Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/11/22)
はじめに
みなさん、こんにちは。ジェレミー・デザーニです。
マジックの新シーズンが始まりました。私はといいますと、すでに3つの大会に出場しました。参加したのは、グランプリ・リール2018(スタンダード)、グランプリ・アトランタ2018(モダン)、プロツアー『ラヴニカのギルド』(スタンダード、ドラフト)です。
プロポイントのシステムが変更されたため、シーズンの開始や終了のタイミングはさほど重要ではなくなりました。とはいえ、「スタートダッシュに成功すれば、そのシーズンにはずみをつけることができる」という感覚はいまだにあります。
シーズン最初のイベントの結果次第では、そのシーズンの目標が大きく変わってくることもあり得えます。ゴールドレベルやプラチナレベルを目指すこと、プロツアーの参加権利を得ようとすること、あるいは世界選手権への参加権利を得ようとすること、目標はさまざまありますからね。
グランプリ・リール2018(スタンダード)
私の新シーズンは、グランプリ・リール2018に向けた練習で幕を開けました。その練習はとても楽しいものでしたね。なにせ新しいセットでいち早く遊べて、それがプロツアーの練習にもなるんですから。
その練習期間中は、主にゴルガリ(黒緑)ミッドレンジを使っていましたが、スタンダードで猛威を振るう強さがあるなと感じました。最終的に練習したデッキを使わなかったとしても、敵を知るという意味で実際に使っておくということは重要ですね。
ゴルガリを使った感触は悪くなかったのですが、すでにゴルガリに対するサイドボードプランが広まっていて、戦い方を知られてしまっていることに気づきました。ゴルガリを意識していないプレイヤーなどいなかったのです。
環境のベストデッキというのは往々にして戦い方を研究されてしまいます。だからこそ私は、自分で作ったデッキを使いたいと思うタイプのプレイヤーなのです。自分で作ったデッキであれば、相手は対策を事前にできていないため、それが大きなアドバンテージになります。もし私が環境でもっとも人気のあるデッキを使うとすれば、よほどの理由が必要ですね。話は変わりますが、ここ最近、私は友達と一緒に暮らしています(私の彼女も一緒に暮しています。ご心配なく、私たちはとても仲の良いカップルです)。その友達の名前はティエリー・ランボア/Thierry Ramboaといい、フランスの強豪プレイヤーです。以前はTeam Mint Cardで一緒に調整していたメンバーでもありました。プロツアーへの参加権利こそないものの、そのデッキ構築力は健在です。グランプリ・リールは彼の復帰戦だったため、彼は準備に力を入れていましたね。デッキはジェスカイコントロールであり、素晴らしい勝率を収めていました。
彼のデッキリストは以下の通りです。
2 《一瞬》
2 《溶岩コイル》
1 《否認》
4 《轟音のクラリオン》
4 《イオン化》
2 《火による戦い》
4 《薬術師の眼識》
1 《残骸の漂着》
1 《浄化の輝き》
4 《発展+発破》
1 《ミラーリ予想》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
2 《黎明をもたらす者ライラ》
2 《絶滅の星》
2 《イクサランの束縛》
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《否認》
1 《溶岩コイル》
1 《封じ込め》
1 《アズカンタの探索》
-サイドボード (15)-
私もこのデッキを使ってみたのですが、大きな手ごたえがありました。一番衝撃だったのは、ダブルマリガンをしても勝てる力があったことです。練習の過程で、実際に何度かダブルマリンガンしましたが、《薬術師の眼識》を4枚採用しているため、アドバンテージを取り戻すことができたのです。このデッキを使う上でもっとも重要なのは、毎ターン土地を置くことです。ですから、ゴルガリ相手に対してダブルマリンガンをしたとしても、初手が土地4枚・《薬術師の眼識》1枚でも勝算があります。
