Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/12/21)
秘蔵の発明品
僕がモダンをやる上で心掛けていることがあります。それは、今まで見たこともなかったデッキを試してみることです。Magic Onlineで結果を残し続けているデッキであれば、尚更試したくなりますね。
ここ一年で言えば、《発明品の唸り》を使ったプリズンデッキがMagic Onlineのリーグで5-0したデッキリストとして何度も掲載さています。
しかしながら、このプリズンデッキを話題に出している人をほとんど見たことがないですし、話題に出したところで「なにそのデッキ」と言われるのがオチでした。グランプリ・アトランタ2018でこのプリズンデッキを使っているプレイヤーが何人かいたので、僕も試しに使ってみることにしたのですが、なんと1回目のリーグから5-0を達成してしまったのです。
以下のリストはそのとき僕が使ったものです。
1 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
4 《汚染された三角州》
1 《溢れかえる岸辺》
2 《空僻地》
4 《トレイリア西部》
1 《イプヌの細流》
1 《アカデミーの廃墟》
1 《幽霊街》
1 《発明博覧会》
1 《地盤の際》
-土地 (22)- -クリーチャー (0)-
1 《工匠の直感》
4 《溶接の壺》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《オパールのモックス》
3 《仕組まれた爆薬》
3 《虚空の杯》
1 《トーモッドの墓所》
2 《探検の地図》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《黄鉄の呪文爆弾》
1 《減衰球》
1 《魔術遠眼鏡》
4 《罠の橋》
1 《世界のるつぼ》
1 《瓶詰めの回廊》
1 《魔女封じの宝珠》
-呪文 (38)-
2 《練達飛行機械職人、サイ》
2 《ギラプールの霊気格子》
2 《ボーラスの工作員、テゼレット》
1 《発明の領事、パディーム》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《虚空の杯》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《倦怠の宝珠》
-サイドボード (15)-
僕が使ったこのリストは、Magic Onlineのプレイヤーであるsusurrus_mtgがModern Challengeで使用していたデッキをコピーしたものでした。
susurrus_mtgが誰なのかはわかりませんが、《発明品の唸り》プリズンでもっとも成績を出しているのは間違いなくこのプレイヤーです。しかも、競技モダンリーグのトロフィーの数は現在2位ですから、その構築能力に疑いの余地はありません。
ただ、唯一入れ替えたいカードは2枚目の《探検の地図》です。具体的に何と入れ替えれるべきなのかはわかっていませんが、候補としては4枚目の《仕組まれた爆薬》、追加の土地、《猿人の指導霊》、あるいはサイドボードの《虚空の杯》や《倦怠の宝珠》をメインデッキに移してもいいでしょう。
デッキの回し方
このデッキを回すときは、パズルを解いているイメージを持つと良いでしょう。「パズルを解く」とは、相手が勝てなくなるようなパーマネントを揃えることです。パズルさえ完成してしまえば、あとは豊富な勝ち筋のどれかを辿るだけです。
たとえば、《世界のるつぼ》で《イプヌの細流》を使い回してライブラリーアウトさせても良いですし、《アカデミーの廃墟》で《黄鉄の呪文爆弾》を使い回しても勝てます。あるいは、《アカデミーの廃墟》でこちらだけライブラリーアウトしないようにしたり、単純に相手よりデッキの枚数が多いようにし続けるだけでも問題ありません。
相手の勝ち筋を潰すには、相手のデッキに何が入っているのかを幅広く知っておき、相手がロックから抜け出せる方法があるか、あるいはロックを無視して達成できる勝ち筋があるかどうかを把握しておくことが必要になります。
