はじめに
みなさん、こんにちは。
プロツアー『久遠の終端』は終了しましたが、モダンの競技イベントは終わりません。
11月には横浜で『チャンピオンズカップファイナル シーズン4ラウンド1』が、12月には『MMM Finals 2025 in Tokyo』が開催されるので、まだまだ盛り上がっていきそうです。
さて、今回の連載では先週末の『Modern Challenge』で入賞したデッキを見ていきたいと思います。
10/10 『Modern Challenge 64』 -青ベースのエネルギー-
開催日:2025年10月10日
優勝 アミュレットタイタン
準優勝 《ジェスカイの隆盛》コンボ
3位 繁殖鱗コンボ
4位 アゾリウスエネルギー
5位 ゴルガリヨーグモス
6位 繁殖鱗コンボ
7位 ジェスカイブリンク
8位 アゾリウスエネルギー
コンボデッキが多くを占めるなかで、ブリンクとエネルギー要素をハイブリットしたアゾリウスエネルギーが2名入賞していました。
アゾリウスエネルギー
プロツアー『久遠の終端』でガブリエル・ナシフ選手をはじめとしたトッププレイヤーが使用し、結果を残していたアゾリウスエネルギー。
《量子の謎かけ屋》《孤独》といったクリーチャーを《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《儚い存在》でブリンクする動きは、いまやモダンのトレンドですが、そこにエネルギーデッキでおなじみの《魂の導き手》と《オセロットの群れ》を足してアグロによせたのがこのバージョンです。
クリーチャーでビートダウンしつつ、アドバンテージも稼げるようになっており、《量子の謎かけ屋》に加えて《星原の番人》も採用されているので消耗戦にも強い構成になっています。また、ほぼ白単なのでマナ基盤が安定しているのもこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
メインから採用された《白蘭の幻影》は特殊地形に頼った多くのデッキに刺さりますが、このデッキでは《トロウケアの敷石》によって疑似的なマナ加速としても使用することができます。もちろん、《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《儚い存在》でブリンクして相手のマナ基盤を攻める動きも強力です。
《魂の導き手》と《オセロットの群れ》のコンビは、序盤からプレイすることでトークンが並ぶので、コンボやコントロールに対して圧をかけることができます。ライフゲインは《光に導かれし者、ハリーヤ》とも相性が良く、トークンを並べつつ手札も増やすことができます。
《星原の番人》は必要な土地や《魂の導き手》《オセロットの群れ》をサーチでき、「ワープ」により2マナでプレイできるのでキープ基準にもなる優秀なクリーチャーです。
10/11 『Modern Challenge 32』 -“リドラーズー”が優勝-
開催日:2025年10月11日
優勝 ドメインズー
準優勝 ルビーストーム
3位 ボロスエネルギー
4位 アミュレットタイタン
5位 ドメインズー
6位 イゼット果敢
7位 エルドラージランプ
8位 繁殖鱗コンボ
ドメインズー
ドメインズーはプロツアーでは振るわなかったものの、『Modern Challenge』では常に上位のアーキタイプで、今大会では《量子の謎かけ屋》を採用した通称“リドラーズー”が優勝しました。
いよいよブリンク関係なしにズーでも使われはじめた《量子の謎かけ屋》。《ギルドパクトの力線》さえ置ければ青マナの確保も容易で、消耗戦にさらに強くなりました。
☆注目ポイント
メインから採用されている《記憶への放逐》は、このデッキでは《量子の謎かけ屋》や《火の怒りのタイタン、フレージ》とシナジーがあります。それぞれ戦場から離れる能力をもみ消すことで、場にキープしたままにできます。
サイドにはさまざまなカードがとられています。《減衰球》は、ルビーストームだけでなくアミュレットタイタンやトロンなどほかのマッチアップでも使えます。デッキの種類が多いモダンでは、特定のマッチアップに刺さるカードよりも、複数の相手に有効なカードを選択する必要があり、多色デッキのドメインズーはサイドの選択肢が豊富なことも魅力のひとつです。
10/12 『Modern Challenge 32』 -ミッドレンジが強い環境-
開催日:2025年10月12日
優勝 エスパーブリンク
準優勝 シミック出産の儀
3位 アゾリウスコントロール
4位 アミュレットタイタン
5位 エルドラージトロン
6位 ルビーストーム
7位 ドメインズー
8位 アゾリウスブリンク
プロツアー『久遠の終端』でもトップ4に残ったエスパーブリンクが優勝しました。フェアデッキが中心の環境なため、アミュレットタイタンやエルドラージトロンといったビッグマナ系も複数上位に入賞しています。
