みなさんこんにちは。
もうご存知だと思いますが、グランプリやSCG Tourなどで活躍してきた《クラーク族の鉄工所》が禁止カードに指定されました。禁止になった詳しい経緯については公式での声明も上がっているので、この場では割愛します。
さて、今回の連載では新環境に入って初めて開催されたSCG Classics Indianapolisの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG Classics Indianapolis
Dredgeが新環境を制する
2019年1月26-27日
- 1位 Dredge
- 2位 UW Control
- 3位 Whir Prison
- 4位 Izzet Phoenix
- 5位 Izzet Phoenix
- 6位 Burn
- 7位 Amulet Titan
- 8位 Whir Prison
Kyle Peters
トップ16のデッキリストはこちら
《クラーク族の鉄工所》が禁止カードに指定されて間もなく開催された今大会。上位には《古きものの活性》や《信仰無き物あさり》を採用したデッキが多数を占める中、『ラヴニカの献身』から《舞台照らし》と《批判家刺殺》を採用したBurnも結果を残していました。
Ironworksの退場により、UW Controlなどコントロールデッキも復権してきています。メタの移行により不利なBant Spiritが減少傾向にあり、環境に残ったIzzet PhoenixやWhir Prisonなどコントロールにとって相性の良いデッキが勝ち残るのであれば、安定した選択肢となりそうです。
SCG Classics Indianapolis デッキ紹介
「Burn」「Whir Prison」「Izzet Phoenix」「Amulet Titan」
Burn
『ラヴニカの献身』により強化されたデッキの一つで、今までのバーンと比べ構成に若干の変化が見られます。
《稲妻のらせん》や《ボロスの魔除け》が抜け、白はサイドボードの《安らかなる眠り》と《流刑への道》のためだけに留まり、メインは赤単色となっています。《焼尽の猛火》のほかに《渋面の溶岩使い》がメインから2枚採用されており、クリーチャーデッキを意識した構成のようです。
☆注目ポイント
『ラヴニカの献身』から《批判家刺殺》と《舞台照らし》が早速採用されています。「絢爛」の達成が容易で、《批判家刺殺》はこのデッキではほとんどの場合《稲妻の連鎖》として機能します。《舞台照らし》は、ほぼ1マナ2ドローとして使えるのでアドバンテージ源として重宝し、手数が増えることで《僧院の速槍》の果敢を誘発させやすくしたり、《渋面の溶岩使い》の燃料に困ることも少なくなるので安定してアグロプランを立てやすくなります。
今大会で優勝していたDredgeが増えることを想定し、アーティファクト対策と墓地対策を兼ねた《ラクドスの魔除け》のためにサイドに《血の墓所》が採用されています。墓地対策には《安らかなる眠り》もありますが、相手によっては直接火力としても扱える《ラクドスの魔除け》のフレキシブルさは魅力です。
白のタッチは《安らかなる眠り》と《流刑への道》だけで必要最低限に留まっています。《批判家刺殺》や《舞台照らし》の登場により赤単色のスペルが充実しているので無理に色を足す必要がなくなり、ショックランドからのライフロスもなくなる分、ほかのデッキにダメージレースで遅れをとることも少なくなりそうです。
Whir Prison
4 《植物の聖域》
4 《空僻地》
4 《産業の塔》
4 《トレイリア西部》
1 《イプヌの細流》
1 《アカデミーの廃墟》
1 《発明博覧会》
1 《地盤の際》
-土地 (21)- -クリーチャー (0)-
4 《発明品の唸り》
4 《虚空の杯》
4 《溶接の壺》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《オパールのモックス》
3 《仕組まれた爆薬》
1 《トーモッドの墓所》
1 《黄鉄の呪文爆弾》
2 《魔術遠眼鏡》
1 《減衰球》
4 《罠の橋》
1 《世界のるつぼ》
1 《瓶詰めの回廊》
1 《魔女封じの宝珠》
-呪文 (39)-
2 《練達飛行機械職人、サイ》
2 《魔術遠眼鏡》
2 《ボーラスの工作員、テゼレット》
1 《ギラプールの霊気格子》
1 《墓掘りの檻》
1 《倦怠の宝珠》
1 《太陽のしずく》
1 《求道者テゼレット》
-サイドボード (15)-
《罠の橋》や《減衰球》など相手の行動を制限するアーティファクトを多数搭載したプリズンコントロールで、《発明品の唸り》によって状況に応じてアーティファクトをサーチするツールボックス的な側面も持ち合わせています。
