みなさんこんにちは。
『ラヴニカの献身』がリリースされて早くも2週間が経ち、アメリカではSCGO IndianapolisとSCGO Baltimoreが開催され、環境の研究も徐々に進んできました。
今回の連載では、現在のスタンダード環境を上記2イベントの入賞デッキを見ながら考えていきたいと思います。
SCGO Indianapolis
ついに揃ったギルド、多色化が進む環境
2019年1月26-27日
- 1位 Sultai Midrange
- 2位 Bant Flash
- 3位 Azorius Aggro
- 4位 Esper Control
- 5位 Esper Midrange
- 6位 Izzet Drakes
- 7位 Esper Control
- 8位 Sultai Midrange
Anthony DeVarti
トップ8のデッキリストはこちら
ついにすべてのギルドが揃ったスタンダードは、予想通り多色デッキが環境の多くを占めています。旧環境で猛威を振るっていたGolgari Midrangeは、《ハイドロイド混成体》という新戦力を迎えSultaiになりました。今回入賞した白系のアグロデッキには、《拘留代理人》のために青がタッチされています。
新カードを多数採用したEsper ControlやBant Flashといった今までになかったデッキや、モダンでも使われている《舞台照らし》や《批判家刺殺》を採用した赤単も勝ち残っていました。
SCGO Indianapolis デッキ紹介
「Sultai Midrange」「Bant Flash」
Sultai Midrange
2 《沼》
1 《島》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
2 《湿った墓》
4 《森林の墓地》
1 《水没した地下墓地》
2 《愚蒙の記念像》
-土地 (24)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《野茂み歩き》
3 《ハイドロイド混成体》
1 《探求者の従者》
4 《翡翠光のレインジャー》
2 《真夜中の死神》
2 《貪欲なチュパカブラ》
2 《殺戮の暴君》
-クリーチャー (26)-
一足早くMOのリーグでも結果を残していたSultai Midrange。旧環境でトップメタの一角に位置していたGolgari Midrangeに青をタッチしたバージョンで、基本的なゲームプランに大きな変化は見られませんが、ドローとカウンターが加わったことによりコントロールにも強くなりました。
アドバンテージ源にもなりフィニッシャーにもなる《ハイドロイド混成体》は、このデッキを更なる高みへと押し上げました。
☆注目ポイント
すっかり環境最高の1枚として定着している《ハイドロイド混成体》は、このデッキが青をタッチする最大の理由となっています。ライフゲインによってアグロデッキとのマッチアップでは時間を稼ぎ、ミッドレンジやコントロールとのマッチアップではドロー兼フィニッシャーとして活躍します。
サイドの《軽蔑的な一撃》と《否認》といったカウンターによって、EsperやNexusなどのコントロールやほかのミッドレンジとのマッチアップで、有利に立ち回れることが多くなりました。
また、今大会の翌週に開催されたSCG Standard Classic Baltimoreの入賞リストでは、《ハイドロイド混成体》をより強く使うための《培養ドルイド》やコントロールに効果的な《正気泥棒》が採用されていました。重要なポイントとして《正気泥棒》で1度追放したカードは、《正気泥棒》が除去されてもキャストできるので覚えておきたいところです。
Bant Flash
1 《森》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《氷河の城砦》
3 《内陸の湾港》
1 《天才の記念像》
-土地 (26)- 4 《成長室の守護者》
4 《エリマキ神秘家》
1 《豊潤の声、シャライ》
4 《恩寵の天使》
-クリーチャー (13)-
2 《呪文貫き》
1 《一瞬》
1 《大集団の行進》
2 《残骸の漂着》
1 《薬術師の眼識》
2 《解任+開展》
1 《万全+番人》
3 《封じ込め》
4 《ベナリア史》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (21)-
2 《軽蔑的な一撃》
2 《否認》
2 《押し潰す梢》
1 《拘留代理人》
1 《豊潤の声、シャライ》
1 《黎明をもたらす者ライラ》
1 《集団強制》
1 《浄化の輝き》
1 《不可解な終焉》
-サイドボード (15)-
『ラヴニカの献身』から、《恩寵の天使》と《エリマキ神秘家》という2種類の瞬速クリーチャーが追加されたことによって実現したBant Flash。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《ベナリア史》など、一部を除いてデッキ内の多くのスペルがインスタントスピードで唱えることができ、相手のアクションに合わせたプレイが可能です。まだ環境初期でデッキの構成を把握できていない相手にとっては、対戦難易度が高かったことが予想されます。
インスタントスピードで脅威を展開するテンポデッキの性質上、Esper Controlに有利で、数で押してくる白いアグロデッキなどを苦手とします。サイドにはスイーパーや追加の除去、カウンターが多数採用されており、アグロやミッドレンジに対してはサイド後コントロール寄りにシフトしていきます。
☆注目ポイント
《成長室の守護者》は、コストが軽くアドバンテージも得られるこのデッキの主力となるクリーチャーです。「順応」も構えることが多いこのデッキと相性がよく、相手が何もアクションを起こさなければ、「順応」することでマナとターンを効率的に使っていくことができます。
《エリマキ神秘家》は、あの《神秘の蛇》を彷彿とさせるクリーチャーです。色拘束は強いものの、相手のアクションを妨害しつつパワー3のクロックが残るのは強力で、テンポとカードアドバンテージの両方を稼ぐことができます。《恩寵の天使》は瞬速持ちの5マナパワー5飛行と性能の良いクリーチャーです。《崇拝》と似た効果のETB能力によって相手のダメージ計算を大きく狂わせることが可能で、上手く使うことで形成を一気に逆転することもできます。
