はじめに
みなさん、こんにちは。今週末から『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スパイダーマン』のプレリリースが開催され、全フォーマットが新環境を迎えます。
今セットは『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』につづく、スタンダードでも使えるユニバースビヨンドのセットということで注目を集めています。
さて、今回の連載では『第30期レガシー神挑戦者決定戦』と『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『第30期レガシー神挑戦者決定戦』 -ディミーアリアニメイトのワンツーフィニッシュ-
開催日:2025年9月6日
優勝 ディミーアリアニメイト
準優勝 ディミーアリアニメイト
3位 ディミーアテンポ
4位 ディミーアリアニメイト
5位 エルフナドゥ
6位 ピナクル親和
7位 バントナドゥ
8位 赤単プリズン
今大会はトップメタのディミーアリアニメイトがワンツーフィニッシュという、現在のレガシーらしい結果となりました。シェア率でも、ディミーアリアニメイトは全体の20パーセント以上を占めています。
そのほか「ディミーアテンポ」「ナドゥ」「赤単プリズン」といったデッキが入賞しており、コンボデッキは上位にはあまり残れなかったようです。
- 2025/09/06
- メタゲームブレイクダウン
- 晴れる屋メディアチーム
ちなみに、Legacy Challengeなどでコンスタントに入賞している「カーンフォージ」はディミーアリアニメイトの次に人気のデッキでしたが、トップ8には残れませんでした。
《記憶への放逐》や《無のロッド》の採用率で強さが変動するデッキで、今大会では多くのデッキがサイドボードに《記憶への放逐》を複数枚採っていたことで、厳しい立ち位置となったようです。
ディミーアリアニメイト
たび重なる禁止を受けてなお、トップメタに君臨し続けるディミーアリアニメイト。メインからリアニメイトによる必殺技に加え、《濁浪の執政》によるビートダウンや《知りたがりの学徒、タミヨウ》でアドバンテージを稼ぎつつ、プレインズウォーカーに変身させて奥義を発動、という豊富な勝ち筋があります。
サイド後は《ダウスィーの虚空歩き》や《バロウゴイフ》をサイドインしてミッドレンジに寄せるなど、攻め幅の広さがこのデッキの強みです。
完成されたデッキではありますが、今回のように《オークの弓使い》をメインから採用することで序盤から圧をかける手段を増やした形や、ミラーマッチを意識して墓地対策をメインから採用した形、《虚空の杯》対策に追加のピッチカウンターを採用した形など、環境に合わせた工夫が確認できます。こういったオリジナルの調整を加えることで差をつけるのも重要なテクニックです。
☆注目ポイント
メインから採用されている《オークの弓使い》は、ミラーマッチではリアニメイトプランや《濁浪の執政》などで《オークの弓使い》を無視する選択があるため、あまり強くない印象でした。
しかし、お互いがフェア寄りにシフトするサイド後はクリーチャーの数で圧をかけやすくなることに加え、相手は除去やコンボパーツを探すためのドロースペルをプレイしにくくなるなど、実際は強力なクリーチャーであることがわかります。このプレッシャーは想定よりも重く、神決定戦のミラーマッチでは2ターン目の《オークの弓使い》に対し、たまらず《意志の力》を切る場面も見られました。
また、《オークの弓使い》をメインから採用することで、若干の余裕ができたサイドボードの枠に追加の《ダウスィーの虚空歩き》と《バロウゴイフ》を採用しています。ミラーマッチではクリーチャーの数が多くなる分、有利に立ち回ることができそうです。
リアニメイトプラン以外にも《知りたがりの学徒、タミヨウ》を中心にクロックパーミッションプランを取ることができるなど、勝ち手段の幅の広さもこのデッキの強みです。一度プレインズウォーカーに変身すればディミーアカラーでは対処する手段が限られ、特に除去が少ないミラーマッチのメイン戦では対処されにくく、追加の勝ち手段として信頼がおけます。
除去カードとしては、定番の《致命的な一押し》と《厚かましい借り手》に加え、最近はプレインズウォーカーに触れて、さらに手札のファッティを墓地に送る手段としても機能する《苦々しい勝利》が選択される傾向にあります。
そのほか、プレイするのに色マナを必要としない《四肢切断》は、赤単プリズンなどに《月の大魔術師》を出されてしまった場合でも対処することができるため、緊急時に役立つカードです。
