Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/02/20)
はじめに
みなさんご存知でしょうが、1/21の禁止改定によりモダンで《クラーク族の鉄工所》が禁止されました。このデッキの消失には非常に悲しみましたが、妥当と言えるでしょう。私はアイアンワークスをプレイし、改良し続けていましたが、これもこのデッキが他と比べて非常に強力だと確信していたのが理由ですしね。
デッキ選択の話になりますが、私は自分が偏見を持たないタイプ……ではまったくないと確信しています。強力かつ積極的なデッキに大きく惹かれ、中でも変わった、特殊な挙動を思いもよらぬ方法で悪用していれば、なおよし。私は一般に純正のコントロールやクリーチャーによるアグロデッキではなく、このようなデッキを楽しんでいます。
プロプレイヤー兼マジック・プロリーグのメンバーとして、勝利を優先すべきなのですが、その中でも可能な限りコンボデッキで勝ちたいものですね。これこそ、私にとってモダンが最高のフォーマットである所以です。悪く言われがちなフォーマットですが、私は明らかにそれを楽しんでいるのですから。
今までマジックをプレイしてきて、モダンこそ私がもっとも実力を発揮できるフォーマットだ、と常に考えてきました。アミュレット・ブルームを不健康なくらいMagic Onlineで回したのが競技マジックへの第一歩でしたし、《ギタクシア派の調査》が禁止されるまではSuper Crazy Zooをメインウェポンとして使い、《発明品の唸り》・《洞察のランタン》デッキの発展にも寄与してきました。1年前、ルイス・サルヴァットがプロツアー『イクサランの相克』で優勝したデッキですね。また、私のグランプリTOP8はすべてモダンでのものです。
まとめて見てみると、私は強力かつ禁止されうるコンボデッキを見極めるコツをつかんでいると言えるでしょう。今回皆さんに伝授するのは、このように力を注ごうと思えるデッキを見つける方法です。
1. 積極性・速いキルターン
多くのプレイヤーやライターの間にこんな噂があります。積極的なデッキを使えば、よりモダンで結果を残せるようになるだろう……と。モダンの歴史において、コントロール・ミッドレンジの流行や結果は浮き沈みしていますが、めったに、そして一般には倒すべきデッキとみなされることはありません。
とりわけ、私の愛するアーキタイプ:ランタンコントロールがついに失墜したのも同じ理由です。もはや競技レベルでの構築イベントにおいて選択肢には挙がらないと思っているのですが、これも本質的には対応するデッキであることにつきます。ある時点では《写本裁断機》と《洞察のランタン》によるロックは素晴らしく、どのデッキにも通じる回答でした。ですが新カードやアーキタイプがモダンで増加するにつれ、スロットが足りないように思うものの、当たりうる相手全てに対応できるほどのスペースがないのです。
3、4ターン目に勝てないのであれば、それが可能なデッキよりも多く解答を用意する必要が出てきます。これはモダンのようにカードプールの広いフォーマットでは間違いなく厳しいことでしょう。
積極的かつ速いデッキを使えば、どんなデッキにも相性がそこまで悪くなることはないですし、モダンではよくあることですが、驚くようなローグデッキに当たってもいいポジションにつけます。《瞬唱の魔道士》・《謎めいた命令》デッキや《ヴェールのリリアナ》を用いたミッドレンジをモダンで使おうと思わないのはこれが理由ですね。
2. 複雑かつ直感的でない挙動
おかしな、大げさなことに聞こえるかもしれませんね。ですが、もし新たなデッキがとんでもない可能性を秘めてるかどうか試すのならば、これは間違いなく悪くない試金石になるでしょう。
完全にスパイクとしてこのフォーマットに接し、デッキを選ぶ際に広きにわたり調整するような人はほとんどいません。もし馬鹿げていたり、プレイが難しかったり、また単に不安定なように見えるデッキがあるとしたら、みなそれを使うのを思いとどまるでしょう。これが原因で、本当は強いデッキがかなり長い間気付かれず、誤解されたままになる可能性があるのです。
「もしこのデッキが十分強いなら、誰かが既に結果を出しているだろう」と考えるのは簡単ですが、これは事実ではないと証明されてきています。
《花盛りの夏》が禁止される前、アミュレット・ブルームはとんでもないデッキでしたが、ジャスティン・コーエン/Justin Cohenがプロツアー『運命再編』の決勝に進出するまで世間一般には知れ渡っていませんでした。2ターンキルと、終盤の《トレイリア西部》による柔軟な連鎖をこのデッキがいかに併せ持っているのかを。
また、ランタンコントロールは多くのプレイヤーが避けるような方法でゲームを進めるデッキです。《クラーク族の鉄工所》のマナ能力を用いたループは多くの人々の頭を悩ませましたし、オンラインでプレイするのは容易ではありませんでした。このような要因はプレイヤーを遠ざけ、それにより露出も減り、このデッキに取り組む労力も減ります。こういった理由で、最適なリストが導かれるのが非常に遅くなるのです。もちろん、これらはデッキの潜在能力への指針にすぎず、前提ではありません。ですが、手に負えないデッキといえどもその存在を忘れてしまってはいけませんよ。
