正気を奪って勝機を掴め!青黒ミッドレンジ!

John Rolf

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2018/11/20)

はじめに

先日行われたプロツアー『ラヴニカのギルド』で、マイケル・コクラン/Michael Cochran, ジェイコブ・ナグロ/Jacob Nagro, マーク・ジェイコブソン/Mark Jacobsonと僕は、《正気泥棒》を使った革新的な青黒ミッドレンジを使用しました。

正気泥棒

僕は運悪くすぐにドロップしてしまったんですが、他のチームメイトは幸運に恵まれていたようでした。特にマークはトップレベルのプレイをしたこともあり、バブルマッチで負けてしまったものの、スタンダード部門で7-3という成績を収め、トップ8にあと一歩のところまで行ったのです。

この青黒ミッドレンジはプレイしていて非常に面白いですし、スタンダードらしからぬ独特な動きを見せます。《正気泥棒》はとても強力なカードなのです。そこで今回の記事では、僕たちのチームがどうやってこのデッキにたどり着いたのかを概観し、最後にはサイドボーディングについても紹介します。

デッキが完成するまで

まずは僕たち4人がプロツアー使用したデッキリストをご覧いただきましょう。

すぐにお気づきになったと思いますが、皆さんが想像するような通常の青黒デッキではありません。公式カバレージはコントロールデッキだと思っていたようですが、このデッキはミッドレンジです。確かに初期の段階ではもっとコントロール寄りのもので、《虚報活動》《悪意ある妨害》《血の刺客》がそれぞれ4枚ずつ入っていました。ただ、あまりにも受動的すぎるデッキだとすぐに気づいたのです。コントロール寄りのものですと、盤面をほぼ完璧にコントロールしていることが必要で、少しでもそれができないと「破滅」的になります(《破滅を囁くもの》にかけたわけではなく、本当に破滅的なのです)。

破滅を囁くもの最古再誕

また、青黒はゲームを勝ちきることも難しいという弱点がありました。デッキには手札破壊呪文や《潜水》といったゲーム終盤で引いても弱いカードが多かったため、マナフラッドに弱かったのです。そこで《破滅を囁くもの》《最古再誕》の強さに気づくことができました。《破滅を囁くもの》は1枚挿しの構築と相性が良く、《最古再誕》は3:1交換をしつつ《殺戮の暴君》を除去できるカードだったのです。また、《最古再誕》は従来からデッキに入っていた手札破壊呪文や全体除去と相性が良いのも評価の対象でした。

初期の頃は《夢喰い》を入れることが多かったのですが、6マナは重すぎるという結論になりました。また、《翡翠光のレインジャー》《ゴルガリの拾売人》といったバウンスさえしたくないカードが環境に多くいたことも、抜くことになった要因でした。

正気泥棒人質取り

チーム内のメンバーは青黒に興味を示していたものの、しばらくのあいだ僕だけは青黒にまったく興味が持てませんでした。明らかに何かが欠けていたのです。そこで私は青黒マスターであるマイケル・コクランに今までの経緯を伝えるとともに、アドバイスをもらいに行ったのです。

マイケル・コクランはずっと青を愛してきたプレイヤーであり「《正気泥棒》《人質取り》を使えば、君が抱えていた問題は大体解決できるだろう」とすぐにアドバイスしてくれたのです。最初は的外れな助言だと思っていたのですが、実際に試してみると彼が正しいのだとわかりました。なかでも《正気泥棒》は”ぶっ壊れ”だと思いました(特に先手の場合)。一度でも攻撃が通ってしまえば、非常に優位に立ったような感覚になったのです。

潜水思考消去強迫

また、僕は絶対に《破滅を囁くもの》の枚数を増やしたかったので、最終的に4枚まで増やしました。こうして追加したクリーチャーたちがデッキの核であることがわかってきたため、《思考消去》《強迫》に加えて、クリーチャーを守る手段として《潜水》を2枚入れることにしました。マナフラッドに対する弱さに関してはまだ解決できていなかったため、最終的に《虚報活動》をデッキに戻すことにしました。そしてジェイコブソンとナグロも青黒を使うことになり、彼らはデッキのカードの採用枚数に見事な調整を加え、そのおかげで最終的なデッキにたどり着くことができたのです。