《発明品の唸り》プリズンはかなりのロングゲームを目指すデッキであり、相手がライブラリーのカードをすべて引くことも多いです。そういう意味でも、相手のデッキを十分に理解しておくことは重要になります。
まだ25マッチほどしかこのデッキを使っていませんが、相手のデッキに応じた戦い方を見つけることに重点を置いてきました。
まだ対戦したこともないデッキもあるため、相性の良い相手・悪い相手・互角の相手が必ずしもわかっていません。しかし、特定のマッチアップでどういう状況になれば勝てるのか、そしてそのためにどういったサイドボーディングをすれば良いのかに関してはしっかりと理解できているつもりです。デッキ別の戦い方は後でご紹介しますね。
これまでの経験でもうひとつわかったのは、このデッキはかなりアグレッシブにマリガンしても良いということです。
実際のところ、《罠の橋》がキーになるようなマッチアップでは、手札を0にすることが重要であるため、後手で7枚をキープすることはかなり少ないです。大抵のモダンのデッキはクリーチャーで攻撃して勝つので、相手が何のデッキを使っているかわからない場合は、《罠の橋》をいち早く効果的に使えるような手札をキープするようにすると良いでしょう。1ターン目に《虚空の杯》を(X)=1で唱えられる手札がキープに値することもあります。
マッチアップガイド
バントスピリット
1本目に関しては、《罠の橋》を設置して手札を空にすれば、ほぼ勝ちです。
しかし、その状況下でも《貴族の教主》だけは攻撃できます。しかも《集合した中隊》や《幻影の像》でコピーするといった手段がバントスピリットにはあるため、《貴族の教主》を複数並べてくることも少なくありません。《貴族の教主》を使った勝ち筋をつぶすには、《黄鉄の呪文爆弾》や《仕組まれた爆薬》が役立ちます。それらを《アカデミーの廃墟》で何度も使うパターンが理想的です。
確かにバントスピリットはこちらのゲームプランを妨害してこないわけではありません。《霊廟の放浪者》は《発明品の唸り》を打ち消してきますし、《呪文捕らえ》は《罠の橋》を追放してきます。しかし幸運なことに、その逆の組み合わせでは妨害されません(例えば《霊廟の放浪者》で《罠の橋》を打ち消すことはできないのです)。
《貴族の教主》を除去していくプランを遂行する上で厄介になるのが《無私の霊魂》です。したがって、《真髄の針》や《魔術遠眼鏡》で指定するのは《無私の霊魂》になることが多いですね。
対 バントスピリット
サイドボーディング後は、相手が《石のような静寂》・《秋の騎士》・打ち消し呪文・《スレイベンの守護者、サリア》といったカードを使ってきます。
しかし、こちらにも《ギラプールの霊気格子》と《倦怠の宝珠》という強力な助っ人がいるため、パズルはかなりシンプルに解けます。具体的には、この2枚に加えて《罠の橋》を設置し、手札を0にすれば良いだけです。
この状況を作り出せれば、《秋の騎士》や《呪文捕らえ》に妨害されることもなくなりますし、《貴族の教主》を除去することもできるようになります。しかも《石のような静寂》を設置されても問題ない状況です。
この状況から唯一抜け出せるとすれば《ドロモカの命令》で《ギラプールの霊気格子》を除去することぐらいでしょう。しかも《ドロモカの命令》はサイドボードに入っていないことすらあります。《ドロモカの命令》を防ぎたいのであれば、《ギラプールの霊気格子》で早々に決着をつけても良いですし、デッキに1枚残した《虚空の杯》を(X)=2で設置しても良いでしょう。
《虚空の杯》を(X)=2で設置しておくメリットは他にもあります。《軽蔑的な一撃》や《統一された意思》といった打ち消し呪文はもちろん、《石のような静寂》や《安らかなる眠り》といったエンチャントの着地を許しません。そうすれば、《ギラプールの霊気格子》以外の勝ち筋も使えるようになります。
ドレッジ
言うまでもなくドレッジに有効な《墓掘りの檻》が1本目から使えます。残念ながら、設置できれば勝ちというカードでもないのですが、大きく時間を稼いでくれる頼りになるカードです。ドレッジのクリーチャーはパワーが1以上のものばかりなので、《罠の橋》さえ置ければ相手のクリーチャーによる攻撃で負けることはなくなります。