《発展》と《火による戦い》は、このデッキの必殺コンボです。確かに20点で勝ちきれないこともあるのですが、デッキには《イオン化》も《発展+発破》も4枚ずつ入っていますから、そこまで心配する必要はありません。
メインデッキにクリーチャーがまったく入っていないため、当時の環境であれば1本目を有利に戦うことができました。《貪欲なチュパカブラ》や《溶岩コイル》といったカードたちが刺さらないからです。また、《イオン化》や《発展+発破》が4枚ずつ入っているため、コントロール対決でも有利に戦えます。
《ゴルガリの女王、ヴラスカ》が流行っていたため、《アズカンタの探索》や《封じ込め》といった2マナのエンチャントは使わないようにしました。
グランプリ・リールの私の結果はこのようになりました。
ラウンド | 対戦相手 | 対戦結果 |
---|---|---|
1回戦 | BYE | – |
2回戦 | BYE | – |
3回戦 | BYE | – |
4回戦 | ボロスアグロ | 2-0 |
5回戦 | ジェスカイコントロール | 2-0 |
6回戦 | ジェスカイコントロール | 2-0 |
7回戦 | 白単アグロ | 0-2 |
8回戦 | ボロスアグロ | 0-2 |
ラウンド | 対戦相手 | 対戦結果 |
---|---|---|
9回戦 | ジェスカイコントロール | 2–0 |
10回戦 | ゴルガリミッドレンジ | 2–1 |
11回戦 | ジェスカイコントロール | 2–0 |
12回戦 | ゴルガリミッドレンジ | 2-0 |
13回戦 | ゴルガリミッドレンジ | 2-0 |
14回戦 | イゼットフェニックス | 1-2 |
15回戦 | ジェスカイコントロール | 2-0 |
結果は12-3で20位に入賞し、プロポイントを3点獲得しました。とても満足のいく結果でしたね。
私が使用したデッキリストだと、2ターン目に《アダントの先兵》から3ターン目に《ベナリア史》と動かれるとどうしようもないため、白アグロに2敗したのは仕方なかったと思います。ただ、イゼットフェニックスに負けたのは少しもったいなかったという印象です。サイドボードプランやプレイングをもっと上手くできていれば勝っていたかもしれません。
ミラーマッチは1ゲームも負けませんでした。手札にたくさんの打ち消し呪文を抱え、ターン終了時の《発展+発破》、そして《ドミナリアの英雄、テフェリー》を巡る攻防に備えておくことが鍵となります。
ゴルガリにはすべてのマッチで勝利しました。相性はとても良く、1本目は特に有利でしたね。
総じていえば、デッキ選択は正解だったと思います。ゴルガリを使うよりかは良かったですね。ただ、同じデッキを使った他のプレイヤーは月並みな結果に終わり、私自身も白アグロに勝てなかったので、デッキが完璧だと言い切れないなという感想でした。明らかに弱点があったデッキだったのです。
グランプリ・アトランタ2018(モダン)
このグランプリに参加したプロプレイヤーであればみんなそうだと思いますが、プロツアーがスタンダードなので、モダンをプレイするのはあまり喜ばしいことではありませんでした。モダンにあまり時間を割きたくなかったのです。
この時点でデッキの選択肢は2つありました。青白コントロールかバントスピリットです。青白コントロールはグランプリ・プラハ2018で16位に入賞した経験があり、バントスピリットはマジック25周年記念プロツアーで12勝4敗、グランプリ・ストックホルム2018で10勝5敗という経験がありました。
コントロールデッキを大会に持ち込む場合、練習を十分にしておく必要があります。なぜなら、受け身なデッキを使うということは、十分な練習を通じて知識を蓄え、相手を対処できるだけの良いデッキを作らなくてはならないからです。
青白コントロールは、人気急上昇中のドレッジに対して相性が悪いという弱点があります。メインデッキに《安らかなる眠り》や《外科的摘出》を使う余裕もありません。唯一可能性があったのは、《幽霊街》の代わりに《ボジューカの沼》を1枚入れることでした。
バントスピリットは、非常に有利に戦える相手がいます。それでいて、環境のあらゆるデッキに勝つ可能性がある能動的なデッキです。そのため、バントスピリットは青白コントロールよりもはるかに構築しやすいデッキでした。