私は長きにわたり、初期の《発明品の唸り》プリズンのデッキパワーを信じておらず、わざわざそれを試すなんてこともせずに変わったデッキ構築のチョイスに辟易してもいました。ですが1年以上、基本的にたった1人のMagic Onlineプレイヤー……susurrus_mtgの調整により、いまや実績があり高く評価されるアーキタイプに昇華されたのです。
《発明品の唸り》プリズンについては、もう一つ重要な点が浮かび上がってきます。強力にもかかわらずゲームプレイ外の理由であまり人気のないデッキというのは、サイドボードで大きな利益を得られるのです。
ここでは、サイドに取られる対策カードのトップメタに対する少なさ・相手のサイドボードに生じさせる歪みの両方について話そうと思います。
プリズンは非常に強力なデッキであり、ロックに持ち込むアーティファクトと、たくさんの《溶接の壺》・《呪文滑り》に《虚空の杯》を採用しているため、《弧光のフェニックス》デッキに対しての相性が非常によくなっています。
このデッキの特徴的な点は、一般に《オパールのモックス》デッキに対して投入されるサイドカードでもあまりその役割を果たせないという点です。最初は《溶接の壺》の壁に突き当たるため、《古えの遺恨》・《削剥》・《石のような静寂》が望むような結果を得られないのと同様、《自然の要求》ですらしばしばサイドインするべきカードではなくなります。ですが、《粉砕の嵐》のようなクリティカルなカードをサイドに入れれば、《発明品の唸り》プリズンに対する勝率を上げることができるでしょう。
出る杭は打たれるといいますが、この事実が《発明品の唸り》プリズンの人気に蓋をしています。今モダンで使うには素晴らしいデッキだと思っていますよ。もし注目を集めすぎてしまった時には、この船から逃げ出す覚悟を持つ必要がありますけどね。
3. 固有の柔軟性
結果を出してすぐ、しばらくの間を調整に費やし、結局全く大したものではないと分かったデッキがあります。グリセルシュートです。このデッキは2015年に生まれました。一目見たときは非常に恐ろしかったですね……。コンボの始動方法が複数あり、さらに2ターンキルの可能性もある。言うことなしじゃないですか?
ですが、様々な理由からこのデッキは今やただのローグデッキで、禁止されることもありませんでした。いったいなぜこのデッキは落ち込んだのか、学ぼうと取り組んでいた時もありました。そしてある時、グリセルシュートは柔軟性が非常に低い、ということを理解したのです。
デッキに必要なコンボパーツの枚数を考えると、間違いなく多くても18枚は死に札があることになります。これらはそれぞれシナジーがあることもありますが、全部ではないですね(余った《グリセルブランド》は《滋養の群れ》のコストにできない・《御霊の復讐》は《世界棘のワーム》を対象に取れない)。《信仰無き物あさり》プランと、リソースが大事な《裂け目の突破》プランが構造上矛盾しているという点もあります。
アミュレット・ブルームの持つ普通のランププラン、アイアンワークスの《練達飛行機械職人、サイ》によるフェイントを考えてみてください。グリセルシュートは今までの構成のまま改善しようとするのではなく、大きな投資をし、成功することを祈る必要があります。モダンの対策カードは非常に強力なため、相手が引かないよう祈り、その通りに回避し続けるなんてことはありません。いいサイドボードプランが見つからなければ、グリセルシュートはいい結果を残すことはできないでしょう。
《発明品の唸り》プリズンがアーティファクト破壊に対する耐性を自然に持っているおかげで、勢力を増している話を先程しました。プリズンデッキが他と違うところは、最初の項目を必ずしも満たしてはいないということです。つまり、早く勝つデッキではない、ということですね。《発明品の唸り》プリズンに対する《粉砕の嵐》はアミュレット・ブルームに対する《血染めの月》のように強力なサイドカードです。そのアミュレット・ブルームはありえない速さで勝利することもできたため、対策カードに対しても戦えるデッキでしたが……。
これを念頭に置くと、《発明品の唸り》プリズンがデッキパワーを下げるために禁止されるとは思いませんね。不条理な新カードを刷られることはあるかもしれませんが。
以前「コンボを体に叩き込め!アイアンワークスデッキガイド」で述べた通り、素晴らしいサイドボードプランはデッキパワーを急上昇させます。アイアンワークスに真に尽力したのは、《練達飛行機械職人、サイ》の加入がどれだけ大きな変化だったのかを実感してからです。もし《練達飛行機械職人、サイ》が印刷されなければ、《クラーク族の鉄工所》が禁止されることはなかったでしょうね。1ゲーム目の勝率が高く、サイドボードも素晴らしい。こんなデッキは滅多にない、まさに天からの贈り物ですね。大切にしましょう!
