はじめに
みなさん、こんにちは。
今年もアメリカ、ヨーロッパ、日本で『Eternal Weekend』が開催されますね。テーブルトップのレガシーで最大規模のイベントなので、レガシー好きの方はぜひお見逃しなく。
さて、今回の連載では『BIG MAGIC Open Vol.14』と『Legacy Showcase Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『BIG MAGIC Open Vol.14 Legacy #1』 -やはり最後まで勝ち残るのはディミーア-
開催日:2025年8月9日
優勝 ディミーアテンポ
準優勝 ディミーアリアニメイト
トップ4 ディミーア忍者
トップ4 エルドラージ
トップ8 イゼットマークタイド
トップ8 ディミーアリアニメイト
トップ8 ディミーアリアニメイト
トップ8 青単デルバー
国内で行われた『BIG MAGIC Open Vol.14』ですが、今回は2日連続の開催でした。
今大会のプレイオフはトップメタのディミーアリアニメイト、ディミーアテンポ、ディミーア忍者など、青黒系のデッキが強い現環境のレガシーらしい結果になりました。
ディミーアテンポ
初日のイベントで優勝したのは、《古えの墳墓》を採用したディミーアテンポでした。
《古えの墳墓》を採用し、《バロウゴイフ》や《食糧補充》といった3マナスペルをメインから採用したバージョンはMagic Onlineのリーグなどでも見られましたが、大型のイベントで結果を残したのは今回が初でした。
☆注目ポイント
《古えの墳墓》を採用することで3マナ域のカードに繋げやすくなり、《目くらまし》などもケアしやすくなっています。テンポデッキにとって2点ダメージは痛すぎることもありますが、《バロウゴイフ》の絆魂で補うことができます。
《食糧補充》でアドバンテージを稼げるので、フェアデッキに対しても強くなっています。《古えの墳墓》の枠を確保するために《不毛の大地》の枚数が削られており、《ウルザの物語》や《イス卿の迷路》などを対処できるように必要最低限の2枚採用になっています。
スタンダードでも大活躍している《悪夢滅ぼし、魁渡》は、レガシーでも優秀なカードとして定着しています。
「忍術」はカウンターされないため青いデッキに強く、除去耐性があり《濁浪の執政》などフィニッシャーを止めつつ、アドバンテージも確保できます。《オークの弓使い》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》といった軽いクリーチャーを多用するこのデッキでは、忍術コストにも困りません。
サイドにはコンボ対策に《攪乱のフルート》や《虚空の杯》、トークン対策に《漸増爆弾》などが採用されています。《古えの墳墓》のおかげで、1ターン目からプレイしやすくなっているのもポイントです。
イゼットテンポ
イゼットテンポは《探索するドルイド》や《秘密を掘り下げる者》を採用した伝統的なものから、《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《もみ消し》を採用したバージョンなど、プレイヤーによって個性が出るデッキになります。
《コーリ鋼の短刀》を採用したバージョンはキャントリップでデッキを回しつつ、軽いクロックと火力でライフを押していくことに特化しています。
赤いテンポデッキは構成上《バロウゴイフ》の対処が困難ですが、リアニメイトデッキの場合は《再活性》が主なリアニメイト手段になるため、一気にライフを削り切ることも狙えます。
☆注目ポイント
ディミーアリアニメイトが環境に多いため、メインから墓地対策を採用する傾向にあります。ディミーアテンポは《虚無の呪文爆弾》が使えますが、このデッキでは《魂標ランタン》が採用されています。
《魂標ランタン》は墓地対策として使用する場合はキャントリップできませんが、メインから使えるリアニメイト対策で軽いスペルなので《コーリ鋼の短刀》の誘発にも貢献し、アーティファクトが墓地に置かれるので「昂揚」の達成にも役立ちます。
『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』からのカードも見られます。《オペラ劇場のラブソング》は《探索するドルイド》のように使えるアドバンテージ源で、パンプスペルとしても使えます。《コーリ鋼の短刀》の効果によってトークンが並ぶことも多く、モンク・トークンは果敢持ちなので最後の一押しに使えます。
また、天敵である《バロウゴイフ》を意識して《邪悪な熱気》がメインから3枚と多めに採られています。
サイドに採用されている《メテオストライク》は、《削剥》のようなカードでソーサリーですが、追放除去なので《一つの指輪》なども処理できます。
《過酷な指導者》は面白いチョイスです。追加のクロック兼ヘイトベアーで、起動型能力を多用するナドゥとのマッチアップで活躍が期待できます。
『BIG MAGIC Open Vol.14 Legacy #2』 –《再活性》と《古えの墳墓》–
開催日:2025年8月10日
優勝 ディミーアリアニメイト
準優勝 ディミーア忍者
3位 The Spy
4位 ディミーアリアニメイト
5位 エルドラージ
6位 赤単プリズン
7位 エルドラージ
8位 ディミーアリアニメイト
2日目の『BIG MAGIC Open Vol.14』は、トップメタのディミーアリアニメイトのほかに、エルドラージ、赤単ストンピィといった《古えの墳墓》デッキが中心でした。
優勝したのはディミーアリアニメイトでしたが、同じディミーアの中でもニッチな部類に入る忍者が準優勝と好成績を残していたのは要注目です。
ディミーア忍者
ディミーア忍者は《羽ばたき飛行機械》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》といった軽い回避能力持ちのクリーチャーで攻撃し、《虎の影、百合子》や《巧妙な潜入者》といった忍者を「忍術」で戦場に出すアグロコントロールです。