それだけでなく、バントスピリットの魅力はまだ2つ残されています。まず、《無私の霊魂》と《鎖鳴らし》を1枚ずつ抜いて《悔恨する僧侶》を2枚入れると、デッキにあまり影響を与えることなく、モダンの墓地を利用するあらゆるデッキに対して有利に戦えるようになります。(アイアンワークスコンボや、ホロウワン、ドレッジなど)。
バントスピリットのもうひとつの魅力は《秋の騎士》です。《暗殺者の戦利品》が話題になることが多いようですが、私に言わせれば『ラヴニカのギルド』で本当にモダンに影響を与えるカードは《秋の騎士》です。
バントスピリットは大体同じようなデッキリストになることが多いのですが、従来はサイドボードに不自然なカードが入っていました。具体的には、《ドロモカの命令》や《拘留の宝球》、《日光女》、《コーの火歩き》、《戦争の報い、禍汰奇》、《神聖な協力》、《オーリオックのチャンピオン》といったカードです。どのカードも文句なしのカードとは言えなかったのです。しかし、《秋の騎士》がこれらのカードの役割をすべて果たしてくれるようになりました。
また、《秋の騎士》は《集合した中隊》で出せるため、《集合した中隊》を弱体化させることもありません。それどころか、強化したとまで言えるでしょう。
これが私がグランプリ・アトランタで使用したデッキリストです。
1 《島》
1 《平地》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《吹きさらしの荒野》
3 《地平線の梢》
2 《植物の聖域》
1 《金属海の沿岸》
1 《ムーアランドの憑依地》
1 《変わり谷》
-土地 (21)- 4 《霊廟の放浪者》
4 《貴族の教主》
4 《至高の幻影》
3 《幻影の像》
2 《悔恨する僧侶》
1 《無私の霊魂》
4 《ドラグスコルの隊長》
4 《呪文捕らえ》
2 《聖トラフトの霊》
-クリーチャー (28)-
3 《安らかなる眠り》
3 《石のような静寂》
2 《統一された意思》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《スレイベンの守護者、サリア》
1 《減衰球》
1 《軽蔑的な一撃》
-サイドボード (15)-
ラウンド | 対戦相手 | 対戦結果 |
---|---|---|
1回戦 | BYE | – |
2回戦 | BYE | – |
3回戦 | BYE | – |
4回戦 | 《むかつき》ストーム | 2-0 |
5回戦 | アブザン《硬化した鱗》 | 2-1 |
6回戦 | 《精力の護符》タイタン | 0-2 |
7回戦 | グリクシスシャドー | 1-2 |
8回戦 | 5色人間 | 2-1 |
ラウンド | 対戦相手 | 対戦結果 |
---|---|---|
9回戦 | 感染 | 2–1 |
10回戦 | 緑単トロン | 2–0 |
11回戦 | バントスピリット | 2–0 |
12回戦 | マルドゥミッドレンジ | 2-0 |
13回戦 | 《クラーク族の鉄工所》コンボ | 2-0 |
14回戦 | 《クラーク族の鉄工所》コンボ | 1-2 |
15回戦 | 5色人間 | 2-1 |
グランプリ・リールと同じような結果でした。12勝3敗で19位に入賞、プロポイントを3点獲得しました。負けた3試合はもっと上手くできたと思いますが、練習を十分にしなかったツケを払わされましたね。青白コントロール以上に、バントスピリットは小さなミスが響くデッキでした。
《硬化した鱗》デッキとの相性は悪くはないのですが、厳しいものがあります。互角に渡り合えるようになるのは練習が必要になりますね。
グリクシスシャドーに負けたのは、《反射魔道士》を入れていなかったからでした。《反射魔道士》は相性を劇的に変えるカードです。
デッキには総じて満足でした。どんな大会で使っても良いデッキだと思います。モダンで何を使えばいいのか迷ったらバントスピリットを使ってみることをおすすめしますよ。
プロツアー『ラヴニカのギルド』(スタンダード・ドラフト)
例に漏れず、今回もプロツアーの向けてチームで調整を行いました。調整にあたって、チームを4つに分けるという方法をとりました。
ゴルガリミッドレンジ | ボロスアグロ | ジェスカイコントロール | オリジナルデッキ |
---|---|---|---|