ほかにも《世界のるつぼ》+《地盤の際》によるマナロックや、《アカデミーの廃墟》で《仕組まれた爆薬》や《黄鉄の呪文爆弾》を使い回し、相手の脅威を捌いていくことでじっくりと相手の行動を制限していきます。《発明品の唸り》以外にも《古きものの活性》、《発明博覧会》、《トレイリア西部》などサーチ手段が豊富なのでデッキの動きも安定していますが、その分環境への理解度の高さが求められる非常にテクニカルなデッキでもあります。
今大会で入賞を果たしたMichael Coyleは、このデッキの製作者です。MOでもsusurrus_mtgとして活躍しており、配信も定期的に行っています。
☆注目ポイント
デッキの種類が多いモダンですが、Humans、Bant Spiritなどクリーチャーデッキが多くを占めるため、《罠の橋》は有効なロック手段として機能します。相手のターンに手札が一時的に追放される《瓶詰めの回廊》は《罠の橋》と相性が良いカードです。
それ以外のデッキに対しても、《魔女封じの宝珠》がTitan Shiftの《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》やBurnの直接火力などから守ってくれます。この2種類のアーティファクトによって多くのマッチアップをカバーできます。
メインからフル搭載されている《虚空の杯》は、現環境のトップメタに位置するIzzet Phoenixなど1マナのドロースペルを多用するデッキとのマッチアップで無類の強さを発揮するカードで、このタイプのデッキを選択する理由の一つとなります。
4枚採用されている《溶接の壺》やサイドの《呪文滑り》があるので、見た目よりも対策されにくいのもこのデッキの強みです。《罠の橋》などの効果が薄いコントロールに対しては、サイドから《ギラプールの霊気格子》、《練達飛行機械職人、サイ》、《求道者テゼレット》、《ボーラスの工作員、テゼレット》といった軸の異なる追加の勝ち手段を投入するプランにより相性の改善を図っています。
Izzet Phoenix
前環境からトップメタの一角として、SCG Tourやグランプリなどモダンの大規模なイベントで結果を残し続けていたIzzet Phoenixは、《クラーク族の鉄工所》禁止後の環境でも安定した成績を残しています。
昨年12月に開催されたSCGO Baltimoreで、Ross Merriamが優勝を果たして以来活躍しており、現在では《紅蓮術士の昇天》が採用された形が出てくるなど研究が進み、リストも洗練されてきています。
☆注目ポイント
Burnにも採用されていた《舞台照らし》は、このデッキの方向性にもフィットするスペルです。《はらわた撃ち》があるので「絢爛」しやすく、軽いスペルを多用するこのデッキではめくれたカードを唱えやすいので、《弧光のフェニックス》や《氷の中の存在》との相性もよく、デッキの爆発力の向上に貢献しています。
サイドの《ドラゴンの爪》は、最近また数を増やしてきているBurnとのマッチアップ用です。このデッキにとって天敵である《大歓楽の幻霊》が生き残ってしまった際にも、《ドラゴンの爪》があればライフゲインによっていくらかの猶予が得られます。
《高山の月》はTronなど土地コンボ対策です。Tronとのマッチアップでは相手のトロンランドを妨害し、《ワームとぐろエンジン》などビッグスペルをキャストされる前に決着を付けることが理想です。
Interview with Adam Wasburn-Moses
Ironworksの退場により、プレイヤーは新たな戦略を模索しています。《信仰無き物あさり》をフル活用したDredgeや、禁止を免れた《古きものの活性》を使ったAmulet Titanは新環境の代表的なアンフェアな戦略になると考えられています。
今回はそのAmulet Titanを使用し、プレイオフ入賞を果たした筆者の友人であるAdam Wasburn-Mosesにお話を聞くことができました。
Amulet Titan
4 《宝石鉱山》
4 《シミックの成長室》
4 《セレズニアの聖域》
1 《ボロスの駐屯地》
1 《魂の洞窟》
3 《トレイリア西部》
1 《ボジューカの沼》
1 《カビーラの交差路》
1 《カルニの庭》
1 《幽霊街》
1 《軍の要塞、サンホーム》
1 《処刑者の要塞》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (28)- 1 《歩行バリスタ》
4 《桜族の斥候》
4 《迷える探求者、梓》
1 《粗石の魔道士》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
3 《否認》
2 《仕組まれた爆薬》
1 《魂の洞窟》
1 《光輝の泉》
1 《ラムナプの採掘者》
1 《再利用の賢者》
1 《自由なる者ルーリク・サー》
1 《女王スズメバチ》
-サイドボード (15)-
――「なぜAmulet Titanを選択したのかを教えてもらえる?」
