Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/12/04)
はじめに
数週間前の話ですが、僕はアイアンワークスを使ってグランプリ・アトランタ2018で準優勝を果たしました。そこで今回はアイアンワークスについて解説し、みなさんにもこのデッキを使いこなせるようになってもらいたいと思っています。以下のデッキリストは私がグランプリで使用したものとは異なりますが、今後アイアンワークスを使うならばこのような形を使用するであろうというリストです。
1 《島》
4 《燃え柳の木立ち》
3 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《ダークスティールの城塞》
2 《埋没した廃墟》
2 《発明博覧会》
-土地 (18)- 1 《マイアの回収者》
4 《屑鉄さらい》
1 《練達飛行機械職人、サイ》
-クリーチャー (6)-
4 《オパールのモックス》
3 《仕組まれた爆薬》
4 《テラリオン》
4 《彩色の星》
3 《彩色の宝球》
1 《黄鉄の呪文爆弾》
4 《胆液の水源》
4 《精神石》
4 《クラーク族の鉄工所》
1 《イシュ・サーの背骨》
-呪文 (36)-
グランプリ・アトランタ2018は少し微妙なタイミングで開催されました。どういうことかというと、グランプリのフォーマットはモダンだったのですが、同じ地のアトランタで翌週にプロツアー『ラヴニカのギルド』が開催されることになっていたのです。モダンはプロプレイヤーたちが常日頃から慣れ親しんでいるフォーマットというわけではありませんし、多くのプロツアー参加者はモダンの練習をあまりせずにスタンダードの調整にリソースを割くつもりだったようです。
その一方で僕はモダンが本当に大好きで、普段からたくさんプレイしています。また、あまり知られていない一風変わったデッキや、少し落ち目のデッキを見つけ、洗練させることを得意としています。こういったことすべてを踏まえて、今回のグランプリは僕にとって風向きがよかったと思います。
アイアンワークスの環境における立ち位置は非常に良く、僕のMagic Onlineでの勝率も良かったため、今後も使い続けていくことは間違いありません。《練達飛行機械職人、サイ》が登場してからというもの、アイアンワークスよりも良いデッキを使っているところがなかなか想像できないんですよね。参考として、『基本セット2019』がリリースされてからのMagic Onlineのリーグの対戦結果を貼っておきます。Twitch配信者のPierakorが開発したMagic Onlineのリプレイツールを使って記録させていただきました。
無限ループと基本的な戦略
アイアンワークスの基本的な動きについてはご存知の方も増えてきたと思いますので、1から説明しなおすようなことはしません。重要なのは《クラーク族の鉄工所》と《屑鉄さらい》を盤面に揃えることです。コンボがスタートしたら、デッキを掘り進め、最終的に《マイアの回収者》か《イシュ・サーの背骨》を引き込んで無限ループの完成です。基本的な勝ち方は《黄鉄の呪文爆弾》を何度も使い回すことですね。
このデッキが初めて人気になった当時は、「総コストを支払う際にマナ能力を起動できるルールを悪用する方法」について話題になりました。確かに衝撃的な技法ではあったのですが、実を言うとこの知識が実際のゲームで必要になる場面はほとんどありません。簡単なところで知っておいてもらいたいのは以下の相互作用です。
無限マナ・無限ドロー
戦場に《屑鉄さらい》・《クラーク族の鉄工所》・《マイアの回収者》があり、《彩色の星》・《オパールのモックス》が戦場・墓地・手札のいずれかに存在し、かつ《マイアの回収者》よりもマナコストの重いアーティファクトが戦場または墓地にあると無限マナ・無限ドローにつながります。
無限《名誉回復》
《屑鉄さらい》・《クラーク族の鉄工所》・《イシュ・サーの背骨》が戦場にある状況を想定します。まず《イシュ・サーの背骨》を生け贄に捧げて回収した《精神石》を唱えます。次に《精神石》をタップして《クラーク族の鉄工所》で生け贄に捧げ、そこから連鎖的に1マナアーティファクト、《オパールのモックス》を回収・生け贄と動けば、《イシュ・サーの背骨》を繰り返しキャストすることができるので、相手の盤面を壊滅させることが可能です。もし1マナアーティファクトが《彩色の星》や《テラリオン》であれば、無限ドローにもなります。
