『ラヴニカの献身』で既存のデッキをアップデートしよう!

Pascal Vieren

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/01/23)

はじめに

私は先日開催されたグランプリ・プラハ2019を優勝しました。トップ8以降の戦いでは何度か幸運に助けられたものの、優勝トロフィーを持ち帰ることができ、今はとても誇らしい気持ちです。

アルティメットマスターズのドラフトは、非常に面白いフォーマットです。ただ残念なことに、この環境のドラフトをする機会がある人はもうほとんどいないでしょうから、深く解説するつもりはありません。一言だけアドバイスするとすれば、ドラフトをするときに「大きな夢を持つ」ことです。この上なく理不尽な動きができるようなデッキを目指しましょう

グランプリ・ボローニャ2017グランプリ・ワルシャワ2018に続き、今回のプラハで優勝したことで、個人戦のリミテッドグランプリで3回連続トップ8に入ることができました。リミテッドグランプリに向けた調整方法をいつか記事で紹介してみるのも良いかもしれませんね。しかし、今は『ラヴニカの献身』で盛り上がっている時期です。今回はこの新しいセットに焦点を当てましょう。

『ラヴニカの献身』で強化される既存のデッキたち

『ラヴニカの献身』の発売を目前に控えていますね。このような時期は、全カードリストを確認し、既存のデッキをアップデートできるカードはないかを考えるようにしています。新しいセットが出たばかりであれば、前環境から存在する強力なデッキを手始めに使用するのが無難な選択になりますからね。しかし、そのような実力が実証済みのデッキであっても、その力を強化するようなカードが新セットにないか、目を凝らすべきです。

今回題材とするデッキは以下の6種のデッキです。それぞれのデッキを強化する可能性がある新カードたちを見ていきましょう。

白ウィニー

神聖なる泉神無き祭殿

これまでに白ウィニーがタッチする色として多かったのは、赤でした。《英雄的援軍》《実験の狂乱》を使うためですね。ただ、新セットにより《神聖なる泉》《神無き祭殿》が参入するため、タッチする色として他の色も選択肢に入ってきます

《第1管区の勇士》

第1管区の勇士

可能性を秘めたカード。この《第1管区の勇士》が戦場にいる状態で《英雄的援軍》を唱えることができれば、強そうな動きができそうですよね。《第1管区の勇士》の能力を安定して使うには多色カードが一定数必要であり、白単に入るような多色カードを探すのは骨が折れそうです。しかしもし見つけられれば、苦労に見合うだけのリターンがあるかもしれません。

《不敗の陣形》

不敗の陣形

《ケイヤの怒り》からクリーチャーを守ることもできれば、《栄光の頌歌》のような全体強化としても使える、まるで分割カードのような1枚。また、クリーチャーを失うことなく、《軍団の上陸》を変身させ、かつダメージを通すことができます。

《拘留代理人》

拘留代理人

タッチする色として青を選択すれば、何種類かの強力な3マナのカードをデッキに採用できるようになります。トークンを追放すれば《拘留代理人》が除去されてもトークンが戦場に戻ることはないので、トークン戦術のデッキに対しては非常に有効な解答となります。当然、相手のブロッカーを追放してダメージを通す役割も期待できます。

類似した効果を持つ《拘留の宝球》はかつてのスタンダードで大活躍したカードでした。しかし《拘留代理人》はエンチャントではなくクリーチャーですから、除去されやすい面もあります。ただ、クリーチャーで相手のライフを狙いに行く白単にとっては、この変更は必ずしも悪いものではありません。

《大判事、ドビン》

大判事、ドビン

白ウィニーは序盤からクリーチャーを展開するので、《大判事、ドビン》は3ターン目に忠誠度が6や7になる可能性があります。そうなれば、相手としてはいち早く対処しなくてはなりません。毎ターン1/1の飛行トークンを展開するのですから、それを苦としないデッキはほとんどいないでしょう。

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ゴルガリミッドレンジ

血の墓所踏み鳴らされる地

メタゲームがどうなろうとも、ゴルガリミッドレンジは適応力が非常に高いので、環境屈指のデッキたちに対応できる構築にすることが可能です。適応するということは、週ごとにデッキリストに大幅な変更を加える必要があります。ですが、このデッキも『ラヴニカの献身』から頼もしい新戦力を迎えました。《血の墓所》《踏み鳴らされる地》が登場したことで、赤をタッチしやすくなりましたが、今のところ私は3色目をタッチするつもりはありません

《肉儀場の叫び》

肉儀場の叫び

相手次第では、《黄金の死》よりも強いカード《追われる証人》や新しく登場した能力「死後」がトークンを生成することを許しません。《弧光のフェニックス》を追放できる点もセールスポイントになります。ただ、自軍のクリーチャーも追放してしまうので、それがデメリットになってしまう可能性はあります。

