禁止改定のあれこれ
お疲れ様です。増田(@tensai_manohito)です。
5月18日に発表された禁止制限告知ですが、大方の予想に反して各フォーマットに大幅なテコ入れが行われました。
「実際に環境に与える影響」という観点で見ると、かなり大きな変化が起きそうです。
いろいろなフォーマットを触っている身として、そのあたりの影響をざっくり整理していきます(※パウパーについては割愛します)。
パイオニア
《コーリ鋼の短刀》:禁止
パイオニアは一見するとバランスの取れた環境だったように見えますが、実際には「イゼット果敢」が最強でした。
その理由は、《コーリ鋼の短刀》による継続的なリソース供給に加え、《没頭》の登場によって弱点であったリソースの不安定さが解消された点にあります。
《没頭》の登場前から振り返ると、《コーリ鋼の短刀》に弱いミッドレンジ系のデッキは環境からほとんど姿を消していました。
唯一、《選別の儀式》を採用できるゴルガリミッドレンジのみが生き残っていた状況です。
その結果、環境は歪み、各デッキは明確にイゼット果敢対策へと寄せていきました。
アゾリウスコントロールはメインから《一時的封鎖》や《真昼の決闘》といった対策カードに枠を割き、《跳ねる春、ベーザ》の採用枚数も増加しています。
また、黒系のデッキも《集団疾病》や《悪性の疫病》といったピンポイント対策を採用するようになっていました。
しかし、《没頭》の登場によって状況は一変します。
これまでの弱点であった「リソースの不安定さ」が解消されたことで、デッキの完成度が一気に引き上げられました。
もともと、イゼット果敢のリソース獲得は《実験統合機》や《熾火心の挑戦者》に代表される、いわゆる“衝動的ドロー”が中心でした。
この性質上、めくっても唱えられない重いカードや打ち消し呪文とは相性が悪く、全体除去やコンボデッキに対して不安を抱えていました。
ですが、《没頭》は必要なカードを手札に確保できるため、こうした弱点を大きく改善してくれます。
その結果、《迷える黒魔道士、ビビ》のような単体でインパクトのある重いカードや、《スパイダーセンス》《侵襲手術》といった打ち消しを無理なく併用できるようになり、対策されていたはずの構造そのものを乗り越えるにいたりました。
アグロ並みの速度を持ちながら、《コーリ鋼の短刀》と《没頭》によって中長期戦のリソース勝負にも強い。さらに、従来苦手としていたコンボデッキに対しても打ち消しで対応可能に。
つまり、明確な弱点がほぼ存在しない状態にまで到達していたといえます。
そのため、一強環境への突入は時間の問題であり、今回の禁止は納得感のある調整といえるでしょう。
個人的な感想としては少し早い気もしますが、自浄作用が働くレベルではない=現行プールでは対策は難しいと判断されたのであれば、致し方ないとも思います。
《コーリ鋼の短刀》の禁止による影響は非常に大きいです。
「イゼット果敢」というアーキタイプ自体は残ると考えられますが、リソース供給の中核を失ったことで、これまでのような安定感は失われるでしょう。
そのため、少なくともTier1の座からは後退すると見るのが自然です。
Tier1から陥落するとはいっても、《真昼の決闘》や《選別の儀式》といった専用対策の採用率が落ちれば、相対的にポジションが良くなる可能性はあるでしょう。
《没頭》を採用していない理由ですが、《コーリ鋼の短刀》があれば《考慮》や《手練》を連打するだけでも戦場にクリーチャーを追加し続けることができましたが、それがなくなったいま、純粋にクリーチャーの枚数を増やす必要があります。
クリーチャーを増やした結果、インスタント・ソーサリーの枚数が確保できなくなったので、《没頭》は不採用としています。
その代わりとなるリソース源は、《実験統合機》+《ブーメランの基礎》と《熾火心の挑戦者》に任せています。
ラクドスミッドレンジ
《選別の儀式》が必須でなくなったということは、ミッドレンジにゴルガリ以外の選択肢も生まれます。
パイオニアの王、ラクドスミッドレンジが再び日の目を浴びるかもしれません。
イゼットフェニックス 《コーリ鋼の短刀》なし
イゼットフェニックスも復権しそうです。「《コーリ鋼の短刀》を使うならイゼット果敢でいいのでは?」とはもう言わせません。