Javier Dominguez | Lee Shi Tian | Jeremy Dezani | 齋藤 友晴 |
Andrea Mengucci | Simon Nielsen | Raphael Levy | Jason Chung |
Kelvin Chew | Yam Wing Chun | Christian Calcano | – |
Petr Sochurek | Zen Takahashi | Kevin Jones | – |
私たちジェスカイチームは、グランプリ・リールで使用した私のリストをベースに調整を開始しました。私たちのチームは、白アグロに対して有利な構築を作ることを目標に設定しました。
調整をしていくなかで、《財力ある船乗り》の可能性に気づきました。《アダントの先兵》を抑え込むとともに、4ターン目に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出すことが可能になったのです。また、宝物トークンを使えば《発展+発破》の(X)のサイズを1つ大きくできるので、実質的にサイクリングが付いているようなものです。
良いブロッカーが見つかったところで、《ウルザの後継、カーン》も有力な選択肢となり、《薬術師の眼識》よりもいいのではないだろうかという結論になりました。また、《財力ある船乗り》は《轟音のクラリオン》に巻き込まれて破壊されることもなく、絆魂を得ることでライフを1点回復できるという長所もありました。
また、《残骸の漂着》も必要だろうということになりました。《殺戮の暴君》や白系のデッキ、イゼットフェニックスと戦うためです。《財力ある船乗り》というブロッカーがいることで、《残骸の漂着》をケアした攻撃は相手にとって一層難しいものになっていました。
《財力ある船乗り》入りのジェスカイコントロールについて詳しく知りたい方は、私のチームメイトであるクリスティアン・カルカノの記事をぜひご覧ください。
- 2018/11/29
- お宝発見!《財力ある船乗り》入りジェスカイコントロール!
- Christian Calcano
このような変更を加えた結果、白アグロには非常に有利な構築を作ることができました。しかし同時に、ゴルガリとの相性が非常に悪くなってしまったのです。また、《財力ある船乗り》を入れるために《イオン化》をすべて抜いてしまったことを主な理由として、ミラーマッチの相性がどんどん悪化していきました。
我々ジェスカイチームはすべてのデッキに勝てるデッキを作ることができなかったため、デッキ登録の数時間前にとうとうジェスカイコントロールを諦めることにしたのです。そして他の調整チームのデッキを使用することにしました。
ゴルガリチームはメインデッキもサイドボードもまだ数枚を決めかねているという状況でした。ボロスチームは、サイドボードの最後の1枚がまだ決まらないものの、メインデッキは完成していました。
ボロスがゴルガリを倒すゲームを何度か見たところで、デッキリストもサイドボードプランもボロスチームに教えてもらうのが無難であろうという結論に至りました。オリジナルデッキを作っていた齋藤 友晴やジェイソン・チャンも私と同じ考えで、ボロスを使用することになりました。クリスティアン・カルカノはゴルガリチームに加わりました。最終的にチームメンバーが使用するデッキは以下の通りになりました。
ゴルガリミッドレンジ | ボロスアグロ |
---|---|
Javier Dominguez | Lee Shi Tian |
Andrea Mengucci | Simon Nielsen |
Kelvin Chew | Yam Wing Chun |
Petr Sochurek | Zen Takahashi |
Christian Calcano | 齋藤 友晴 |
– | Jason Chung |
– | Jeremy Dezani |
– | Raphael Levy |
– | ケヴィン・ジョーンズ |
私がプロツアーで使用したデッキがこちらになります。
4 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《断崖の避難所》
-土地 (23)- 4 《追われる証人》
