ヴィンテージ神挑戦者決定戦top8入賞レポート
もし「マジックで勝つために生まれ変わるとしたら、ゴリラと人間どっちがいいですか?」と聞かれたら、1000人中999人が人間と答えるだろう。より優れた頭脳を持っているのは人間だからだ。
しかし、マジックの深淵ことヴィンテージにおいてはどうだろうか。長年この沼底に浸かり続けていたアビスの住人に対し、そこまで優れているわけではない頭脳で新参者が立ち向かうのはいささか無謀ではないか。
とはいえ人間とゴリラ。 この2種を比較してゴリラが圧倒的に優れているものがある。
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— トロピ大塚🌴晴れる屋MTG (@Tropi_Otsuka) January 9, 2026
そう、パワーだ。
男性の握力の平均は45~50kgと言われている。対してゴリラは400~600kg。実に10倍ものパワーを持っている。
《Black Lotus》《Ancestral Recall》《Time Walk》《Moxen》……俺はこれだけで満足していた。だが足りない。
足らぬを知った俺は、あまり使わないカードを24万円ほど売り払って旅の資金の足しにし、サブサハラ・アフリカの奥地へ真のパワーを追い求める旅に出た。そして力を手に入れることができたのだ。
俺はゴリラになった。
触れざる、白
そうして組み上げたのがこのデッキである。
Tier1の青黒ルールスに白を足した、「エスパールールス」だ。デッキとしてはコントロールに分類される。
ゴリラもコントロールは握れる。「日光おさるランド&アニタウン」のコラムによれば、
平和主義で弱いものいじめをしないゴリラ。
無駄な戦いはしないように和解するコミュニケーション能力があります。
日光おさるランド&アニタウン『チンパンジー・ゴリラ・猿で違いを比べてみた!』より引用
――という知性あふれる一面があることがうかがい知れるのだ。
ただ環境的には青黒2色にまとめた形の方が結果を出している。わざわざ白を入れる必要がないんじゃないか? と思うかもしれないが、タッチするメリットは十分にある。
メリット:除去が強い
MTG史上最強の除去である《剣を鍬に》が採用できる。《まばゆい肉掻き》やイニシアチブクリーチャーを特に準備なしで1マナで倒せる上、再利用を許さない。
またエンチャントとアーティファクトを楽に対処できるのも魅力だ。
《ドルイドの誓い》《ウルザの物語》《Time Vault》などをはじめ、この世の終わりみたいなカードはたくさんある。青黒だと打ち消すしかないが、白なら別の手段で対処可能。
アーティファクト中心のデッキには、《浄化の印章》を《夢の巣のルールス》で使いまわすことでも勝つことができる。
メリット:メタカードが強い
特にどのマッチでも輝くのが《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》。相手のピッチスペルやMox系を封殺できる、先手でマウントを取る数少ないカード。対処手段も限られている。
デカいアーティファクトを使いがちなジュエル系とのマッチでは一番嬉しいカードで、イージーウィンも起こりやすい。
そしてサイドの《封じ込める僧侶》。苦手なドレッジやオース系相手の不利を改善してくれる。
ディミーアルールスで使用される《イクスリッドの看守》と比べると、瞬速を持つことで隙なく出せて相手に損させやすいうえ、最近増えてきたリアニメイト相手にも都合がいい。
こう見るとエスパーの方が優れているような気がしてくるが、デメリットもそれなりにある。
デメリット:マナベースの貧弱さ
ヴィンテージでも色マナに困ることあるの?と思うかもしれないが、大アリである。
なぜならMoxがある関係で土地カードは18枚、うち色マナを直接供給するのは12枚と枚数が絞られており、フェッチランドは6枚しかない。
しかも《不毛の大地》が実質5枚入れられる環境。多くのリストでは《Tundra》+《Underground Sea》計6枚と《島》が色マナ源で、白マナを《不毛の大地》で執拗に狙われて《剣を鍬に》がまったく撃てない!ということもよくあるし、色が多いぶん、マリガン回数も増えてしまう。
エスパーをあきらめた人は、このマナベースの弱さからくるストレスにやられたのだろう。
だが、カードパワーの面で言えばエスパーの方が上だ。ゴリラならエスパーだ。未熟な自分にとっては、事故ったとしてもダメで元々。メタカードでイージーウィンできる要素が少しでも増えて、少々のミスをカバーしてくれる方が勝ち目がある。
甘えんぼう、ゴリラ
実践・練習する時間はなかったので解説記事で座学に臨む。
するとちょうど「Asia Eternal Weekend 2025」を青黒ルールスで優勝したKaBiさんの記事を発見。
「後手で勝つ」思想など、興味深く、すぐ使える知見が豊富に詰まった珠玉の記事であった。
大事にしている事は「後手で勝つこと」です。「ヴィンテージは先攻有利」とよく言われますが、そんな中でも【UB Lurrus Control】は、《否定の力》を核とした”受けるデッキ”であり、環境内で「最も後手でも勝てるデッキ」と言えます。それにもかかわらず75枚を先攻で強いカードに寄せてしまうと、他のアグレッシブなデッキと同様、ゲーム前のダイスロールに身をゆだねるような事態となってしまいます。
メチャクチャ助かる~~~!!と思いながら読み進めていったが、苦労して手に入れた《Timetwister》についての解説には衝撃の言葉がつづられていた。
このカードの採用経緯に「デッキ内で大技を持ちたい」という意見を耳にしますが(自戒を込めて)ハッキリ言います。「(良い面だけ見て)ラクをしたい」という甘えです。大技不要で勝つから”テンポ”であり”コントロール”です。
ゴリラになっちゃ……ダメなのか!?
