みなさんこんにちは。
グランプリ・静岡2018(レガシー)が終了し、先週末はEternal Party 2018が開催されるなど、レガシー・フォーマットは盛り上がりを見せていました。そしてさらに今月末にはいよいよThe Last Sun 2018も開催されます。招待制のイベントなのでハイレベルな大会となりそうです。
さて、今回の連載では上記2つのイベントで入賞したデッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・静岡2018(レガシー)
《虚空の杯》が青いデッキを抑えての勝利
2018年11月30日-12月1日
- 1位 Colorless Eldrazi
- 2位 Mono Red Prison
- 3位 Lands
- 4位 Grixis Delver
- 5位 Azorius Delver
- 6位 Grixis Control
- 7位 StoneBlade
- 8位 Grixis Control
覚前 輝也
トップ8のデッキリストはこちら
レガシー環境では、Grixis ControlやMiracles、Delver系といった青系のデッキが幅を利かせていますが、今大会では《渦まく知識》や《定業》といったドロースペルをシャットダウンする《虚空の杯》をメインから無理なく採用したStompy系のデッキが結果を残しました。
コンボ、フェアも含めてトップ16の半数以上が《渦まく知識》を使ったデッキだったところを見ると、《虚空の杯》を使ったデッキはポジション的にも有利なことが分かります。
グランプリ・静岡2018(レガシー) デッキ紹介
「Colorless Eldrazi」「Mono Red Prison」
Colorless Eldrazi
4 《古えの墳墓》
4 《魂の洞窟》
4 《エルドラージの寺院》
4 《不毛の大地》
3 《裏切り者の都》
3 《ウギンの目》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (26)- 4 《果てしなきもの》
4 《エルドラージのミミック》
4 《作り変えるもの》
1 《猿人の指導霊》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
3 《忘却蒔き》
1 《終末を招くもの》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
-クリーチャー (26)-
見事3度目のタイトルを獲得したプロプレイヤーの覚前 輝也選手は、《虚空の杯》デッキの代表格であるColorless Eldraziを選択していました。このデッキを選択した経緯や、不利だと評判だった決勝戦のMono Red Prisonとのマッチアップについてなどは、本人による優勝者インタビューが公式ページに掲載されています。
Colorless Eldraziは、Grixis ControlやMiraclesといった青いフェアデッキとのマッチアップで有利だったことから、今大会前からMOの大会などで高い勝率を出していました。
☆注目ポイント
1マナのスペルをシャットアウトする《虚空の杯》をメインからフル搭載しているので、MiraclesやGrixis Controlに強く、遅めのコンボデッキであるSneak and Showにも有利が付きます。追加の妨害要素である《アメジストのとげ》もメインから採用されているため、それらのマッチアップではさらに有利になります。
マナ加速に《厳かなモノリス》を採用しているので、エルドラージ・クリーチャーを安定して2ターン目から展開することが可能になり、《血染めの月》を張られてしまっても無色マナを捻出する手段になります。
このデッキにとって厄介な置物となる《基本に帰れ》、 《罠の橋》、《血染めの月》やトークンを一掃できる《漸増爆弾》はサイドに3枚と多めに採られています。「奇跡には強い構成にした」とトップ8プロフィールにて本人も語っていたように、《忘却蒔き》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》などがメインから採用されており、青いフェアデッキとのロングゲームを有利に進めることができるので、現在のレガシーでお勧めのデッキの1つです。
Mono Red Prison
6 《冠雪の山》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
-土地 (19)- 4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《軍勢の戦親分》
4 《猿人の指導霊》
3 《月の大魔術師》
1 《熱烈の神ハゾレト》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
-クリーチャー (17)-
Colorless Eldraziと同様に、環境の青いフェアデッキに対し強いデッキとして常に一定数見かけるMono Red Prison。
レガシーの多くのデッキは、《渦まく知識》など軽量ドロースペルでデッキを回していくのが基本戦略なので、《虚空の杯》や《三なる宝球》といった置物を、《古えの墳墓》といったマナ加速を利用して1-2ターン目から設置することで多くのデッキを機能不全に陥らせます。それに加えて、特殊地形に依存したデッキに刺さる《血染めの月》やクリーチャーデッキに対して強い《罠の橋》など、プリズンという名の通り相手の行動を著しく制限させるカードが多数搭載されています。
☆注目ポイント
少し前までは《虚空の杯》や《血染めの月》で相手の行動を制限しても決定力に恵まれず、逆転されてしまうこともありましたが、最近は相手を素早く倒せる勝ち手段が増えました。『ラヴニカのギルド』から《軍勢の戦親分》が増えたことによって早い段階からプレッシャーをかけやすくなり、《虚空の杯》や《血染めの月》の影響下では相手の除去も追いつかないことが多く、妨害しながらゴブリンでビートダウンしていくことがこのデッキの主なプランとなります。
