Magic Onlineグラインダーになろう Part2

Dmitriy Butakov

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2018/12/11)

はじめに

みなさんこんにちは。

本シリーズも2作目になった。もしPart1をご覧になっておらず、真剣にこの記事から学びを得たいと思っている人は、ぜひPart1を読んでほしい。このシリーズは相互連携するようになっており、以前までの内容を頭に入れておいた方が吸収力も高まるからだ。

MOCSは2019シーズンから新装されると発表された。大きな変更として、モダン・レガシー・パウパー・ヴィンテージのいずれかのフォーマットだけプレイしている人でも、最終決戦であるMagic Online Championshipへの道が開かれたのだ。私自身もまだあまりわかっていない部分があるが、共通していることがある。それはゲームをやりこむこと、Qualifier Point(QP)・リーダーボードポイントを獲得すること、あるいは新しく登場し、まだ馴染みのないフォーマット・ポイントというものを稼ぐことだ。

今回は、グラインディングで使用するデッキの解説はしない。今回のテーマは「一日のスケジューリング」だ。「人的資源」を最大限に有効活用できる日程を組み上げる。

十分な休みを確保して最大限のパフォーマンスを発揮することを疎かにしている人も多いようだ。自分の敗因をドローの弱さにしてしまえば、気も楽だろう。しかし実際には、眠気であったり、サンドイッチのことを考えていたために、ゲーム上で重要な情報を見落としてしまっていたのかもしれない。世界中の幸運を味方にし、デッキ選択も完璧にしても、それを使いこなせるだけのコンディションでなければ意味がないのだ。……とりあえず確かなこととしては、朝9時に起きて窓の外を覗いてみると、外の世界はこんな景色になってしまっていたということだ。

GIF

最高のMagic Online日和だ!

あくまでひとつのサンプルだが、これから具体的な日程を見ていこう。

1. 準備

朝食・シャワー(~1時間)

旅の準備

これまた当たり前のことのように思えるだろうが、眠りから覚めたら、しっかりと目を覚ます時間を確保すべきだ。「本当に一日14時間もMagic Onlineやってるの?」と訊かれることも多い。確かに、シャワーも浴びず、食事もカップラーメンだけでオンラインだけの生活をすることもある(でもこんなのはたまにしかしない)。冗談ではなく、1回の食事休憩をするだけで10時間もリーグをやろうとする人はいる。しかしこれではせいぜい25%ぐらいの実力しか発揮できないだろう。

一般的な考えと反するかもしれないが、グラインディングは長時間やればいいというものではない。グラインディングとは、時間を効率的に使うことであり、ゲーム内で最善の選択を選び続けられる状態を保つことなのだ。

本題に戻ろう。しっかりとした朝食は欠かさずとること。食後のコーヒーを飲んでいる間に、マジックの最新情報やMagic Onlineの相場変動をチェックしておくのもいいだろう(これぐらいなら数分でできる)。

2. プレイ時間 前半戦(~4時間)

私のプレイスタイルでは、一日でプレイする時間を前半戦・後半戦の2つに分割する。前半戦はプレイしても4時間、後半は1時間から5時間だ。みなさんの場合は、まずは前半戦だけやってみて、実際にどのようなものか経験してみると良いだろう。後半戦をどれだけやるかは自分で決めてしまって構わない(後半戦を具体的にどれだけやればいいかは後述する)。

少し話を脱線しよう。前半戦は4時間と聞いて「それでは足りない」と思っただろうか。思い出してほしい、我々の狙いは時間を最大限に有効活用することだ。Magic Onlineだけでなく、プライベートの時間も大事にするという意味である。想像してみてほしい。前半戦の4時間を終えた後、彼女からデートのお誘いが来る、あるいは友達からパーティーに招待される、家族との行事がある(そして自分自身も彼らと一緒に遊びたいとする)。しかしあなたはこう言い放つ。「ダメだ、俺は行けない。グラインディングしなくちゃいけない。QPが勝手に増えていってくれるわけではないから。」

どうだろう、いかにもプロフェッショナルらしいのではないだろうか?しかし私に言わせれば、こんなことをしたら最悪の夜になるだけだろうし、期待値も0に近しいものになるだけだ。そんなことをしてまでMagic Onlineをやったとしても、誘ってくれた人たちを傷つけてしまったとか、遊びに行けばもっと楽しかったはずなのにとか、Magic Online以外のすべてを犠牲にしたとか、そういうことを考えてしまうだけだろう。