《罠の橋》を設置しても油断はできません。ドレッジには《這い寄る恐怖》や《燃焼》があるからです。しかし《墓掘りの檻》を置ければ、相手は《燃焼》で少しでも多くダメージを与えるために「フラッシュバック」ではなく手札から唱えようとしてきますから、相手が十分なマナを用意するまでの間、時間が稼げます。そしてその間に《魔女封じの宝珠》を唱えてしまえば、完全に《燃焼》を止めることができるのです。
理想的な展開としては、《トーモッドの墓所》を《アカデミーの廃墟》で使い回して、相手の墓地を追放し続けることです。《這い寄る恐怖》の誘発型能力がスタック上にあるときに《トーモッドの墓所》で追放すれば、《這い寄る恐怖》による効果で追放する余地がなくなるため、ダメージを受けることはなくなります。
確かに、墓地からではなく手札から《這い寄る恐怖》を唱えられる可能性がまだ残りますが、《発明博覧会》があればライフを安全な水域まで持っていくことも望めます。それでも不安な場合は、《世界のるつぼ》で《幽霊街》を何度も使って相手のマナソースを削り、手札から《這い寄る恐怖》や《燃焼》を有効活用できないような状況にしてしまえば良いでしょう。
対 ドレッジ
ドレッジはサイドボードから《自然の要求》などのアーティファクトを破壊するカードを大量に入れてきます。《溶接の壺》や《呪文滑り》、《虚空の杯》でしのぎ切る展開が理想です。
《発明品の唸り》プリズンには上記カードに加えて《アカデミーの廃墟》もあるので、ロングゲームに持ち込むことができればアーティファクト破壊呪文は基本的には問題になりません。ただ、ドレッジは《精神染み》を採用していることがあり、キーとなるカードが追放されてしまうと厄介です。できれば、そうなる前に《罠の橋》を設置しておけると望ましいですね。
また、《練達飛行機械職人、サイ》をサイドインするのは、異なる角度から攻められるようにするためです。
トロン
トロンと戦うときにキーになるのは《減衰球》です。相手が《ウルザの塔》・《ウルザの鉱山》・《ウルザの魔力炉》の3種を揃える前に、《減衰球》を置くことができれば相当有利になります。
《減衰球》を設置した後は、《世界のるつぼ》と《地盤の際》のコンボで、相手に5マナ以上を出させないようにできるとベストです。とはいえ、相手がこのプロセスよりも早く動いてくることも多いので、ロックするパーツを守るために《真髄の針》や《魔術遠眼鏡》で《忘却石》や《解放された者、カーン》を指定することも多いことでしょう。
《虚空の杯》は(X)=1で唱えておくと、《探検の地図》、《彩色の宝球》、《彩色の星》といったカードを打ち消すことができるため、このマッチアップでも重要な働きをしてくれます。相手は「ウルザ土地」3種を揃えづらくなりますし、キーカードにたどり着くことも難しくなります。
また、こちらの墓地を追放してくる《大祖始の遺産》も1マナなので《虚空の杯》で打ち消すことができますね。
《減衰球》さえ置いておけば、トロンがクリーチャーでゲーム早々からプレッシャーをかけてくることはありません。ただ、長い目で見れば相手もクリーチャーを出してくるので、ゆくゆくは《罠の橋》を置く必要が出てくることでしょう。
トロンに入っている《歩行バリスタ》は《罠の橋》があっても直接プレイヤーにダメージが与えられるカードなので、欲を言えば《魔女封じの宝珠》も並べておけると、より一層ロックを強めておくことができます。
ただ、《減衰球》を置いた上で、《世界のるつぼ》を使ったロックができていれば、相手のマナが伸びることはないので、《魔女封じの宝珠》でなくとも《真髄の針》や《魔術遠眼鏡》で《歩行バリスタ》を指定しておくだけで問題ありません。
対 トロン
トロンはサイドボードから《自然の要求》や《難題の予見者》を投入してくると考えられます。しかし、ここで《発明品の唸り》プリズンの強みのひとつが発揮されます。その強みとは、《自然の要求》への耐性の強さです。このデッキは《溶接の壺》を4枚も採用していますし、《虚空の杯》を(X)=1で唱えておけば《自然の要求》が問題になることが滅多にないのです。