墓地が肥えている状態で《屑鉄さらい》を2体並べると、ほぼ勝ち確定になることが多いです。ただし、完全なループを形成するにはマナコストが重いカードを回収する手段が必要になります。
コンボのやり方を学ぶには、練習するのが一番です。言語化するのが難しいですし、文章に起こしたところでみなさんが覚えるのも大変でしょうしね。そのため、何度か一人回ししてもらって体で覚えるのがベストです。
カード選択について
《練達飛行機械職人、サイ》の重要性
《練達飛行機械職人、サイ》はそこまで重要なカードに思えないかもしれませんが、実際に使われているところを少し見てもらえれば、その重要性がすぐに理解できると思います。《練達飛行機械職人、サイ》を他のカードで例えるのであれば、ストームのサイドボードから投入される《巣穴からの総出》です。《巣穴からの総出》より強いですけどね。
《練達飛行機械職人、サイ》は基本的にサイドボードのカードです。ただ、最近では試験的にメインデッキに1枚入れているリストもあり、私も上記のリストに入れてみました。1本目は、相手のデッキにコンボを止める術があまり入っていないことが多いでしょうし、クリーチャーを除去する呪文もたくさんデッキに入っているはずです。ですから《練達飛行機械職人、サイ》をメインデッキに入れるぐらいなら、もっとコンボに特化した、より速い構築にすべきだともいえます。しかし、このカードは単純にカードパワーが高いので、メインデッキに入れてもなんらおかしくないように思います。1枚目であればコンボパーツとしても役割を果たしてくれます。飛行機械トークンを《クラーク族の鉄工所》で生け贄に捧げれば無色のマナに変換できますし、有色マナが使える状態であれば自身の能力でドローもできるので、機会費用もそんなに高くありません。
昔から散々言われてきたことですが、コンボデッキを使うのであれば過剰なサイドボーディングは禁物です。過剰にサイドボーディングすると、受け身のカードばかりになってしまったり、有利な状況なのにコンボが始動できなくなったりしてしまうからからですね。しかし《練達飛行機械職人、サイ》を使うと、相手を妨害するカードを多少多めにサイドインしたとしても、デッキとしてのまとまりを失うことはありません。
どういうことか説明しましょう。《練達飛行機械職人、サイ》と《クラーク族の鉄工所》のコンボパーツの両方に対応できる回答はほとんどないため、相手からすれば回答を散らさなければなりません。そうするとゲームの展開が遅くなり、ドローする機会も増えるので、相手を妨害するカードを少し多めに入れたとしても裏目になることが減るというわけです。
《練達飛行機械職人、サイ》をサイドボードから入れることで、アーティファクトを使ったティムールコントロールデッキへと変貌します。相手の虚をつくことができるため、非常に有効なサイドボードプランです。普通のコントロールデッキではできない芸当ですね。このサイドボードプランは主にバント・スピリットに対して使います。
バント・スピリットは大量に対策カードをサイドインしてくるので、アイアンワークス側は対策カードに弱いパーツをサイドアウトしてしまいます。そうすることで、バント・スピリットはあまり有効性のない対策カードを抱え込むことになるので、こちらが消耗戦を制することができるようになります。実際のところ、一見すると相性が最悪に見えるバント・スピリットに対して、なかなか良い勝率を収めることができています。
実際にプレイしていると、《練達飛行機械職人、サイ》がデッキに眠っていることを踏まえたプレイングを求められるタイミングがあります。その判断は直感的、経験的によるものが大きいことが多いですね。《練達飛行機械職人、サイ》の能力を考えると、《オパールのモックス》を出さずに手札に持っておく理由が生まれます。とはいっても、2ターン目に《練達飛行機械職人、サイ》を出せそうなら、僕はほぼいつも出してしまっています。
また、もし相手に《安らかなる眠り》や《虚空の力線》を設置されてしまった場合、墓地に送られたときにキャントリップできる1マナのアーティファクトも《練達飛行機械職人、サイ》を出してから唱えるようにしましょう。