エスパーブリンク
プロツアーでホリウチ マコト選手が使用し、プレイオフに入賞したことで広く知れ渡ったバージョン。
従来のエスパーブリンクとは大きく異なるアプローチが施されており、《緻密》や《否定の力》といった青いピッチスペルで相手のプランを妨害しつつ、《量子の謎かけ屋》《超能力蛙》といったクロックでビートダウンしていきます。
カウンターなどメインから妨害が多めに採用されているため、コンボデッキやほかのブリンクデッキに強いバージョンになります。
☆注目ポイント
ベルチャーやアミュレットタイタン、ルビーストームなど、現在のモダンでは《孤独》が役に立つマッチアップが少なく、これらのデッキに対しては《緻密》と《否定の力》が活躍します。
《孤独》が不採用になったことブリンクしたいクリーチャーが減少したため、《儚い存在》もメインにわずか1枚の採用になっています。
このバージョンは青黒がベースになっており、そこに《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《時を解す者、テフェリー》、サイドの《虹色の終焉》など白が軽くタッチされています。
また、スペルランドも一般的な《魔女の結界師》ではなく、ピッチコストにできる《水力発電の検体》が採用されていました。
このリストの特徴は、《記憶への放逐》がメインから4枚採用されていることです。ベルチャーなど現環境で活躍する多くのマッチアップに刺さり、《溌剌の牧羊犬、フィリア》の終了ステップ時の誘発をもみ消すことで除去としても機能します。
サイドの除去枠は、ホリウチ選手のリストにあった《失脚》が《虹色の終焉》に差し替えられています。《虹色の終焉》は《魂の導き手》《オセロットの群れ》《超能力蛙》《精力の護符》など、さまざまな脅威を対処できる優秀な除去です。
10/12 『Modern Challenge 64』 -イゼット果敢が上位に複数-
開催日:2025年10月12日
優勝 エルドラージ
準優勝 アミュレットタイタン
3位 イゼット果敢
4位 イゼット親和
5位 アゾリウスコントロール
6位 イゼット果敢
7位 ボロスエネルギー
8位 イゼット果敢
安定した成績を残し続けているイゼット果敢が、今大会でもプレイオフに3名入賞していました。
イゼット果敢
『タルキール:龍嵐録』から登場した《コーリ鋼の短刀》によって大幅に強化されたアーキタイプ。速さを重視した構成で、優秀な1マナの《ドラゴンの怒りの媒介者》と《僧院の速槍》を軸に、軽い強化スペルや火力で一気にライフを削っていきます。
高速アグロでありながら、サイドからカウンターにもアクセスできるイゼット果敢は、コンボデッキの多い現環境では良チョイスです。エルドラージトロンやベルチャーに強い一方で、エスパー御霊やエスパーブリンクなど除去と《量子の謎かけ屋》を採用したデッキには弱くなります。
☆注目ポイント
《コーリ鋼の短刀》は適切なタイミングでプレイすれば、ほぼ確実にモンク・トークンを生成できます。《コーリ鋼の短刀》に対して単体除去の効果は薄く、トークンを除去されても《ミシュラのガラクタ》や《溶岩の投げ矢》などで再び相手に圧をかけることが可能です。
《変異原性の成長》は0マナでプレイできる強化スペルで、果敢クリーチャーと組み合わせることで大ダメージを叩きだせます。《暴力的衝動》との組み合わせも強力で、打点を一気に引き上げることで早い段階からリーサルを叩き出すことができます。
もともと多くの土地を必要とするデッキではありませんが、《ミシュラのガラクタ》や《定業》といった軽いキャントリップスペルのおかげで、必要な土地を見つけやすくなっています。《表現の反復》は3枚目以降の土地を探しつつ、果敢の種になるスペルを補充できる点が優秀です。
サイドには、コンボやビッグマナ系デッキとのマッチアップ用に《記憶への放逐》や《呪文貫き》など複数のカウンターが採用されています。墓地対策は《外科的摘出》になっており、0マナでプレイできるので果敢や疾風との相性が良いです。《洪水の大口へ》は《コーリ鋼の短刀》の疾風を封じる《耳の痛い静寂》への対処手段として使えます。
総括
『Modern Challenge』の結果を見ていきましたが、プロツアー後のモダンも全体的に多様性とバランスが保たれているようです。
特に《量子の謎かけ屋》をブリンクしてアドバンテージを稼ぐ戦略と、現環境の最高のアグロデッキであるエネルギーデッキをハイブリットさせたアゾリウスエネルギーには要注目です。
USA Modern Express Vol. 142は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!