《成長室の守護者》

成長室の守護者

ゴルガリミッドレンジが得意とするカードアドバンテージ戦略を後押しながらも、相手にプレッシャーをかけられる1枚。《野茂み歩き》《マーフォークの枝渡り》などの「探検」カードたちの価値が下がった環境になった場合、《成長室の守護者》を代わりに投入するのも一考に値するでしょう

《培養ドルイド》

培養ドルイド

《僧帽地帯のドルイド》の枠に入るであろうマナクリーチャー《ヴラスカの侮辱》《貪欲なチュパカブラ》など、黒マナを2つ要求するカードを唱えやすくしてくれます。また、「順応」すれば、無視できないサイズのクリーチャーへと進化することも可能。一度に3マナを生み出す能力も、相手にとって大きな脅威となります。

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ジェスカイコントロール

神聖なる泉

ジェスカイコントロールにとってもっとも明確で重要な改善となるのは《神聖なる泉》です。従来のマナベースもそれなりに良質でしたが、マナベースを改善し過ぎるということはありません。

《神聖なる泉》以外にも、ジェスカイコントロールは新たに強力なカードたちを迎え入れました。

《吸収》

吸収

《悪意ある妨害》の枠に入る可能性が高いカード。元来、打ち消し呪文はアグレッシブなデッキに対して効果の薄いカードでした。しかし、《吸収》は打ち消しに加えてライフを回復できるため、その弱点を解消しています。

《恩寵の天使》

恩寵の天使

瞬速の脅威というのは、コントロールのミラーマッチにおいて活躍する可能性があります。瞬速・飛行以外の2つの能力に関しても、アグレッシブなデッキと戦う際には非常に頼もしいものとなるでしょう。このように《恩寵の天使》には多くの役割が期待できるため、コントロールデッキにとって心強い新カードとなるかもしれません

《精神純化》

精神純化

自分だけがライブラリーアウトしなくなるため、コントロールデッキの新しい勝ち筋となり得るソーサリー。かつての青白コントロールは、《不死の霊薬》を勝ち筋としていることがありました。

《精神純化》はそれと似た立ち位置になる可能性があるのです。ただ、ライブラリーアウトという戦法は勝つまでに時間がかかり、引き分けになるおそれがあるので、《精神純化》を勝ち筋とするデッキが現れないことを祈るばかりです。

《予知覚》

予知覚

かつてスタンダードに存在した《ジェイスの創意》は使用された実績があります。そして《予知覚》はその完全な上位互換です。「附則」で唱えて占術をすれば、ライブラリーを6枚も掘り下げられるので強力ですよね。コントロールデッキは《薬術師の眼識》《予知覚》の両方を採用したいところではないかと思います

《火消し》

火消し

マナコストの軽い打ち消し呪文というのは、いつの時代でも注目に値します。ゲーム終盤になって相手のマナが伸びてしまえば、《火消し》の価値は下がってしまうかもしれません。しかし、コントロールデッキであればカードアドバンテージを獲得しやすいため、その損失を埋め合わせることができるはずです。

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イゼットドレイク

弧光のフェニックス奇怪なドレイク

以前の私の記事をご覧になった方であればご存知だと思いますが、イゼットフェニックスとイゼットドレイクは明確に区別されるべきものだと考えています。ただ残念なことに、イゼットフェニックスに関しては、すぐにでも試したいような新カードはありません

イゼットドレイクは、必要であれば容易に3色目をタッチすることができます。今後の環境で幅を利かせるデッキ次第では、タッチすることが必要になるかもしれません。環境がまだわからない現時点において、イゼットドレイクが真剣に可能性を検討しているカードが1枚だけあります《プテラマンダー》です

プテラマンダー
従来からインスタントやソーサリーをいち早く墓地に送ることに関心があるデッキであれば、《プテラマンダー》の可能性を感じざるを得ません。それにクリーチャータイプがドレイクですから、イゼットドレイクのデッキ名が変わることもありませんね

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セレズニアトークン

大集団の行進開花+華麗

前環境では、時が経つにつれて人気になっていったアーキタイプでした。ゲーム序盤から相手にプレッシャーをかけることもできますし、ゲーム終盤になって《大集団の行進》《華麗》のコンボで勝つこともできる強さがあったのです。

セレズニアトークンを使うのであれば、以下の新カードたちはぜひとも検討すべきものです。

《第1管区の勇士》

第1管区の勇士

先ほど白単でもご紹介しましたが、セレズニアトークンの方が採用しやすいと思われます。というのも、従来から多色のカードを多く採用しているからです。1ターン目に《軍団の上陸》、2ターン目に《第1管区の勇士》と動き、3ターン目に《開花》《協約の魂、イマーラ》、そして「召集」で《敬慕されるロクソドン》を唱えることができれば、相手はなす術がないでしょう。それに、あまりにも実現する可能性が低い動きでもないように思います。