ディミーアテンポ
サイドボードに《溶融》と《紅蓮破》を採用し、赤をタッチしたディミーアテンポ。1マナ域のクロックとして定番だった《ネザーゴイフ》を不採用とし、《オークの弓使い》、《シェオルドレッドの勅令》、《悪意の大梟》といった2マナ域のカードを多く採用しています。
3枚採用の《悪夢滅ぼし、魁渡》は《悪意の大梟》のような軽量フライヤーと相性がよく、テンポを意識しつつもパワーが高いカードをしっかりと採用した、ややミッドレンジよりの調整となっております。
サイドボードを含め、特定のデッキに合わせてチューニングしているタイプのデッキなので、ナドゥ、デス&タックス、土地単などさまざまなタイプなデッキの対策が必要となる混沌とした環境よりも、現在のようにメタが固まっている環境でこそ強さを発揮するデッキです。
☆注目ポイント
軽量クリーチャーの攻撃を通し、《悪夢滅ぼし、魁渡》を「忍術」によって早期に着地させて、アドバンテージを稼いでいくことがこのデッキの主な戦略となります。自分のターン限定とはいえ「呪禁」があるため、戦場に定着しやすく、ロングゲームも得意とするところです。
特にディミーアリアニメイトは《悪夢滅ぼし、魁渡》を対処する手段に乏しく、仮に《濁浪の執政》や《偉大なる統一者、アトラクサ》を戦場に出せたとしても[-2]能力によって止められてしまい、苦戦は必至です。
逆に《悪夢滅ぼし、魁渡》を処理する側に回った場合は、布告系の除去である《シェオルドレッドの勅令》が対策カードとして機能します。《濁浪の執政》のような厄介なクリーチャーも対処でき、メインから採用するのも納得の除去カードです。
このデッキが苦手な《虚空の杯》や《ウルザの物語》対策としては、《溶融》がサイドボードに採用されています。
《不毛の大地》を採用しているとはいえ、ディミーアカラーは《ウルザの物語》の対処に手を焼くので、《溶融》のために赤を足すだけの価値はあるといえるでしょう。また、《紅蓮破》が使えることで、《濁浪の執政》や《知りたがりの学徒、タミヨウ》を対処しやすくなるのも赤を足すメリットです。
赤単プリズン
『第16期レガシー神』であり、有名配信者でもある「MOパンダ」こと鈴池 史康氏も参戦し、独自の調整を加えた赤単プリズンで見事トップ8に入賞しました。
赤単プリズンは現在も高い勝率を維持しているデッキの一つで、およそ3ヵ月前には英雄譚のルールの変更により《血染めの月》の影響下でも《ウルザの物語》が使えるようになるなど、相対的に強化されたアーキタイプです。
これによってメインから墓地対策の《魂標ランタン》にもアクセスできるようになり、ディミーアリアニメイトやディミーアテンポに対して強いデッキとして注目されています。
多色デッキはもちろん、2色デッキも《血染めの月》や《月の大魔術師》によって色マナを縛られることで行動が制限され、さらには《虚空の杯》で1マナの呪文をシャットアウトできることが現環境で非常に有力な戦法となっています。また、天敵である「スニークショー」が数を減らしていることも追い風です。
☆注目ポイント
《虚空の杯》はX=1で置くことで、《納墓》や《再活性》をはじめとしたディミーアリアニメイトの主要な呪文をシャットアウトします。さらには1マナのドロースペル、除去、《知りたがりの学徒、タミヨウ》を同時に唱えられなくし、コンボプランとフェアプランの両方に刺さるカードです。
追加で《虚空の杯》をX=2で置くことができれば、《厚かましい借り手》によるバウンスまでも対策でき、ディミーアリアニメイト相手には完封勝利が狙えます。
鈴池氏のリストと一般的なリストとの違いは《パイロゴイフ》や《激情》といった赤いフィニッシャー兼除去が不採用であることです。
空いた枠には《大いなる創造者、カーン》などが採用されており、状況に応じて[-2]能力でサイドボードから《罠の橋》や《トーモッドの墓所》といった対策カードをサーチする狙いがあります。
相手をロックできる《マイコシンスの格子》をサーチすることで勝ち手段としても機能し、さらには副次的な効果としてカーンフォージやペインターなどアーティファクトをベースとしたデッキに対しても強くなります。
《罠の橋》は赤いカードだけでは対処しきれない《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》、《濁浪の執政》といったファッティの攻撃を止めることができます。
