青黒型のオムニテル!?頂点に返り咲くイゼットデルバー【USA Legacy Express vol. 268】

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

納墓有翼の叡智、ナドゥまき散らす菌糸生物Troll of Khazad-dum

▲今年レガシーで禁止になったカード

Asia Eternal Weekend 2025』『THE LAST SUN 2025』も終了し、今年も残りわずかとなりました。2025年のレガシーは複数の禁止改定があり、特に《納墓》《有翼の叡智、ナドゥ》の禁止は大きな変化となりましたね。

さて、今回は上記2イベントの入賞デッキを見ていきたいと思います。

『2025 Asia Legacy Championship』 -テンポデッキの隆盛-

今年も開催された国内最大規模のエターナルフォーマットイベント『Asia Eternal Weekend 2025』。パシフィコ横浜で開催され、参加者は676名と北米やヨーロッパのイベントよりも小規模だったものの、今年は日本国外からの参加者も多く大盛況でした。

今大会での最大勢力はディミーアテンポで、プレイオフにも3名と安定した勝率を維持しています。

さまざまなデッキが活躍する中、優勝を果たしたのはイゼットデルバーを使用していた市村 裕二選手でした。

イゼットデルバー

デッキリストページ

優勝した市村選手は長い間イゼットデルバーを使い続けているプレイヤーで、ほかにもいろいろなデッキを使っているようです。

イゼットデルバーは、除去しづらい《バロウゴイフ》や、《秘密を掘り下げる者》を簡単に処理できる《オークの弓使い》を擁したディミーアテンポとの相性は悪いですが、スニーク・ショー、ドゥームズデイ、The Spyなどコンボデッキに対しては有利に戦えるデッキです。

☆注目ポイント

食糧補充神秘の聖域

市村選手のリストの特徴は、メインから2枚採用されている《食糧補充》です。3マナとテンポデッキが使うスペルとしては少し重くなりますが、アドバンテージを稼ぐことでフェアデッキとの消耗戦に強くなります。

《神秘の聖域》で再利用する動きも強く、《表現の反復》が使えたころのイゼットを彷彿とさせます。また、細かいテクとして《神秘の聖域》で墓地のソーサリーかインスタントをライブラリートップに戻すことで、《濁浪の執政》を強化することもできます。

コーリ鋼の短刀

《コーリ鋼の短刀》がメインに2枚と少なめですが、これは2枚しか持っていなかったことがインタビューにて語られていました。ただ、コンボデッキとのマッチアップでは少し遅いカードになるので、どんなデッキとも当たりうる現環境では、メインから4枚採用しないのも妥当な選択肢だと考えています。

溶融

《溶融》のおかげで、親和などアーティファクトデッキに対してはサイド後かなり有利になります。特にこのバージョンは《神秘の聖域》で再利用もできるので、ほかのフェアデッキよりも《ウルザの物語》デッキは得意なマッチアップになります。

ディミーアテンポ

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禁止改定直後は、イゼットデルバーと比べるとあまり活躍の機会に恵まれなかったディミーアテンポでしたが、環境が進み『Eternal Weekend EU』で結果を残して以来、今大会では最大勢力となり現環境を代表するフェアデッキになりました。

☆注目ポイント

オークの弓使い

《オークの弓使い》はイゼットデルバーやミラーマッチなど、現環境のさまざまな青ベースのデッキに有効なためメイン4枚採用も納得です。

トーラックへの賛歌悪夢滅ぼし、魁渡

最近では《トーラックへの賛歌》を採用したリストも増えてきており、今回入賞したリストにも採用されています。親和などにはあまり強くありませんが、コンボデッキとのマッチアップでは強さを発揮します。フェアデッキに対しても《バロウゴイフ》《濁浪の執政》用に除去など対策カードを手札に温存している相手に有効です。

《悪夢滅ぼし、魁渡》は効果的だったディミーアリアニメイトがトップメタから退場し、イゼットデルバーやコンボデッキなどそこまで有効でないデッキが増えたのもあり、わずか1枚の採用になっています。

殺し

サイドの《殺し》は、対策が困難な《濁浪の執政》やエルドラージとのマッチアップで使える除去です。ピッチコストの4点ライフは痛いですが、展開を遅らせずに脅威を対処できるので便利です。

アゾリウス石鍛冶

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知りたがりの学徒、タミヨウ量子の謎かけ屋溌剌の牧羊犬、フィリア

Eternal Party 2025』でも結果を残していたアゾリウス石鍛冶は、筆者も好きなデッキのひとつで、昔よく使っていました。

《知りたがりの学徒、タミヨウ》《量子の謎かけ屋》《溌剌の牧羊犬、フィリア》といったアドバンテージエンジンを取り入れるなど、現代のカードパワーにアジャストされているのが特徴です。