スロットマシンについて
We just 5-0'd with this on my stream, should have banned Mox Opal and Stirrings dear wotc pic.twitter.com/bY2Zxpl60K
— Piotr Głogowski (@kanister_mtg) 2019年2月15日
訳:配信でこのデッキを使い、先程5-0しました。親愛なるウィザーズよ、《オパールのモックス》と《古きものの活性》を禁止するべきでしたね。
先週、私は「実質的にアイアンワークスの魂を受け継いでいる、このデッキを試してみてくれ」と視聴者に説得されました。結果はこのツイートの通り。多少話題を呼ぶことになり、従来は安価に手に入った《類似の金床》も一夜にして10ドルを超えるカードになりました。
より派手にしたかったのでどう見ても大げさにツイートしましたが、最初の節で述べたことを念頭に置いてこの構築をちゃんと見てみましょう。
このコンボデッキの最も簡単なゴールは《類似の金床》・《研磨基地》と2枚の《マイアの回収者》を揃え、ループで相手のデッキを削りきることです。削りきれない場合は《黄鉄の呪文爆弾》のループも組み立てられますが、こちらは少し複雑ですね。
これらのパーツの間には多くの柔軟性があります。《類似の金床》を置いてすぐに《研磨基地》を置けるため、そのまま続けて《彩色の星》や《テラリオン》・《胆液の水源》をサイクリングすることができます。手札に《マイアの回収者》があったならまずは自分のライブラリーを削り、墓地からもう1枚の《マイアの回収者》を回収できるようにしましょう。
まだこのデッキでの試合数は非常に少ないということを肝に銘じても、メインボードではかなり強力なデッキのように思えます。モダンに存在する多くのアーキタイプに追いつく準備はできていますよ。
ではこのデッキには耐性があるのか?ここが面白いところです。
コンボの核は墓地対策・《外科的摘出》・アーティファクト破壊・《石のような静寂》・打ち消し呪文のどれにも弱く、そのうえ《類似の金床》はカードを1枚手札から追放する必要があるので、手札破壊に対してもパッとしません。これではコンボデッキとして、いい予感はしませんね。
私は最初のリーグでアグロ・ミッドレンジ・コントロールに当たった時、これらの妨害を避けるために、アイアンワークスの経験を生かしてコンボから変形するサイドボーディングを行いました。全部、あるいはほぼすべての《類似の金床》・《研磨基地》を抜き、《練達飛行機械職人、サイ》・《ウルザの後継、カーン》・《ギラプールの霊気格子》と妨害を用いたアーティファクトコントロールになるのです。多くの対策カードをサイドインしてデッキを薄めた相手を咎めるため、この戦略が効果的なのは証明されています。
このデッキがわずかに苦戦するような相手は、こちらの中盤の脅威をたやすく乗り越えるプランがあり、過剰にサイドインすることなくこちらの展開をシャットアウトできるようなデッキです。《削剥》と《差し戻し》が入っているストーム・《自然の要求》と《外科的摘出》が少し入っているトロン・墓地に落とすために《古えの遺恨》を入れているドレッジを考えてみましょう。デッキの実力が本物かどうか確信をもつには、今お話ししたような弱点の解決・相性の改善を図る必要があると考えています。
このデッキはまだ発明されて間もないため、また別のアプローチを試したいと思っています。
最後に
さあ以上を踏まえて、新たなアミュレット・ブルームやアイアンワークスを探してみましょう。
今週末、私はミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019に参加します。いい成績を残せるよう、祈ってくださると幸いです。
それではまた今度、お元気で。