Adam「今月の頭にチーム戦で開催されたSCGO Columbusでどのデッキを使うか迷っていて、当初はIronworksを使うことを考えていたんだ。ただMOでIronworksを練習するのは色々と不便だったから、最終的にチームメイトにIronworksを貸して、僕はAmulet Titanにトライしてみることに決めたんだ。チームは2日目には残ったけど、最終的な成績は振るわなかった。でも僕の個人成績は11-4と手ごたえを感じられた。Columbusと今回の記録を合わせると18-6(IDを除く)だ」
――「それは素晴らしい記録だね。《クラーク族の鉄工所》が禁止カードに指定されたけどそれについてはどう思う?」
Adam「このカードが禁止になることは予想できていた。対戦していて楽しくなかったし単純に強すぎた」
――「《クラーク族の鉄工所》が禁止になったことで、Amulet Titanが受けた影響はなにかあるかな?」
Adam「禁止前は《殺戮の契約》、《暗殺者の戦利品》、《記憶殺し》のために黒をタッチしたバージョンが流行っていた。コンボ対策に《記憶殺し》は必須だったんだ。でも今はIronworksがいなくなったことでコンボ対策もそこまで重要でなくなり、《自由なる者ルーリク・サー》も100パーセント必要ということはなくなったけど、念のためにサイドに残している。今では除去のために白をタッチすることが再び主流になりつつあるね」
――「ほかのリストと比べて工夫したところがあれば教えて欲しい」
Adam「最近は《粗石の魔道士》を採用して必要なアーティファクトをサーチできるようになっているけど、僕は1枚に抑えて、その代わりに《探検》をフルに採用することでなるべく安定してデッキが回るように調整した。《稲妻》を採用したデッキが強い環境では、《桜族の斥候》には頼れないからね」
Adam「このデッキは、今回優勝したDredgeとのマッチアップも相性が良い。相手の方が遅くて妨害手段も少なく、《トレイリア西部》で《ボジューカの沼》をサーチしてこれるから、Dredge側は勝つことが難しくなるね」
――「Dredge以外のマッチアップについてはどう思う?」
Adam「このデッキはマッチアップというよりも、引きが噛み合わなかったり《血染めの月》のような特定のカードで負けることの方が多い。マッチアップとしてはDeath’s Shadowなどが難しいマッチアップになりそうだね。ハンデスと《頑固な否認》でバックアップされたクロックはキツイけど、サイドの《流刑への道》によっていくらか改善される」
Adam「もちろんプレイングも重要で、たとえば《トレイリア西部》で《ボジューカの沼》をサーチして《瞬唱の魔道士》や《グルマグのアンコウ》を妨害したり、《魂の洞窟》をサーチして《軽蔑的な一撃》を対策したりする。相手のライフは少なくなっていることが多いから《歩行バリスタ》で削ることもできるね。《仕組まれた爆薬》をX=1で設置して、後続の《死の影》を処理していくことも重要だ」
――「なるほど。サーチカードにもなる《トレイリア西部》の使い方がこのデッキを使う上で重要になるみたいだね。このデッキがモダンのデッキの中でも使いこなすのが難しいと言われているのも分かる気がしてきたよ。最後にサイドボーディングを教えてもらえるかな?」
サイドボードガイド
vs. Izzet Phoenix
vs. Izzet Phoenix
vs. Burn
vs. Burn
vs. Humans
vs. Humans
vs. Bant Spirit
vs. Bant Spirit
vs. Dredge
vs. Dredge
vs. UW Control
vs. UW Control
Adam「《桜族の斥候》は《稲妻》で焼かれることが多いから、それらのカードを多用するデッキとのマッチアップではたいていサイドアウトする。《探検》は《スレイベンの守護者、サリア》を使う相手には少し遅くて、キャントリップとしてあまり有効に機能しないことが多いからアウトして除去と入れ替える」
――「今日はインタビューに答えてくれてありがとう!」
総括
《クラーク族の鉄工所》が禁止になったことで環境に大きな変化が訪れました。『ラヴニカの献身』から新戦力を得たBurnも復権してきています。比較的最近登場したWhir Prisonも見られるようになってきたので、《クラーク族の鉄工所》が退場してもまだまだアーティファクト対策は欠かせません。
前環境からお馴染みの顔触れは、DredgeやIzzet Phoenix、Amulet Titan、UW Controlなどが中心です。今週末にはチーム構築戦のSCGO Baltimoreが開催されるので楽しみですね。
以上USA Modern Express vol.24でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!