リミテッドのランクを上げよう! ~MTGアリーナ~

Christian Hauck

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/01/08)

ランクマッチの登場

Magic: The Gathering Arena(以下MTGアリーナ)に新たなランキングシステムが実装されましたね。みなさんもランクを上げたいことでしょう。

しかし、中にはランクがなかなか上がらずにいる人もいるかと思います。私自身も『ラヴニカのギルド』ドラフト1本勝負のランクマッチを少しやってみたので、そこで培った経験をみなさんに共有するとともに、1本勝負ではどういったことが起こりやすいのかを詳細に見ていきます。また、そのなかでアドバイスもしていきますから、ぜひみなさんのランクマッチに役立ててくださいね。

MTGアリーナ特有のシステム

MTGアリーナの1本勝負をするにあたって、知っておくべきことがいくつかあります。

その1:安定した初手

まず、1本勝負の初手は完全なランダムではないということ。異なる2つの初手のなかから、呪文と土地のバランスが良い方が初手として配られるようになっています。

ちょっとしたシステムの調整ではありますが、1本勝負で決着がつく場合には有効な方法と言えます。初手が4枚になるまでマリガンをしてしまったり、2枚目の土地が置けなかったりして、ゲームがまともにプレイできない、なんてことを減らせるわけですからね。

その2:ドラフトで流れてくるカード

次に知っておいていただきたいのは、ドラフトの方法についてです。ドラフトをしていくなかで流れてくるカードは、一定のアルゴリズムによって生成されます。隣に座っているプレイヤーからカードが流れてくる紙媒体のマジックとは異なるわけです。

初手の配られ方、流れてくるカードの決められ方。ランクマッチをするにあたっては、このMTGアリーナ特有の2点を理解した上で、アーキタイプやカードの選択をしていきましょう。

上位のランクになるにはどれぐらいの時間がかかるのか?

もし上位のランクを狙うのであれば、覚悟をした方が良いでしょう。なぜなら、仮に全体の勝率が60%を超えていたとしても、上位のランクにたどり着くためには地獄のようなやり込みが必要になりますからね。DiamondやMythicといった、多くのプレイヤーが求めるような上位のランクになるには、どれだけ注力しなければならないのか、もう少し詳しく見てみましょう。

以下の表は、Goldからランクアップするまでに必要なゲーム数の期待値を勝率別に示しています。

Table

この表は、GoldのTier4に達した時点から、特定のランクになるまでどれだけのゲーム数をやる必要があるかを期待値で勝率別に示したものです。たとえば、あなたの勝率が55%の場合、GoldからPlatinumに昇格するまでおおよそ240ゲームをこなす必要があるということです。GoldからMythicまで昇格したいのであれば約800ゲームが必要になります。

ランクが上がっていくと、それに応じたランクのプレイヤーとマッチングされるのが通常です。そのため、ランクが上がるほど、勝率が下がっていくことはほぼ避けられません。つまり実際には、ランクアップするのはこの表よりもはるかに難しいということです。同様の理屈から、ランクアップに必要な勝利数こそ同じであるものの、PlatinumからDiamondになるよりも、DiamondからMythicになる方が比較にならないほど難しい、ということになります。

ランクアップするにはどのギルドが一番良いのか?

ありきたりなアドバイスになりますが、自分が開封したパックや流れてきたカード次第でギルドを選択することになります。しかし、実はまだ考慮すべきことがあります。

先ほどご紹介した通り、最初の初手は呪文と土地のバランスが良くなりやすく、かつみなさんが望むランクに達するまでに必要なゲーム数が多い、という事情があります。これらを鑑みた場合、アグレッシブなデッキの方が好ましいという結論になります。具体的には16枚の土地で回るデッキであること、ゲームをいち早く終わらせられるようなデッキを指します。ここまで言えば私がどのギルドについて話しているのかお分かりだと思いますが、おすすめはボロスです。