4 《空渡りの野心家》
4 《ゴブリンの扇動者》
4 《アダントの先兵》
2 《ボロスの挑戦者》
2 《正義の模範、オレリア》
-クリーチャー (20)-
サイドボードガイド
ゴルガリミッドレンジ
対 ゴルガリミッドレンジ
白ウィニー
対 白ウィニー(先手)
対 白ウィニー(後手)
注意!: 《敬慕されるロクソドン》が相手のデッキに入っている場合、先手でも後手でも《ゴブリンの扇動者》を4枚抜いて、《トカートリの儀仗兵》を4枚入れるようにしましょう。
ジェスカイコントロール
対 ジェスカイコントロール
イゼットドレイク
対 イゼットドレイク
ボロスエンジェル
対 ボロスエンジェル
赤単
対 赤単
セレズニアトークン
対 セレズニアトークン
プロツアーレポート
ボロスアグロで参加することにしたものの、実際にデッキを回すことは一度もありませんでした。というのも、ボロスで使うカードを集めたり、ラファエルとのドラフトの練習に集中したかったからです。また、練習場からホテルへと移動したり、デッキを登録したり、チームメイトであるリー・シー・ティエン/Lee Shi Tianの殿堂表彰式に参加したりと、いろいろとやるべきことがありました。
彼が殿堂入りしたことはとても嬉しかったですね。彼はチームリーダーとして優れているだけでなく、素晴らしい人柄ですし、プレイヤーとしてももちろん優秀です。アジアにおけるマジックの発展に多大なる貢献をしていますし、実際にアジアを代表するマジックプレイヤーの一人になりました。
リーとチームグランプリに参加できたことは私にとって貴重な体験でした。私が好きなマジックプレイヤーの一人なので、世界中の人が彼の才能を認めてくれたことをとても嬉しく思います。
プロツアー初日
ドラフト
初日のドラフトは、強力なボロスを組み上げることができました。通常、ボロスは優秀なクリーチャーと、卓に流れてきやすいコンバットトリックでデッキを作ります。上記の画像は実際の初日のデッキですが、非常に強いアンコモンの除去が全種類、かつ複数とれたものでした。
初戦は特別強くもないディミーアに当たり、私の圧勝でした。相手に《漂流自我》で《議事会の裁き》を指名され手札から2枚追放されてしまったのですが、それでもなお相手はカードアドバンテージでは損をしているのです。
2回戦は、出来の良いイゼットのテンポデッキに当たりました。3ゲーム目は攻撃されていたら負けという場面があったのですが、相手はそのチャンスを見逃していたため、私にとってはラッキーでした。3回戦は、卓にいた私以外のもう一人のボロスに当たりましたが、明らかに私のデッキの方が強かったですね。
ドラフトラウンド 3勝0敗
4回戦:ゴルガリミッドレンジ-瀧村 和幸 2-1
ゴルガリミッドレンジは私自身も十分に使った経験があったので、どうやって戦えばいいかは少なくとも理解していました。重要なのは、《採取+最終》を使われる前に勝つこと、あるいは使われたとしても相手のクリーチャーも残らないような状況にしておくことです。それさえできれば、ゴルガリへの勝算はかなりあります。
5回戦:イゼットフェニックス-ジョン・フィンケル/Jon Finkel 2-0
ジョン・フィンケルとの対戦でした。プロツアーに参加する意義とはまさにこのことでしょう。このような相手と対戦できるんですからね。ゲームは余談を許さぬ緊迫した展開が続きました。特にフィンケルは頭を使うゲームだったと思います。フィンケルからすれば、両者の先々のドローを想定した上でのプレイをする必要があったため、彼のほうが苦戦する対戦だったことは間違いありません。チームメイトが事前に教えてくれたように、この対戦の相性は非常に有利なものでした。
6回戦:赤単-アレクサンダー・マーティンス/Alexander Mertins 2-1
赤単の盤面に《実験の狂乱》を数ターン残ってしまうかどうかがこの対戦のキーポイントです。この対戦では相手が3本中2本でそれができなかったので、私が勝つことができました。7回戦:ディミーアコントロール-マーク・ジェイコブソン/Mark Jacobson 2-1
《軍勢の戦親分》はこのマッチでのベストカードでした。3枚目の土地を数ターン引けなかったゲームがあったのですが、土地を引いてから3ターン連続で出した《軍勢の戦親分》が勝利をもたらしてくれたのです。
