レガシー選手権をエルドラージが制す!テンポ型のドゥームズデイも登場【USA Legacy Express vol. 266】

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

先週末は『レガシー選手権・秋』がありましたが、来月には『Eternal Party 2025』『Eternal Weekend Asia』『THE LAST SUN 2025』と、日本国内のレガシーイベントが充実していますね。

さて、今回の連載では、禁止改定直後にMagic Online(以下MO)で開催された『Legacy Showcase Challenge』と『レガシー選手権・秋』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

『Legacy Showcase Chllenge』 -デルバーの復権-

参加者約300名で開催された『Legacy Showcase Chllenge』は、新環境のレガシーを分析するうえで大変参考になりました。

欄干のスパイ染みついた耽溺

ディミーアリアニメイトがトップメタから退場したことにより、墓地対策が薄くなったため、The Spyが複数上位に入賞しています。また、ディミーアリアニメイトが完全にいなくなったわけではなく、クリーチャーを墓地に送る手段として《染みついた耽溺》を採用した型が結果を残していたのも印象的でした。

一つの指輪秘密を掘り下げる者

決勝戦まで勝ち残ったデッキは、カーンフォージとイゼットデルバーで、どちらも禁止改定の影響を受けなかったデッキです。

記憶への放逐無のロッド

カーンフォージは準優勝したものの、上位では少数しか見られませんでした。《一つの指輪》が禁止にされなかったことで新環境で大暴れすると予想されていましたが、今までリアニメイトやナドゥの対策に割いていたサイドボードのスペースに《記憶への放逐》などを複数積む余裕ができており、以前よりもしっかりと対策されていたのが大きいようです。

イゼットデルバー

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優勝を飾ったのは筆者の好きなデッキでもあるイゼットデルバーでした。今大会では、禁止改定前でも活躍していた《知りたがりの学徒、タミヨウ》《コーリ鋼の短刀》を採用した形と、《秘密を掘り下げる者》をフル搭載したバージョンの両方が入賞しています。

秘密を掘り下げる者ドラゴンの怒りの媒介者

優勝したのは、《コーリ鋼の短刀》が不採用で《秘密を掘り下げる者》《ドラゴンの怒りの媒介者》をフル搭載した型で、テンポデッキとしての濃度を上げたものでした。

《コーリ鋼の短刀》がない分、コントロールやミラーマッチでは不利になるものの、コンボデッキと《古えの墳墓》デッキには強くなります。カーンフォージといったコンボデッキやエルドラージが多い現環境では、この1マナクロックを8枚搭載したバージョンは良い立ち位置にあります。

☆注目ポイント

邪悪な熱気声も出せない

《バロウゴイフ》など高タフネスのクリーチャーを対処する必要があるため、《邪悪な熱気》は必須となります。

《声も出せない》は興味深いチョイスで、《バロウゴイフ》《濁浪の執政》などの脅威にも対応できます。また、エンチャントなので「昂揚」のカウントが増え、《意志の力》《否定の力》のピッチコストにもなります。

否定の力記憶への放逐紅蓮破

コンボデッキや《虚空の杯》に対応できるように、《否定の力》がメインに1枚、サイドにも2枚と多めにとられています。また、ミラーマッチやコントロールだけでなく、復権したスニーク・ショーなど青ベースのコンボデッキ相手に有効な《紅蓮破》もフルに採用されているなど、複数のデッキに対応可能な構成になっています。

ディミーアリアニメイト

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キーカードの《納墓》が禁止になり、今度こそ環境から姿を消すと思われていたリアニメイトでしたが、形を変えて生き残りトップ8という好成績を残していました。

ただ、《納墓》があったときと異なり、コンボとテンポのハイブリットスタイルを維持するのは難しくなっています。そのため、リアニメイト戦略に重点を置いた戦略になり、墓地対策に弱くなるなど安定性の面では弱体化しています。

☆注目ポイント

染みついた耽溺Careful Study

フィニッシャーを墓地に落とす手段として《染みついた耽溺》が選択されています。《入念な研究》と違って2マナですが、インスタント・タイミングでプレイできるため、「相手のエンド時に《納墓》でクリーチャーを墓地に落として自分のターンにリアニメイトする」という旧環境のリアニメイトに近い動きを再現できるように工夫されています。

残虐の執政官偉大なる統一者、アトラクサ忌まわしき眼魔

ルーティングがフィニッシャーを墓地に送る主な手段となったため、《残虐の執政官》《偉大なる統一者、アトラクサ》の枚数が増量されています。

《忌まわしき眼魔》《濁浪の執政》のようなリアニメイト以外の勝ち手段で、3マナなのでライフが低い状態でも《再活性》できます。

オークの弓使いバロウゴイフ

サイドには、引き続きリアニメイト以外の勝ち手段である《オークの弓使い》《バロウゴイフ》が採用されています。火力で除去されにくく、接死・絆魂のある《バロウゴイフ》は、新環境のトップメタの一角であるイゼットデルバーに非常に強いため、今後も黒いデッキの定番として活躍が期待できそうです。