(※編集注:この時点ですでにトロピ大塚は《Timetwister》を購入していたので、すでに見た目はゴリラであった。)
記事の中で冒頭から説かれていた「後手でも勝つ思想」に深く賛同していたので、この一節は非常に自分を悩ませた。
ゴリラか、Noゴリラか。
《Timetwister》は紛れもなくパワー9最弱カードであり、相手を有利にしてしまう一面もある。そのためゴリラ不要論はかなり納得できる話だ。
メインに1枚採用されるケースが半々と言った所でしょうか。個人的には【UB Lurrus Control】が取り得るプランの全てにほぼ貢献しない為、採用は今の所考えていません。
《オークの弓使い》+《Timetwister》、通称オークツイスタープランを生み出す変わりに、単体で実質何もしないカードをデッキに詰んでいる事になり、このカードの採用にはただならぬ犠牲を伴っています。
ただ、これまで「Noゴリラ」で何度かヴィンテージ神に臨んできたが、あと一勝が足りずに決勝に進めなかったことが3度あった。
やはり最後、あと一歩俺に必要なのは力。更なるパワーなのではないか?
そういうわけでゴリラが足を引っ張る展開が訪れるのではないかという不安を感じつつも、「Yesゴリラ」で本選に臨むことにした。
ちなみにKaBiさんの記事はかなり奥深い知見を与えてくれるため、ぜひヴィンテージ勢には読んでいただきたい。一応100%《Timetwister》を否定しているわけではなく、
1点、【UB Lurrus Control】は、現在のヴィンテージのメタゲームにおいて、《Timetwister》をちゃんと使えるほぼ唯一のデッキです。”減価償却”的な意味を含め「《Timetwister》を唱えたい」という理由の採用であれば、私は心から肯定します。「古えの魔法を唱えたい」はヴィンテージをやる上で大事且つ重要な動機です。
―― といったように使いたいという思いも尊重されている。
大会当日
というわけでいざ本選!予選ラウンドの内容は印象深いものだけピックアップする。
第1ラウンド
初戦はいきなりエスパールールスミラー。
ヴィンテージにはゲーム前から駆け引きが存在する。それが「ルールスを相棒として公開するか、しないか」だ。 ルールスを公開してきた場合、相手はたいていひどいデッキだ。ルールスを公開しなかった場合、もっとひどいデッキだ。
ルールスがいない場合、1ターン目からとんでもない展開をされる恐れがあるので、ピッチの打ち消しは持っておきたい。ルールスがいる時は除去やクリーチャー、アドバンテージを得られるカードがキープ基準になる。
エスパールールスのミラーはまさに「スキルマッチ」だが、お互いダブルマリガンの立ち上がり。
こちらのハンドはフェッチランド、《Black Lotus》、《オークの弓使い》、《超能力蛙》、《剣を鍬に》。
ミラーマッチはいかに《超能力蛙》をうまく使うかがキモ。この初手ではクリーチャーをいきなりすべて出して楽なゲームをしたいところだが、下手に動いて打ち消されるとその時点で敗北濃厚なので、「こっちも打ち消しありますよ」の顔で安定したマナベースが揃うまで仕掛けるのは我慢することにした。
すると相手も苦しかったのか、2ターン目に《Timetwister》!奇しくも同じゴリラの構え。だが……
我慢したかいがあった。合わせた《オークの弓使い》が通ってしまい、8点ダメージ+合計9点クロック。そのまま勝ってしまった。
やはり《Timetwister》、恐ろしいカードだ……
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— トロピ大塚🌴晴れる屋MTG (@Tropi_Otsuka) January 9, 2026
(※編集注:唱えたのは対戦相手です。)
第3ラウンド
その後2-0でむかえた3戦目の相手は《ドルイドの誓い》コンボ。 サイドに《封じ込める僧侶》があるとはいえ、ルールスコントロールが苦手とするマッチアップだ。
一戦目は《超能力蛙》でちくちくアドバンテージを取っていったものの、知恵の比べ合い・打ち消し合戦の末《ドルイドの誓い》が通ってしまう。

だいたい《偉大なる統一者、アトラクサ》がでてくる
やばい、誘発させる前に勝たなければ……!でも相手のライフは13もある……! というところで引いたのは《悪魔の教示者》。何を持ってくれば勝てる? 場には1/2の《超能力蛙》と《白鳥の歌》で出てきた2/2鳥トークン。 手札は4枚、マナは5マナ出る。
考え抜いた末、《悪魔の教示者》を使い、サーチしたのは《Timetwister》。 さっきまでは頭脳戦だったな。
だがここからはパワーだ!