《解任+開展》は非常にフレキシブルな分割カードです。《解任》は、ドローを進めつつ時間を稼いだり 、ブロッカーを寝かせたりと攻守に渡って使えます。《開展》もインスタントスピードでトークンを生成することができ、クロックとしてもブロッカーとしても使うことができます。
《封じ込め》や《大集団の行進》、《残骸の漂着》などが採用されたこのデッキ相手に、迂闊に攻め込むのはリスクが大きいプレイです。デッキの性質上《残骸の漂着》のようなスペルを最も活かしやすく、そういった点も対戦難易度が高い理由の一つに挙げられます。警戒して相手が何もせずにターンを返すのなら、《薬術師の眼識》でアドバンテージ差を広げたりと全体的に隙が少ない動きがこのデッキの強みです。
SCGO Baltimore
アゾリウスアグロがチームを優勝に導く
2019年02月2-3日
- 1位 Azorius Aggro
- 2位 Sultai Midrange
- 3位 Bant Tokens
- 4位 Esper Control
- 5位 Esper Control
- 6位 Esper Control
- 7位 Bant Nexus
- 8位 Esper Control
Lynn/Overturf/Hagen
トップ8のデッキリストはこちら
チーム構築戦で競われたSCGO Baltimoreは、多くのチームが前週に開催されたSCGO Indianapolisでも成績をのこしていたEsper ControlやSultai Midrangeなどを選択していました。
特にEsper Controlはプレイオフに進出したチームの半数以上が選択しており、旧環境のJeskaiに代わるコントロールデッキとして定着しているようです。
SCGO Baltimore デッキ紹介
「Azorius Aggro」「Esper Control」
Azorius Aggro
《神聖なる泉》が再録されたことによって、白単アグロに青をカウンターのためにタッチすることが可能になりました。
アグロデッキに効果的な《ケイヤの怒り》や《肉儀場の叫び》を《否認》などでカウンターできるようになったことは大きく、今後も上位で多く見られそうです。
☆注目ポイント
《徴税人》は、このデッキにとって厄介となる《残骸の漂着》を使うEsper Controlや、Fog系のスペルを多用するBant Nexusなどとのマッチで強さを発揮するクリーチャーです。「死後」によってトークンが残るので除去されたとしてもアドバンテージが取れます。
《拘留代理人》は、《拘留の宝球》と似た能力を内蔵したクリーチャーで、同型を含めたアグロデッキとのマッチアップで活躍します。追放する対象がトークンなら《拘留代理人》自身が除去されても戻らないので、《ベナリア史》から生み出された騎士・トークンを追放しつつブロッカーとしても機能します。
《呪文貫き》、《軽蔑的な一撃》、《否認》の3種類のカウンターは、特にEsper ControlやBant Nexusとのマッチアップで有効です。《ケイヤの怒り》や《肉儀場の叫び》、《根の罠》といったスペルを一度でも打ち消せればそのまま押し切れることが多いので、今後は青タッチが主流になりそうです。
Esper Control
旧環境から活躍する《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使ったコントロールは、『ラヴニカの献身』からの収穫も多く選択肢が大幅に増えました。以前は《神聖なる泉》の欠如によりマナ基盤に不安がありましたが、今はショックランドが揃い安定性も向上しています。
今大会でも猛威を振るっており、環境の代表的なコントロールデッキの一つと見て間違いなさそうです。Esper Controlはこの環境の中でも筆者が好きなデッキの一つです。
☆注目ポイント
Edgar Magalhaes選手のリストは、《思考消去》がメインからフルに採用されています。ハンデスは同型ではもちろん、このデッキにとって脅威となる《殺戮の暴君》や《ハイドロイド混成体》、各種プレインズウォーカーなどを落とせるので、Sultaiなどとのマッチアップでも使えるスペルです。おまけの「諜報」は《アズカンタの探索》を変身させやすくする地味ながら嬉しい効果です。
《喪心》よりも多く採用された《渇望の時》から、赤単を意識していたことが分かります。ライフゲインは序盤の猛攻を凌ぎやすくなり、ショックランドからのライフロスを取り戻してくれるので重要です。《屈辱》によって今まで対処が難しかった同型の《アズカンタの探索》や、赤単の《実験の狂乱》をメインから無理なく対策できるようになったのはコントロールにとって大きな収穫です。
《ケイヤの怒り》はコントロールにとって念願の4マナのスイーパーで、色拘束の強さもショックランドとM10ランドが揃ったマナ基盤の恩恵で思ったほど気になりません。《浄化の輝き》と比べて、1マナの差は大きいと実感できます。
サイドに4枚採用されている《正気泥棒》は、除去をサイドアウトした相手にとって脅威となります。コントロールがサイド後にクリーチャーを追加するのは定番ですが、Esper Controlも《思考消去》や各種カウンターでバックアップしていけるので対策が難しくなります。
総括
ショックランドが揃いマナ基盤が整ったことで、デッキ構築の自由度が広がり環境が激変しました。
既存のGolgariや白アグロといったデッキは、青をタッチすることでコントロールとの相性が改善されたようです。コントロールは《ケイヤの怒り》を獲得したことにより、Jeskaiに代わりEsper Controlが上位でも多く見られるようになりました。そのほかにもBant Flashや赤単、青単、Bant Nexus、Gate Controlなどデッキの種類が多く、デッキビルダーにとっても楽しい環境のようです。
今週末にもSCGO Dallasがスタンダードで開催されます。今シーズンのSCGはスタンダードの大会が頻繁に開催されるので楽しみです。
以上USA Standard Express vol.140でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!