サイドボーディング後も1本目のゲームプランと変わりません。《魔女封じの宝珠》をサイドアウトするのは、《歩行バリスタ》を封じる手段として、《魔術遠眼鏡》と《ファイレクシアの破棄者》を追加できるからです。
5色人間
5色人間との戦い方は、バントスピリットのものと非常に似ています。 5色人間はこちらの展開を妨害してくるアグロデッキであり、《罠の橋》に苦戦するという点でもバントスピリットに類似していますし、《罠の橋》をすり抜けてくるカードが《貴族の教主》だという点も同じです。
ただ、5色人間の場合は、相手の妨害手段がどれも2マナという共通点があるのが嬉しいところ。具体的には、《スレイベンの守護者、サリア》、《翻弄する魔道士》、《帆凧の掠め盗り》といったカードですね。
ですから、《帆凧の掠め盗り》や《翻弄する魔道士》を出されるよりも前に、《仕組まれた爆薬》を(X)=2で設置するように心がけましょう。
対 5色人間
サイドボーディング後に一番厄介になるカードは《配分の領事、カンバール》です。最善の対処方法は、(X)=3で設置した《仕組まれた爆薬》となります。対処方法としては遅いものになってしまいますが、必ずしも5色人間のサイドボードに《配分の領事、カンバール》が入っているわけではないのは救いですね。とはいえ、絶対に忘れてはいけない存在です。
このマッチアップで、サイドボーディング後に心強い味方になってくれるのは《倦怠の宝珠》です。《教区の勇者》や《サリアの副官》がサイズアップしなくなるので、相手のクロックを遅くすることができます。さらに、《帆凧の掠め盗り》や《秋の騎士》で妨害されることもなくなります。
サイドボーディング後のゲームでは、《仕組まれた爆薬》を(X)=2で前もって置いておくことがより一層重要になります。なぜなら、相手が《ガドック・ティーグ》を投入してくるからです。《ガドック・ティーグ》は人間ではなく、《サリアの副官》で強化されることもないですから、基本的にタフネスは2のままです。ですから、《黄鉄の呪文爆弾》や《ギラプールの霊気格子》で除去できます。
5色人間の構成によっては、《戦争の報い、禍汰奇》をサイドインしてくることもたまにあるので、余裕があれば《戦争の報い、禍汰奇》を意識した立ち回りをするようにしましょう。
青白コントロール
最悪相性と言えるマッチアップです。《謎めいた命令》があまりにも厄介なため、1本目で勝てるときは、(X)=4で《虚空の杯》を設置していることが多いですね。
もし相手が《発明品の唸り》プリズンの動きを知らない場合、重要でない呪文に対して《謎めいた命令》などの打ち消し呪文を使ったり、プレインズウォーカーを出すタイミングを見誤ってくることがあります。
そこを突くようにして《仕組まれた爆薬》や《黄鉄の呪文爆弾》を使い、相手の《精神を刻む者、ジェイス》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》をことごとく除去することができれば、1本目も勝利が見えてきます。あるいは、《世界のるつぼ》を使った土地破壊でも勝機があります。
1本目は、相手がクリーチャー除去でいっぱいの手札をキープしていてくれると時間に余裕が生まれ、どうやって勝っていくかをゆったりと考えることができます。
《世界のるつぼ》と《イプヌの細流》で積極的に相手のライブラリーを削っていきましょう。運が良ければ、相手のプレインズウォーカーや《謎めいた命令》をすべて墓地に落とすことができます。
《墓掘りの檻》や《トーモッドの墓所》があれば、墓地を肥やしても《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックされることもないので、ライブラリーを削っていくプランをより積極的に狙っていけるようになります。
対 青白コントロール
青白コントロールはおそらく《石のような静寂》をサイドインしてくるでしょう。さらに対策を強めたい場合には、《安らかなる眠り》も入れてくる可能性があります。そこで、《練達飛行機械職人、サイ》や《ボーラスの工作員、テゼレット》をサイドインし、これらのエンチャントが使われたとしても問題のない勝ち筋を用意しておくわけです。
