ヴィンテージでプロツアーへ行こう

Marc Tobiasch

Marc Tobiasch

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2018/12/10)

はじめに

先日、Magic Online Championship (※MOCS) にある変更が加えられた。ヴィンテージでプロツアーに行けるようになったのだ。そこで僕の好きな、古のフォーマットであるヴィンテージについて記事を書くことにした。

ヴィンテージは、ある大きな誤解をされている。「ほかのフォーマットでは使えない強力なカードを使い、妨害する余地もなく、1ターン目に負けるフォーマットである」と思われているのだ。「他のフォーマットでは使えない強力なカードを使える」というのは正しく、ヴィンテージを特別で、面白いフォーマットにしている要素だ。しかし、「妨害する余地もなく、1ターン目に負けるフォーマット」というのはまったくの誤解だ。確かに多くのヴィンテージのデッキは1ターン目に勝つ可能性を秘めている。しかし、すべてのデッキに妨害するカードが多く入っているため、1ターン目に勝てるなんてことは滅多に起こらないのだ。

Mishra's WorkshopBazaar of Baghdadマナ吸収

かつてのヴィンテージには、3つの柱となるカードがあった。まずは《Mishra's Workshop》。普通にプレイすると重すぎるアーティファクトが簡単に唱えられるようになり、相手にまともなゲームをさせなくするカードだ。2つ目の柱は《Bazaar of Baghdad》。「発掘」を使った墓地利用デッキのエンジンともいえるカードだ。そして3つ目の柱は、《マナ吸収》。青系のコントロールデッキが圧倒的なマナアドバンテージを得る手段だ。

しかし、新しいカードが登場するにつれ、ヴィンテージも形を変えてきた。その過程で《マナ吸収》は2マナという重さが枷となり、コントロールデッキはさまざまな脅威を安定して対処できなくなっていった。

《Mishra's Workshop》《Bazaar of Baghdad》は今もなお健在だが、《マナ吸収》を使ってきた青系のデッキはさまざまな形へと分岐していったのだ。大きく分けると、純粋なコントロールデッキ、《ドルイドの誓い》デッキ、《逆説的な結果》ストームに形を変えていった。

スレイベンの守護者、サリア難題の予見者適者生存

クリーチャーを軸にしたデッキも多く存在する。レガシーでいうところのデス&タックスのような「ヘイトベア」デッキもいるし、エルドラージはマジック最古のフォーマットでもその存在感を示している。最近で言うと《虚ろな者》が登場したことで《適者生存》デッキは環境トップに舞い戻った。

Ancestral RecallTime WalkTimetwister
Black LotusMox PearlMox Sapphire
Mox JetMox RubyMox Emerald

ヴィンテージは長らくの間、競技シーンにおいて日の目を見ることはなかった。パワー9のような希少性の高いカードがあるため、ヴィンテージを紙でプレイするのは敷居が高いのだ。確かにMagic Onlineであれば安価に始めることができる。とはいえ、慣れ親しんだマジックとはかけ離れたフォーマットをやり込みたいかと言われると微妙なところだろう。

しかし、今回のMOCSに関する変更で状況が変わった。ヴィンテージだけでMOCS、ひいてはプロツアーに参加できる可能性が生まれたのだ。ヴィンテージは、プロによる開拓があまりされていないフォーマットだ。スタンダードは環境が比較的すぐに固まってしまうが、ヴィンテージはやろうと思えばまだまだ「やりたい放題」のフォーマットだ。マジックでやりたいことをやろうと思ったときにネックになりやすいのは、マナによる制限だ。

太陽の指輪魔力の墓所

ヴィンテージにもっとも近しい存在であるレガシーでは、3マナのカードですらあまり使われないが、これはまさにマナの問題からくるものだ。ところがヴィンテージではパワー9や《太陽の指輪》《魔力の墓所》、そして《Mishra's Workshop》すら使えるため、マナが制限になることが圧倒的に減り、突如として大抵のことが可能になってしまう。デッキビルダーからすれば天国のような環境だ。

ここから現在の環境に存在するデッキたちを簡単に解説していこう。ヴィンテージをプレイしていく上で対戦する確率が高いデッキばかりだ。これを知っておけば、環境をどう攻略していけば良いかが見えてくるだろう。プロツアーを目指していくなかで、みなさんとヴィンテージ・リーグやヴィンテージ・チャレンジで会える日を楽しみにしている。

主要なデッキ

MUD

Mishra's Workshop三なる宝球虚空の杯抵抗の宝球

多くのパーツが制限カードとして規制されてきたが、依然として最強の一角であるアーキタイプ。無色のカードのみで構成されたデッキで、核となるカードは《Mishra's Workshop》だ。《Mishra's Workshop》は実質的に「生け贄に捧げる必要がない《Black Lotus》」であるため、通常ではあり得ないような動きを連打することができる。

