みなさんこんにちは。
2018年も残りわずかとなりますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回の連載では、年内最後の大型スタンダード・イベントであるThe Finals 2018の入賞デッキを見ていきたいと思います。
The Finals 2018
決勝戦はBorosミラー
2018年12月22日
- 1位 Boros Aggro
- 2位 Boros Aggro
- 3位 Jeskai Control
- 4位 Golgari Midrange
- 5位 Boros Aggro
- 6位 Selesnya Tokens
- 7位 Jeskai Angels
- 8位 Golgari Midrange
渡邊 崇憲
トップ8のデッキリストはこちら
The Finalsは、各地の厳しい予選を勝ち抜いたプレイヤーや歴代のThe Finals優勝者、プロツアー殿堂顕彰者、レベルプロのみが参戦できる招待制のイベントです。
招待制なだけあって、ハイレベルな大会でプレイオフもタレント揃いでした。
メタゲームブレイクダウンによれば、 Golgari Midrangeがダントツのトップだったようです。グランプリ・静岡2018での優勝やほかのイベントでもコンスタントに上位で見かけるGolgari Midrangeは、現環境のベストデッキとされています。ただ、Jeskai ControlやBoros Aggro、Izzet Phoenix、Selesnyaなどほかのデッキも結果を残しており、デッキ間の大きな差はなさそうです。
The Finals 2018 デッキ紹介
「Boros Aggro」「Jeskai Control」「Selesnya Tokens」
Bosos Aggro
5 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《断崖の避難所》
-土地 (23)- 4 《不屈の護衛》
3 《追われる証人》
4 《アダントの先兵》
4 《ボロスの挑戦者》
2 《軍勢の切先、タージク》
2 《正義の模範、オレリア》
-クリーチャー (19)-
プロツアーで結果を残していたメイン白単、サイドからタッチ赤のバージョンと異なり、《英雄的援軍》や《ボロスの挑戦者》、《軍勢の切先、タージク》、《正義の模範、オレリア》といったマルチカラーのカードが多数メインから採用されたバージョンです。
《正義の模範、オレリア》や《暴君への敵対者、アジャニ》といった4マナのカードがメインから採用され、ミッドレンジ寄りの構成となっています。
Borosのメカニズムである「教導」持ちのクリーチャーを数多く採用しているため、ほかのアグロデッキに対して攻撃力で勝ります。
☆注目ポイント
《ボロスの挑戦者》の起動能力は、マナが余りやすい中盤以降で十分に戦力になります。《正義の模範、オレリア》はロングゲームに備えてサイドに忍ばせてあることが多いクリーチャーですが、渡邊選手はメインから採用しています。攻守に渡って優れたクリーチャーなのでミラーマッチでも活躍します。
《軍勢の切先、タージク》は決勝戦でも勝利に貢献したクリーチャーで、速攻と「教導」により奇襲性が高く火力スペルに耐性があるのも地味に嬉しい能力です。《英雄的援軍》は、ミッドレンジ寄りにシフトしていく2ゲーム目以降ではサイドアウトされることが多くなりますが、《ベナリア史》からの流れが強力でメイン戦でのエンドカードとして機能します。
サイドの《一斉検挙》は、Golgari Midrangeとのマッチアップ用だと思われますが、《敬慕されるロクソドン》や《短角獣の歩哨》などを対策するために、決勝戦のBoros Aggroミラーマッチでもサイドインされていました。人気のGolgari Midrangeに対して有効な《トカートリの儀仗兵》なども採用されており、現環境でアグレッシブなデッキが好きな方にお勧めのデッキになります。
Selesnya Tokens
4 《森》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
1 《オラーズカの拱門》
-土地 (21)- 4 《アダントの先兵》
3 《協約の魂、イマーラ》
3 《不和のトロスターニ》
3 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (13)-
3 《不可解な終焉》
2 《秋の騎士》
2 《無効皮のフェロックス》
1 《殺戮の暴君》
1 《一斉検挙》
1 《残骸の漂着》
1 《イクサランの束縛》
-サイドボード (15)-