ただ、相手が出したカードが《石のような静寂》だと少し状況が変わります。《石のような静寂》を貼られたとしても《練達飛行機械職人、サイ》がいれば、そのドロー能力で《胆液の水源》や《テラリオン》、《彩色の星》を生け贄に捧げられるようになり、これらのアーティファクトを本来のキャントリップ呪文へと戻してやることが可能になるのです。ですから、《練達飛行機械職人、サイ》を戦場に出したらすぐにドロー能力を起動し、《自然の要求》を探しに行くゲームプランも選択肢に入れておきましょう。
たとえば5色人間と消耗戦をする場合、《屑鉄さらい》と《練達飛行機械職人、サイ》を盤面に揃えると一気に優位に立つことができます。《彩色の星》か《テラリオン》と、《オパールのモックス》を《練達飛行機械職人、サイ》のドロー能力で生け贄に捧げた場合、まず《屑鉄さらい》で《オパールのモックス》を回収します。そして《オパールのモックス》を再びプレイすれば、飛行機械トークンが生成されるとともに、さらに1マナ使えるようになります。これこそが消耗戦で目指していくべき流れですね。コンボを開始するターンは《練達飛行機械職人、サイ》を引いたときのために青マナを生成できる手段をとっておきましょう。
今年の上半期、マット・ナス/Matt Nassはアイアンワークスの実力を世に知らしめました。彼はアイアンワークスを使い、モダンのグランプリにおいて3連続でトップ8に入り、その内の2つを優勝するという偉業を成し遂げたのです。しかし、私がアイアンワークスに本当に心惹かれたのは、《ギラプールの霊気格子》の枠に《練達飛行機械職人、サイ》が入ったからでした。
《イシュ・サーの背骨》
僕がグランプリ・アトランタ2018で使用したデッキリストでひと際目を引くカードは、間違いなく《イシュ・サーの背骨》でしょう。Magic Onlineのjadothというプレイヤーが使っていたので、それを参考にしてみたのです。実際に使ってみた感想ですが、《イシュ・サーの背骨》は特別良かったわけではありませんでした。ただ、新たな可能性を見出してくれたカードでした。
主に《マイアの回収者》と似たような役割を果たし、無限ループを形成するカードだったのです。従来はその役割は2枚目の《マイアの回収者》が担うことが多かったのですが、《イシュ・サーの背骨》にしかないちょっとしたメリットがいくつかあったのです。
デメリットとしては、当たり前ですがマナコストが重いことです。《クラーク族の鉄工所》がなければ到底唱えることができません。どちらかというと、《マイアの回収者》は無難でコンボ寄りのカード、そして《イシュ・サーの背骨》は柔軟性の高いカードといえますね。個人的にはいまのところ《イシュ・サーの背骨》に満足しているので、今後も使っていくつもりです。
《精神石》をサイドアウトする
個人的にサイドボード後に一番弱いカードとなってしまうことが多いのは、《精神石》だと思っています。カードの効果自体が弱いというわけではないのですが、サイドボード後はアイアンワークスに対してアーティファクト除去を入れてくることが普通なので、唯一そういったカードとあまり好ましくない交換をしてしまうのが《精神石》なのです。《精神石》をサイドアウトすることで、結果的に《古えの遺恨》や《摩耗+損耗》が有効ではなくなる上、相手のスピードを下げるカードになりかわります。
また、《精神石》は《仕組まれた爆薬》を(X)=2で起動してしまうと巻き込まれてしまうという弱点があります。さらに、《精神石》は他のアーティファクトよりも《石のような静寂》に対して脆弱です。なぜかというと、マナコストが重い上に、《練達飛行機械職人、サイ》のドロー能力のコストに充てたとしても、《精神石》自身の能力で生け贄になったわけではないので、ドローができないからです。
繰り返しにはなりますが、サイドボード後はゲーム展開が遅くなり、お互いに妨害し合うため、《精神石》でマナ加速してまで《クラーク族の鉄工所》を出す意味はそんなにありません。できることなら、相手のカードを有効に使わせないことが大切です。その点、《練達飛行機械職人、サイ》は《古えの遺恨》の立場を失わせるという役割を果たします。
そのほかのアドバイス
《テラリオン》より先に《彩色の宝球》をプレイしよう
《彩色の宝球》を《クラーク族の鉄工所》で生け贄に捧げてもドローできないので、すぐに「サイクリング」してしまっていいパターンが多いです。そのため、1ターン目は《テラリオン》よりも《彩色の宝球》を優先してプレイするのが普通です。