8回戦:赤単-ロマロ・ディスコンズィ/Romolo Disconzi 2-1
厳しいマッチアップでした。《ゴブリンの鎖回し》はもちろんのこと、《実験の狂乱》から除去を唱えられるため、赤単はアグロミラーで非常に優位に戦えるのです。とはいえ、《ベナリア史》からカードアドバンテージを得たり、《実験の狂乱》は《議事会の裁き》で除去できたりと、ボロスアグロ側にも勝ち目はあります。《正義の模範、オレリア》はタフネスが5もあり、警戒も持っているため、相手からすれば相当厄介だったと思います。かなりの接戦でしたが、なんとかマッチをものにすることができました。
ゲームが終わってから友達が教えてくれたのですが、私は《正義の模範、オレリア》の「教導」の能力を使っていませんでした。「教導」を持っているとは知らなかったのです。「教導」がなくても恐ろしいほど強かったですからね。もし「教導」の存在を知っていれば、このゲームはもっと楽に勝てていたと思います。
初日トータルスコア 8勝0敗
私のマジック歴のなかで、プロツアーの初日で全勝できたのは初めてのことでした。2日目は4勝3敗1分でトップ8に入れる結果であり、トップ8に向けて非常にいいポジションにいたのです。もちろんプロツアーでは何が起こるかわからないですし、ドラフトで弱いデッキを組み上げてしまい、1勝2敗や3敗をしてしまうことも大いにあり得るとわかっていました。
また、スタンダードで全勝できたのも単なる幸運だったのか、それともデッキが良かったのか、それすら不確かなままでした。同じデッキを使ったチームメイトのなかには全然ダメだった人もいましたし、まぁまぁの結果だった人もいました。ボロスを使ったなかでも一番いい結果を出していたのは私でしたね。
ぶっつけ本番で初めてボロスアグロを5回使いましたが、いまだに模索しながら使っている状況でした。しかし、《正義の模範、オレリア》が「教導」を持っていることを知ったので、少なくとも2日目に向けてデッキは強くなりましたね。
2日目
ドラフト
私のドラフトがフィーチャーされました。1パック目と2パック目をドラフトしている間、私はめまいのようなものを感じていました。私はその日、朝食を食べていなかったのです。大会に遅れることが怖かったので、急いで会場まで向かってしまいました。そこに追い打ちをかけるように、フィーチャーマッチのスポットライトが私の顔に当たったため……どうなったかはお察しがつくことでしょう。同卓の7人のプレイヤーには本当に申し訳ないことをしたと思います。ウィザーズのスタッフは本当に親切にしてくれました。私の体調が良くなるように、食事や飲み物を用意してくれた上に、医者まで呼んでくれたのですから……。
私は自分にイライラしていました。「なんでよりよって今日なんだ」「プロツアー初日で全勝したのに……」と。この話を聞いてみなさんは「全勝したらからこそ、そういう宿命があるんだ」とか「デザーニの日じゃなかったんだ」とか思っているかもしれませんね。しかし、私はリフレッシュして邪念を振り払い、そして体調を良くする必要がありました。文句を言っても何も解決しません。自分自身の手でどうにかするしかないのです。宿命なんてものはなく、どんな状況であれ全力を尽くすしかないんですよね。
1パック目に関しては、私のピックの意図がわかりづらかったかもしれません。私の1パック目には《霧から見張るもの》、《ゴブリンのクレーター掘り》、《力の報奨》がありました。緑は絶対にやりたくないというわけではないのですが、できればやりたくなかったのです。フィーチャー卓では相手のカードリストを確認できるため、《力の報奨》は大きく弱体化してしまう問題点も抱えていました。《ゴブリンのクレーター掘り》は私の経験上、ただの2/2よりも強いという印象はありません。というわけで、私は不本意にも《霧から見張るもの》をとることにしたのです。
私の2パック目は何もないパックでした。チームメイトと話し合った結果、《捕獲球》はとても残念なカードだという位置づけになりました。イゼットであれば、《捕獲球》はインスタントやソーサリーでないため、絶対に使いたくありません。また、ディミーアも4マナ域に《捕獲球》よりも優秀なカードが豊富にありますから、必須のカードとも言えないのです。唯一居場所があるとすれば、何のシナジーもない4色コントロールなのですが、そのデッキもできれば使いたくないデッキでした。