このデッキも《コーリ鋼の短刀》は採用していましたが、もともと選択肢が多すぎて《コーリ鋼の短刀》の枚数を絞っているリストもあるくらいです。
除去コントロール的な側面が強いので、《コーリ鋼の短刀》の禁止は相対的に見ればプラスに働きそうです。
ディミーアバウンス
「ディミーアセルフバウンス」は注目株です。
除去コントロールにもかかわらず《コーリ鋼の短刀》に触ることができなかったため、イゼット果敢との相性は最悪でしたが、禁止によって相性は改善されそうです。
モダン
《火の怒りのタイタン、フレージ》:禁止
《火の怒りのタイタン、フレージ》はモダン最強のクリーチャーです。
いつ禁止にされてもおかしくないと言われ続けてきたクリーチャーですが、とうとうモダンで禁止になってしまいました。
《フレージ》は単なる高性能クリーチャーではなく、ライフゲイン・除去・クロックを1枚で完結させるカードです。
公式記事でも説明があった通り、《栄光の闘技場》との組み合わせはライフを詰めるクリーチャーデッキすべてを否定するレベルでした。
そのような環境のなかで、近年のモダン上位はボロスエネルギーの苦手なコンボ・アンフェアデッキが占める割合が非常に大きかったです。
それでもなお、一定以上の勝率をキープし、環境上位に君臨し続けていたボロスエネルギーの地力の高さが伺えます。
《火の怒りのタイタン、フレージ》の禁止によってボロスエネルギーは大きく弱体化するでしょう。これによって「除去に弱い普通のアグロ~ミッドレンジ」になりました。当然の調整といえるかもしれません。
序盤最強の《魂の導き手》《オセロットの群れ》が存在するデッキに、墓地対策をサイドインせざるを得ないというのは、冷静に考えると不自然な状態でした。
マルドゥエネルギー (禁止改定後ver.)
《フレージ》を《死の飢えのタイタン、クロクサ》に変更することでそれっぽい感じにはなりますが、それっぽい感じになるだけです。
本命はボロスのまま《フレージ》を別のカードに差し替える形になることでしょう。
ボロスエネルギー (禁止改定後ver.)
すでにMagic Onlineの『Modern League』では、《火の怒りのタイタン、フレージ》禁止後のボロスエネルギーが結果を残しています。
《フレージ》の代わりに、《イーオスのレインジャー長》などの別の重いカードに置き換えられていました。
やはり、今まで通りとはいかないようです。これまでのボロスエネルギーとは別物として考えたほうがよいでしょう。
ジェスカイブリンク (禁止改定前)
ジェスカイブリンクもまた《火の怒りのタイタン、フレージ》に支えられてきたデッキです。消滅は避けられないでしょう。
代わりに《火の怒りのタイタン、フレージ》を採用しないエスパーブリンクに、そのシェアを明け渡すことになりそうです。
もしくは、それに近しい構造をしたエスパー御霊に変化していくかもしれません。加えてアゾリウスブリンクも結果を残しています。いろいろなアプローチが考えられそうですね。
エスパーブリンク・アゾリウスブリンク (禁止改定後ver.)
また、《火の怒りのタイタン、フレージ》を採用するデッキの多くが白系であったことから、それらで使われていた《空の怒り》の採用枚数は、一時的に減少すると予想されます。
この影響で恩恵を受けるのが「親和」です。
親和 (禁止改定後ver.)
親和はもとから最強格のデッキでしたが、キラーカードが減ればそれはもう無敵です。
後述する《暴力的な突発》の禁止解除によって復権するであろうティムールカスケードに対しては《仕組まれた爆薬》が、リビングエンドに対しては《トーモッドの墓所》が有効なため、机上では最強にも見えます。
そうなると再び《空の怒り》の採用率は上がるでしょうし、《溶融》《粉砕の嵐》《引き裂く突風》のような別のキラーカードが使われる可能性もあります。
今後のメタゲームにも注目です。
《睡蓮の原野》:禁止
影響のあるデッキはアミュレットタイタンくらいでしょうか。
《睡蓮の原野》は《風景の変容》を経由することで序盤から爆発的なマナを生み出し、そのまま《事件現場の分析者》+《変容する森林》によるループを実現します。
《睡蓮の原野》を失うことで《風景の変容》の採用価値が下がり、2022年ごろの構成に戻ると予想されます。
アミュレットタイタン (禁止改定後ver.)