積極的に《精神石》を探しに行こう
1本目の2ターン目は、1ターン目に設置したキャントリップ付きのアーティファクトをサイクリングして《精神石》を探しに行く動きがもっとも多いです。手札に《クラーク族の鉄工所》や十分なマナソースがにある場合は別ですが、基本的にキャントリップ付きのアーティファクトは「サイクリング」として使ってしまって構いません。コンボにオールインするなら、盤面をしっかりと作っておいた方がいいですからね。
土地の置く順番に注意しよう
1本目は、有色マナを生む土地よりも《ダークスティールの城塞》と能力付きの土地を優先してプレイしましょう。次のターンに有色マナがないと困るという確信がある場合はその限りではありません。《ダークスティールの城塞》や能力付きの土地は戦場に何枚あってもいいのですが、有色マナがなくて困るということは滅多にないのです。ただ、能力付きの土地が《廃墟の地》で破壊させないように気をつけましょう。サイドボード後に《石のような静寂》を使ってくる相手に対しては、《ダークスティールの城塞》を序盤に出してしまわないように注意です。
《古きものの活性》を《Demonic Tutor》のように使おう
《古きものの活性》は強力なカードですが、キャントリップにすぎません。ですから、できるだけ手札に抱えておいて、手札に加えたいものがはっきりしたときに唱えるようにしましょう。もし欲しいものが不明確なら、マナを別のことに使うべきです。そしてそれ以降のドローとの兼ね合いでほしいものが明確になってきたら、そのときこそ《古きものの活性》を唱えるべきタイミングです。
各種マッチアップごとの解説
vs. ドレッジ
ドレッジとの相性はいいですが、負ける可能性も十分にあります。1本目に関して言えば、お互いに一人回ししているような状態になるので、有利にたてます。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
《減衰球》を投入してくることはあまりないです。
ドレッジ相手のサイドボーディングで一番難しいのは、ドレッジが必ずしも《虚空の力線》をサイドインしてくるとは言い切れないことです。しかしサイドインをしてくる確率の方が高いため、備えておかないわけにはいかないのが厄介なところ。《虚空の力線》がサイドインされなかった場合、《自然の要求》は半ば腐ってしまうため、それが敗着になることもあります。こちらのサイドボードプランは相手のサイドボードプランに依存するため、現状は最適なサイドボードプランが見つけられていません。とはいえ、こちらがサイドインするカードにも有利な点はあります。
《トーモッドの墓所》
当然ですがドレッジに効果抜群の対策カードであり、相手の速度を大幅に落とすことができます。《屑鉄さらい》がいれば何度も使いまわせるため、完全に相手をシャットアウトできる可能性も秘めています。
《練達飛行機械職人、サイ》
《燃焼》に弱いと思うかもしれませんが、《練達飛行機械職人、サイ》は目を見張る強さがあります。《虚空の力線》や《古えの遺恨》が効かないですし、仮に《燃焼》で除去されたとしもドレッジのキルターンを大幅に遅らせることができるのです。また、サイドボードの《トーモッドの墓所》の枚数を増やせば、さらに《練達飛行機械職人、サイ》をうまく使えますし、相手を圧倒することができるようになります。
《白鳥の歌》
悪くないカードです。先手で《虚空の力線》が戦場にないゲームであれば、さらなる活躍が期待できます。《古えの遺恨》や《安堵の再会》、《燃焼》をカウンターできますからね。とはいえ、《虚空の力線》を貼られたとたんに、使えないカードになってしまう弱さを持っています。そのため、ドレッジ相手にはサイドインしません。
ここまでの話を踏まえ、相手が《虚空の力線》を使ってくるかどうかわからない場合のサイドボードは以下の通りになります。
vs. ドレッジ
3本目は、相手の《虚空の力線》の枚数に合わせて《自然の要求》の枚数を調整しましょう。ドレッジはデッキのほぼすべてを公開するので、《虚空の力線》が何枚かわかるはずですからね。また、《練達飛行機械職人、サイ》は後手よりも先手の方が強いカードです。サイドボード後は、1ターン目に《古きものの活性》を唱えると《トーモッドの墓所》を見つけられるチャンスがあります。ひとつのゲームプランとしてぜひ覚えておきましょう。