2パック目は他のカードも非常に弱かったのですが、私の経験上では、弱いカードだけも一番戦いやすいアーキタイプはボロス、あるいはボロスだけがそういったことができるアーキタイプだと思っていました。そこで私は2パック目で「失敗しないドラフト」にしようと決め、白の2マナクリーチャーをピックしたのです。《刃の教官》は弱いカードだと思っているので、2マナのクリーチャーよりも優先させてとることはありません。《刃の教官》ではなく《ウォジェクの護衛》であれば、また話は変わってきていたかもしれません。
最終的に可もなく不可もないボロスデッキになりましたが、卓に流れてきたカードを見る限りでは、卓全体のパックが弱かったと思います。そのため、私のデッキもそこまで悪いものではないという印象でした。
初戦は素晴らしい出来のゴルガリをドラフトしたテイ・ジュンハオ/Jun Hao Tayに当たり、ストレート負けてしまいました。2ゲームとももう少しのところまで行ったのですが、最終的には負けてしまいましたね。
2戦目はロマロ・ディスコンズィ/Romolo Disconziのイゼットデッキと当たりました。彼は《捕獲球》を2枚入れていましたが、《ピストン拳のサイクロプス》や《跳び蛙》と全くかみ合っていませんでした。また、《音波攻撃》も3枚使っていたのですが、劣勢のときにはほぼ役に立たないカードです。
ドラフトラウンドの3回戦、2勝していたナーサン・イーガー/Nathan Eagerのセレズニアデッキと対戦することになりました。《仲間意識》や《敬慕されるロクソドン》が入った強力なデッキでした。2本目と3本目はほぼ負け確定というところだったのですが、《重力殴打》を引きなんとか勝つことができました。
《重力殴打》を引けたことが、プロツアーを通じての分岐点だったように思います。ドラフトラウンドの結果が1勝2敗から2勝1敗に変わったんですからね。
2日目のドラフト終了時点での成績 10勝1敗
12回戦:ボロスアグロ-マイケル・ベルナート/Michael Bernat 1-1
1ゲーム目も2ゲーム目もかなり長引きました。デッキのキーカードにたどり着くことができないまま、多くの絆魂のクリーチャーを相打ちしていったからです。3本目は相手がダブルマリガンをしているうちに時間切れとなってしまいました。
13回戦:ゴルガリミッドレンジ-Michael Kundegraber 2-0
ダイスで勝ったため、先手を取ることができました。2ゲームともロケットスタートを切ることができ、相手に6マナまで到達させず《採取+最終》を撃たせる余裕を与えませんでした。
このマッチに勝ったことで、残りの3マッチのうち1回でも勝てば、人生で2回目のプロツアートップ8への切符を手にするポジションに立ちました。
14回戦:ボロスアグロ-テイ・ジュンハオ 0-2
2ゲームともかなり引きが悪かったですね。呪文3枚・土地4枚の初手をアグレッシブにマリガンして良かったかもしれませんが、ミラーマッチとわかっていたので、キープした方が良いだろうと判断しました。引きが弱かったですが、マジックをしている限り、引きに恵まれないことはあります。こればっかりは仕方ないですね。
15回戦:ゴルガリミッドレンジ-三原 槙仁 1-2
難しいマッチでした。やり方によっては勝てていたと思います。ゲームが長引いた上に、ミスをたくさんしてしまったのです。この対戦が始まる前から肩に力が入り始めていたのですが、勝てばトップ8というマッチをまた落としてしまいました。三原さんのような達人と対戦するのに、肩に力が入っているようでは勝てないですね。
16回戦:セレズニアトークン-覚前 輝也 2-0
マッチを通じて初手もドローも非常に強く、私にとってはラッキーでした。常に私が有利に立っていましたね。私が唯一懸念していたのはセレズニアトークンと対戦経験が少ないことだけだったので、ミスをしてしまわないように気をつけました。覚前さんはプレイヤーとしても人としても素晴らしいので、近いうちにプロツアートップ8に入ってくれることを願っています。
2日目終了時点での結果 12勝3敗1引き分け トップ8進出!
