■ ゲストの紹介

みなさん、おひさしぶりです。斉藤 伸夫です。前回の記事から8年が経ちましたが、新環境のレガシー楽しんでいますか?

今回紹介するのは、リアニメイト系デッキの現行最高傑作とも名高い「ディミーアリアニメイト」です。このデッキは《超能力蛙》禁止以降も国内外のあらゆる大会で結果を残しており、現環境のトップメタとして君臨しています。


このディミーアリニアメイトの使い手として、国内トップクラスの2人をゲストにお招きし、このデッキについてインタビューをしていきたいと思います。高野 成樹さん、柳澤 由太さん、よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
人物紹介

斉藤 伸夫:『THE LAST SUN 2013』トップ4をはじめとして、国内の大型レガシートーナメントにおける数多くの入賞経験を持つプレイヤー。自身が所属するコミュニティにも積極的に参加し、数多の強豪レガシープレイヤーを育て上げた「レガシー界の母」。

高野 成樹:『Asia Legacy Championship 2024』優勝、『BMOレガシー』優勝3回、元ヴィンテージ神、元レガシー神など輝かしい実績を持つ、関東を代表するレガシープレイヤー。趣味は筋トレと料理。

柳澤 由太:関西を中心に活動するレガシー集団「柳澤流」の初代総師範。『グランプリ・静岡2018』トップ8、『KMCインビテーショナル』優勝、『BMOレガシー』優勝など、素晴らしい成績を残している。
■ ディミーアリアニメイトに迫るデッキは?

「東の高野、西の柳澤」と言われるくらいレガシー界では有名な2人ですが、2人ともこのデッキを使い続けているということは、ディミーアリアニメイトがレガシー最強という認識でいいですか?

そうですね。《納墓》がある限り最強だと思います。

おなじく、ベストデッキだと思います。

では、次点にくるデッキは何だと思いますか?

今だとやっぱり「ナドゥ」「赤単プリズン」かなぁ。あと、「エルドラージ」もいいですね。

そうそう。関西には西村さんという強いエルドラージ使いの人がいて、関西帝王を2連続でかっさらわれています……(笑)

エルドラージは速いんですよね。《まばゆい肉掻き》や《エルドラージの戦線破り》でライフを一気に削られます。ディミーアリアニメイトはライフ7以下になると《再活性》で《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》を釣れなくなるので、そこがキツイですね。

《虚空の杯》とも上手く付き合わないといけないし、《魂の洞窟》から《荒景学院の戦闘魔道士》を出されて《濁浪の執政》を戻されるのも辛い。勝つための明確なプランが立てにくいというのがありますね。

まぁ、自分はそれでも赤単プリズンのほうがキツイですけどね。

最強デッキといえども、不得意はありますよね。のちのち、苦手なマッチアップや対策などについて詳しく話を聞かせてください。
■ 強豪2人のデッキリストをチェック

それでは、ここからは2人のデッキリストを見ながら、採用カードをチェックしていきましょう。
高野 成樹のディミーアリアニメイト
柳澤 由太のディミーアリアニメイト
■ デッキの「固定パーツ」と「調整パーツ」

構成はほとんど同じだけど、若干の差異がありますね。差異について掘り下げる前に、2人が考えるこのデッキの固定パーツについての確認をしていきましょう。

リストから判断すると、この6種類のカードは4枚固定採用パーツということでいいですか?

このあたりは4枚固定採用でいいかと思います。あと、《思考囲い》も限りなく4枚固定に近いカードですね。

おおむね同意です。最近は《思考囲い》は3枚採用にしている人もいて、1枚を《虚無の呪文爆弾》や《塵へのしがみつき》に変えている人もいるみたいですね。

《動く死体》も1枚だけですが、固定採用と考えて良いと思います。《虚空の杯》をX=1で置かれたときでもリアニメイトできる手段として採用されています。

そのほか、メインボードの差異でいうと《厚かましい借り手》や《目くらまし》の採用枚数に若干の違いと、土地の採用枚数が高野さん19枚に対し柳澤さん20枚という違いがありますね。

《不毛の大地》、フェッチランド、諜報ランドの枚数は同じで、柳澤さんが《Underground Sea》を1枚多く採用しています。

高野さんのリストから、どうやら4枚目の《Underground Sea》よりは諜報ランドや《不毛の大地》のほうが価値が高いと考えていることがわかります。《厚かましい借り手》、《目くらまし》、20枚目の土地。メインではこのあたりが調整パーツとなりますかね。

そうですね。あとはメインに《否定の力》を採用するしないとか、《濁浪の執政》の枚数には調整の余地はありそうです。特に《濁浪の執政》は2枚採用する人のほうが多いかもしれません。

自分はリアニメイト戦略がダメだった場合にクロックパーミッションで勝つことを強く意識しているので、《濁浪の執政》《厚かましい借り手》3枚、《目くらまし》4枚という調整をしています。

僕は後手番などで、ピッチで《目くらまし》を唱えている場合じゃない展開になったときに、《目くらまし》を引きすぎるのが気になったので3枚に減らしました。

あとは、サイドボード後にが必要になる《ダウスィーの虚空歩き》や3マナと少し重い《バロウゴイフ》を安定してプレイするために土地が20枚欲しくて、4枚目の《Underground Sea》を採用しています。
■ 《知りたがりの学徒、タミヨウ》について

固定パーツのなかで気になるのは、2人とも《知りたがりの学徒、タミヨウ》を4枚フル採用していることですかね。このカード、最初はディミーアリアニメイトに採用されていなかったと思うんですが、どういった点を評価していますか?