《熱烈の神ハゾレト》や《ピア・ナラーとキラン・ナラー》、《反逆の先導者、チャンドラ》など中盤以降の脅威も充実しているので、ゴブリンたちが対処されてもそれほど問題にならず、《罠の橋》の影響下でもフィニッシャーとして機能します。Miraclesは多数搭載した基本地形や《終末》もあり、《虚空の杯》や《血染めの月》からのゴブリンクリーチャーによるビートダウンプランがほかのデッキと比べると成立しにくいため、対策法が限られる《反逆の先導者、チャンドラ》はキーカードとなります。
Eternal Party 2018
日本人初のプロツアーチャンピオンが冬のレガシーの祭典を制する
2018年12月16日
- 1位 Stoneblade
- 2位 Zomberdment
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Naya Depths
- 5位 Lands
- 6位 Grixis Delver
- 7位 Death and Taxes
- 8位 Death and Taxes
黒田 正城
トップ16のデッキリストはこちら
今年も開催された冬の大規模なレガシーイベントであるEternal Party 2018は参加者226名と大盛況でした。
メタゲームブレイクダウンによると、Miraclesがトップでしたがプレイオフには残らず、Sneak and Showなどコンボデッキに対して有利なGrixis Delverが安定した成績を残しています。
資産的にも組みやすく、コンボデッキに対しても悪くない相性のDeath and Taxesは常に一定数活躍しており、今大会でもプレイオフに2名入賞しています。
Eternal Party 2018 デッキ紹介
「Stoneblade」「Zomberdment」
Stoneblade
2 《平地》
2 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《汚染された三角州》
1 《乾燥台地》
1 《カラカス》
-土地 (21)- 4 《石鍛冶の神秘家》
3 《瞬唱の魔道士》
3 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (10)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
3 《呪文貫き》
2 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》
4 《意志の力》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (29)-
2 《狼狽の嵐》
2 《外科的摘出》
2 《相殺》
2 《基本に帰れ》
1 《封じ込める僧侶》
1 《水流破》
1 《解呪》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード (15)-
プロツアー神戸04で日本人初のプロツアー優勝という快挙を成し遂げた黒田 正城選手。現在は国内グランプリなどの解説者として活動されていますが、今回はプレイヤーとして参戦し見事に優勝を収めました。
使用していたデッキは、筆者の好きなデッキの1つであるStonebladeでした。基本地形を多数採用した青白の2色で、装備品パッケージやカウンター、除去、プレインズウォーカーでまとめられた懐かしいミッドレンジスタイルのデッキです。比較的最近のカードである《ドミナリアの英雄、テフェリー》も採用されています。
基本地形を多数採用しているので《不毛の大地》や《血染めの月》といったアンチ特殊地形にも耐性があります。このデッキのサイドに採用されている《基本に帰れ》のおかげでGrixis ControlやDark Depths系、Eldraziなど特殊地形に頼ったデッキとも戦えるのがこのバージョンの良いところです。
☆注目ポイント
《石鍛冶の神秘家》を使った青いフェアデッキは、グランプリ・静岡2018でも上位に入賞するなど復権の兆しを見せています。《コラガンの命令》がメインから採用されている現環境では、Stoneblade系のデッキにとっては難しいとされていましたが、それらのデッキに対しては《基本に帰れ》が刺さります。
コンボデッキとのマッチアップは《呪文貫き》、《意志の力》を採用しているのである程度までは勝負になりますが、Delver型と比べるとクロックが遅いのでメインでは少し厳しい戦いになります。サイド後は《ヴェンディリオン三人衆》、《狼狽の嵐》、《封じ込める僧侶》、《外科的摘出》に加えて《相殺》も加わるので改善が見込めます。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》は5マナと少し重いのが気になりますが、一度着地してしまえばゲームを有利に運んでくれます。《瞬唱の魔道士》とも相性がよく、浮いたマナで《殴打頭蓋》などを除去から守りやすくなります。「-3」能力は各種プレインズウォーカーや《虚空の杯》、《森の知恵》、《罠の橋》などクリーチャー以外のパーマネント対策が限られている青白では重要な能力です。
サイドの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は、単体でゲームを決めることができるカードパワーを持ち、《紅蓮破》(《赤霊破》)で対策されない追加のフィニッシャーはこの環境では優秀です。青白系のコントロールはMiraclesの方が人気がありますが、このStonebladeも環境の多くのデッキと互角以上に渡り合うことできます。特に《石鍛冶の神秘家》+装備品パッケージと《真の名の宿敵》は環境の多くのフェアデッキに強いのでお勧めです。
Zomberdment
3 《Badlands》
2 《Scrubland》
3 《汚染された三角州》
3 《新緑の地下墓地》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《湿地の干潟》