vs. 5色人間
1本目に関しては、相性がいいとは言えません。《スレイベンの守護者、サリア》や《翻弄する魔道士》が非常に厄介ですからね。1本目に《精神石》をたくさん引いてしまうと、《仕組まれた爆薬》が裏目になる可能性があります。また、アイアンワークスは《仕組まれた爆薬》ぐらいしか除去がないため、《霊気の薬瓶》を序盤から置かれてしまうと《仕組まれた爆薬》では間に合わない可能性があります。
相手が5色人間を使っているとわかったら、相手が2マナのクリーチャーを展開していなくても、2ターン目に《仕組まれた爆薬》を(X)=2で唱えてしまうのもひとつの手です。そうすれば《翻弄する魔道士》の効果で唱えられなくなることは避けられますからね。サイドボード後は《練達飛行機械職人、サイ》と除去を追加することで相手のリソースを枯渇させましょう。コントロールデッキになるイメージです。バント・スピリットに対してはアーティファクトをたくさん抜きますが、5色人間相手であればそこまで抜く必要はありません。
vs. 5色人間
気をつけるべき相手のサイドボードカード
あまりよく分かりません。
5色人間は《ガドック・ティーグ》や《戦争の報い、禍汰奇》、《先頭に立つもの、アナフェンザ》、《減衰球》といったカードを主にサイドインしてきます。しかし、こういったカードはそこまで効果的ではありません。そもそも5色人間のメインデッキのカードでサイドアウトしたいカードもないため、5色人間を使うプレイヤーからすればサイドボーディングは頭を抱えることになりますね。サイドボードから単体除去を追加することで《翻弄する魔道士》や《帆凧の掠め盗り》 のソフトロックを解除することができるようになるため、《仕組まれた爆薬》は大車輪の活躍を見せます。
また、5色人間に対しては《練達飛行機械職人、サイ》が単体でゲームプランになります。相手のデッキ構成によっては、《石のような静寂》や《安らかなる眠り》を厳しいマナベースから出してくることがあるため、うまくやり過ごす方法を考えておかなければなりません。とはいえ、相手が実際にそれらのカードをサイドインしているとわかったとしても、《自然の要求》をサイドインするほどではありませんね。確かに《霊気の薬瓶》も《自然の要求》の対象にはなりますが、本当にゲームの最序盤、かつ相手が《石のような静寂》や《安らかなる眠り》を引いているかどうかわからないときにしか《霊気の薬瓶》を破壊するようなことはしません。それに《安らかなる眠り》であれば《仕組まれた爆薬》で破壊できますしね。
火力呪文を《稲妻》と《感電破》で分けている理由のひとつは、このマッチアップで《翻弄する魔道士》を出されてもいずれかの火力呪文を唱えらえるようにするためです。
vs. トロン
技術の介入要素がないようにも思えますが、多少技術が介入するマッチアップです。1本目に関しては、3ターン目の《解放された者、カーン》にマナソースを破壊されない限り、こちらのほぼ一人回し状態で勝てます。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
vs. トロン
《仕組まれた爆薬》は0マナで唱えられること以外に役に立ちません。他方で、《否認》は便利である場面が多いですね。《自然の要求》は相手に《大祖始の遺産》を使わせることが主な用途です。ただ正直なところ、《自然の要求》よりも0マナで唱えられる《仕組まれた爆薬》の方がいい可能性はありますので、それは心にとどめておいてください。
相手がマナを浮かせていて、かつ妨害要素を持っている場合、コンボをスタートさせるのは危険です。こちらのリソースが少ない場合にそれをやってしまうと、負けにつながることが多いですからね。ただ、ときにはそういった状況でもコンボをスタートさせることがあります。なぜなら、相手のデッキには《難題の予見者》や《解放された者、カーン》といったカードや《自然の要求》と《外科的摘出》のコンボがあるからです。一般的な経験則からいうと、まず盤面を作り、多少の妨害をされても大丈夫な展開にもっていくことが重要です。
