーサンディエゴ04』 9位
『グランプリ岡山04』 ベスト8
『グランプリ仙台01』 準優勝
『The Finals00』 ベスト8

優勝により手にしたものは、悲願の初タイトル。賞金約150万円。そしてーープロツアー『久遠の終端』への参加権利

平林がプロツアーに出場するのは15年ぶりのことだ。

時と会場を同じくして、懸命にマジックをプレイする一人の青年がいた。平林が優勝した大会に、彼も出場していたのだ。

彼の名は「きたしま」。平林同様、晴れる屋のスタッフであり、マジックプレイヤーであり、そしてーーいまだ届かぬ、「プロツアー出場」を夢に見ている

人物紹介:きたしま

晴れる屋商品管理チームスタッフ。高校3年の冬に『ワールド・マジック・カップ2017』を見てマジックの魅力にのめり込む。現在、競技マジックに挑戦する様子を記事にした「きたしまの『プロツアーへの道』」を連載中。

きたしまはこれまで、プロツアー出場を目指して戦う様子、挑戦の軌跡を、「自身の物語」として文字に起こしてきた。それがきたしまの『プロツアーへの道』という連載になった。

勝っても負けても、その歩みを発信し続けたのだ。喜びや落胆、さまざまな感情と共に。

ーーしかし、『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』出場後、彼のレポート記事が掲載されることはなかった

8月。我々、晴れる屋メディアチームは2人を対談させるために、会社の会議室にて引き合わせた。

今月、プロツアー出場のためにアメリカはアトランタの地へと飛び立つ平林に、メディアチームから贈りたい言葉はたくさんあった。

祝福、賞賛、激励。そういったものをあらわす言葉の数々だ。

一方で、きたしまはここ数ヶ月、競技マジックで負け続け、意気消沈している

彼が連載する記事の更新が途絶えたのも、そのせいだ。

「負けたことは気にするな」「次がある」「そのうち勝てる」

当たり障りのない言葉を投げることは簡単だ。だが、競技マジックに参加しない我々が、競技マジックで思い悩む彼に、どんな言葉をかけられるというのだろうか

……もとより、我々に傷心のきたしまを鼓舞するパワーもない。競技プレイヤーとしての先輩、平林に託すより、ほかになかった。

マジックを愛する2人、プロツアーへの想い。

きたしま君の記事、読んでるよ

え!そうなんですね、ありがとうございます。

……本当は『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』のレポートも書くつもりだったんです。でも、負けすぎて、どんなことを書けばいいのかもわからなくなって。

うん。記事のことは気にしないほうが良いよ。「負けレポート」なんて、よほど慣れているプレイヤーじゃないと書けないから。

メディアチームのプロデュースの仕方にも責任があることだから、連載に穴をあけたことは一旦、気にしなくていい。

……はい。

……だいぶ落ち込んでいるみたいだけど、そもそも、なんでそんなにプロツアーに出たいの?きたしまくんのエネルギーは、どこから来ているものか教えてくれる?

プロツアーに出たい理由、ですか。元々はマジックをまったく知らなかったときに知り合った友達から、「ティーチング・キャラバン」への参加を誘われたのがきっかけです。

まだ、マジックがどんなゲームかも知らない僕に、友達がかなりの熱量で競技マジックのすごさを伝えてくれたんですよ。

ふむふむ。

そのとき、友人が教えてくれました。マジックには“Play The Game, See The World”という理念があると。

“Play The Game, See The World”

マジック:ザ・ギャザリングの基本理念の一つ。

ゲームを通じて世界中の人々と交流し、視野を広げることを意味する。「マジックの大会やイベントに参加することをきっかけに、世界中を旅しながら、旅先で出会った人と交流をする」という経験は人生をより豊かにする、という考え方。

その理念を実現するために、マジックでは競技シーンがすごく盛り上がっていると聞きました。(当時は)プロツアー・ポイントという制度があったり、勝って大会に招待されることで航空券が用意されて、世界に羽ばたくためのルートが確立されている、ということを熱弁されたんです。