5年の時を経て、2度目のプロツアートップ8に入ることができました。あと一歩のところまで来たことは以前に何度もありました。思うように事が運ばなかったり、タイブレイーカーで9位になったり、勝てばトップ8という場面で負けたり……。やっと2回目のトップ8に入ることができたので、ようやく肩の荷が下りたような思いです。
3日目
準々決勝:ボロスアグロ-カスパー・ニールセン/Kasper Nielsen
私は後手であり、デッキリストを見る限りでは、後手であることがかなり不利に働きそうでした。後手ということは、少なくとも後手で1回は勝つ必要があり、先手のゲームは落とすことができないことを意味していたのです。もし先手であれば1ゲーム目は勝っていたと思いますが、《英雄的援軍》を先に使ったプレイヤーが大きく有利になるのがミラーマッチです。
4本目までは先手だったプレイヤーが勝つ展開になりました。そして5ゲーム目、私は後手でした。Kasperはマリガンをしたため、相手の序盤の展開が遅れたことが私にはラッキーでした。私はゲームを有利に運ぶことができ、そして引き込んだ《英雄的援軍》がマッチの勝利をもたらしてくれたのです。
準決勝:ボロスアグロ-ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas
私は大会でルイスに勝ったことがありません。また、彼が事故でも起こさない限り、相性は非常に悪いと感じていました。彼のデッキの方が軽いカードが多く、私のデッキよりも爆発的なスタートができるからです。さらに、このマッチアップはライフレースの勝負になるため、彼がライフを回復するカードを多く使っていることも、私にとっては厳しい要素でした。
準決勝は勝てる可能性がなかったので、悔いはありません。3本目の《残骸の漂着》について少しお話しておきましょう。すでに私は攻撃するクリーチャーを指定していて、《正義の模範、オレリア》の「教導」の能力でどのクリーチャーにカウンターを載せるか考えていました。ですから、ルイスが盤外からトークンを持ってきた動きで私が「騙された」ということはありません。とはいえ、マジックはこういう話題を呼ぶような瞬間があるのも魅力のひとつですね。
おめでとうルイス!彼は素晴らしいプレイヤーですね。ウィザーズのインタビューで言ったように、近代のマジックプレイヤーの中であれば最強の名にふさわしいかもしれません。
ここまで読んでくださったみなさんであればお分かりだと思いますが、私はプロツアーの調整中に3種類ものデッキを使いました。デッキ選択はマジックにおいてもっとも重要な要素のひとつであり、大会の結果を大きく左右します。
デッキ選択は私の弱点のひとつで、これまでに何度も間違えた選択を行ってきました。チームメイトがそれに気づかせてくれたため、私は彼らの意見を尊重するようになったのです。今回は最終的にボロスアグロという素晴らしいデッキを選択することができました。チームメイト全員に感謝しなければなりませんね。
さいごに
繰り返しにはなりますが、プロツアーを終えてまずはチームメイトに感謝したいですね。素晴らしいチームメイトに恵まれました。私が所属するHareruya Swordは現在チームシリーズで2位に位置しています。素晴らしいチームに、素晴らしいスタート。未来は明るいですね。
今年は個人としてもいい結果を出し続けることができましたが、これは主に日本で過ごした時間が大きかったなと思っています。。晴れる屋のコンテンツを作ったり、晴れる屋の大会に出たり、スタッフとキューブをしたり、Magic Onlineをしたり、日本の強豪のプレイヤーと話したり……とにかくマジック尽くしの日々でした。日本で過ごした日々が成長させてくれたのは間違いないですね。そんなチャンスを与えてくれた齋藤 友晴、逢坂 有祐、晴れる屋には感謝しきれないです。
@TomoharuSaito @death_snow pic.twitter.com/ByDmiCuzma
— Jérémy Dezani (@JDezani) 2017年11月24日
今回の結果を受け、しばらくの間はプラチナレベルでいられることになりました。今後の大会はいままでよりかはプレッシャーを感じずにプレイできるようになりましたね。ですが、これからもハードワークしていきますし、大会への準備も怠るつもりはありません。グランプリやプロツアーのひとつひとつに全力投球し、必ずや晴れる屋の名を世界に知らしめたいと思っています。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
ジェレミー・デザーニ@JDezani