相手がサイドボードプランで《外科的摘出》に依存している場合、対抗して《練達飛行機械職人、サイ》を1枚か2枚入れるのもアリです。ただ、《忘却石》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を使われた場合に通用しなくなるプランではあります。また、《外科的摘出》対策という意味では《白鳥の歌》もサインドインする選択肢に入ります。全体的な相性ですが、油断しなければトロンには勝てるはずです。
vs. バント・スピリット
1本目は《クラーク族の鉄工所》を《呪文捕らえ》で追放されるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。とはいえ、バント・スピリットはクロックが非常に遅いことがあり、たくさん《精神石》を引けていると、《仕組まれた爆薬》を(X)=3で繰り出して《呪文捕らえ》を誘いだした上で、その後同一ターン中に《クラーク族の鉄工所》を出すことができます。また、《仕組まれた爆薬》のコストを3色の5マナで支払うことで《呪文捕らえ》に追放されないプレイングをすることもあります。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
《ガドック・ティーグ》は滅多に入れてこないと思います。
vs. バント・スピリット
先手は《オパールのモックス》を抜き、後手は《ダークスティールの城塞》を抜きましょう。
バント・スピリットは対策カードを大量に投入してくるため、お決まりの《クラーク族の鉄工所》のコンボを狙いに行ってもダメです。しかしありがたいことに、アイアンワークスは《練達飛行機械職人、サイ》を使ったコントロールプランも使えます。このプランでは《安らかなる眠り》や《石のような静寂》といった厄介なエンチャントを使われたとしても、まだ勝ち目があるのです。
全体的な相性でいえば、決して戦いたい相手ではありません。とはいえ、見た目以上には勝てる可能性があります。バント・スピリットは対策カードであるエンチャントを大量に入れた弊害として、デッキとしての機能が低下していますからね。それにアイアンワークスはカードアドバンテージ源となるカードがデッキに入っていますが、相手にはそれがありません。
vs. 青白コントロール
青白コントロールとの1本目をする上で、知っていただきたいことがあります。これは僕の経験則であり、重要ですがシンプルなものです。それは、「相手の使えるマナが3以下である場合は《クラーク族の鉄工所》を唱えてしまうこと。4マナ以上ある場合、つまり《謎めいた命令》を構えている場合には《クラーク族の鉄工所》を唱えないこと」です。
青白コントロールはメインデッキに軽量の打ち消し呪文をほとんど入れていないので、相手がそれを引く前に《クラーク族の鉄工所》を唱えてしてしまう方が良いのです。もし相手が《謎めいた命令》を構える前にしかけられなかった場合、相手の打ち消し呪文を乗り越えていくプランに移行します。そのためには、土地をプレイする順番を考えて《埋没した廃墟》を《廃墟の地》で破壊されないようにしましょう。
また、クロックをかけられないように《黄鉄の呪文爆弾》を《ヴェンディリオン三人衆》のためにとっておきます。そして《精神石》をサイクリングしないようにすることもポイントです。相手がゲームのどこかで土地を置けなかったり、プレインズウォーカーのためにマナをすべて使い切ってしまうタイミングもありますし、1ターンの間に《クラーク族の鉄工所》を2回唱えることができるタイミングも出てきます。
それでもだめなら続くターンに再び仕掛けるようにしましょう。 《クラーク族の鉄工所》が一旦通ってしまえば、勝利は目前です。《謎めいた命令》に突っ込まず、相手に効率的にマナを使わせなければ、1本目はかなり有利です。逆にサイドボード後は厳しくなります。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
たまに《呪文捕らえ》がサイドに採用されている場合があるので気を付けましょう。
vs. 青白コントロール
さきほどと同じく、先手は《オパールのモックス》を抜き、後手は《ダークスティールの城塞》を抜きましょう。