目くらましもみ消し不毛の大地

過去の石鍛冶デッキは《精神を刻む者、ジェイス》などを搭載したミッドレンジでしたが、最近のバージョンは《目くらまし》《もみ消し》《不毛の大地》を採用したテンポ寄りの構成になっています。

各デッキの勝率をまとめたデータによれば、全体勝率は53%と多数上位入賞していたディミーアテンポよりも高い数値が出ていました。

実物提示教育最後の審判秘密を掘り下げる者古えの墳墓

このタイプのデッキは、フェアデッキに強くコンボに弱いという印象でしたが、《実物提示教育》系やドゥームズデイ、The Spyといったデッキ相手にも高い勝率を維持しています。一方、ディミーアテンポやイゼットデルバーとはほぼ互角のようで、相手のリストやプレイングによって変動しそうです。

苦手なマッチアップは、エルドラージや親和といった《古えの墳墓》デッキになります。

☆注目ポイント

溌剌の牧羊犬、フィリアもみ消し量子の謎かけ屋

《もみ消し》はフェッチランドの起動の妨害以外にも、《溌剌の牧羊犬、フィリア》を疑似的な除去として使用したり、「ワープ」した《量子の謎かけ屋》を戦場に残したりする使い方もできます。予選ラウンドでの配信では、変身した《モンスーンの魔道士、ラル》の奥義を打ち消すという活躍を見せていました。

石鍛冶の神秘家隕鉄剣

新たに登場した《隕鉄剣》は、《石鍛冶の神秘家》でサーチ可能な除去として機能する装備品で、《溌剌の牧羊犬、フィリア》との相性も抜群です。

《実物提示教育》デッキにも強く、相手の《実物提示教育》によって《隕鉄剣》を出せば、《全知》を出されたとしても《引き裂かれし永劫、エムラクール》をプレイされる前に破壊することができます。

Pre-War Formalwear殴打頭蓋

《戦前の正装》《石鍛冶の神秘家》《溌剌の牧羊犬、フィリア》《知りたがりの学徒、タミヨウ》といったクリーチャーをリアニメイトでき、フェアデッキとの消耗戦で活躍が期待できます。

《殴打頭蓋》は定番の装備品で、カードパワーが上がった2025年でも《石鍛冶の神秘家》から2マナで出てくる4/4・警戒・絆魂は強力であり、フェアデッキとのダメージレースを有利にしてくれます。

天界の粛清封じ込める僧侶アゾリウスの造反者、ラヴィニア

サイドボードの選択肢が豊富なとこもこのデッキの特徴です。《天界の粛清》《バロウゴイフ》《悪夢滅ぼし、魁渡》《コーリ鋼の短刀》などさまざまな脅威を処理できる優秀な除去です。

《封じ込める僧侶》はリアニメイト、The Spy、スニーク・ショーなど複数のマッチアップで有効で、《溌剌の牧羊犬、フィリア》と組み合わせることで完全除去としても機能します。

《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》《実物提示教育》系、ビッグマナ系、ストーム系などコンボに有効なヘイトベアーです。

クレイドルコントロール

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ガイアの揺籃の地緑の太陽の頂点

デッキ名にもなっている《ガイアの揺籃の地》によってマナ加速し、ユーティリティークリーチャーでゲームをコントロールしていきます。《緑の太陽の頂点》によって状況に応じたクリーチャーをサーチすることも可能で、複数のマッチアップでメインから対応することができます。

今大会で人気があったディミーアテンポ、イゼットデルバーなど青いフェアデッキに強く、全体で58%と高い勝率を出していました。

☆注目ポイント

聖遺のワイト

『モダンホライゾン3』で登場した《聖遺のワイト》は、警戒で圧をかけながら土地をサーチできる効率的なクリーチャーです。不要になったマナクリーチャーや《ドライアドの東屋》などを生け贄に充て、《ガイアの揺籃の地》《不毛の大地》を持ってこれます。

むかしむかし緑の太陽の頂点
飢餓の潮流、グリスト忍耐溜め込み屋のアウフ森を護る者

《むかしむかし》《緑の太陽の頂点》の2種類のサーチスペルのおかげで再現性が高く、特に《緑の太陽の頂点》《飢餓の潮流、グリスト》《忍耐》《溜め込み屋のアウフ》《森を護る者》など緑のクリーチャーを状況に応じてサーチするシルバーバレット戦術を可能にします。

アナグマモグラの仔不毛の大地

『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』から登場の《アナグマモグラの仔》は、レガシーでも活躍できるスペックのクリーチャーで、デッキ内の複数のカードとシナジーがあります。「土の技」によって《不毛の大地》を再利用したり、《ガイアの揺籃の地》を対象にして相手の《不毛の大地》から一度だけ守ることもできます。また、《飢餓の潮流、グリスト》《聖遺のワイト》のようにクリーチャーを生け贄に能力を起動するカードとも相性が抜群です。