青黒ミッドレンジのこれから

プロツアーに向けて良いデッキができたとはいえ、プロツアーはその場限りのものです。スタンダードは常に変化してきます。使うデッキもそれに対応して進化していかなければなりません。しばらくすれば、青黒系のデッキがメタゲーム上どういう立ち位置になっていくかはっきりしてくることでしょう。とはいえ、 僕は青黒の行く末を楽観的に考えていて、これからも環境トップに居続けるだろうと思っています。八十岡翔太もプロツアーで《破滅の龍、ニコル・ボーラス》のために赤をタッチした青黒を使って7-3という成績を収め、青黒の可能性を示してくれました。

破滅の龍、ニコル・ボーラス

彼のデッキリストは、コントロール寄りの青黒が使いたい人にとって良い出発点となるのではないかと思います。 《破滅の龍、ニコル・ボーラス》は能動的に動ける優秀な4マナ域であり、純粋な青黒コントロールに欠けていたものを埋めるカードでした(《人質取り》もこれと似た働きをしてくれます)。青黒の魅力は明白で、《思考消去》・全体除去・強力なフィニッシャーにあります。《煤の儀式》《黄金の死》は、白ウィニーであふれかえるメタゲームで非常に心強いカードとなってくれることでしょう。

青黒ミッドレンジを使用するべきタイミングかどうかは、そのときのメタによりますが、個人的には青黒ミッドレンジがメタに合わせて進化していくことを楽しみにしています。ひとつ注意するとすれば、青黒というデッキを早々に諦めないことです。このデッキは正しくプレイするのは非常に難しいですからね。《正気泥棒》《人質取り》《破滅を囁くもの》をプレイするタイミングはもっとも重要であり、ひとつでも間違えてしまうと負けに繋がることさえあります(ソースは僕です)。全体除去を使うタイミングさえも判断が難しいですね。《黄金の死》に関してはあまり欲張らないようにしましょう。

こういったタイミングについて何かアドバイスできればいいのですが、あまりにもゲーム展開に依存しているためお教えできないのです。ただ幸いにも、《強迫》《思考消去》があれば相手の手札がわかるため、カードをプレイするタイミングがわかりやすくなります。手札破壊呪文がない場合は、《潜水》でクリーチャーの安全を確保すると良いでしょう。プレイに関してヒントが欲しいのであれば、プロツアーのマークのフィーチャーマッチをご覧になることをおすすめします。プロツアーでの彼のプレイングにはいつも驚かされるばかりした。

薬術師の眼識煤の儀式呪文貫き

今後どうやってアップデートしていくかですが、先述のマナフラッドの問題を解消するために《薬術師の眼識》を1枚入れることをおすすめします。また、プロツアーのトップ8に白ウィニーが6つも入ったことから、メインデッキに3枚目の《煤の儀式》を入れましょう。

また、白ウィニーや赤系のデッキが増えるのであれば、試験的に《潜水》ではなく《呪文貫き》を試してみたいと思っています。《呪文貫き》《潜水》と同じ役割を果たせることも多く、かつ環境を定義づけている《ベナリア史》《実験の狂乱》をカウンターすることもできるのです。《呪文貫き》と入れ替える大きなデメリットは、《貪欲なチュパカブラ》や長期戦に対して弱くなることです。そのため、入れ替えるのであれば慎重に判断しましょう。

下に記載したデッキリストは今後僕がスタート地点として使うものであり、サイドボードガイドも合わせて書いておきました。相手のカードで相手を倒す快感をみなさんもぜひ味わってみてください!