また、《呪文滑り》は、厄介であった《謎めいた命令》から勝ち筋となるパーマネントを守ってくれます(《石のような静寂》を置かれているとできないですけどね)。勝ち筋となるカードと《呪文滑り》を並べたとしても、ゲームをどうやって終わらせるかを考え続ける必要があります。
どういうことかというと、ゲームが長引けば、いずれ相手はデッキのカードすべてにアクセスできる状況になる可能性があります。そうなれば、こちらのプランを妨害してきたり、《精神を刻む者、ジェイス》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させてしまうケースも想定されるわけです。ですから、ロックが決まったあとにしっかりとゲームを終わらせることを意識しましょう。
アイアンワークス
勝てない相手ではないですが、最大の問題はアイアンワークスのスピードにあります。更に、《イシュ・サーの背骨》が採用されている構築も増えてきたので、完全なロックにはより多くのパーツが必要になったのです。具体的にどうすればロックできるか説明していきましょう。
まず、《虚空の杯》を(X)=1で置いておけば、《彩色の星》などのサイクリングカードでデッキをすべて引き切るのを遅らせることができます。同時に、《黄鉄の呪文爆弾》を使い回されて負ける展開も封じます。
次に、《魔術遠眼鏡》や《真髄の針》で《仕組まれた爆薬》を指定し、こちらのパーマネントを守ります。《虚空の杯》と《魔術遠眼鏡》(あるいは《真髄の針》)に加えて、《罠の橋》を置いて手札を0にできれば、相手が唯一ロックから抜け出せる手段は《イシュ・サーの背骨》だけになるはずです。
《イシュ・サーの背骨》が戦場に出たときの効果からパーマネントを守るには《溶接の壺》が必要になります。また、《イシュ・サーの背骨》は墓地から手札に戻ってしまうので、その誘発能力がスタック上にあるときに《トーモッドの墓所》で追放しましょう。
ただ、相手も《トーモッドの墓所》の効果がスタック上にあるときに《埋没した廃墟》を使ったり、《クラーク族の鉄工所》で《マイアの回収者》を生け贄に捧げて、追放される前に《イシュ・サーの背骨》を墓地から手札に回収しようとしてきます。
これも封じるには、2枚目の《魔術遠眼鏡》や《真髄の針》で《埋没した廃墟》を指定し、かつ《マイアの回収者》が戦場に出る前に《虚空の杯》を(X)=2で設置しておくことが必要になります。
対 アイアンワークス
サイドボーディング後は、頼りになる《虚空の杯》や《魔術遠眼鏡》が追加できます。
また、《ファイレクシアの破棄者》は《クラーク族の鉄工所》のマナ能力を封じることができます。これにより時間が稼げるだけではなく、《イシュ・サーの背骨》を生け贄に捧げる手段をも封じられるので、これを繰り返し使用されることがなくなります。
アイアンワークスがサイドインしてくる《否認》などの打ち消し呪文は、《自然の要求》よりも煩わしいカードになります。先述の通り、《自然の要求》は《溶接の壺》や《虚空の杯》で対処できますからね。
アイアンワークスは《ギラプールの霊気格子》を採用しなくなってきているようですが、もし完全にゲームをコントロールし切っていて余裕があるならば、《魔術遠眼鏡》で《ギラプールの霊気格子》を指定しておくと安心でしょう。
グリクシス・シャドウ
グリクシス・シャドウは、手札破壊などを使い、ロックパーツが揃う前に決着をつけてしまうことを得意としています。ただ、1本目は《罠の橋》が戦場に出てしまえば、相手はほとんどなす術がありません。ですから、《罠の橋》を着地させることを優先させましょう。また、《虚空の杯》を(X)=1で置いてしまえば、ほとんどの場合グリクシス・シャドウは大幅に減速します。
《罠の橋》と《虚空の杯》がキーパーツだと説明しましたが、1本目で相手が分からない場合でも、この2枚を探してマリガンすることが多いですから、1本目で勝てる確率は高いと思っています。