サイドボード後はこちらもカウンターを使えるようになります。他方、相手は軽いカードを増やしつつ、1本目で腐っていたカードを有効なカードと入れ替えてくるので、1本目のようなゲーム展開に滅多になりません。《練達飛行機械職人、サイ》は相手が《謎めいた命令》を構える段階になる前に唱えましょう。着地させれば、すぐに《流刑への道》を撃たれない限り、ゲームに勝つ可能性があります。残念な話ですが、もし相手が《呪文捕らえ》を使ってきた場合、相当厳しい戦いを強いられると思います。青白コントロールではなくジェスカイコントロールであれば、《自然の要求》をもう少し減らしてもいいと思いますが、戦い方や相性は基本的に変わりません。
vs. バーン
1本目で注意すべきは《大歓楽の幻霊》です。そのため、状況次第では《古きものの活性》で《黄鉄の呪文爆弾》や《イシュ・サーの背骨》を優先させて手札に加えることがあります。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
vs. バーン
《精神石》をサイドアウトする理由は、先ほどから何度か述べている通りです。相手が《安らかなる眠り》や《石のような静寂》を大量に入れてくるようであれば《練達飛行機械職人、サイ》を用いたコントロールプランに沿ってゲームを進めても構いませんが、無視して焼き切られてしまうこともあるので決してこのプランが理想的だとはいえません。《自然の要求》は《安らかなる眠り》や《石のような静寂》だけでなく、《大歓楽の幻霊》も除去できる上に、ライフ回復呪文として使うこともできます。そのため、少し受動的な構成になってしまいますが、それだけリターンはあるので大丈夫です。特に後手であれば、《自然の要求》は大活躍することでしょう。
vs. ジャンド/黒緑
気をつけるべき相手のサイドボードカード
《虚空の力線》は滅多に入れてこないかと思います。
vs. ジャンド/黒緑
ジャンドや黒緑は《虚空の力線》を使ってこないことも多いので、実際に相手が使っているとわかるまでは《自然の要求》を入れようとは思いません。仮に実際に相手が《虚空の力線》を使ってきたとしても、コンボを始動するターンに《発明博覧会》から《イシュ・サーの背骨》を持ってくることができるので対処できます。そして必要であれば、3本目に《精神石》を減らして《自然の要求》を追加すればいいでしょう。ジャンドや黒緑は主に手札破壊でコンボを妨害してきますが、アイアンワークスは戦場に「サイクリング」カードをたくさん出しておけるため、さほど有効な対策ではありませんね。
vs. マルドゥ・パイロマンサー
気をつけるべき相手のサイドボードカード
vs. マルドゥ・パイロマンサー
他の黒系のミッドレンジと似ているデッキですが、相手の使ってくる対策カードの種類が幅広く、少々厄介です。マルドゥ・パイロマンサーは《練達飛行機械職人、サイ》に非常に弱いので、サイド後のゲームプランを変えたほうが良いでしょう。アーティファクトが並ぶ展開になりづらいなかで、《配分の領事、カンバール》を除去する必要があるため、《感電破》よりも《稲妻》を優先してサイドインします。相手が《虚空の力線》以外の墓地対策カードを使ってきたら、3本目では《自然の要求》を抜きましょう。
vs. ストーム
ストームとの対戦は興味深いものがあります。というのも、僕が最初に予想していたよりも、ストームにはるかに勝てたからです。確かに1本目はかなり相性が悪く、勝率も相当低いです。しかし、サイドボード後はアイアンワークスが優れた妨害手段をサイドインできるのに対して、ストームはアイアンワークスよりもリソースを必要とするデッキであり、《削剥》や《破壊放題》、《残響する真実》といった弱いカードをサイドインしてしまい、自らのデッキの機能を低下させてしまいます。
vs. ストーム
ストーム相手には《感電破》よりも《稲妻》の方が確実に強いですね。なぜかというと《感電破》はゲーム序盤で「金属術」が達成できないと《遵法長、バラル》を除去できないからです。《遵法長、バラル》や《ゴブリンの電術師》を除去できていれば、《クラーク族の鉄工所》を着地させる展開まで持っていけるかと思います。《差し戻し》を使われたとしても、数ターンかければ着地させられるでしょう。
vs. 赤黒ホロウワン
気をつけるべき相手のサイドボードカード
vs. 赤黒ホロウワン
《トーモッドの墓所》はサイドインするに値しないと思っていますが、僕が間違っている可能性もあります。《自然の要求》はとても優秀で、《虚ろな者》や《虚空の力線》を除去できます。相手からすれば《練達飛行機械職人、サイ》のために除去をデッキに残しておくことは難しいですが、たまにサイドボード後にも《稲妻》を使ってくるプレイヤーがいるので、安易に《練達飛行機械職人、サイ》で《恐血鬼》をブロックしないようにしましょう。