サイドボードガイド

白ウィニー/白ウィニータッチ赤(互角か若干有利)

対 白ウィニー/白ウィニータッチ赤

Out

正気泥棒 正気泥棒 正気泥棒 正気泥棒
潜水 潜水 最古再誕 虚報活動

In

否認 否認 渇望の時 渇望の時
黄金の死 一瞬 強迫 菌類感染
菌類感染黄金の死煤の儀式

《菌類感染》と全体除去がこのマッチアップでのベストカードになります。全体除去は相手に大打撃を与えられるため、《発見+発散》で積極的に探しに行きましょう。ゲーム序盤の《人質取り》の使い方ですが、すでに劣勢である場合は騎士トークンのようなちょっとしたクリーチャーに使って構いません。また、《煤の儀式》《黄金の死》をケアして相手がクリーチャーを出してこないような場合も、《人質取り》を積極的に使っていきましょう。そうすれば相手を窮地に追いやることができますし、最終的には相手はクリーチャーを展開せざるを得なくなります。

また、《軍団の上陸》を変身させないために《人質取り》を使うこともあります。もっとも気をつけなければならないカードは《実験の狂乱》です。 そのため、ゲームを支配したらできるだけ早く勝つことを意識しましょう。

赤単(有利)

対 赤単

Out

正気泥棒 正気泥棒 正気泥棒 正気泥棒
煤の儀式 煤の儀式 煤の儀式
潜水 潜水 最古再誕

In

否認 否認 渇望の時 渇望の時
強迫 強迫 一瞬
黄金の死 虚報活動 菌類感染
破滅を囁くもの実験の狂乱人質取り宝物の地図

このマッチアップは非常に楽といえます。赤単相手には《破滅を囁くもの》が間違いなくベストカードです。除去呪文や手札破壊呪文で1対1を繰り返す、または全体除去で相手をいなし、《実験の狂乱》が登場したら、返しのターンに《破滅を囁くもの》を送り出しましょう。そうすればゲームに勝つことができます。赤単が《破滅を囁くもの》を除去するのは非常に困難で、除去するとしてもリソースを多く使うことになり、青黒側がゲームを支配するだけの時間を与えてしまうのです。

《実験の狂乱》を使ってくる相手には、《発見+発散》《実験の狂乱》をバウンスし手札から捨てさせる僅かなチャンスを逃さないようにしましょう。そのチャンスを逃してしまった場合は《一瞬》を探し《実験の狂乱》を手札に戻させた上で、手札破壊呪文を使うかカウンターをします。ただ、いずれのプランよりも《破滅を囁くもの》でダメージレースをした方が良いということは覚えておいてください。もし赤単側が《宝物の地図》を使ってきた場合は、《人質取り》のパワーを見せつけてやりましょう。もちろん相手のクリーチャーを奪っても構いません。

ゴルガリ(不利)

対 ゴルガリ

Out

人質取り 人質取り
破滅を囁くもの 破滅を囁くもの
黄金の死

In

軽蔑的な一撃 軽蔑的な一撃
最古再誕 最古再誕
菌類感染
虚報活動発見+発散最古再誕探知の塔

ずば抜けて厳しいマッチアップです。《殺戮の暴君》《愚蒙の記念像》《ビビアン・リード》《採取+最終》といったカードすべてが非常に厄介です。特に《愚蒙の記念像》《採取+最終》は厄介で、せっかく相手のクリーチャーをさばいても水の泡になってしまいます。サイドボーディングでひとつの焦点となるのは、《虚報活動》を何枚入れるかです。《虚報活動》は強いときは非常に強いのですが、弱いときは弱いという難しいカードだからです。《発見+発散》《最古再誕》はできれば《殺戮の暴君》のために取っておいて、全体除去を使った後に撃つようにしましょう。

《人質取り》は後手よりも先手のときに本領を発揮します。《潜水》《人質取り》《正気泥棒》を使っていく上で重要なカードです。《人質取り》の使い方は注意が必要で、プレイしたターンに奪ったクリーチャーを唱えるのが理想的です。《探知の塔》を引ければ、ゲーム全体に影響を与えることができます。最善の勝ち筋はゲーム序盤に《正気泥棒》を出すことです。相手からすれば《正気泥棒》に対して回答を用意しなければなりませんね。《正気泥棒》のもたらす影響はあまりにも大きいため、《潜水》や手札破壊呪文がないなら出さないようにしましょう。