グリクシス・シャドウは《コラガンの命令》や《ヴェールのリリアナ》をメインデッキに入れることは少なくなったようですが、《罠の橋》を設置しても相手がプレイを続けてきた場合には注意が必要です。そのようなときは、相手が火力呪文で勝つプランであったり、何らかのアーティファクトを破壊する手段を持っているおそれがあります。こちらの勝利が確定するまでは油断しないようにしましょう。
対 グリクシス・シャドウ
相手は《削剥》や《コラガンの命令》のようなアーティファクト破壊呪文を入れてくるため少々厄介ですが、《溶接の壺》や《呪文滑り》で対応することができます。それよりも問題なのは、サイドボードから投入されてくる打ち消し呪文です。
こちらはサイドインするものがそこまでなく、ゲームプランが1本目とさほど変わらないのに対し、相手はそれ以上に変更を加え、手強くなってきます。
もしかすると、《真髄の針》を抜いて《呪文滑り》を追加しても良いかもしれません。なぜかというと、タイミングさえあれば《虚空の杯》を(X)=1で置いてしまう展開が多いので、それによって《真髄の針》が解決できなくなってしまうからです。さらに、《真髄の針》で指定したいのは《ヴェールのリリアナ》や《渋面の溶岩使い》ですが、《ヴェールのリリアナ》に関しては採用されることがほとんどなくなっています。
黒緑系ミッドレンジ
黒緑系のミッドレンジと戦う機会は多かったですが、思いのほか勝てることに驚きました。《溶接の壺》があれば、相手の妨害手段は大体どうにかなります。どうやって勝つのか、順を追って説明しましょう。
まず、いつも通り《罠の橋》をできるだけ早く置きます。次に、《真髄の針》などで《ヴェールのリリアナ》を指定します。そして最後に、アーティファクトを守るカードを用意します。アーティファクトを守る手段としては、破壊されても良いように同じカードを複数用意しても良いですし、《虚空の杯》を(X)=2で置いたりすれば良いでしょう。
あるいは、相手が《暗殺者の戦利品》・《突然の衰微》・《大渦の脈動》をすべて引くよりも先に、《溶接の壺》をすべて探し出しても問題ありません。僕が最近リストを見た限りでは、この3種のカードは4枚から5枚採用されているだけなので、4枚の《溶接の壺》をドロー、あるいはサーチできれば十分であることがほとんどでしょう。
相手がジャンドの場合は、《コラガンの命令》が入っている可能性が高いため、アーティファクトを破壊する手段が多くなります。また、火力呪文があるため、プレイヤーへの直接ダメージで負ける可能性を考慮しておきましょう。
《真髄の針》などで指定したいのは、先ほども述べた通り、《ヴェールのリリアナ》ですが、その次に指定したいのは《漁る軟泥》です。なぜなら、《漁る軟泥》は墓地のカードを追放してくるので、勝つまでに苦戦することになるからですね。
対 黒緑系ミッドレンジ
相手のデッキに《石のような静寂》が入っていない限りは、サイドボーディング後も展開が同じになることがほとんどです。《外科的摘出》を使われて負けてしまうこともあるので、《外科的摘出》が入ってるとわかったら《練達飛行機械職人、サイ》を投入しましょう。
僕はサイドボーディング後も《黄鉄の呪文爆弾》を残すべきだと思っています。プレインズウォーカーを対処できますし、少々厄介な《漁る軟泥》も除去できるからです。
ストーム
アイアンワークスと同様に、勝てなくはないですが、相手のスピードの方が速いこともあります。確かに《墓掘りの檻》・《減衰球》・(X)=2の《虚空の杯》といったカードはストームに対して大きな効果があります。しかし、いずれのカードも単体ではメインデッキに1枚採用されている《撤廃》や《非実体化》などで対処されていまいます。
対 ストーム
こちらが墓地対策を使うため、相手は《巣穴からの総出》を使ってくると思われます。だからこそ、ゴブリントークンへの回答になる《仕組まれた爆薬》は一切サイドアウトしません。
相手はアーティファクトを破壊する呪文をサイドインしてくるはずですが、もっとも気をつけるべきなのは《破壊放題》です。《呪文滑り》や《発明の領事、パディーム》をサイドインして対応しましょう。
青赤フェニックス
《発明品の唸り》プリズンを使うべき理由のひとつに、青赤フェニックスが急増していることが挙げられます。僕の経験では、相性が抜群に良いマッチアップなのです。一般的なリストの青赤フェニックスは一度《罠の橋》が戦場に出てしまうと対処できません。なおかつ、こちらの手札が1~2枚あったとしても《僧院の速槍》以外のクリーチャーは《罠の橋》をすり抜けて攻撃してくることもありません。
《罠の橋》を置いた後は、《魔女封じの宝珠》を唱え、《稲妻》などの火力呪文で負けないようにします。(X)=1の《虚空の杯》は《魔女封じの宝珠》と同様の役割を期待できますし、青赤フェニックスは1マナの呪文が多いため、全般的に有効なカードとなってくれる頼もしい1枚です。
《氷の中の存在》が防衛を持っているのは皮肉なものですね。もし防衛を持っていなければ、《氷の中の存在》で攻撃を宣言し、戦闘中に《目覚めた恐怖》に「変身」させることができたんですからね。我々からすれば防衛がなかったら厳しいマッチアップになっていたので、とても助かりました。
対 青赤フェニックス
《真髄の針》をサイドアウトするのは、《虚空の杯》を(X)=1で素早く設置したいからです。とはいえ、相手には《イゼット副長、ラル》・《仕組まれた爆薬》・《ヴリンの神童、ジェイス》などの封じ込めたいカードがあるため、《真髄の針》の代わりに《魔術遠眼鏡》を入れます。
ここでも《氷の中の存在》にまつわる皮肉な話があります。それは
バーン
バーンと戦う上で、一番嫌なカードは間違いなく《大歓楽の幻霊》です。勝てなくはないですが、相手の動きについていけないことがある、というのはここでも同じです。
《虚空の杯》を使えれば、相手の展開を遅らせることができます。ただ、忘れないようにして欲しいのは、先に(X)=2で《虚空の杯》を置いてしまうと、(X)=1の《虚空の杯》が解決できなくなってしまうということです。
しかし、前もって(X)=2で設置しておけば《大歓楽の幻霊》が着地することはなくなるので、(X)=2で置いてしまい《魔女封じの宝珠》を探すことをお勧めします。
すでに《大歓楽の幻霊》が戦場に出てしまっている場合、主な対処方法は《黄鉄の呪文爆弾》や《仕組まれた爆薬》になります。
それ以外の対処方法としては、まず《罠の橋》と《瓶詰めの回廊》を戦場に出し、手札の呪文を使わずとも《罠の橋》が有効に働く状況を作ります。そして、《魔女封じの宝珠》を設置するまで、できるだけ呪文を唱えないようにします。
最終的に、《仕組まれた爆薬》を使えば《大歓楽の幻霊》を一掃できるため、勝利は目前になるでしょう。《大歓楽の幻霊》を《仕組まれた爆薬》で除去するときは、2色のみを含む4マナで唱えることがポイントです。そうすれば、《大歓楽の幻霊》の効果でダメージを受けずに済みます。
対 バーン
《ボーラスの工作員、テゼレット》ではなく、《呪文滑り》をさらにサイドインするのもありだと思います。
ただ、僕は《ボーラスの工作員、テゼレット》を入れたいですね。勝ち筋になりますし、「+1」の能力でアドバンテージを稼ぎつつ、相手の火力呪文を《ボーラスの工作員、テゼレット》に使わせることもできるからです。また、積極的に《虚空の杯》を(X)=2で唱えていきたい関係上、《ボーラスの工作員、テゼレット》よりも《呪文滑り》の方が若干劣るのです。
バーンはアーティファクト対策として《粉々》や《破壊的な享楽》を使うことが常ですが、《破壊放題》が使われることも多いので、その存在を忘れないようにしましょう。
《真髄の針》を残すのは、《渋面の溶岩使い》対策ですが、《仕組まれた爆薬》や《黄鉄の呪文爆弾》でも対処できます。
《硬化した鱗》デッキ
親和はパワーが0のクリーチャーを採用しているため《罠の橋》を設置しても攻撃してくることがあったのですが、《硬化した鱗》デッキにはパワー0のクリーチャーがいないので、我々にとっては朗報です。
確かに相手の展開が速いため、押し切られてしまうこともあります。ですが、《罠の橋》を置いた上で手札を0枚にし、《歩行バリスタ》対策に《魔女封じの宝珠》や《真髄の針》などを設置さえできていれば勝てます。