その熱に当てられ、ティーチング・キャラバンに参加したのが僕のマジックのはじまりです。

あ、その流れで向かった先がティーチング・キャラバンだったんだ?なかなかユニークなパターンだね、それは。

それがきっかけで競技マジックに興味を持ち、僕が高校生のときには八十岡 翔太さんや原根 健太さんが『ワールド・マジック・カップ2017』に出場していて、徹夜で配信見ながら応援していました。

それからはアーカイブでプロツアーの動画を見たり、すっかり競技マジックに魅了されました。かたっぱしからプロプレイヤーたちのTwitterをフォローして、強い憧れを持つようになったんです。

世界各地でプロツアーが開催されるたびに、みんなで海外に飛んで、現地で合宿しながら練習しているのを見て、「自分もいつかプロツアーに参加したい!」と思うようになったんです。

めちゃくちゃプロに憧れているんだね。じゃあ、今でもプロツアーに出たいという気持ちは変わってない

……1年前なら、「はい」と即答していました。でも、最近は「本当に行きたいのか?」と自分で自分を信じられない気持ちになっています。

なるほどね。負けが続いて、完全に自信を失っちゃっているんだね。でも、それは競技にコミットできている証拠だよ。

そこまで思い詰めるのは、勝ちたいっていう気持ちが強いからだね。真剣に向き合っているからこそ、勝てないことに思い悩む。これはプロツアーに行きたい気持ちの裏返しだと思うよ。

……なるほど。

今、きたしまくんに気持ちが乗っていないのは、「プロツアーに出られるかどうかが怪しくなってしまっている」からだと思う。

勝つためにはどうすればいい?

どうしたら勝てますかね?

アドバイスできることはたくさんあると思うけど、自信を完全に失った人を勝たせることは難しい。とにかく、自分が勝てるイメージをすることって大事なんだよね。

「そんなことわかってる」って思うかもしれないけど、スポットライトとか地域チャンピオンシップ(日本ではチャンピオンズカップファイナル)ともなると、それなりに勝ちたい気持ちが強い人たちが集まってくるわけで。

きたしまくんがそこで勝つためには、なにかで対戦相手を上回り、秀でないといけないんだ。

僕が対戦相手より秀でているもの……。うーん。

メタゲーム上、優位なデッキを選ぶとか、練習をたくさんするとか、しっかり調整をするとか。

それなんですよ。自分は練習するといっても、ひとりでMTGアリーナやMOをプレイするぐらいで、特定のデッキと何戦やるとか、そういったマッチアップの練習もできていなくて。上質な練習ができていないと感じるんです。

ふむふむ。

実際、大会に出てみると、結構な割合で名の知れた強豪プレイヤーと対戦するんです。この人は〇〇さんと練習している人だ、この人は〇〇コミュニティの人だ、とか。

「この人は僕よりも上質な練習をしているんだろうな」とか考えだすと、戦っている最中に相手の背中からオーラみたいなものが出てきて、急に自分が小さくなったように感じて、プレイも縮こまったり。

自分なんて、適当にプロが使って勝ったデッキをネットで見つけてコピーして、「自分流に少しアレンジする」ぐらいのことしかしていなくて。デッキ相性の分析もなければ、明確なサイドボードプランもなく、勝てるわけないな、とか考えてしまって。

……まぁ、それはわかるんだけど、結局、きたしまくんはどうしたいの?????

え?

コミュニティに属したほうが有利だと思っているのなら、どこかのコミュニティに入りたいの?それとも、1人で練習して勝てる方法を考えたいの?これって覚悟の問題なんだよね。

きたしまくんの場合、勝つための明確な指針がないから、「自分は不利な状況でマジックをしている」って気持ちに勝手に苛まれちゃっているんだと思う。

……なるほど。

まぁ、話を聞く限りは一人で漠然と練習を続けることが精神的な負担になっているみたいだね。とりあえず、調整相手を探す方向で模索してみたらいいんじゃない?お試しでいろいろやってみれば良いと思うよ。

調整相手を見つけよう!

先ほど、プロプレイヤーに憧れている、という話をしましたが、自分はマジックをやっている人と仲良くなりたいんじゃなくて、「仲良い人と一緒にマジックやりながら登りつめたい」ってずっと考えていて。

実は今、そこで悩んでいるんです。

え?そうなの?

