みなさんこんにちは。
『ラヴニカの献身』がリリースされてしばらくが経ちました。新エキスパンションの影響を受けにくいとされるレガシーですが、今回は《プテラマンダー》や《舞台照らし》を採用したデッキが見られます。
さて、今回の連載ではSCGO BaltimoreとSCG Classic Baltimoreの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Baltimore
安定のDelver系
2019年2月2日-3日
- 1位 Dimir Death’s Shadow
- 2位 Grixis Delver
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Golgari Depths
- 5位 Four-Color Loam
- 6位 Lands
- 7位 Colorless Eldrazi
- 8位 Miracles
Lynn/Overturf/Hagen
トップ8のデッキリストはこちら
チーム構築戦で競われたSCGO BaltimoreではDelver系のデッキを選択していた多くのチームが勝ち残っていました。
チーム構築戦に参戦する強豪プレイヤーは、安定した勝率が期待できる青いフェアデッキや比較的プレイの簡単なSneak and Showなどのコンボデッキを使う傾向にあります。Delver系はデッキ構成上コンボに強く、また効率的なクロックとマナ否定戦略により多くのマッチアップで勝ちを拾えることが人気の理由です。
SCGO Baltimore デッキ紹介
「Miracles」「Grixis Delver」「Izzet Delver」
Miracles
使用難易度の高いデッキですが、コンボデッキに対しては《意志の力》をはじめとした各種打ち消し呪文や《相殺》、クリーチャーデッキには《剣を鍬に》と《終末》が揃っているため対応力が高く、マスターすれば安定した勝率が期待できます。
《師範の占い独楽》が禁止になってからも常にトップメタの一角としてコンスタントに勝ち残っていますが、《終末》や《相殺》を仕込むタイミングがシビアになっており、一度のミスが敗北に直結してしまうことも多いので今まで以上にしっかり練習しておきたいところです。
スペシャリストによって研究が進んでいるアーキタイプの一つで、最近はカードアドバンテージ獲得手段として《蓄積した知識》を搭載したリストが主流になっています。
☆注目ポイント
最近の定番である土地を20枚未満にまで切り詰めてキャントリップ呪文を多めに採用し、相性の良い《僧院の導師》と《蓄積した知識》のアドバンテージで勝利する構成ですが、見慣れないカードも採用されています。
《任務説明》は《瞬唱の魔道士》に似ていますが、「諜報」2による間接的なアドバンテージは中盤以降では2/1クリーチャーが残ることよりも重要になることが多くあります。《渦まく知識》で戻した不要牌を墓地に落とせるのはもちろんのこと、《相殺》や《僧院の導師》といったデッキ内の多くのカードとシナジーがあることも見逃せません。
《瞬唱の魔道士》のフラッシュバックと大きく異なる点は墓地に落ちた呪文も代替コストでプレイできる点です。《意志の力》との相性の良さは言うまでもなく、コンボデッキとのマッチアップでは《意志の力》自体を探す手段としても使えます。対象を取らないため《外科的摘出》などに耐性があるのも地味に嬉しい要素です。
赤をタッチしている関係で《Volcanic Island》が2枚採用されており、青白の2色のバージョンと比べると《基本に帰れ》は若干使いにくくなっているためサイドボードに1枚のみとなっています。Eldrazi PostやLandsなどに対してはこのエンチャントメントを張れればかなり有利にゲームが進められるので、3色になっても採用することをお勧めします。
Grixis Delver
3 《Volcanic Island》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
2 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
4 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (12)-
SCG Tourでフォーマットを問わずに定期的に好成績を残しているTannon Grace選手のGrixis Delverのリストは《思考掃き》と《グルマグのアンコウ》をフル搭載し、可能な限り早い段階から5/5のゾンビ・魚を展開することに重点を置いたバージョンでした。
レガシーのスペシャリストで、特にDelver系を得意とするBob Huang選手(チーム最終成績21位)もこのバージョンを使用しており、今後のGrixis Delverの定番の一つとなりそうです。
このアーキタイプは、《渦まく知識》を採用した青いフェアデッキの中でも非常に攻撃的な部類のデッキです。Sneak and Showなどのコンボデッキに強く、《稲妻》などコストパフォーマンスに優れた呪文や、《不毛の大地》+《目くらまし》といったテンポ戦略も兼ね備えていて使いやすいので、チーム戦でも人気の高いデッキです。
☆注目ポイント
僅か1マナで一気に墓地へカードが3枚たまる《思考掃き》によって《グルマグのアンコウ》を早いターンから出せるので、ほかのDelver系(Grixis Delver、Temur Delver)とのマッチアップで有利になります。Delver系以外のマッチアップでも最速2ターン目に出てくる5/5は強力ですが、《剣を鍬に》が使える白いデッキに対しては僅かに信頼性が落ちるため、ハンデスやカウンターでバックアップする必要があります。
《思考掃き》は「探査」のために墓地を肥やす以外にも、《渦まく知識》で戻したカードを墓地に落とすことでライブラリートップをフレッシュな状態にしたり、Miraclesが仕込んだ「奇跡」呪文を落としたり、「占術」を妨害したりと使い道が多岐に渡るため覚えておきたいところです。
このデッキは《虚空の杯》に非常に弱いため、メインから《削剥》が採用されています。クリーチャー除去として使用できるため無駄になりにくく、増加傾向にあるStonebladeに対してはクリーチャーと装備品両方に効果的であり、メインでも問題なさそうです。
《墓掘りの檻》はReanimatorやElvesのほかに、最近よく見られるようになったGrixis Phoenixに対しても有効です。《苦花》はMiracles、Death and Taxes、Grixis Controlなど《グルマグのアンコウ》への対抗手段を持つデッキに対してサイドインします。毎ターン自動的にトークンが生み出されるためクリーチャー除去呪文だけでは止めるのは難しく、追加の勝ち手段としては最適です。
Izzet Delver
1 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《プテラマンダー》
4 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (14)-
『ラヴニカの献身』からも新戦力が登場しました。プレビュー時から話題だった《プテラマンダー》と、スタンダードやモダンの赤いデッキでも活躍している《舞台照らし》を採用したIzzetカラーのDelverが入賞しています。
全体的に軽いスペルでまとめられており、Grixis Delverよりもアグレッシブで《稲妻の連鎖》も採用したバーン寄りの構成です。
青赤の2色になったことで特殊地形対策にも耐性ができましたが、反面、ハンデスが使えないことでコンボ対策はメインでは《意志の力》と《目くらまし》のみと不安が残ります。それでも今後の調整次第ではDelver系の主要アーキタイプの一つとして活躍できる可能性があります。
☆注目ポイント
《プテラマンダー》は軽いスペルを多用するこのデッキでは「順応」のコストが1マナで済むことが多く、《グルマグのアンコウ》などの「探査」クリーチャーとは異なり、キャストする際には墓地の状況に依存しないことも強みです。《意志の力》のコストになるため無理なくメインから4枚投入できるカードであり、MOのレガシー大会ではこのクリーチャーを採用したデッキが既に結果を残していることからも、今後もレガシーの主力カードとして活躍できる可能性を秘めています。
《舞台照らし》はBurnと違い、カウンターなど受動的な呪文が捲れてしまうとアドバンテージを活かしにくいことがありますが、強力な1マナ2ドロー呪文であることには変わりありません。今後の調整次第で評価が変わるカードですが、火力など能動的に使える呪文を増やすことでこのカードの真価を発揮できそうです。
SCG Classic Baltimore
コンスタントに結果を残し続けている石鍛冶
2019年2月3日
- 1位 Azorius Delver
- 2位 Dimir Death’s Shadow
- 3位 Dimir Delver
- 4位 Grixis Control
- 5位 Sneak and Show
- 6位 Miracles
- 7位 Azorius Stoneblade
- 8位 Death and Taxes
Harlan Firer
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SCGO Baltimoreと併催して開催されたSCG Classicはスタンダードとモダンが同時開催されていたのにもかかわらず、チーム戦イベントの二日目に残れなかったレガシープレイヤーが多く参加していたこともあり、参加者が140名をこえる大盛況でした。
勝ち残ったデッキは上位で見かけることが多くなったStonebladeやDelver系などフェアデッキからSneak and Showなどのコンボまでと幅広く、最近のレガシー環境を象徴とするように多数のアーキタイプが見られます。
SCG Classic Baltimore デッキ紹介
「Azorius Delver」「Dimir Death’s Shadow」
Azorius Delver
Azorius Delverは、Grixis Delverよりも長期戦向けの構成にすると同時に、中速のStonebladeから重い要素を減らすことでコンボに対する相性の改善が図られています。Delverとされていますが中速のStonebladeに《秘密を掘り下げる者》と《目くらまし》といったDelverの要素をハイブリットした構成との見方がしっくりきます。
今大会で優勝を収めたHarlan Firer選手のデッキと似たものが昨年開催されたグランプリ静岡2018でも結果を残しており、現環境の青いフェアデッキの有力な選択肢として見ても間違いなさそうです。
☆注目ポイント