ただし、毒カウンターを載せられてしまっている場合には、《ゲスの玉座》で「増殖」されて負けるおそれがあります。そのため、《真髄の針》などで《ゲスの玉座》を指定してしましょう。《ゲスの玉座》が戦場にまだない場合には《虚空の杯》を(X)=2で置くことでも対処可能です。
対 《硬化した鱗》デッキ
《ファイレクシアの破棄者》や《魔術遠眼鏡》をサイドインして《歩行バリスタ》対策は十分なので、《魔女封じの宝珠》は《呪文滑り》と入れ替えてしまいます。
相手は《自然の要求》を4枚入れてくると予想されるので、サイドボーディング後は(X)=1の《虚空の杯》が活躍します。
ゲームプランは1本目と変わりません。できるだけ早く手札が0枚の状態で《罠の橋》を置けるような手札をキープするようにしましょう。
赤緑ヴァラクート
赤緑ヴァラクートは4ターン目に勝つこともあるデッキですが、もう少し余裕があると想定して問題ないでしょう。
通常、このマッチアップで真っ先に設置したいのは《魔女封じの宝珠》です。 それから《罠の橋》を置くことが理想的な展開です。メインデッキに《再利用の賢者》が入っていることもあるので、《溶接の壺》でキーパーツを守れるようにしましょう。
《世界のるつぼ》と《地盤の際》(あるいは《幽霊街》)でロックすることもできますが、《魔女封じの宝珠》と《罠の橋》を揃えた方が安心だと思います。
対 赤緑ヴァラクート
《黄鉄の呪文爆弾》は勝ち筋としてサイドボーディング後も残します。クリーチャーやプレインズウォーカーだと《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で除去されてしまう可能性があるので、勝ち筋としては心もとないのです。この理屈でいくと、《呪文滑り》や《発明の領事、パディーム》も大きな期待を寄せられませんが、役立つ展開があるのも事実です。
《倦怠の宝珠》は、《再利用の賢者》や《原始のタイタン》の能力を封じるためにサイドインします。
ホロウワン
ホロウワンとの戦いも、《罠の橋》を置いて、《稲妻》などの火力呪文で負けないようにすれば問題ありません。
ホロウワンの初動が強すぎる場合は勝てませんが、基本的にかなり相性の良い相手だと思います。とりわけ、《罠の橋》を置ければ、手札が2~3枚あっても大分ダメージは軽減できますからね。
対 ホロウワン
《練達飛行機械職人、サイ》は相手が対処しづらいため、非常に頼りになるカードです。《虚空の杯》を(X)=1で設置したいため、《真髄の針》を抜いて《魔術遠眼鏡》を入れ、《ヴェールのリリアナ》や《渋面の溶岩使い》への対策をします。
《練達飛行機械職人、サイ》は3マナと重く、唱えられずに手札に残ることがあります。その場合、《罠の橋》を置いても手札が0枚になりません。もしこのリスクを問題視するのであれば、《練達飛行機械職人、サイ》は投入せず、《仕組まれた爆薬》を残すようにしましょう。
おわりに
さまざまなデッキとの戦い方をご紹介してきましたが、モダンにはまだまだ数えきれないほどのデッキがあることも事実です。
しかし、今回お話したマッチアップに関しては戦い方を理解していただけたかと思います。もっとも重要なのは、相手のデッキに精通し、相手がロックから抜け出すすべての手段を考慮に入れることです。
このデッキが万人向けでないことは間違いないですし、プリズンというアーキタイプ自体も決して人気だとは言えません。ですが、明らかに過小評価されているデッキですし、もし《謎めいた命令》が少ない環境であれば、ぜひとも選択肢のひとつとして考えるべきデッキだと思っています。
プリズン系のデッキは「マジックらしくない」と言う人もいるようですが、僕はそうは思いません。いろいろなセットからちょっと変わったカードを組み合わせ、人とはまったく違う角度からゲームができる。それこそがマジックの最大の魅力のひとつではないでしょうか。
《発明品の唸り》プリズンの解説記事はいかがだったでしょうか。これをきっかけに多くの人がインスパイアされて、似たようなデッキを使ってくれると嬉しいですね。デッキに関して訊きたいことがあればTwitterまでお気軽にどうぞ。