『THE LAST SUN 2025』 -青黒型のオムニテルが活躍-

開催日:2025年12月20日

予選1位 オムニテル

予選2位 アゾリウス石鍛冶

予選3位 スゥルタイテンポ

予選4位 赤単ペインター

予選5位 エルドラージ

予選6位 エルドラージ

予選7位 イゼットデルバー

予選8位 オムニテル

トップ8デッキリスト

先週末に開催された冬の祭典『THE LAST SUN 2025』は、スタンダードとレガシーによる混合フォーマットで競われました。

レガシー部門で最も人気があったのはエルドラージで、メタゲームブレイクダウンによればレガシーに慣れていないスタンダードプレイヤーに人気があったようです。

また『Eternal Weekend Asia』でも結果を残していたアゾリウス石鍛冶も人気があり、上位にも入賞していました。

オムニテル

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《納墓》が禁止になり、リアニメイトがトップメタから姿を消したことは《実物提示教育》デッキにとっては朗報でした。

バロウゴイフ致命的な一押し

《実物提示教育》から《全知》を出し、そこから《引き裂かれし永劫、エムラクール》《偉大なる統一者、アトラクサ》を出して勝利するところはこれまでと同じです。しかし、このバージョンの特徴はサイド後に《バロウゴイフ》が投入され、《致命的な一押し》のような除去でクロックにも対処できるなど、ディミーアテンポのように振る舞えるところにあります。

☆注目ポイント

知りたがりの学徒、タミヨウ古えの墳墓

《知りたがりの学徒、タミヨウ》は序盤にプレイできる柔軟なカードで、ゲームを決めるコンボパーツを集めつつ相手を牽制する役割を担っています。またライフロスは痛いですが、《古えの墳墓》でテンポ良く手掛かり・トークンを起動してドローできます。

バロウゴイフ

サイドの《バロウゴイフ》はイゼットデルバーに特に有効な追加の勝ち手段で、《紅蓮破》《否定の力》といった本来オムニテルに対して有効な妨害スペルの多くを腐らせることができます。

テンポデッキは苦手なマッチアップでしたが、《バロウゴイフ》などフェアな勝ち手段を追加してミッドレンジ寄りに変形するサイドプランを取ることで改善されています。

食糧補充紅蓮破

《食糧補充》《実物提示教育》デッキの復権に貢献したスペルで、コンボのバックアップとなる《意志の力》を探すことができ、《全知》を置いた後も勝ち手段につなげやすくなります。

赤が軽くタッチされていますが《騙し討ち》は不採用で、赤いカードはサイドの《紅蓮破》のみの採用になっています。

スゥルタイテンポ

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ディミーアテンポをベースに緑をタッチしたバージョンで、高橋 優太選手が見事にトップ8に入賞していました。

☆注目ポイント

ウィザーブルームの命令

《ウィザーブルームの命令》は変身前の《秘密を掘り下げる者》《オークの弓使い》などタフネス1のクリーチャーを除去しつつ、墓地に落ちた《不毛の大地》やフェッチランドを回収する動きが強力で、さらに変身後の《知りたがりの学徒、タミヨウ》《虚空の杯》にも触れるなど、対応できる幅が広い非常に優秀なスペルです。

花の絨毯

緑をタッチすることで《花の絨毯》にもアクセスできるようになり、《不毛の大地》《目くらまし》にも耐性がついています。

誉れある死者の目覚め

レガシーでは見慣れないカードも採用されていました。《誉れある死者の目覚め》は『タルキール:龍嵐録』の英雄譚サイクルのひとつで、第Ⅰ章で土地以外のパーマネントに触れる便利なカードです。《隕鉄剣》と同じく、相手の《実物提示教育》に合わせて出すことで、優先権を渡す前に《全知》を割ることもできます。

総括

秘密を掘り下げる者実物提示教育石鍛冶の神秘家アナグマモグラの仔

今月開催された大規模なイベントの結果から、《納墓》《有翼の叡智、ナドゥ》禁止後のレガシーは多種多様なデッキが活躍する良環境であることが確認できました。

『Eternal Weekend Asia』は筆者も参戦しましたが、残念ながら成績のほうは振るわなかったものの、日本のレガシープレイヤーのみなさんや、普段からこの記事を愛読してくださっている読者の方々と交流が持てたことは良い旅の思い出になりました。声をかけていただいたみなさん、いつも記事を読んでいただきありがとうございます。来年もレガシーの情報をお届けしていく予定なので、よろしくお願いいたします。

USA Legacy Express vol. 268は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。みなさん良いお年を!

この記事内で掲載されたカード

Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら