みなさんこんにちは。
今週末にはいよいよミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019が開催され、来月にはグランプリ・京都2019も迫っておりスタンダードは現在最も熱いフォーマットの一つです。『ラヴニカの献身』がリリースされてしばらく経ったいまでも、メタが目まぐるしく変化する非常に面白い環境となっています。
今回の連載ではSCGO Dallasとグランプリ・メンフィス2019の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Dallas
多色環境に変化が訪れる
2019年2月16-17日
- 1位 Mono Blue Aggro
- 2位 Esper Control
- 3位 Azorius Aggro
- 4位 Simic Nexus
- 5位 Azorius Aggro
- 6位 Mono Blue Aggro
- 7位 Rakdos Midrange
- 8位 Sultai Midrange
Robert Wagner-Krankel
トップ8のデッキリストはこちら。
『ラヴニカの献身』の影響で環境が多色化するかと思われましたが、今大会ではMono Blue AggroがSultai MidrangeやEsper Controlといった多色デッキを倒し優勝を飾りました。
以前から、初心者でも組みやすい低予算デッキの一つとしてよく見られたデッキでしたが、新戦力を獲得して強化されたようです。
SCGO Dallas デッキ紹介
「Mono Blue Aggro」「Nexus of Gates」
Mono Blue Aggro
デッキのパーツにレアや神話レアが少ないのでカード資産的に組みやすく、MTGアリーナでも人気のデッキです。
軽い回避能力持ちのクリーチャーをカウンターでバックアップしていくクロックパーミッションデッキで、構成上Esper Controlなどに有利になっていますが、その一方Azorius Aggroなど横に並ぶアグレッシブなデッキを苦手としています。
低予算デッキとしての印象が強いデッキですが、旧環境でもグランプリ・リール2018で準優勝という好成績を残しているデッキで、『ラヴニカの献身』からも《プテラマンダー》や《本質の把捉》、《フェアリーの決闘者》といった新戦力を獲得し強化されています。
☆注目ポイント
モダンやレガシーでも活躍している《プテラマンダー》は、スタンダードのMono Blue Aggroの強化にも貢献しています。新たな1マナ域の回避能力付きのアタッカーとして序盤から終盤まで活躍でき、低コストでフィニッシャー級のサイズに「順応」することもできるので隙が少なく、クロックパーミッションという戦略にフィットしたクリーチャーです。
《霧まといの川守り》や《プテラマンダー》、《セイレーンの嵐鎮め》といった軽い回避能力持ちのクリーチャーを多数採用しているため《執着的探訪》や《航路の作成》によってアドバンテージも取りやすく、相手の除去も各種カウンターや《潜水》で弾きやすくなっています。また、このような軽いスペルを多用するため、低コストで《プテラマンダー》を「順応」することもできます。
このデッキの数少ない2マナである《マーフォークのペテン師》は、回避能力こそ持たないものの、瞬速持ちなため構えながら展開できるのが強みです。場に出たときの能力も無視できない要素で、白ウィニーの主力である《アダントの先兵》も容易に対処できるようになります。ウィザードなので《魔術師の反駁》のコストダウンにも貢献します。
《大嵐のジン》はこのデッキで数少ない高めのタフネスを持つクリーチャーで、中盤以降はフィニッシャーとなります。《潜水》などでバックアップされた巨大な《大嵐のジン》を処理するのは一筋縄ではいきません。
《幻惑の旋律》は各種クリーチャーデッキ、特に白ウィニーとのマッチアップで有効に機能します。Sultai Midrangeを始めとした多くのデッキに採用されている《ハイドロイド混成体》対策にもなるので、新環境に入ってから使用率が上がったスペルの1枚です。
《氷結》はIzzet Drakesの《弧光のフェニックス》や《パルン、ニヴ=ミゼット》といった脅威をわずか3マナで機能不全にすることができます。《波濤牝馬》は高タフネスなことを活かし、赤単や白ウィニーとのマッチアップで地上クリーチャーを止める役割を果たします。《フェアリーの決闘者》は白ウィニーとのマッチアップで巧く使うことにより、相手のアタッカーを一方的に打ち取ることができます。
Nexus of Gates
1 《島》
1 《繁殖池》
4 《調和の公有地》
4 《グルールのギルド門》
4 《イゼットのギルド門》
4 《シミックのギルド門》
3 《アゾリウスのギルド門》
3 《セレズニアのギルド門》
1 《ボロスのギルド門》
-土地(26)- 4 《ハイドロイド混成体》
-クリーチャー(4)-
《成長のらせん》などでドローを進めつつ土地を伸ばしていき、『ラヴニカの献身』の新カードである《荒野の再生》で土地をアンタップすることによって大量のマナを生み出し《運命のきずな》に繋げる、スタンダード版のTurbo Landです。ローテーションで失った《濃霧》系のスペルの代わりにギルド門と《燃え立つ門》を採用するなど、門シナジーを搭載しています。
門はタップインのため立ち上がりが遅くなるネックがありますが、追加の土地をプレイすることが可能になる《成長のらせん》や《迂回路》、スイーパーの《燃え立つ門》でカバーしていくことが可能で、門の採用により《門破りの雄羊》や《ギルド会談》など門シナジーを持つカードをフル活用できるのが魅力です。
☆注目ポイント
《燃え立つ門》はこのデッキでは3マナのスイーパーとして機能するため、使える《濃霧》系のスペルが減少した現在は《運命のきずな》に繋げるまでの時間稼ぎとして重宝します。門シナジーを持つカードによって、このデッキは《荒野の再生》に頼らずとも門コントロールとして振舞えるようになっています。
《成長のらせん》は説明するまでもなくこのタイプのデッキを使う理由の一つです。インスタントタイミングでドローを進めつつ土地を伸ばしていくことが可能で、タップインランドである門が多いこのデッキでは重宝します。《ギルド会談》はこのデッキのドローエンジンで、ここから《成長のらせん》や《迂回路》によってさらにドローを進めていき《荒野の再生》や《運命のきずな》といったキーカードを探します。マナが大量に出るこのデッキは《ハイドロイド混成体》や《発破》との相性も良く、大量のカードを引くことができます。
サイド後は《アーチ道の天使》や《門破りの雄羊》といったクリーチャーが投入され、《運命のきずな》によるロックに頼らずにゲームを終わらせることもできます。《門破りの雄羊》はこのデッキならわずか3マナでフィニッシャー級の性能となり、特に速やかにゲームを終わらせることができます。トランプルを得ることによりチャンプブロックも許さず、警戒も持つため攻守に渡って優れたクリーチャーになります。
グランプリ・メンフィス2019
布教を広めるRakdos教団
2019年2月15-17日
- 1位 Rakdos Midrange
- 2位 Sultai Midrange
- 3位 Sultai Midrange
- 4位 Gruul Midrange
- 5位 Simic Nexus
- 6位 Mono White Aggro
- 7位 Mono Blue Aggro
- 8位 Mono Blue Aggro
Jody Keith
トップ8のデッキリストはこちら。
ミシックチャンピオンシップ直前の大会だったこともあり、Jody Keith選手にCorey Burkhart選手、Steve Rubin選手のほかにも日本人プロの高尾 翔太選手や原根 健太選手、井上 徹選手も入賞しておりタレント揃いのプレイオフとなりました。
今大会直前に開催されたSCGO Dallasでも優勝したMono Blue Aggroや、安定した成績を残し続けているSultai Midrangeなどが入賞する中、《荒野の再生》を得たことで強化された《運命のきずな》デッキや新カードを多数搭載したGruul Midrangeも見られました。
グランプリ・メンフィス2019 デッキ紹介
「Gruul Midrange」「Rakdos Midrange」
Gruul Midrange
1 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《根縛りの岩山》
4 《手付かずの領土》
2 《グルールのギルド門》
-土地(24)- 4 《成長室の守護者》
4 《ザル=ターのゴブリン》
3 《凶兆艦隊の向こう見ず》
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《グルールの呪文砕き》
4 《再燃するフェニックス》
3 《包囲攻撃の司令官》
-クリーチャー(26)-
3 《燃えがら蔦》
2 《クロールの銛撃ち》
2 《焦熱の連続砲撃》
2 《ウルザの後継、カーン》
1 《溶岩コイル》
1 《争闘+壮大》
1 《不滅の太陽》
-サイドボード(15)-
『ラヴニカの献身』から多数の新戦力を獲得し実現に至ったアグロに寄ったミッドレンジで、今大会の入賞デッキでも最も印象に残ったデッキです。
《成長室の守護者》や《ザル=ターのゴブリン》など低コストながら高いカードパワーを持つクリーチャーに恵まれており、タフネス1のクリーチャーを一掃する《ゴブリンの鎖回し》や飛行クリーチャーに対策できる《クロールの銛撃ち》も採用されているため、SCGO Dallasで優勝を果たし、今大会でも複数の入賞者を出していたMono Blue Aggroに強い構成になっています。
☆注目ポイント
「暴動」持ちの《グルールの呪文砕き》と《ザル=ターのゴブリン》は、《ケイヤの怒り》 などのスイーパーやソーサリー除去に対して強く立ち回れます。加えて、《ザル=ターのゴブリン》は《包囲攻撃の司令官》で利用できるゴブリンのクリーチャー・タイプを持っているので相性がよく、このデッキの主力カードです。
《ゴブリンの鎖回し》はMono Blue Aggroや白ウィニーなど、小型のクリーチャーを多用する単色のアグロデッキとのマッチアップで強さを発揮するクリーチャーです。色拘束が強いのが難点ですが、《手付かずの領土》によって唱えやすくなっています。《手付かずの領土》はモダンで使われていることの方が多いので忘れられがちですが、『イクサラン』のカードなのでスタンダードでも使えます。
Gruulの分割カードである《争闘+壮大》は、《大嵐のジン》や《黎明をもたらす者ライラ》といったフィニッシャー級の飛行クリーチャーまで対策可能で、飛行クリーチャーを採用していないデッキに対しても強化スペルとして使用できるので腐りにくく使いやすいカードです。
サイドの《燃えがら蔦》 は《アズカンタの探索》や《荒野の再生》などの置物対策になると同時に、Esper Controlや《運命のきずな》デッキなど非クリーチャースペルを多用するデッキ・戦略に対して確実なダメージソースとなり、コストも軽いのでカウンターを潜り抜けるのも容易です。相手のキーカードを牽制しつつダメージ源ともなるので、本戦でも活躍したことでしょう。
Rakdos Midrange
1 《沼》
4 《血の墓所》
4 《竜髑髏の山頂》
1 《燃え殻の痩せ地》
1 《ラクドスのギルド門》
-土地(25)- 4 《凶兆艦隊の向こう見ず》
4 《リックス・マーディの歓楽者》
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《再燃するフェニックス》
3 《包囲攻撃の司令官》
-クリーチャー(19)-
今大会を見事に優勝を果たしたJody Keith選手は、Big RedスタイルのRakdos Midrangeを使用していました。
Rakdosは軽いクリーチャーと火力により速攻で畳みかけるという印象ですが、《宝物の地図》でアドバンテージを稼ぎつつ《再燃するフェニックス》や《包囲攻撃の司令官》といった優秀な中堅クリーチャーで勝利を目指すミッドレンジになっています。
☆注目ポイント
Gruulでも採用されていた《ゴブリンの鎖回し》は、Mono Blue Aggroのようにタフネス1のクリーチャーを多数採用しているデッキに有効に機能します。サイドの《席次》とのコンボによって、相手側のクリーチャーを殲滅することも可能です。
《再燃するフェニックス》はアグロ、ミッドレンジ問わず使えるクリーチャーで、《ヴラスカの侮辱》などの追放除去以外では処理されにくいカードです。カウンター以外の有効な対策手段に乏しいMono Blue Aggroに対しても強いクリーチャーで、軽い除去でバックアップしていくことによって有利にゲームを進めることができます。コントロールやミッドレンジとのマッチアップでは、その高い除去耐性によって信頼できるフィニッシャーとなり、アグロデッキとのマッチアップでは優秀なブロッカーとして機能します。
《包囲攻撃の司令官》に加えて《最古再誕》もメインから採用されているなど、コントロールに寄った構成な一方、《凶兆艦隊の向こう見ず》や《リックス・マーディの歓楽者》といった軽いクリーチャーによって序盤からプレッシャーをかける選択肢も用意されています。
《凶兆艦隊の向こう見ず》は序盤にプレイしても先制攻撃のおかげでブロッカーとして役に立ち、後半では相手の呪文を奪うことでアドバンテージを得られます。また、《リックス・マーディの歓楽者》は序盤の立ち回りを安定させ、後半は「絢爛」することで息切れを防いでくれます。
《最古再誕》は《殺戮の暴君》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》など厄介なパーマネント対策になるので、Sultai MidrangeやEsper Controlとのマッチアップで強さを発揮するエンチャントです。特に処理したフィニッシャーを奪うことができる最終章の存在は相当のプレッシャーとなります。
サイドには《強迫》や《軍勢の戦親分》などが見られ、《運命のきずな》デッキ対策に重点を置いています。苦手なマッチアップであることは変わりないので、《運命のきずな》デッキに除去が少ないことを利用して《軍勢の戦親分》で速やかにフィニッシュしていくことが重要となります。
総括
ローテーション前の環境で猛威を振るった《ゴブリンの鎖回し》は一時期は見られなくなったクリーチャーでしたが、Mono Blue Aggroなど低タフネスのクリーチャーを多用するアグロデッキの隆盛により再び多くの赤いデッキで採用されるようになりました。
Sultai MidrangeやAzorius Aggro、Esper Control、Mono Blue Aggro、各種《運命のきずな》デッキに加えてグランプリ・メンフィス2019ではGruul MidrangeやRakdos Midrangeといったデッキも結果を残しており、混沌とした環境です。今週末に開催されるミシックチャンピオンシップで世界のトッププレイヤーがどのような回答に辿り着くのか、要注目です。
以上USA Standard Express vol.141でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
この記事内で掲載されたカード
Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。