正義の模範、オレリア

ボロスは通常、マナコストの低いカードを中心に構成されますから、土地がバランスよく初手に来やすいアリーナであれば、土地が16枚でもそこまで裏目になることはありません。私はボロスで17枚の土地にすることが多かったですが、特にMTGアリーナの1本勝負であれば、16枚にして問題になることはほとんどないはずです。

みなさんは、ボロスが得意としていることは何か、思いつきますか?ご名答です、ゲームをいち早く終わらせるには持ってこいのギルドですね。ゲームをいち早く終わらせられる能力は、できるだけ短い時間で上位のランクになる上で、もっとも重要な要素と言っても良いかもしれません。

MTGアリーナに関する議論・記事を見ていると、『ラヴニカのギルド』ドラフトでもっともパフォーマンスが高いギルドは何かとか、全体としてもっとも高い勝率を誇るギルドはどれかとか、そういったことが話題になることが多いようですが、私は深く考え過ぎないようにしています。少なくとも私にとって、もっともパフォーマンスが高いギルドはディミーアやゴルガリではなくボロスです。ボロスはゲームをいち早く終わらせられる強みがあるからですね。

セレズニアやイゼットは、リターンの大きいカードが流れてこない限りはやらないようにしています。これらのギルドは当たりかハズレになることばかりで、私はもっと安定した結果を出せるデッキを選びたいのです。『ラヴニカのギルド』ドラフトに入れ込みたくない理由はまだあります。ドラフトの1本勝負ランクマッチで使用するセットが1月4日から『イクサラン』ブロックへとローテーションしていくからです。

1本勝負だからこそデッキ構築で気をつけるべきことはあるか?

構築の1本勝負と同じことが、ドラフトの1本勝負でも起きます。つまり、3本勝負と比較した場合、環境に存在するアーキタイプ自体は基本的に大差ありませんが、カードの評価が若干変わるのです。

どういうことか説明しましょう。ドラフトのランクマッチはサイドボーディングができない1本勝負です。そして、ドラフトでは一定のアルゴリズムでカードが流れてきますし、先ほどボロスをおすすめした通り、1本勝負だからこそ人気になりやすいアーキタイプが存在します。つまり、本来サイドボードのカードであっても、人気のアーキタイプに対して有効であれば、メインデッキに入れるほどの評価になるわけです。

癒し手の鷹宇宙粒子波有毒ガス

たとえば、『ラヴニカのギルド』ドラフト1本勝負ですと、ディミーアのメインデッキに《有毒ガス》が入っていたり、アグレッシブな赤のメインデッキに《宇宙粒子波》が採用されることが多くなります。これはタフネス1のクリーチャーが環境に多いからです。タフネス1のクリーチャーの例としては《癒し手の鷹》があります。今やボロスやセレズニアで大活躍のカードだという認識になっていますから、本来ならばかなり早い段階でピックするプレイヤーが多いのです。しかしながら、MTGアリーナのドラフトであれば、パックの中盤で《癒し手の鷹》が複数ピックできるのも珍しくありません。

プレイヤーたちはMTGアリーナにおけるドラフトのやり方を掴んできていますから、それに伴ってカードの評価を少し変えるべきですね。たとえば、相手が従来ならばサイドボード用のカードをメインデッキに入れてくることを見越して、3枚目の《初々しい補充兵》《ヴァーナーディーの盾仲間》にした方が良いかもしれません。

初々しい補充兵ヴァーナーディーの盾仲間

ひとつの定石として覚えておいて欲しいのですが、環境が変わっていくにしたがい、使われるカードがどう変わっていくのかに目を向けましょう。そしてそれに順応するようにしてください。当たり前のことを言っているように思えるかもしれませんが、こういったことを意識していかないと、相手が使ってくるカードは徐々に変化していっているにも関わらず、他のカードの選択肢を考えずに何度も何度も同じカードを使い続けてしまいやすいのです。

ランクマッチの準備が整ったら、構築とドラフトのどっちをやるべきか?

ドラフトは、構築で使うカードを集めるのにもっとも適した方法です。ピックしたカードは自分のコレクションになりますからね。コレクションを集め始める場合、ショップでパックを買って開封しても良いですが、ジェムにあまり課金したくないなら、ドラフトこそが最善の道です。

目指していたリミテッドのランクにたどり着けば、構築に向けてカードも潤沢に揃っているはずです。ドラフトの賞品であるパックを開けていくなかで手に入れたワイルドカードも合わせて使えば、自分の好きなTier1のデッキが作れるでしょう。そうすれば、ドラフトから構築へとすんなり移行していけます。

ランクシステムについて思うこと

ランクシステムの採用には大賛成です。じわじわとランクが上がっていくので、プレイヤーは向上心を維持できますし、継続していけば目標を達成できるシステムですからね。ただ、一人のマジックプロプレイヤーとして言わせてもらえば、1本勝負があまり好きではありません。

1本勝負の問題点

その1:サイドボーディングができない

サイドボードを使って相手に合わせたゲームプランを用意するという、マジックの最大の魅力のひとつを損なってしまっています。

その2:メタの偏りが発生する

強迫

1本勝負にはもうひとつの問題点があります。それは、サイドボーディング後にゲームプランを変更することで強さを発揮するアーキタイプを弱体化させ、逆に1本目に強いアーキタイプを強化してしまっている点です。特定の相手に有効な全体除去や、打ち消し呪文、《強迫》といったサイドボードに脆いという弱点は、1本勝負ではあまり意味をなさず、メタに偏りをもたらしてしまいます。

1本勝負の利点

私はまだ少ししか1本勝負のランクマッチをしていませんが、何百、何千とゲームをやっていくのであれば、1本勝負はうってつけのシステムだと思います。1本勝負の速いペースに慣れてしまったので、3本勝負のマッチが長ったらしく感じてしまうでしょうからね。競技という観点では、いまだに1本勝負を好きになれませんが、ランクシステムという点でいえば有効に機能しているのではないかと思います。

ランク報酬の少なさ

上位のランクに対する報酬は、物足りないように感じています。1000ゴールドと1~5パックですからね、ドラフト1回の報酬としても物足りないぐらいですよ。ウィザーズも上位のランクに対する報酬に関しては改善しようとしていると思いますし、今後どうなっていくのか楽しみですね。より大きな大会への参加権利とかでも良いかもしれないですね。

私のランクマッチ

私はと言いますと、今年から始まるマジック・プロリーグを楽しみにしています。マジック・プロリーグの発足に伴ってどうなっていくのか、すべてのことが楽しみですね。私がMagic OnlineやMTGアリーナを今後どのようなプランで放送していくのか気になっている人もいるようですから、ここでお答えしておきましょう。すべての準備が整い次第、今から数週間後ぐらいでしょうか、Twitchで配信していくつもりです。Mythicへの道のりをみなさんと歩んでいけたらと思っています(スポンサーはWizards of the Coast社です)。

私のTwitchのチャンネルはこちらからどうぞ。

Twitterもやっていますのでこちらもお気軽にどうぞ。

みなさんもランクマッチを楽しみましょう!そして新年明けましておめでとうございます! きっとこのランクマッチは、私たちみんなが愛するマジックというゲームにとって、素晴らしいものとなるでしょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

クリスティアン・ハウク

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Christian Hauck 2017-2018シーズンはクリスティアン・ハウクにとって実りの多い1年となった。シーズン開幕戦となるプロツアー『イクサラン』でトップ8に入賞すると、プロツアー『ドミナリア』も29位と手堅い順位で終える。さらにはグランプリでも2回のトップ8を含む数々の好成績を収め続け、なんとノンレベルからプラチナ・レベルまで駆け上がったのだ。 誰もが羨む絵に描いたようなサクセスストーリーをひっさげ、ハウクはHareruya Prosへと加入した。 Christian Hauckの記事はこちら