たしかに、最初は採用されてなかったですね。

まぁ、『モダンホライゾン3』が登場してしばらくは、《超能力蛙》が使えましたからね。

ただ、《超能力蛙》が禁止されたあともしばらくは採用されなかったし、されても2枚だけとか。今ほどの評価は得ていなかった気がします。最序盤に欲しいカードなので、実際にプレイしていくうちに「あれ?4枚欲しいぞ?」って(笑)

僕も高野さんのリストを見て、《知りたがりの学徒、タミヨウ》を再評価した感じですね。


攻撃するだけでアドバンテージが稼げて、変身すればリアニメイト以外の勝ち軸にもなる。《超能力蛙》と役割が同じですよね。《渦まく知識》で即変身も狙えます。

そう。ひっくり返れば「マジック:ザ・ギャザリングver.2」の始まり。

ブルーカウントだからピッチカウンターのコストにもなるし、採用するのにリスクがなさすぎるカードなんですよね。逆に、1ターン目から相手にプレイされたら《意志の力》で消したくなるほどです。

一方で、《知りたがりの学徒、タミヨウ》を過信するのは良くないなって思います。このカードにこだわりすぎると負けることも多いです。

それは同意です。特に《古えの墳墓》系デッキ相手に《知りたがりの学徒、タミヨウ》は基本的になにもしないカードで、相手がすごい展開してくるのに払ってカード引いてる場合じゃないですからね。

青系デッキ同士が、最序盤に《知りたがりの学徒、タミヨウ》を巡ってやり合うことになるのは間違いないですけどね。

あと、《納墓》が最強カードというのも《知りたがりの学徒、タミヨウ》が関係しています。裏返ったときに墓地からインスタントやソーサリーを手札に戻せるようになるので、《納墓》が万能サーチカードになるんですよね。そういうところも強いと思います。

なるほど。2人とも《知りたがりの学徒、タミヨウ》の評価を徐々に上げていった結果、今のデッキリストに落ち着いているんですね。ただし、プレイするタイミングやマッチアップなどで強さが変わるカードという認識も持っていると。
■ サイドボードカードの採用理由

では、つづいて2人のサイドボードのカードをチェックしていきます。

■ 《オークの弓使い》について

まず、気になるところでは《オークの弓使い》ですかね。柳澤さんは不採用ですが、理由について聞かせてください。

最初はデッキに入れており、たしかに《オークの弓使い》が強いマッチアップはありました。ただ、すべての対面で強いカードというわけでもなく、ディミーアリアニメイトが《オークの弓使い》に依存するようなデッキでもないため、思い切って抜きました。

《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《渦まく知識》に対しては確かに強いカードですが、基本的に《オークの弓使い》が欲しくなるときって、相手が《オークの弓使い》を出してきたときだけなんですよね。

そのシチュエーションでさえも、《バロウゴイフ》や《濁浪の執政》で押し返してしまえることが多かったので、ゲームの焦点になっていないと判断して不採用としました。

なるほど。一方で、高野さんは《オークの弓使い》を2枚採用していますが、どのように評価していますか。

柳澤さんの主張もわかります。自分も一旦はまったく同じ考えにいたりましたが、自分が《オークの弓使い》を使わないことと、相手が《オークの弓使い》を使ってくることはまったく別の話なんですよね。

《オークの弓使い》を綺麗に対処するためには《オークの弓使い》が一番です。例えば《オークの弓使い》を何かで除去したあと、相手が2体目の《オークの弓使い》を出してきたら、こっちは《再活性》で相手の《オークの弓使い》を釣って対処するというテクニックもあります。しかし、その場合は《厚かましい借り手》でバウンスされたときに相手の手札に戻るのが気になります。結局、《オークの弓使い》はないと困るな、と。

なるほど。関東と関西のメタゲームの違いとかもありますし、高野さんのほうが普段から《オークの弓使い》と遭遇することが多いのかもしれませんね。2人の《オークの弓使い》に対する考え方が聞けてよかったです。
■ 《コジレックの審問》について

ところで高野さん。《コジレックの審問》を採用している理由を聞いてもいいですか?このカードの評価は気になります。

はい。自分としては打ち消し1枚分の枠を《コジレックの審問》に変えています。ハンデスは相手の手札という情報が得られるのでゲームプランが立てやすく、先手のときは特に重宝するカードです。

また、打ち消しの枠を除去とかクリーチャーとかまったく別の役割のカードとチェンジするのは微妙ですが、《コジレックの審問》と入れ替える分には許容できると思いました。《虚空の杯》や墓地対策カードを含め、いろんなカードに触れるので。

それなら《意志の力》を落とせる分、《強迫》のほうがいいという考え方もあります。ですが、《コジレックの審問》はクリーチャーに触れるのが大きいです。《フェアリーの忌み者》をあらかじめ落とすことで《再活性》を決めやすくなるのと、赤単プリズン相手には《血染めの月》《月の大魔術師》を抜くことができ、即死を回避できる点が優れています。

なるほど。確かに、苦手なマッチアップが使ってくるカードの多くに触れる点は評価できますね。

《意志の力》と《濁浪の執政》を落とせないのは大きな欠点ですが、多くのマッチアップで刺さるカードなので1枚採用しています。
■ 後編へ


貴重な話をありがとうございました。2人が使用しているディミーアリアニメイトの構築論や、カードの詳しい採用理由について語っていただきました。

後編は、「ディミーアリアニメイトの苦手なマッチアップ」「各デッキに対応するサイドボードのインアウト」について深堀りしていきます。それでは、また次回の「のぶおの部屋」でお会いしましょう!
レガシー関連記事
- 2025/09/07
- インタビュー:レガシー界の「母」斉藤 伸夫 -高野 成樹の源流を知る者-
- 2025/09/07
- インタビュー:歴代レガシー神に聞く「レガシーの魅力」「レガシーで上達する方法」