セレズニア(不利)

セレズニアといっても様々なタイプがあるため、サイドボードは相手が使ってくるタイプに大きく影響されます。そのためここでは簡単に解説しておきます。

対 セレズニア

Out

潜水 潜水
喪心 喪心
薬術師の眼識 破滅を囁くもの
煤の儀式 黄金の死

In

強迫 強迫
軽蔑的な一撃 軽蔑的な一撃
最古再誕 最古再誕
虚報活動 一瞬
正気泥棒不和のトロスターニ人質取り

セレズニアは非常に多くのタイプがあるため、サイドボードは実に厄介です。ですが、コントロールを奪い返す能力をもつ《不和のトロスターニ》《人質取り》に対してあまりにも強いので、十分に気をつけましょう。 ルール上で注意していただきたいのは、《正気泥棒》《人質取り》で奪った《ベナリア史》《不和のトロスターニ》から生成されたトークンは、相手の《不和のトロスターニ》の効果で相手にコントロールが移りません。ぜひ覚えておきましょう。

ジェスカイ(有利)

対 ジェスカイ

Out

人質取り 人質取り 人質取り 菌類感染
煤の儀式 煤の儀式 煤の儀式 黄金の死
喪心 喪心

In

否認 否認 強迫 強迫
虚報活動 虚報活動 軽蔑的な一撃 軽蔑的な一撃
最古再誕 最古再誕
否認強迫軽蔑的な一撃

非常に相性の良いマッチアップです。特にサイドボード後は有利です。手札破壊呪文や打ち消し呪文で圧倒できることでしょう。もし相手が《軍勢の戦親分》のようなクリーチャーを使ってきたり、あるいはその可能性があると思われる場合は《人質取り》の価値が上がります。また、相手が《アゾールの門口》入りのジェスカイの場合でも、《人質取り》《アゾールの門口》を奪ったり、変身させるために相手に再び1からカードを追放させることを余儀なくさせることができます。《人質取り》にはこのようなメリットがあるため、サイドボーディングで考慮に入れておきましょう。ただ、3枚以上はいらないのでご注意を。

イゼットドレイク(互角)

対 イゼットドレイク

Out

正気泥棒 正気泥棒 正気泥棒 正気泥棒
煤の儀式 煤の儀式 煤の儀式 菌類感染

In

否認 否認 強迫 強迫
最古再誕 最古再誕 虚報活動 虚報活動
人質取りパルン、ニヴ=ミゼットイゼット副長、ラル最古再誕

このマッチアップでは、青黒がコントロールする側なります。手札破壊呪文で《苦しめる声》《航路の作成》を捨てさせるのは全然アリです。相手の手札に弱いカードが残るようになるからです。《正気泥棒》はゲームにあまり影響を与えないため、サイドアウトします。青黒側のプランとしては、相手の手札を破壊しつつ、脅威やドロー呪文をカウンターしていくことです。

イゼットドレイクはサイドボード後に《パルン、ニヴ=ミゼット》《イゼット副長、ラル》でデッキを太くしてくることがあるのですが、《最古再誕》《人質取り》が刺さるため、青黒側からすれば問題ありません。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。質問がありましたらお気兼ねなくどうぞ。

個人的には、青黒ミッドレンジが今のメタゲームの中でどう生き残っていくのかが楽しみですね。今のスタンダードは近年稀に見る多様性をみせています。みなさんもどんどん挑戦してみましょう!

@JrolfMTG

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John Rolf アメリカ出身のプロプレイヤー。2017-2018シーズン、《熱烈の神ハゾレト》を相棒にプロツアー『イクサラン』トップ8入賞。それだけには留まらず、グランプリ・プロツアーともに安定した成績を残し続け、ブロンズ・レベルからプラチナレベルまで登り詰めるとともに、自身初の世界選手権出場を成し遂げた。同郷の親友であり、チームメイトでもあるブランドン・エアーズと共に、2018年10月Hareruya Prosに加入。 John Rolfの記事はこちら