1 《知られざる楽園》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (20)- 4 《墓所這い》
4 《縫い師への供給者》
4 《恐血鬼》
1 《ネル・トースの災い魔》
1 《大いなるガルガドン》
-クリーチャー (14)-
4 《信仰無き物あさり》
4 《思考囲い》
3 《納墓》
3 《ゴブリンの砲撃》
4 《黄泉からの橋》
1 《仕組まれた爆薬》
3 《ファイレクシアの供犠台》
-呪文 (26)-
アメリカのプロプロプレイヤーであるSam Blackが、過去にグランプリでこのデッキを使い入賞したことで知名度を上げた、墓地を活用するコンボアグロデッキです。
このデッキのキーカードは《ゴブリンの砲撃》で、墓地から復活するゾンビ・クリーチャーの《恐血鬼》や《墓所這い》などを《黄泉からの橋》などと組み合わせることでアドバンテージを得ます。墓地を使ったデッキなので《死儀礼のシャーマン》が禁止にされた恩恵を受けたデッキの一つです。
新カードの《縫い師への供給者》などの登場により、選択されているカードはSam Blackが当時使用していたリストと比べると大きな変化が見られます。
☆注目ポイント
サクリファイス手段として使われていた《屍肉喰らい》が抜けて、《ファイレクシアの供犠台》が採用されています。《墓所這い》と《黄泉からの橋》組み合わせることで無限にマナとクリーチャーを生み出すことができ、《ゴブリンの砲撃》があればゲームが終わります。このデッキは基本的に上に挙げたコンボを目指していくことになります。墓地から復活してくるカードが多いので、追放系の除去を持たないフェアデッキにとっては厄介で、《剣を鍬に》など追放系の除去も《大いなるガルガドン》や《ゴブリンの砲撃》などサクリファイス手段を用意しておくことで対策できます。
《縫い師への供給者》はこのデッキにとっての新戦力の1枚で、墓地を肥やすことが容易になり《陰謀団式療法》とのシナジーもあります。『統率者2015 』のカードであまり見かけないカードですが、《ネル・トースの災い魔》はこのデッキではコンボ以外の勝ち手段として活躍します。このデッキでは墓地から復活させるコストも問題にならず、ゾンビなのも《墓所這い》とのシナジーがあり地味ながら嬉しいところです。《信仰無き物あさり》や《納墓》などで墓地に落とし、《縫い師への供給者》などをサクリファイスして墓地を肥やしつつ展開していくのが理想です。
サイドには最近Dredgeでも採用されている《沈黙の墓石》が見られます。多くのデッキのサイドに採用されている《外科的摘出》対策になると同時に、《瞬唱の魔道士》や《壌土からの生命》など対象を取るタイプの墓地利用を妨害する手段にもなります。
《虚空の力線》、《安らかなる眠り》や1マナのスペルが多いこのデッキにとって墓地対策以上にキツイカードとなる《虚空の杯》など厄介な置物を対策するため、《摩耗+損耗》が4枚採用されています。
ボーナストピック Nivmagus Delver
Nivmagus Delver
1 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
2 《樹木茂る山麓》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
3 《ニヴメイガスの精霊》
2 《渋面の溶岩使い》
3 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (14)-
最後に、先週末のLegacy Challengeで興味深いIzzet Delverが優勝していたのでご紹介していきたいと思います。
《ニヴメイガスの精霊》という珍しいクリーチャーが採用されており、《僧院の速槍》など果敢クリーチャーを使ったUR Delverとはまた少し違ったスタイルのデッキです。Legacy Challengeで結果を残したことで、新たなDelver系のバリエーションとして今後も見かけることになるかもしれません。
《ニヴメイガスの精霊》を強化するにはスタック上のスペルを追放する必要があります。「ストーム」と相性が良く、コピーされたスペルをコストにすれば、大幅な強化が見込めます。スペルが追放されても《若き紅蓮術士》の能力は誘発し、マッチアップによって不要牌になるカードを追放できれば、あっという間に《グルマグのアンコウ》をも凌ぐサイズに成長します。
クロックに加えてメインから《狼狽の嵐》、《呪文貫き》、《呪文嵌め》、《意志の力》、《目くらまし》と軽いカウンターが多数採用されているので、コンボデッキとのマッチアップでは特に強そうです。Miraclesなどコントロールに対してもサイドの《冬の宝珠》が刺さります。
このデッキを使用したTOM-DEL本人によるLegacy Challengeでのトーナメントレポートもアップされているので気になる方はチェックしてみてください。
総括
フェア、コンボ問わずレガシー環境では《渦まく知識》を使ったデッキが多いため、《虚空の杯》を使用するStompy系のデッキはポジション的に有利な環境となっています。
Dark Depths系の戦略に強いSneak and Showなどコンボデッキも増加傾向にあるため、コンボに強いDelver系もよく見かけるようになってきました。MOのLegacy ChallengeでもGrixis DelverやUR DelverなどDelver系が多く結果を残しており、Miraclesなどと同様に強豪プレイヤーが好むスタイルなのでThe Last sun2018でも人気が出ることが予想されます。
以上USA Legacy Express vol.148でした。
今回で年内最後のレガシーの連載になります。今年はプロツアーやグランプリでもチーム構築戦でレガシーが採用され、日本国内でもEternal Weekendが開催されるなどレガシーファンにとって充実した年でしたね。今年も残りわずかとなりますが、楽しいレガシーライフをお過ごしください。それでは次回の連載でまた会いましょう。良いお年を!