MUDの主な戦い方は、大量のマナから《三なる宝球》《虚空の杯》《抵抗の宝球》といったカードを駆使して相手にまったく呪文をプレイさせないことだ。幸運というべきか、こういった相手に制限をかけるカードの多くは、「制限カード」に指定されている。しかし、MUDの核となる部分は規制されていないため、デッキはまだ機能している。似たような戦術を使うデッキは多いが、もっとも一般的なリストはこんな感じだろう。

《アメジストのとげ》《磁石のゴーレム》《虚空の杯》といったカードがここ最近で規制されたことで、MUDは「純粋なプリズンデッキ」から「相手の展開を妨害するアグロデッキ」へと変化していった。

MUDとの戦い方

MUDに対するもっとも有効な戦い方は、マナ加速をすることで、マナコストに制限をかけてくる相手の戦法を無力化しつつ、相手のクリーチャーに押し切られる前に相手を倒すことだ。あるいは、相手の妨害要素をすり抜けるのも手である。たとえば、呪文をまったく唱えずに、墓地からクリーチャーを蘇らせる戦法が有効だ。

ドレッジ

Bazaar of Baghdad

ドレッジは、一度も呪文を唱えずとも簡単に勝てるデッキだ。デッキリストはさまざまなバリエーションがあり、コンボ寄りなものから、妨害要素を取り入れたアグロタイプのものもある。しかし、本質的にはどれも墓地を利用するデッキであり、大半の妨害を横からすり抜けられるデッキと言える。

デッキリストはこんな感じだ。

血清の粉末

ドレッジは、初手に《Bazaar of Baghdad》が来るまでマリガンするのが一般的だ。だからこそ、ほぼすべてのドレッジのリストには《血清の粉末》が入っていて、《Bazaar of Baghdad》が初手に来る確率を高めている。

ドレッジとの戦い方

ドレッジに対するもっとも有効な戦い方は、サイドボードに墓地対策のカードを多く入れておくことだ。お互いのサイドボード戦略は、ちょっとしたダンスのようになる。こちらが対策カードを入れ、相手はその対策カードが何なのかを推測し、それに応じてサイドインするカードを決めるのだ。ただ、ドレッジ側はこのように真っ向から対策カードに対応するのではなく、対策カードをすり抜けてくるようなプランをとってくることもある。たとえば、《虚ろな者》《暗黒の深部》コンボといったものだ。そのため、ドレッジを対策しすぎて自分のデッキの方向性を見失ってしまわないように気をつけよう。

クリーチャーデッキ

次に紹介するデッキカテゴリーは、僕が「クリーチャーデッキ」と呼んでいるものだ。MUDもドレッジもクリーチャーで勝つデッキではあるが、これから紹介するのはレガシーのクリーチャーデッキにより近しいものだ。

白単エルドラージ

封じ込める僧侶異端聖戦士、サリア難題の予見者現実を砕くもの

みなさんが大好きなエルドラージも、レガシーより妨害要素が強めだが、ヴィンテージで幅を利かせている。

《適者生存》

Bazaar of Baghdad適者生存
日を浴びるルートワラ復讐蔦虚ろな者

「クリーチャーデッキ」のなかでも、《適者生存》デッキはコンボ寄りのアプローチといえる。《適者生存》《復讐蔦》が登場したことでレガシーでは禁止になってしまったが、ヴィンテージでは4枚使えるし、いまだに活躍しているカードだ。

(※編注: アジア初となるエターナル・ウィークエンド優勝者のサバイバル・デッキガイドはこちら)

クリーチャーデッキとの戦い方

エルドラージや《適者生存》デッキとの対戦は、ヴィンテージの方がカードパワーが高いとはいえ、レガシーやモダンで慣れ親しんだゲーム展開になる。除去や、相手のクリーチャー戦に付き合わないような強力なゲームプランをとることが最善の勝ち筋だ。

青系のデッキ

環境でもっとも多様性があるデッキカテゴリーは、僕が「青系のデッキ」と呼んでいるものだ。青は歴史的に見ても最強のカラーであり、ドローもできれば、打ち消しもできる。ヴィンテージではそういったドローや打ち消しの呪文がすべて使えるため、青の強さがもっとも顕著に表れているフォーマットといえる。