ワールド・マジック・カップ2018を制したフランスチームも使用していたSelesnya Tokens。
《敬慕されるロクソドン》、《議事会の裁き》、《大集団の行進》といった「召集」をフィーチャーしたデッキです。トークンをたくさん展開し、《不和のトロスターニ》, 《敬慕されるロクソドン》、《開花+華麗》、《暴君への敵対者、アジャニ》といったカードで自軍を強化していきます。今大会を制したBoros Aggroに強く、単体除去が中心のGolgari Midrangeとのマッチアップにも強いデッキになります。
グランプリ・静岡2018でも結果を残しており、人気のアーキタイプの1つです。
☆注目ポイント
《大集団の行進》は「召集」スペルなのでコストの重さも気にならず、相手のエンド時に唱えてから《華麗》や《不和のトロスターニ》の全体強化による流れは奇襲性があり、このデッキのエンドカードとなります。
全体強化によってほかのアグロデッキよりもサイズで勝りやすくなっています。Jeskai Controlは苦手なマッチアップとなりますが、《アダントの先兵》や《一番砦、アダント》、《大集団の行進》や、サイドの《無効皮のフェロックス》を有効に使っていくことで、ある程度は耐性を付けることができます。
《秋の騎士》はモダンでも使われているクリーチャーで、スタンダードでは《封じ込め》や《イクサランの束縛》 、《議事会の裁き》、《宝物の地図》、《実験の狂乱》など割りたい置物が多数存在し、アグロデッキ相手にはライフゲインによって時間稼ぎにも貢献するフレキシブルなクリーチャーです。
Jeskai Control
グランプリ・静岡2018でもJeskai Controlでプレイオフ進出を果たしている斉田 逸寛選手は、今大会でもプレイオフにまで勝ち残っています。
Jeskai Controlには《宝物の地図》を採用したバージョンなどありますが、斉田 逸寛選手のリストはカウンターが多めのオーソドックスなコントロールデッキに仕上がっています。トップメタのGolgari Midrangeとも互角以上の勝負ができ、環境を代表するコントロールデッキの1つです。
☆注目ポイント
メインからフル搭載された《轟音のクラリオン》から、Boros Aggroなどクリーチャーを並べてくるデッキを意識していたことが分かります。相手の戦場を更地にし、 《ドミナリアの英雄、テフェリー》で主導権を握るプランはどのバージョンも変わりません。
《浄化の輝き》はこのデッキにとって悪夢そのものである《殺戮の暴君》や、赤系デッキがサイドインしてくる《実験の狂乱》対策にもなります。採用されているカウンターの種類も多く、グランプリ・静岡2018のリストでは不採用だった《本質の散乱》が採用されているおり、環境の変化に応じた細かい調整の跡が見られます。
コントロールミラーのサイド後では、《軍勢の戦親分》を展開して相手のアクションを《呪文貫き》で弾くというテンポ寄りのプランになります。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を処理しやすくなり、《轟音のクラリオン》はサイドアウトされていることが多いため有効な戦略です。《絶滅の星》は7マナと重いスペルですが、《ビビアン・リード》や《殺戮の暴君》を一度にリセットできるカードとして重宝します。
そのほかの注目デッキ
おまけとして、ワールド・マジック・カップ2018で入賞していたデッキをご紹介していきたいと思います。チーム共同デッキ構築・スタンダードという極めて特殊なフォーマットだったため、同じスタンダードでも個人戦とは違った独特の構成のデッキが多く見られました。
Jeskai Control
4 《活力回復》
1 《溶岩コイル》
1 《否認》
1 《一瞬》
4 《轟音のクラリオン》
3 《イオン化》
2 《火による戦い》
4 《薬術師の眼識》
2 《残骸の漂着》
3 《発展+発破》
2 《封じ込め》
1 《イクサランの束縛》
1 《ミラーリ予想》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
1 《イゼット副長、ラル》
-呪文 (34)-
2 《黎明をもたらす者ライラ》
2 《溶岩コイル》
2 《絶滅の星》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
1 《否認》
1 《神聖の発動》
1 《浄化の輝き》
1 《封じ込め》
1 《イクサランの束縛》
-サイドボード (15)-