殺戮の暴君

以前に、「集中力の不足、空腹、のどの渇き、痛み、ティルトなど、気を逸らせてしまうものがゲームに影響を与えたりしないか?」と尋ねられたことがある。この質問に対して最適だと思われる私が行きついた結論は、「これらの問題は、ときとして試合をチョロいもんだと錯覚させやすい」だ。

通常、集中力を維持することは自身の体力との交換になる。例えば、あなたが有利な状態でトップデッキ合戦に突入したとしよう。正確なプレイが求められる中で、君は最善を尽くそうと必死に考えを巡らせていると、幸運にも《殺戮の暴君》をトップデッキすることができた。確かに「巨大でしつこい死を呼ぶトカゲ」のおかげであなたはゲームに勝てたかもしれないが、集中力を欠いて自身の幸運に浸ってしまえば、直前のターンに攻撃せずに2点のダメージを損したことなんて忘れてしまう

だからこそ私は実際にプレイする時間のために入念な準備をする。長い目で見れば、自己管理こそが最大の武器なのだ。自己管理を欠いた者に待ち受けるのは――破滅だ。

期待値を最大化する上でプレイすべきデッキ・フォーマットについては、簡単にではあるが前回の記事で触れた。そしてここまでの話を受けて朝食をしっかりと食べ、シャワーも浴びた。万全の準備が整ったわけだから、前半戦はかなりスムーズにできるはずだ。

更にMagic Onlineのショートカットキーに慣れることは重要である。F2F6は年単位での時間を節約してくれる(次に遠征から戻ったら、最近購入したマウスの側面にあるボタンとF2・F6キーを連携させてみようと思っているんだが、間違いなく有用だろう)。「always yield」や「always yes」も強い味方になってくれる(「always yield」とは特定のカードの効果がスタックの一番上に来た場合に、常に優先権を放棄する設定にできるボタンのこと。また、「always yes」は特定のカードの効果が任意である場合に、常に効果を使用する設定にできるボタンのこと)。

ドミナリアの英雄、テフェリー

素早くプレイしていく上で、重要なことがもうひとつある。盤面の状況を把握し、勝ち目がないと判断したら投了することだ。典型的なのは《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出されたときである。たとえば、相手が《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させ、あなたは《ドミナリアの英雄、テフェリー》、あるいは相手自体を素早く倒す効果的な方法がないとする。このような状況であれば、数ターン後には相手がほぼ勝ち確定の展開になることが目に見えている(確かに相手が土地しかドローしない可能性もある。でも私が例としてあげたのは、相手の手札に有効な呪文があると知りえているときの話だ)。

無駄省き

このような状況でありがちなのは、《ドミナリアの英雄、テフェリー》をコントロールする相手に最後の最後まで時間を使わせようとすることだ。確かに、相手の持ち時間が既に少なくなっているのであれば、この手段をとるのも理解できる(相手の持ち時間を消費させることがモラルに反する行動だ、などと言いたいわけではない。Magic Onlineでは持ち時間も立派なリソースだからだ)。

しかし、相手の持ち時間がまだ18分もあるような状況においては、相手の時間を消耗させる行為は明らかに無意味だ。なぜなら「自分の」時間を浪費してしまっているからだ。リーグで0-2スタートをしてしまった場合、私は大抵ドロップする。確かに、そこから3連勝すれば2チケット分(Treasure Chest1つ分)儲かるが、私たちが目指す利益の出し方はそういったものではない。

3. ランチ休憩(~2時間)

前半戦が終わったら、ランチを食べる。そしてもうひとつ、頭を悩ませずにできる何かをしよう。グラインディングのプレッシャーから解放され、後半戦に向けて心機一転できる何かだ。私の場合は料理がそれに当たる。だから私の場合は簡単にやるべきことが決まるが、リラックスできれば別に何でも良い。自分に合う何かを見つけていただければと思う。

雨雲を泳ぐもの

個人的に一番おすすめなのは、水泳だ。海でなくても、プールで問題ない。今私はビニャ・デル・マールでこの記事を執筆しているが、もし海に行ける場所に住んでいるのであれば、海に出向いた方が良いだろう。最高のリフレッシュになるはずだ。別にプロのように泳ぎが上手である必要はない。ただ波を眺めているだけでも、十分に心を安らげることができる。