実は仲良い友達と一緒に練習できなくもないんですが、僕らだけで練習してていいのかなって。彼とのマジックは楽しいんですが、自分たちより強い人と練習しないと勝てるようにならないのでは、と。

それもわかるよ。面白いテーマだよね。

俺も元々は地方勢だから、一緒にやる相手がそもそも選べなかった。それでも、当時、年に4回とかグランプリを一緒に回るような友達がいてね。

思えば、彼のプレイスタイルは競技に傾倒するプレイヤーとして疑問なレベルで、マジックの実力も釣り合ってはいなかった。でも、俺にはとにかく調整相手が必要だったからね。

もしかしたら、当時でも探せばもっといい練習相手はいたのかもしれない。でも、「一緒に付き合ってくれる相手とマジックやりたい」って思ったから、彼の存在もすごく大切だったね。

その友達は、今もマジックを続けていますか?

いや、やめちゃったね。やっぱり温度差があると、長続きはしないよね。

ただ、パートナーをマジックのレベルの高さだけで比較するのって不毛じゃないかな。だって、極論を言えば、「プロプレイヤーと一緒にやらない練習は意味がない」とか、そういう話に及ぶからね。

ただ、思ってることをなんでも言い合える仲じゃないと調整相手にならないからね。今のきたしまくんは一人で競技マジックに取り組むことに不安を感じているから、意見交換できる相手がいるだけでかなり改善されると思う。

わかりました!友達に相談してみます!

勝利のメソッドを手に入れろ!まずは成功体験を積み重ねること。

あとは、勝つために自分なりのメソッドを確立させたほうが良いよ。

メソッドとは

特定の目的を達成するための手順や方法を体系的にまとめたもの。

メソッドの確立ですか。そもそも、自分には成功体験がほとんどないので、特定のメソッドというのは思いつかないですね。

それは勝因分析ができていないからだね。わりと陥りがちな良くないところだよ。反省とかネガティブフィードバックだけじゃなくて、同じぐらいポジティブフィードバックが大切なんだ。

きたしまくんが前にエリア予選を抜けたとき、本当はもっと勝因分析をするべきだったんだ。「取り組みとして良かったところ」「継続していきたいこと」をちゃんと探せていたら、自分の強みをもっと見つけることができたかもしれない。

負けたときのほうが勉強しやすいのは確かなんだけど、勝ったときのことはもっと明確に覚えておくと良いよ。

なるほど。僕は勝因分析が足りていませんでした。

今、勝率どれくらいなんだっけ?

ここ最近は30%……もしかしたら20%とか……

いいじゃん。伸びしろしかないじゃんまずは勝率50%を目指してみたらどう?

そもそも、このゲームはめちゃくちゃ負けるときってあるよ。

俺もドラフトで10連敗したことあるし。途中からどんどん自分の決断に自信がなくなって、ピックするカードとか、ゲームのプレイ選択ができなくなっちゃう。プレイが縮こまっていくんだよね。

……そうですか。平林さんでも、そういうときはあるんですね。

負けが込み過ぎると、辛いよね。

ただ、気がついたんだけど、どんなに負けが続いたとしても、スランプを脱出するときはマジックをやるしかないんだよね。やらない限り、勝たないからね。

やらない限り、勝たない……たしかに。

そして、俺の経験上、このゲームは実戦に勝る練習がない。昔なんて金はかかったけど、グランプリで勝つためにグランプリに出場して練習してたからね。

チャンピオンズカップファイナルで勝つのは大変だと思うけど、まずは予選を含めて数をこなすことだね。踏んだ場数は多ければ多いほうがいい。

挑戦あるのみですね。頑張ります!

勝率30%から50%にアップしたら、驚異的な成長だよね。そしたら、その成功体験をもとに勝因分析ができる

そしたら、また次の目標を決められますね。

うん。そんな感じでいいんじゃないかな。

きたしまがやるべきこと、まとめ

☆調整相手を見つけて、意見交換をしよう。
☆自分なりに勝つためのメソッドを確立しよう。
☆勝因分析・ポジティブフィードバックをちゃんとやろう。
☆とにかく、場数を踏もう。

☆目標:勝率50%!チャンピオンズカップファイナル本戦出場!

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