ティムール・コントロール

Snapcaster Mage渦まく知識宝船の巡航時を越えた探索

「青系のデッキ」は主に2つのカテゴリーに分かれる。コンボとコントロールだ。 コンボもコントロールもさまざまなデッキがあるし、構築方法もいくらでもあるため、すべてを紹介しきることはできない。他のフォーマットと同様に、コントロールタイプのものは、相手の脅威すべてを対処し、最終的にカードアドバンテージを生むカードを使って勝とうとするのが一般的だ。

現在の環境でもっとも主要なコントロールデッキはこのようなものだ。

青系のデッキとの戦い方

コントロールデッキと戦う上で主に有効なのは、相手の妨害を受けないような攻め方をすることであり、ドレッジはまさにそれを得意としている。だからこそドレッジは1本目のゲームに勝てることが多い。特定の妨害手段しか効かないのだ。また、先ほど紹介した《適者生存》デッキも妨害に強い。なぜなら、「青系のデッキ」は同型への意識が強い構築になっていることが多く、クリーチャー除去の枚数が少ないからだ。

パラドックス・ストーム

ヨーグモスの意志逆説的な結果苦悶の触手精神の願望

青を使ったコンボデッキの種類は実に多岐にわたる。しかしマナを大量に生み出すのは共通事項で、最終的に「ストーム」を持つカード、《Time Vault》《通電式キー》のコンボ、または《ゴブリンの放火砲》といった手段でゲームを決める。コンボデッキには強力なエンジンが数多く存在するが、そのなかでも際立った1枚が、いずれ制限カードの仲間入りを果たすだろうと目される《逆説的な結果》だ。

パラドックス・ストームとの戦い方

大抵のコンボデッキは土地の枚数が少なく、軽い呪文をたくさん唱えてからコンボで勝とうとする。そのため、《抵抗の宝球》を使うデッキは、コンボデッキを完封できることが多い。《抵抗の宝球》以外でコンボデッキに対抗するのであれば、一般的な妨害手段である打ち消し呪文や手札破壊呪文でも構わない。また、サイドボードでよく見かけるようになった《配分の領事、カンバール》のようなパーマネントでも対策できる。

まとめ

今回紹介していた以外にも、まだまだたくさんのデッキがヴィンテージには存在している。土地単もあれば、フィッシュデッキもある (「フィッシュ」というのは、小型のクリーチャーを打ち消し呪文でバックアップするデッキを指す、昔ながらの用語)。そして前述の《ドルイドの誓い》デッキは、コントロールとコンボのハイブリッドデッキであり、主に「クリーチャーデッキ」に対して有効なデッキだ。

ヴィンテージにはこの他にもたくさんのデッキの種類がある。また、強力ながらもまだ誰にも発見されていないようなアーキタイプがあると確信している。熱意あるプレイヤーやデッキビルダーが、新たな角度からヴィンテージを攻略してくれるようになれば、ヴィンテージの未来は明るいはずだ。ヴィンテージがどう進化していくのかが楽しみで仕方がない。

では、今のヴィンテージのように多様性に富んでいるフォーマットをどう攻略していけばいいだろうか。それは、一見異なるように思えるデッキやアーキタイプの類似点を見つけ、共通している弱点をつく方法を探すことだ。他方で、自分は広く使われている妨害手段には引っかからないような戦術をとることが重要となる。攻略していく上でのヒントとなるように、ヴィンテージのデッキに共通していることをあげておこう。

僕がヴィンテージで初めて組んだのは、低予算のデッキだった。しかし、そのデッキは環境に対して異なる角度から攻めるデッキであり、予想だにしていなかった相手に対してあっさりと勝利を積み重ねることができた。確かにその頃と違って、今のヴィンテージのデッキパワーは全体的に上がってしまった。とはいえ、昔のように今のヴィンテージでも優位性のある立ち位置を築くことはできると思う。

僕が今紹介したヴィンテージのデッキの共通点を弱点として突いていけばいい。そして逆に自分のデッキは、そのような点を突かれても困らないようなものにしよう。今回の記事を通して、少しでもヴィンテージの魅力を伝えられただろうか。実際に使ってみたいデッキを見つけていただけたら幸いだ。欲を言えば、調整しがいのある、新たなアーキタイプを見つけてもらえたらと思う。

マジック史上もっともパワフルで象徴的なカードたちを駆使し、デッキ構築も対戦も存分に楽しんでみよう。

@MarcTobiasch

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Marc Tobiasch

Marc Tobiasch ヨーロッパのプレミア・イベントで活躍を続け、注目を集めるドイツの強豪。デッキ・ビルダーとしての評価も高く、公式カバレージで【逆説的な結果ストーム構築への挑戦】が取り上げられた。 【プロツアー『アモンケット』】ではドラフトラウンドで全勝を果たし、その勢いのままトップ8入賞を果たす。 Marc Tobiaschの記事はこちら