この環境のJeskai Controlはバリエーションが豊富で、先ほどご紹介させていただいた典型的なコントロール型や、グランプリ・ミルウォーキー2018を制した《宝物の地図》型、SCG Invitationalで結果を残していた《運命のきずな》を採用したバージョンなども見られます。
フランスチームを優勝に導いたArnaud HocquemillerのJeskai Controlは、ほかのバージョンと比べ《ミラーリ予想》や多めに採られている《発展+発破》など個性的な構成となっています。
☆注目ポイント
このデッキに多めに採用された《発展+発破》は、ドロースペル兼フィニッシュ手段として機能します。「キッカー」で唱えた《火による戦い》を、《発展》でコピーすることによってゲームを決めることが可能なのです。《発展》は、Golgariの《強迫》をコピーすることで相手のプレインズウォーカーを落としたり、ミラーマッチではカウンターに対してのカウンターにもなる汎用性の高い呪文です。
《パルン、ニヴ=ミゼット》や《弾けるドレイク》が不採用で、メインはノンクリーチャーとなっています。これによって相手のクリーチャー除去が不要牌となり、疑似的なアドバンテージを得られます。追加のプレインズウォーカーである《イゼット副長、ラル》は、《パルン、ニヴ=ミゼット》に対する回答になり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》と同様にアドバンテージを稼ぎます。《ミラーリ予想》を活かすため、《火による戦い》のほかにも《溶岩コイル》などソーサリースペルも採用されています。最終章にまで到達すれば《火による戦い》をコピーしてゲームを決めることも可能です。
Selesnya Aggro
6 《森》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
-土地 (22)- 3 《不屈の護衛》
4 《アダントの先兵》
4 《協約の魂、イマーラ》
4 《茨の副官》
4 《無効皮のフェロックス》
3 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (22)-
3 《不可解な終焉》
2 《不和のトロスターニ》
2 《原初の飢え、ガルタ》
2 《イクサランの束縛》
1 《押し潰す梢》
1 《凶暴な踏みつけ》
1 《暴君への敵対者、アジャニ》
-サイドボード (15)-
日本代表チームのキャプテンで、デッキビルダーとしても知られているプロプレイヤーの行弘 賢選手は、オリジナルのSelesnyaで日本チームを見事にトップ8入賞に導きました。
Selesnyaと言えばトークン戦略が一般的ですが、行弘賢選手のバージョンは《大集団の行進》などが不採用で、クリーチャーが多めのアグロデッキとなっています。
☆注目ポイント
《無効皮のフェロックス》がメインからフルに採用されており、クリーチャーを多数搭載したこのバージョンではデメリットもあまり気になりません。ほかのアグロデッキとのマッチアップではサイズ面で勝り除去耐性もあるので、Jeskai Controlなどコントロールにも強く、全体的に見てコストパフォーマンスに優れるクリーチャーです。
《茨の副官》はコストが軽く、相手の単体除去に対してもアドバンテージも取ることが可能で、序盤から後半まで活躍する優秀なクリーチャーです。
《不屈の護衛》や《アダントの先兵》など採用されているクリーチャーの多くは《轟音のクラリオン》など除去に耐性があり、コントロールとのマッチアップともいい勝負ができそうです。
総括
環境も終盤ですが、現環境のスタンダードは同じ色の組み合わせでも様々なバージョンのデッキがあり、非常に面白い環境です。来年1月末に発売される『ラヴニカの献身』ですべてのギルドが揃うと、さらにいろいろなデッキが誕生するので次環境も楽しみですね。
『ラヴニカの献身』から、昔大活躍した《吸収》も再録される予定です。確定カウンターにライフゲインというコントロールの方向性にマッチした優秀なカウンターで、Jeskai Controlなどでよく使われることでしょう。
《神聖なる泉》の再録は、《浄化の輝き》や《悪意ある妨害》など色拘束の強いスペルを共存させやすくなり、Jeskai Controlの安定性向上にも貢献しそうです。ショックランドが揃えばマナ基盤も強化されるので、現環境でも活躍しているJeskai Controlのほかにも、EsperやGrixisといったカラーのコントロールも見られそうです。
以上USA Standard Express vol.137でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。良いお年を