赤黒ホロウワンは今年のはじめ頃に隆盛したデッキですが、それは《練達飛行機械職人、サイ》が登場する前のことでした。僕の対戦データを見る限りでは、後手にはいくらかメリットがあるようですね。残念ながら、なぜ後手のほうがいいのかは究明できていません。僕の推測では、《ゴブリンの知識》や《燃え立つ調査》による無作為に手札を捨てる効果に対しては、手札の多い後手の方が耐性があるからだと思っています。
vs. グリクシス《死の影》
相性は最悪です。《死の影》は《仕組まれた爆薬》や《燃え柳の木立ち》で抑えることができます(相手のデッキに《死の影》が入っているのなら、1ターン目から《燃え柳の木立ち》で相手を回復させる癖をつけましょう!)。問題なのは《グルマグのアンコウ》で、まったく手を付けられないため大きな問題になります。1本目はドローが噛み合っていれば勝つことができますが、良い引きをして相手が事故を起こすことを祈ってくれ、としか言えないですね。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
vs. グリクシス《死の影》
残念ながら、アイアンワークスのメインのゲームプランは《グルマグのアンコウ》と《頑固な否認》のコンビに対して非常に相性が悪いです。そのため、サイドボード後のベストなゲームプランは、《虚空の力線》を避けつつ、相手に先手をとらせ、相手が事故を起こすのを祈り、追加の脅威として《練達飛行機械職人、サイ》を入れることです。とはいえ《練達飛行機械職人、サイ》は「出せれば勝ち」というカードではないですね。相手は《ティムールの激闘》を採用していますし、サイド後も《四肢切断》を数枚残しておきやすいデッキですからね。
試しに《白鳥の歌》や《自然の要求》をサイドインしてみたことはあるのですが、できれば使いたくないという感想でしたね。グリクシス《死の影》は機会費用の重要性を嫌というほど教えてくれました。
《硬化した鱗》親和
《硬化した鱗》デッキは、若干ですが全体的にデッキパワーが低いと思っています。また、速いコンボデッキへの耐性もないのです。そのため、相手が《硬化した鱗》を引いていない限り、1本目で負けるのは滅多にありません。
気をつけるべき相手のサイドボードカード
《減衰球》は大量に投入されてくることでしょう。
vs. 《硬化した鱗》親和
どちらのデッキも《自然の要求》をサイドインしますが、アイアンワークスの方が有効に使えます。このマッチアップは《練達飛行機械職人、サイ》の活躍の場ではないですね。なぜかというと、相手のデッキはクリーチャーのサイズを上げることを得意としていて、サイズが大きくなった《歩行バリスタ》に対してなす術がないからです。しかし、相手が対策カードをかなり多めに入れてくる関係で、相手のデッキの機能が落ちると想定した場合、《練達飛行機械職人、サイ》が有効なのかもしれません。
《仕組まれた爆薬》を使うときは《溶接の壺》の存在を忘れないようにしましょう。また、《減衰球》を《溶接の壺》で守られて負けるような展開にしないことも大切です。もしかしたら、《練達飛行機械職人、サイ》と《稲妻》をすべて投入するプランのほうが効果的である可能性もあります。
おわりに
モダンには無数のアーキタイプが存在しています。もしかしたらみなさんが気になっていたマッチアップを今回は紹介できなかったかもしれません。しかし今回の記事を通して、サイドボーディングの核となる考え方はお伝えしました。
簡単におさらいしておきましょう。相手が飛行機械トークンを乗り越えてくるようなプランをとってこない限り、《練達飛行機械職人、サイ》はサイドインします。相手がサイドボード後にどうやって勝とうとしてくるのかを考え、それに対応できるような形にしておくことが求められるのです。しかし、アイアンワークスの使うカードは強力なので多少妨害されても押し切ることができます。
みなさんが大会でいい結果を残せることを願っています!僕の次のイベントはグランプリ・リバプール2018(チームモダン)です。ニールス・モール/Niels Molleとジョアオ・チョカ/Joao Chocaとチームを組み、モダンで最高のデッキを使うつもりですよ。