《成長室の守護者》

成長室の守護者

続いてこちらもカードアドバンテージを生むことができる2マナ域のカードです。《敬慕されるロクソドン》で+1/+1カウンターを置くことができれば、《成長室の守護者》のサーチ能力を誘発させることも可能。このクリーチャーは自身の「順応」でアドバンテージを得ることもできるので、従来のセレズニアトークンにいくらか不足していた、全体除去を使ってくる相手に対しての継続的な脅威となるかもしれません。

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赤単

血の墓所

赤単にとって『ラヴニカの献身』は大きな収穫のあるエキスパンションとなりました。以前よりももっとアグレッシブな、バーンのタイプへと変化させてみてはどうかと考えています。《血の墓所》が収録されたので、黒をタッチすることも可能になりました。カードプールを見る限りでは、今後赤単は黒をタッチするようになるのではないかと思います。

《焼身のシャーマン》

焼身のシャーマン

特定の相手に対しては役割が期待できるかもしれません。このカードは『ラヴニカの献身』版の《過酷な指導者》と言えるような効果ですが、覚えておいて損はないでしょう。

《舞台照らし》

舞台照らし

今までにも似たカードはありましたが、それらとは違って《舞台照らし》は「次のあなたのターンの終了時まで」追放したカードを唱えられます。相手のライフを序盤から積極的に狙い、ダメージを与えるターンが多いデッキであれば、実質的に1マナ2ドローの呪文にするのは、そう難しくはないでしょう。また、Ⅰの章能力で手札を捨てなければならない《ケルドの炎》や、手札の呪文を唱えられなくなる《実験の狂乱》を使う場合であれば、実際に2ドローするよりも良いと言えます。

《リックス・マーディの歓楽者》

リックス・マーディの歓楽者

ゲームの終盤になっても「絢爛」で真価を発揮する、手堅い2マナ域。ここで特筆すべきは、《リックス・マーディの歓楽者》の手札入れ替え能力が、類似の効果を持つ従来のカードとは一線を画すこと。手札を捨てるのは強制ですが、仮に手札がなくてもドローはできるのです。

《批判家刺殺》

批判家刺殺

《裂け目の稲妻》《魔術師の稲妻》、両者の性質を持ち合わせたようなカードですね。しかし最終的に1マナで3点のダメージを与えられることがほとんどでしょう

《ブリキ通りの身かわし》

ブリキ通りの身かわし

1マナ域の選択肢に加わったカード。この小さなゴブリンは大したことないように見えるかもしれませんが、非常にアグレッシブな赤のデッキで居場所を見つけるのではないかと思います

《災いの歌姫、ジュディス》

災いの歌姫、ジュディス

この伝説のクリーチャーは長所を多く持ち合わせています。自軍のパワーを全体強化するだけでなく、クリーチャーが死亡すれば1点のダメージを飛ばすことができるのです。重複した《災いの歌姫、ジュディス》は実質的に《二股の稲妻》なので、伝説とはいえ、4枚投入されてもおかしくないと思います。

《恐怖の劇場》

恐怖の劇場

《ヴァンスの爆破砲》の上位互換のようにも思えるカード。追放したカードをすぐに唱えなくても良いというのは、大きな改善ですよね《恐怖の劇場》の起動型能力の評価も見誤ってはいけません。呪文を唱えることなく、最後の数点のライフを削り切れるのは、素晴らしいメリットです。また、《ケルドの炎》と相性が良い点も見逃せません。

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まとめ

『ラヴニカの献身』によって強化される既存のデッキも多いと思われます。グルールミッドレンジやラクドスアグロ、エスパーコントロールといった新しいデッキを使いたいのであれば、前環境屈指のデッキたちとも戦わせてみましょう。その際に気をつけていただきたいのは、既存のデッキたちにもアップデートをかけることです。デッキのカードを数枚変えただけでも、そのマッチアップの相性はまったく変わるものですからね

何かお聞きになりたいことがあれば、Twitter@VierenPascalまでどうぞ。いつでもお待ちしています。

パスカル@VierenPascal

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Pascal Vieren パスカルはベルギー出身のゴールド・レベル・プロで、2018-2019シーズン開幕前にジェイコブ・ナグロ、そして同郷のブランコ・ネランクとともにHareruya HopesからHareruya Prosへと昇格した。 グランプリ・ハノーファー2009でのトップ8、歴代最強と謳われたベルギーチームで成し遂げたワールド・マジック・カップ2016での準優勝など華やかな経歴を持つプレイヤーだが、なんといっても彼の活躍を印象付けた大会はプロツアー『イクサランの相克』であろう。 兄のピーター・フィーレンが組み上げたマスターピース・青赤パイロマンサーを手に快進撃を続けたパスカルは、12勝0敗4分と無敗で予選ラウンドを通過。優勝を勝ち取るまでにはいたらなかったものの、見事に3位入賞を果たしシーズン半ばにしてゴールド・レベルを確定させたのだ。 Pascal Vierenの記事はこちら