青黒系のデッキなのでカウンター、除去、ハンデスと一通りそろっていますが、忍者クリーチャーなどアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、ほかのフェアデッキよりも太めの構成になっています。
ディミーアテンポよりもロングゲームを想定しているため、《目くらまし》や《不毛の大地》といったカードは不採用で、よりミッドレンジ寄りになっています。ライフを攻めつつアドバンテージも稼げるので、除去や妨害からもクロックを守りやすくなっています。
☆注目ポイント
一般的な忍者のリストと異なり、プランBである《改良式鋳造所》が不採用でカウンターやハンデスが多めに採られているなど、コンボデッキを意識した構成になっています。
このデッキの場合は、《悪夢滅ぼし、魁渡》の[+1]能力で自身だけでなく《虎の影、百合子》や《巧妙な潜入者》といった忍者も強化できるので、ディミーアリアニメイトよりもさらに強く使うことができます。
《マネドリ》はクローン能力を持つクリーチャーで、コピーした後も飛行が残るのでブロックされづらく、1マナ1/1・飛行クリーチャーとしてもプレイできるので、このデッキと相性がいいクリーチャーです。
序盤は1/1・飛行として出して忍術でバウンスし、あとで《悪意の大梟》などをコピーしてバリューを得るといった使い方ができます。
採用されている除去が豊富なのもこのデッキの特徴です。《悪意の閃光》はプレインズウォーカーも処理できる布告系の除去で、《濁浪の執政》や《悪夢滅ぼし、魁渡》も対処できます。
《戦略的裏切り》は『タルキール:龍嵐録』から登場した追放系の布告除去で、ソーサリーではありますが墓地対策としても機能するため、イゼットテンポとのマッチアップではクリーチャーを除去しつつ「昂揚」や「探査」を妨害することが可能です。
『Legacy Showcase Qualifier』 -ヨーリオンを相棒にしたデス&タックスが優勝-
開催日:2025年8月16日
優勝 デス&タックス
準優勝 赤単ストンピィ
3位 ナドゥミッドレンジ
4位 スニーク・ショー
5位 ディミーアリアニメイト
6位 ディミーアリアニメイト
7位 緑単ポスト
8位 ディミーアリアニメイト
このイベントは招待制で、『Showcase Challenge』のトップ8と直前予選で5-0したプレイヤーのみが参加できます。優勝したプレイヤーには、MOCS本戦とプロツアーへの参加権利が与えられるハイレベルな大会となっています。
参加者32名と小規模なイベントですが、強豪プレイヤーが集うためディミーアリアニメイトのようなトップメタに人気が集中する傾向にあります。
そんななかで優勝したのは、ディミーアリアニメイト対策を徹底していたデス&タックスでした。
デス&タックス
デス&タックスといっても、最近は《スレイベンの守護者、サリア》などヘイトベアーが不採用で、《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《ベイルマークの大主》といったブリンクシナジーが搭載されているなど、タックス要素が薄れてモダンのオルゾフブリンクに近い構成になっています。
《霊気の薬瓶》によってカウンターされることなくクリーチャーを展開することが可能で、アドバンテージを得る手段が豊富なためフェアデッキに対して無類の強さを見せます。メインから墓地対策を複数採用しており、ロングゲームにも強いので、リアニメイト相手のミッドレンジプランに対しても優位に立ち回れます。
デッキの構成上《虚空の杯》デッキにも耐性があるため、The Spyなどコンボデッキが減少傾向にある現在ではいい立ち位置にあると言えます。
☆注目ポイント
《溌剌の牧羊犬、フィリア》は《ベイルマークの大主》とシナジーがあり、《石鍛冶の神秘家》《護衛募集員》《孤独》などのクリーチャーをブリンクすることでアドバンテージを稼ぐことができます。
《護衛募集員》はデッキ内のクリーチャーを状況に応じてサーチできるため、80枚デッキでも必要なカードにアクセスしやすくなります。
トップメタのリアニメイト対策として、《封じ込める僧侶》《獅子の飾緒》《フェアリーの忌み者》といった複数の墓地対策が採用されています。フィニッシャーをリアニメイトされてしまっても、《剣を鍬に》や《孤独》といった追放除去で対処が可能で、再度リアニメイトされることもありません。
特に《封じ込める僧侶》はスニーク・ショーやセファリッドナドゥなど、ほかのコンボデッキに対しても強力です。また《溌剌の牧羊犬、フィリア》と組み合わせれば、実質除去となります。
ただ、すべてのプレイヤーに対して効果があるため《霊気の薬瓶》も使えなくなり、自軍のクリーチャーをブリンクした場合も戻ってこなくなる点には注意が必要です。
《スカイクレイブの亡霊》は《一つの指輪》を追放できたりと複数のマッチアップで活躍します。《白蘭の幻影》は《ウルザの物語》などやっかいな特殊地形を対策します。
《解呪》能力を内蔵した《魔女の結界師》は、《護衛募集員》でサーチ可能な土地としても機能し、土地として使用した後もブリンクさせることでクリーチャーとして場に出すこともできます。
総括
『BIG MAGIC Open Vol.14』では、両イベントとも大方の予想通りディミーアリアニメイトが複数入賞していました。ほかにも、ディミーアテンポやディミーア忍者なども結果を残していたことからも、現在のレガシーでは青黒が非常に強力な色の組み合わせということが分かります。
ほかにはイゼットテンポやエルドラージ、赤単ストンピィといった《古えの墳墓》デッキが中心でした。『Showcase Qualifier』を制したのはデス&タックスでしたが、トップメタのディミーアリアニメイトによってコンボデッキが抑えられており、フェアデッキや《虚空の杯》デッキが多い環境だったのが主な勝因と思われます。
USA Legacy Express vol. 260は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!