まず《Timetwister》以外の手札を《超能力蛙》の効果で捨てて5/6に。そして《Timetwister》を撃ち、手札を7枚まで補充! その後7枚の手札をすべてつぎ込み《超能力蛙》を11/12にし、鳥トークンを含め13点!!
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やはりゴリラなんだよ!ヴィンテージは!!!
(※ちなみにマッチでは敗北)
第6ラウンド バブルマッチ
そして、「ここで勝てば次のラウンドでIDが可能になる」6回戦目。相手は逆説ルールス。
Moxや《太陽の指輪》など軽いアーティファクトを並べつつ、《逆説的な結果》で大量のアドバンテージを得て勝利するスペル中心のコンボチックなデッキ。
このマッチでは相手の方がアドバンテージ源が多く、「グダると負ける」。序盤からクリーチャーで攻めて時間を与えないか、アーティファクト対策をしっかり通して動きを止めるのが重要な相手だ。
――このマッチでは最高のゴリラムーブが決まった。
先攻1ターン目に《Mox Sapphire》!《Mox Pearl》!《不毛の大地》! からの《Timetwister》!
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ゴリラパワーで強制マリガンさせてTop8進出が決定!!
【#神決定戦】
— 晴れる屋メディア (@hareruya_Media) January 11, 2026
『第29期ヴィンテージ神挑戦者決定戦』7回戦を勝ち抜き、トップ8に残ったのは以下のプレイヤーです!
Sawatari Kai
Takahashi Kenta
Hagimori Kaku
Ishizaka Kevin
Hisaki Yu
Tropi Otsuka
Tsumori Yohei
Kitano Takatoshi#MTG #ヴィンテージ pic.twitter.com/XdBId2vomK
ゴリラ V.S. 機械の兵士
【#神決定戦】『第29期ヴィンテージ神挑戦者決定戦』
— 晴れる屋メディア (@hareruya_Media) January 11, 2026
準々決勝がはじまります!
元ヴィンテージ神と”トロピ大塚”の注目のマッチです!
Hagimori Kaku(ジュエルショップ)
vs.
トロピ大塚(エスパールールス)
📹配信ページhttps://t.co/wdn93JbX7C pic.twitter.com/KJKkGmkluf
準々決勝はいいところなく負けてしまいTop8で敗退。
1ゲーム目は結構どうしようもないかなと思ったが、2戦目はもっとやりようがあった。
ミス:《記憶への放逐》の当て所
《Mox Ruby》→《古えの墳墓》からの《太陽の指輪》と動いてきたので、4マナのアクションにつながることを嫌って、《太陽の指輪》に《記憶への放逐》を撃った。
《記憶への放逐》2枚と《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》というハンドだったので、《太陽の指輪》は打ち消さずに堪えて、その後の動きに《記憶への放逐》を合わせて返しに《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》で事故らせるプランの方が一貫性があった。
※このあと《磁石のゴーレム》が出ることになるが、ゴーレムが出たことでラヴィニアを出せず、結果的によりマズイ《アージェンタムのマスティコア》を《記憶への放逐》を構えて対処できたため、結果としてこのミスは良い方向に働いてはいた。
ミス:相棒をチャンプブロッカーにする発想がなかった
対戦相手が《Time Vault》を置いてターンを回したので、《真髄の針》で止めてターンを返した。
ここでは《夢の巣のルールス》を手札に加えるべきだった。《磁石のゴーレム》を除去できるカードを引くのを待っていたが、、《夢の巣のルールス》をこのターンに手札に加えていれば、1ターン早く《夢の巣のルールス》を戦場に出し、《磁石のゴーレム》との相打ちを狙いつつもっとライフを高く保つことができていたはず。
これはこの時点で「相棒で相打ちするプラン」がそもそも頭になかったので、明確に経験不足。ヴィンテージという常識が通じない場にいるんだという危機感のなさが招いた結果だった。
ミス:希望を失った
相手の《磁石のゴーレム》のアタックに対し、《オークの弓使い》の登場時1点+2体ブロックで相打ちを取った。
この場面では、相打ちせずに《オークの弓使い》を残しておけば、すでに相手の戦場にあった《一つの指輪》起動へのプレッシャーをかけられて逆転の余地があった。
正直、この時点であきらめの気持ちがあり、《磁石のゴーレム》の苦しみから解放されたい一心で、短絡的なプレイをしてしまった。
展望
などなど、見返すと反省点が盛りだくさん。勝てたかはわからないけど、3箇所もミスっているようでは神にはなれない。

《怒り狂うゴリラ》
ゴリラもお怒り
というわけで初めて神挑戦者決定戦でTop8に進出しました! 長らくあと一歩届かなかった目標だったので嬉しい!!
同時に悔しくもあったので、次回も継続して挑戦は続けたい。今度は神になることを目標にします!!!
また、この記事がためになった、面白かったと思ってくれたならぜひ、《Timetwister》を買ったことを奥様に内緒にしてください。
それがゴリラの願いです。



