こういったサイドボードの多くは《大いなる創造者、カーン》でサーチすることを前提に選別されています。そのほか、サーチできないカードとしては苦手なスニークショー対策に《攪乱のフルート》が、トップメタのディミーアリアニメイト対策として《フェアリーの忌み者》が複数枚採用されており、対策を厚くしています。
『Legacy Challenge 32 – 2025/09/13 #2』 -現環境のコントロールデッキ-
開催日:2025年9月13日
優勝 ジェスカイコントロール
準優勝 イゼットテンポ
3位 エルドラージ
4位 赤単プリズン
5位 エルドラージ
6位 ディミーアリアニメイト
7位 エルドラージ
8位 ディミーアリアニメイト
先週末に開催された『Legacy Challenge 32 – 2025/09/13 #2』でも、ディミーアリアニメイトや赤単プリズン、カーンフォージといったトップメタのデッキが入賞しました。
そんななか、優勝したのはジェスカイコントロールでした。
ジェスカイコントロール
現環境で結果を残しているコントロールデッキの1つ、ジェスカイコントロール。今大会で優勝したプレイヤー、jankybは同じデッキで先週末に開催された別のLegacy Challengeでも優勝しています。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》、《稲妻罠の教練者》、《瞬唱の魔道士》と、3種類のウィザードが《アノールの焔》とシナジーを形成し、このデッキの軸として活躍します。
また、多色デッキでありながら基本地形を多く採用したマナ基盤にすることで《血染めの月》にも耐性をつけ、《アノールの焔》や《虹色の終焉》が《虚空の杯》を破壊できるなど、現環境で活躍するデッキの条件を一通りクリアしています。
優秀な除去、カウンター、アドバンテージ源が揃っており、相手との対話をつづける、使っていて楽しいデッキでもあります。
☆注目ポイント
ウィザードをコントロールすることでモードを多く選べる《アノールの焔》は、アーティファクト破壊、クリーチャー除去、ドローとして機能するフレキシブルなスペルです。
《知りたがりの学徒、タミヨウ》、《稲妻罠の教練者》、《瞬唱の魔道士》といった優秀なウィザードクリーチャーが揃っているため、そのポテンシャルをいかんなく発揮することができます。
このデッキでも《知りたがりの学徒、タミヨウ》は強力で、プレインズウォーカーに変身することでコントロールデッキの貴重な勝ち手段の一つとなります。《稲妻罠の教練者》はブロッカーとしての役目もありつつ、状況に応じて必要なスペルを探し出すことができる優秀なクリーチャーです。
レガシーにおけるもっともポピュラーな除去、《剣を鍬に》は《濁浪の執政》や《偉大なる統一者、アトラクサ》をわずか1マナで対処できるだけでなく、追放することで再度リアニメイトされる心配がない点も優秀です。
メインから3枚採用の《激しい叱責》はコントロールデッキが苦手とする《ウルザの物語》のトークンをまとめて対処することができる対策カードです。
総括
『第30期レガシー神挑戦者決定戦』の結果からもディミーアリアニメイトが現環境のベストデッキであることは明らかで、立ち向かうためにはリアニメイトプランとフェアプランの両方に対応できるデッキ構成にしておく必要があります。
ディミーアリアニメイトの対抗デッキとしては、今回取り上げた赤単プリズンや対処されにくいプレインズウォーカーである《悪夢滅ぼし、魁渡》を軸としたテンポデッキが有力となりそうです。
最後となりますが、『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スパイダーマン』から筆者が個人的に気になったカードを3枚挙げるとしたら、《スパイダーパンク》、《傑出した発明家、レディ・オクトパス》、《破壊の鉄球》あたりがレガシーでの活躍も期待できると思いました。
《スパイダーパンク》は呪文と能力がカウンターされなくなり、ダメージも軽減できなくなるので有力な青いデッキ対策兼《一つの指輪》対策となります。
《傑出した発明家、レディ・オクトパス》はアーティファクト版《霊気の薬瓶》のような能力を持つため、強力なアーティファクトが多いレガシーでは面白そうなカードです。
《破壊の鉄球》は《大いなる創造者、カーン》でサーチ可能な除去として、今回取り上げた赤単プリズンなどでも採用される可能性があります。
USA Legacy Express Vol.262は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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