《風景の変容》は速度を出すために必要でしたが、コンセプトが失われるわけではありません。
アミュレットタイタンには愛好家が多く存在し、愛好家が存在する限りアミュレットタイタンは不滅です。
《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《イリーシア木立のドライアド》には懐かしさすら覚えますが、フィニッシュ手段については今後いくらでもアップデートされる可能性があります。
どのように進化していくのか、今後にも期待です。
《暴力的な突発》:禁止解除
当時の「リビングエンド」はまさに最強です。
0マナで《悲嘆》による手札破壊や《緻密》《否定の力》による打ち消しを行い、3ターン目には《死せる生》で戦場を洗いながら、20点近くのクロックを叩き出す無法デッキでした。
「ティムールカスケード」もまた最強のフェアデッキであり、シンプルながら極めて高い完成度を誇っていました。
しかし、現在のモダンは当時と比べて大きく高速化しています。
1ターン目から強いアクションが求められる環境において、3ターン目以降しか動けない構造がどこまで通用するかは未知数です。
とはいえ、《暴力的な突発》によるインスタントタイミングの仕掛けは強力であり、戦略の柔軟性は確実に向上しています。
リビングエンド (禁止改定後ver.)
《暴力的な突発》による裏仕掛けが可能になったため、相手ターン→自分のターンと2連続で仕掛けられます。
《幽愁》や《ベイルマークの大主》などの相性の良いカードが増えたので、いろいろと試してみたいですね。
カスケードクラッシュ (禁止改定後ver.)
「続唱」呪文に《献身的な嘆願》を使う必要がなくなり、バントカラーから再びティムールカラーに戻ります。
《梅澤の十手》:禁止解除
2マナで設置、2マナで装備。
いくら効果が強くても、現代モダンにおいてはやや重さが目立ちます。
装備したクリーチャーが攻撃し、なおかつ除去されないことで初めてアドバンテージを得られるため、現在のカードパワー水準では厳しい側面もあります。
そのため、環境への影響は限定的になると考えられます。
レガシー
《地底街の密告人》:禁止
The Spyは「高い再現性」で「1ターンキルが可能」かつ「対策をすり抜ける柔軟性」も持ち合わせていた最強のアンフェアデッキです。
“上振れたら1キルができる”という単なるコンボデッキではなく、安定して1ターンキルを狙える構造を持っていたことが最大の問題でした。
今まで規制されていなかったことが異常といえるレベルであり、今回の禁止によって再現性は大きく低下します。
新たに構築する場合、《証拠隠滅》や《陽気な哀歌》などを採用することになりますが、どれも《むかしむかし》でヒットしないため、初手の安定性はどうしても落ちます。
結果として、デッキ全体としてのパワーも抑えられることになるでしょう。
The Spy (禁止改定後ver.)
《むかしむかし》が使えなくなったので、緑のカードカウントを確保できない=《活性の力》が使いにくいため、サイドについても考え直す必要がありそうです。
サンプルリストでは別軸の勝ち手段として《ゴブリンの放火砲》にオールインするタイプを紹介しましたが、《バロウゴイフ》などを使ったストンピィプランも考えられます。
また、ほかのデッキ視点でも変化があります。
これまでは《意志の力》を使えないデッキでは必須だった0マナ墓地対策(主に《虚空の力線》)に頼らなくてもよくなるため、サイドボードの自由度が上がるのは間違いありません。
エルドラージ (禁止改定後ver.)
The Spy対策に《虚空の力線》を採用する必要がなくなったため、汎用墓地対策である《大祖始の遺産》に変更しています。
ほかには《未認可霊柩車》など、別の墓地対策も選択肢にあがります。
おわりに
今回の禁止改定による各フォーマットへの影響について私の見解をまとめました。
全体としては、これまで環境を支えていた強力な要素が整理され、各フォーマットともにメタゲームが大きく動く可能性があります。
特にモダンはこれまで抑え込まれていたデッキの復権や、新たなアーキタイプの台頭が期待されます。
今後の大会結果やリストの変化にも注目していきたいところです。

































