それぞれ3枚ずつ採用された《目くらまし》と《不毛の大地》は一見すると中途半端な印象を受けます。ですが、ほかのDelver系とは異なり、《石鍛冶の神秘家》や《精神を刻む者、ジェイス》といったマナを必要とする脅威を多く採用しているため、クロックを展開して守るのではなく、相手がフルタップでキャストした《精神を刻む者、ジェイス》などの比較的マナコストの重いカードを狙い打つ使い方が多くなります。《不毛の大地》も純粋に相手の展開を遅らせるというよりも、《燃え柳の木立ち》など特定の土地を狙い撃つことになります。
《秘密を掘り下げる者》はコンボ相手には軽いクロックとして活躍しますが、フェアデッキ相手には《石鍛冶の神秘家》の露払いとなります。そうすることで《石鍛冶の神秘家》が生き残りやすくなるため、《殴打頭蓋》に繋がりやすくなるというメリットが生じます。
Stoneblade同様に基本地形が多いので特殊地形対策に耐性があり、LandsやEldraziに対しては《基本に帰れ》をサイドインして動きを著しく制限することもできます。サイドボード後には《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《真の名の宿敵》、《議会の採決》などを追加し、中速のStoneblade寄りにシフトしていきます。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はGrixis ControlやMiraclesにとって対処が難しいプレインズウォーカーなのでお勧めです。
Dimir Death’s Shadow
3 《湿った墓》
2 《汚染された三角州》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《湿地の干潟》
1 《霧深い雨林》
1 《沸騰する小湖》
1 《新緑の地下墓地》
3 《不毛の大地》
-土地 (17)- 4 《死の影》
2 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《通りの悪霊》
2 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (12)-
4 《思案》
4 《思考囲い》
2 《定業》
2 《頑固な否認》
1 《再活性》
3 《目くらまし》
3 《トーラックへの賛歌》
3 《四肢切断》
4 《意志の力》
1 《最後の望み、リリアナ》
-呪文 (31)-
3 《悪魔の布告》
3 《漸増爆弾》
2 《最後の望み、リリアナ》
1 《瞬唱の魔道士》
1 《致命的な一押し》
1 《トーラックへの賛歌》
1 《毒の濁流》
-サイドボード (15)-
アメリカ人プロのBen Friedman選手も参戦していました。彼が今大会で選択したのはプロツアーでも活躍していたDimir Death’s Shadowでした。
デッキ内全ての脅威を対処できる《剣を鍬に》を採用したMiraclesなどのコントロールを苦手としていましたが、プロツアーのリストから進化しており、コンボデッキへの強さはそのままに悩みの種だった《悪意の大梟》や《苦花》への対策も施しているのでGrixis Controlとの相性も改善されています。
☆注目ポイント
Ben Friedman選手のリストの一番の特徴は《秘密を掘り下げる者》が入っていないところです。その枠に採用されているのは《ヴリンの神童、ジェイス》と《最後の望み、リリアナ》の2種類。これらによって《悪意の大梟》や《苦花》に悩まされることなく、更にプレインズウォーカーをメインから採用することで多角的な攻めが可能になっています。Grixis ControlやMiraclesといったコントロール相手でもカードアドバンテージ面で引けを取らず、ロングゲームにも対応しやすくなっています。
ハンデスも定番の《思考囲い》に加えて《トーラックへの賛歌》をメイン、サイドと合わせて4枚採用しているのでコンボデッキに対しては依然として強い構成です。
サイドは苦手なプリズン系の《虚空の杯》を対策するために、《漸増爆弾》が採られています。チャンプブロックするトークンの群れや《血染めの月》、《真の名の宿敵》なども対策できるので《ゲスの玉座》よりも受けが広いカードです。
《悪魔の布告》や《毒の濁流》の採用からもわかるように、《真の名の宿敵》やDeath and Taxesの《ミラディンの十字軍》対策には力を入れています。《悪魔の布告》はミラーマッチやマリット・レイジトークン対策にもなり便利な除去です。
メインから採用されている《最後の望み、リリアナ》はサイドボードにも2枚控えており、Grixis ControlやMiraclesとの相性の改善を徹底しています。サイド後は土地が17枚のままにもかかわらず3マナ域が増えてデッキ全体が重くなりますが、追加の《最後の望み、リリアナ》や《瞬唱の魔道士》がサイドインされるのは、MiraclesやGrixis Controlといった《不毛の大地》を使用しない相手のため、問題となることは少ないでしょう。
総括
現環境はDelver系、Miracles、Grixis Controlを筆頭とする多種多様なフェアデッキをはじめ、プリズンやコンボと選択肢が多くあるだけでなく、《弧光のフェニックス》+《生き埋め》、《プテラマンダー》や《舞台照らし》といった最新のエキスパンションのカードを中核に据えたデッキも台頭しており、研究のしがいがあります。
今春にはSCGO SyracuseやMagicFest Niagara Fallsなど、レガシーの大規模なイベントが充実しているので楽しみです。
USA Legacy Express vol.150は以上です。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。