ジョギングやサイクリングなどもあるが、私の好みの運動ではないので、その効果が確かなのか断言できない。ただ、一般的に良しとされているものであれば、どれでも問題ないだろう。

Slaying Mantis

その他にも、リラックス効果があると言われ続けているのは、レスリングやフルコンタクトスポーツだ。ただ、私は効果があると思っていない。このようなスポーツの99%は虚勢から成っているからだ。「おい、弱虫野郎。俺はとうとうボクシングで一番上のクラスに入ったぞ!」などと言ったりするのだ。殴られて30分も経っていない頭で考え事が捗るとは到底思えない。

ヨガのようなものも非常に良さそうだ。あるいは誰かと一緒にランチを食べながら、他愛のないことを話したり、日頃の何気ないことを話したりするだけでも良い。テレビで短時間のシリーズものを観るのも構わないが、読書や映画鑑賞は好ましくない。そこに登場したヒーローや内容に気をとられてしまうからだ。

先ほど紹介した通り、料理はおすすめだ。食べ物の香りを嗅げば、たちまち食べ物のことで頭がいっぱいになる。ここまでの話をまとめると、リラックスをするために以下の3つのグループから1つを選ぶことをおすすめする。

もし、1時間半の睡眠をとり、パッと目が覚めるタイプの人間であれば、もちろん睡眠もおすすめだ。

4. 後半戦(1~5 時間)

ここからが難関だ。ランチ休憩でリフレッシュできたとはいえ、生産性は徐々に低下していく。前半戦での結果が芳しくない場合は尚更だ。生産性が落ちてしまうのは仕方がない。大事なのは、少しでも構わないから「どれぐらいプレイすると自分の限界がくるのか」をデータとして残しておき、自分の疲労具合を知る術を持つことだ。そうすれば、自分のストレスが今どれぐらいまで来ているのか分かるようになる。後半戦で肝となるのは、「いつプレイをやめるか」だ。

    ラノワールのエルフ草むした墓森
    平地島沼

a)からd)のいずれかに引っかかったら即座にドロップしろ、という訳ではない。しかし、定期的に引っかかってしまうようならアウトだ。後半戦はそこで試合終了にしよう。白緑オーラやバーンなど、悪いコンディションのなかでも勝てるデッキはあるが、そういったデッキは試合結果が劇的に悪くなるまでにより多くのストレスを抱えてしまうことになる。あとほんのわずか数点のQPを必要としていて、それを短時間で集めてしまいたいという気持ちはわかる。しかし、そこで立ち止まり、切り上げる勇気を持とう。

自分の勝率を算定するなら、一週間分のデータをとると良いだろう(月間で算定するに越したことはないが、それは贅沢というものだ)。たとえその日の収支がマイナスでも、ヤケクソになってはいけない。そういう日があるのは仕方ないし、必ずしも自分のせいとも限らないからだ(決してMOCS Openのようなプレミアムイベントでの収支を計算してはいけない。あれはルーレットのようなものだ)。

疲弊の休息

5リーグ以上を消化してチケットがマイナスになるようであれば、おそらくプレイミスや、デッキ選択のミス、準備不足が原因だ。そういうときは少し休んで、何が悪かったのかを考えるのだ。よく考えてみれば、原因を突き止めることができるだろう。

まとめ

今回お話したすべてが、みなさん全員に当てはまると約束することはできない。紹介したことをそっくりそのまま使おうとするのではなく、自分に合った方法に調整していって欲しい。この記事を楽しみ、何かを学び、実践に移していただけたらと思う。

前回の記事を投稿してからTwitterやFacebookに反応をしてくれた人たちに感謝する。このシリーズをどうやって書いているのか気になっているみたいだが、今回の記事を通してお伝えできたことを願う。

ここまで読んでくれてありがとう。Magic Onlineで会おう。

ドミトリー・ブタコフ

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Dmitriy Butakov ロシアのプレイヤー。Magic Onlineを主戦場としており、オンラインプレイヤーの中で最強を決める大会である2012 Magic Online Championshipで優勝、翌年の2013 Magic Online Championshipでもトップ4に入賞して注目を浴びる。 2018年には2017 Magic Online Championshipで2度目の優勝を果たし、名実ともにMagic Online上で最強のプレイヤーとして堂々たる実績を残すと同時に、優勝の特典でプラチナレベル・プロとなる。こうした実績が認められ、2018年3月にHareruya Prosへと加入した。 Dmitriy Butakovの記事はこちら