『レガシー選手権・秋』 -エルドラージが新環境のレガシー選手権を制する-

先週末に国内で開催された『レガシー選手権・秋』。禁止改定直後に開催された大規模なイベントということもあり、注目を集めていたイベントでした。

濁浪の執政最後の審判

ディミーアテンポをハイブリットしたドゥームズデイも入賞しており、新たなレガシーの主要な青黒デッキになるかもしれません。

エルドラージ

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マナ加速を利用して、早い段階から《エルドラージの戦線破り》《現実を砕くもの》といったエルドラージ・クリーチャーで圧をかけていくアグロデッキ。

魂の洞窟コジレックの命令虚空の杯不毛の大地

メインから《魂の洞窟》がフル搭載されているのでイゼットテンポなど青いデッキに強く、《コジレックの命令》《虚空の杯》といった妨害手段もあるため、複数のマッチアップに対応できます。《虚空の杯》《不毛の大地》で相手の動きを止めている間に、《現実を砕くもの》などで速やかにゲームを決めるのが強い動きのひとつです。

☆注目ポイント

荒景学院の戦闘魔道士エルドラージの戦線破りコジレックの命令

《荒景学院の戦闘魔道士》は、《濁浪の執政》をバウンスしたり、《ウルザの物語》《一つの指輪》を追放できたりと、さまざまな脅威に対応できる優秀なエルドラージです。

《エルドラージの戦線破り》は自身に速攻を付与できるため、最低でも実質4/3・速攻・トランプルのクロックとなり、後続のエルドラージにも速攻をつけて一気に畳みかけることができます。また、マナに余裕があれば《コジレックの命令》でエルドラージ・トークンをばら撒くことで打点をさらに上げられます

攪乱のフルート無のロッドフェアリーの忌み者

サイドボードは、スニーク・ショーやドゥームズデイなどのコンボ対策に《攪乱のフルート》、カーンフォージなどアーティファクトデッキ対策として《無のロッド》とまとまっています。

リアニメイトはトップメタから退場したものの、高速リアニメイトコンボに特化した黒単型などは健在なため、《フェアリーの忌み者》など引き続き墓地対策を厚くしていくことが推奨されます。

ドゥームズデイ(テンポ型)

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《最後の審判》はレガシーで長い間使われているコンボデッキで、《暗黒の儀式》などマナ加速からカウンターやハンデスでバックアップしつつ2ターンキルも狙えます。

慣れないうちは《最後の審判》で最適な5枚を選ぶことが難しいため、プレイ難易度は高めです。

不毛の大地知りたがりの学徒、タミヨウバロウゴイフ

今大会で入賞したのは、《不毛の大地》《知りたがりの学徒、タミヨウ》《バロウゴイフ》といったテンポ戦略を採用したハイブリットで、このデッキが苦手としていたイゼットテンポなど、テンポデッキとも互角以上に渡り合えるようになりました。

☆注目ポイント

知りたがりの学徒、タミヨウ知りたがりの学徒、タミヨウ

《知りたがりの学徒、タミヨウ》は除去されずに生き残ればアドバンテージを稼ぐことができ、コントロールのように振る舞いつつコンボの準備を進めることができます。変身すれば[-3]能力で墓地に落ちた《最後の審判》を再利用できるので、妨害されても再度仕掛けやすくなりました。

バロウゴイフ暗黒の儀式オークの弓使い

《不毛の大地》を使いながら攻めるテンポデッキは、このデッキにとって苦手なマッチアップのひとつでした。そのテンポデッキを克服するために一役買っているのが、《バロウゴイフ》です。実際、準々決勝のサイド後でも活躍していました。《バロウゴイフ》《暗黒の儀式》とも相性が良く、1-2ターン目に出せればイゼットテンポにとってかなりの脅威となります。

《オークの弓使い》は変身前の《秘密を掘り下げる者》や、「昂揚」していない《ドラゴンの怒りの媒介者》を除去できるのでコンボまでの時間を稼いでくれます。青いデッキにとって《オークの弓使い》はマスト除去になるため、相手はコンボを妨害するよりも《オークの弓使い》を対処することにリソースを費やすことになり、結果的に《最後の審判》が通りやすくなります

総括

今回の大会結果を見ると、《納墓》《有翼の叡智、ナドゥ》禁止後の環境は、リアニメイトが弱体化した影響で、イゼットデルバーやスニーク・ショーなどが結果を残していました。

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また『レガシー選手権・秋』ではエルドラージが優勝し、ドゥームズデイがテンポ型も含め2名入賞。ほかにも黒単ネクロのような珍しいデッキも準優勝するなど、禁止改定後のレガシーは面白い環境になっています。

今週末に開催される『Eternal Weekend EU』では、どんなデッキが活躍するのか楽しみです。

以上、USA Legacy Express vol. 266でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら