Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/03/01)
はじめに
先日開催されたミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019は、調整という点において興味深いものとなりました。マジック・プロリーグが発足したことで、世界でも有数のプレイヤーたちが調整の大部分をTwitchで放送するようになったのです。それは特異な光景であり、プロチームが互いに差をつけるために秘匿してきた従来のやり方とは大きく異なるものでした。つまり、他のプレイヤーの思考・方向性に関して情報を得ることが可能になった、ということですね。
実際のところ、現地に飛ぶ前の火曜日、最終的に登録することになる75枚から1枚しか違わないデッキで配信をしていました。かつてより開けたマジックコンテンツが急増し、私もその流れに乗って最終的なデッキリストを完成させたのです。面白いことに、もし他のプレイヤーのデッキを深堀できていなければ、私も最終的なデッキにはたどり着けなかったでしょう。
しかし同時に、私がたどり着いた結論のなかには、一般的な総意と反するものもあるようです。とはいえ、大会前は今ほどデッキリストに自信があまりありませんでしたし、手になじむ感覚もありませんでしたけどね。では、どうやって私がその境地に達したのか、ご説明しましょう。
デッキリスト
このデッキを使い、私は構築ラウンド8-2、総合成績24位でフィニッシュしました。
1 《島》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
4 《水没した地下墓地》
4 《森林の墓地》
2 《内陸の湾港》
-土地(25)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《培養ドルイド》
4 《正気泥棒》
1 《翡翠光のレインジャー》
3 《人質取り》
1 《エリマキ神秘家》
-クリーチャー(21)-
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《強迫》
2 《渇望の時》
2 《否認》
1 《疫病造り師》
1 《エリマキ神秘家》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《肉儀場の叫び》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード(15)-
もっとも注目すべきは、「探検」カードがほとんど入っていないことです。その代わりにマナクリーチャーを8枚採用しています。
ミシックチャンピオンシップが開催される前、スゥルタイには12枚の「探検」カードが広く採用されていて、私は大きく悩むことになりました。『ラヴニカの献身』が発売された初週、話題を集めていたデッキのなかに赤単がいました。《舞台照らし》や《批判家刺殺》といった強化を受け、実質的にバーンになった赤単は、もはやアグロデッキではなくなっていたのです。となれば、直感的に思いつく対策は、活躍した実績があり、かつメインデッキに入り得るライフ回復源をミッドレンジに試験的に入れてみることです。これは非常に合理的に思えますが、赤単は大きな失速を見せていました。どれぐらいの失速かというと、ミシックチャンピオンシップの前に赤単とのマッチアップを念入りに調整する気などまったくなくなっていたぐらいです。
『ラヴニカのギルド』が発売されてから、スタンダードがいかに変遷していったのかを見てもらえばわかりますが、ゴルガリミッドレンジの強さの多くは《野茂み歩き》から成っていました。しかし、決して必ずしも4枚入るカードではありませんでした。サイドボードだけのときもあれば、数枚しか採用されないときもありました。基本的にはメタゲーム次第で、どれだけ必要とするのかによるのです。昨今は、《マーフォークの枝渡り》・《翡翠光のレインジャー》を4枚ずつ採用するのが当たり前になってきています。しかし、それが当然の結論として受け入れられていることに、私は疑問を投げかけたいのです。
環境で屈指のアグロデッキは、オータム・バーチェット/Autumn Burchettがクリーブランドで栄光を勝ち取った後も、ますます勢力を強めていくでしょう。具体的には青単、次点で白単ウィニーです。環境の当初は大きく期待されたものの、赤単は見る影もなく、劇的に失速しています。《批判家刺殺》と《舞台照らし》は期待にこたえられず、(誰も驚かなかったですが)ミシックチャンピオンシップで赤単はまったく活躍しませんでした。
《野茂み歩き》と「探検」クリーチャーのセットは機能すればアグロデッキに対して有効である一方、先ほど紹介した2つのうち1つのデッキに対しては完璧なカードにはなり得ません。青単と対戦する場合、《野茂み歩き》から《翡翠光のレインジャー》という完璧な動きであっても、多くの条件がつきまといます。どちらも打ち消されないこと、相手の《マーフォークのペテン師》に引っかからないこと、そしてクリーチャーのサイズやライフ回復が実際に重要であること。相手が《執着的探訪》や《大嵐のジン》で攻めてきた場合には、クリーチャーのサイズやライフは必ずしも重要ではありません。
また、白単との1ゲーム目、《野茂み歩き》は単体で《ベナリア史》やその他のクリーチャーに対して有効ですが、「探検」クリーチャーたちは違います。また、サイドボード後に《トカートリの儀仗兵》を《不屈の護衛》や《暴君への敵対者、アジャニ》でサポートするプランは大きな成功を収めているアプローチですし、それに対して「探検」セットで無鉄砲に突っ込んでいくのは賢明だと思えません。《野茂み歩き》にとって一番活躍するのは、Tier2で深く埋もれているデッキたちです。
アグロデッキよりも速度が遅いデッキたちは、《野茂み歩き》を意に介していません。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使ったコントロールデッキはジェスカイからエスパーへと姿を変え、主たる全体除去を《轟音のクラリオン》ではなく《ケイヤの怒り》に頼るようになりました。《野茂み歩き》は単体では無力ですから、上手く使うには「探検」クリーチャーを全体除去に晒さざるを得ません。
《運命のきずな》デッキも《野茂み歩き》の攻撃を気にもとめません。《翡翠光のレインジャー》を唱えた後にドローしてしまった《野茂み歩き》であれば尚更です。ミラーマッチの勝敗は《ハイドロイド混成体》に大きく依存するようになったため、《野茂み歩き》は《ハイドロイド混成体》からドローしても相当みじめなカードです。
私からすれば、総じて《野茂み歩き》が大半のマッチアップでやりたいことに合致しないものであることは明らかでした。そのパートナーである「探検」マーフォークは、ドローを円滑にし、土地を順調に伸ばす確率を最大限高めてくれる利点があります。ですが問題なのは、このデッキにおいては多かれ少なかれバニラクリーチャーになってしまう場面があることです。土地の価値は状況によって変化します。土地の価値が高い場合、「探検」を持つカードはカードアドバンテージを発生させるクリーチャー、あるいは土地を引き込める可能性を高めるマナレシオの高いクリーチャーになります。かたや、土地の価値が低い場合、占術1がついただけの些細なバニラクリーチャーになってしまうのです。結局のところ、これらのカードが《ハイドロイド混成体》の活躍に資するのは間違いありませんが、決して最大限に活かせることはないのです。
『ラヴニカの献身』が出た当初のスゥルタイは、『ラヴニカのギルド』から活躍していたゴルガリに明らかに構築でボムカードである《ハイドロイド混成体》を加えたもので、大きな変化はありませんでした。一番シンプルなアプローチが最善である可能性はなくはないですが、デッキの核となる部分がいくつか変化している点を忘れてはいけません。ゴルガリは基本的に《ビビアン・リード》と彼女を有効に機能させるためのカードたち、というデッキでした。しかし《ハイドロイド混成体》を得たスゥルタイは、今や2つの強力なカードを手にしたのです。《ビビアン・リード》で《ハイドロイド混成体》を探し出し、その《ハイドロイド混成体》で手札を強力なカード、できれば相手を妨害するカードでいっぱいにしたいのです。
注目のカード
「探検」隊がいれば、ゲームを長引かせて《ハイドロイド混成体》を大きなマナで唱えやすくなります。かたや、更に長引いたゲームを重視するアプローチをとりたい場合、私のデッキリストであれば、マナ加速からその状況にいち早くアクセスできる利点があります。主なゲームプランが《ハイドロイド混成体》へ加速することなら、基本的にはバニラである「探検」クリーチャーよりも、遅いターンに強力なカードを入れた方がいいでしょう。このリストの長所としては、多くのマナクリーチャーたちのおかげで自然とマナを伸ばすことができるため、ミラーマッチにおいて《ハイドロイド混成体》を相手よりもスムーズに連鎖できる構造になっているのです。最終的には、私は「探検」パッケージを以下のカードへ入れ替えました。
《培養ドルイド》4枚
最初にこのカードを見たとき「順応」はフレーバーテキストのようなものだろうと思いました。ですが、蓋を開けてみれば、このカードで一番魅力的である部分であり、その評価が変わることはありませんでした。早々に十分なサイズを持つ《ハイドロイド混成体》を出せるようにすること、《アダントの先兵》をブロックできること、青単にマナ差をつけられること、《最終》で巻き込まれないこと、そして2マナ域でありながらトップデッキしても嬉しいこと。そのすべてが重要であり、ミシックチャンピオンシップでも実際に起きたことでした。加えて、《金粉の水蓮》はXマナの呪文と相性がいいですしね。
《培養ドルイド》を使うことによる主な裏目は、《マーフォークの枝渡り》がなし得るようなビートダウンプランを取れないことです。しかし、マナを生み出すという目的であるならば、《培養ドルイド》の方が上だと言えます。
《正気泥棒》4枚
《正気泥棒》も「探検」パッケージを抜いたことで入ることになったカードです。《翡翠光のレインジャー》の枠に取って代わるものであり、ここもミラーマッチで差をつけられる部分になります。中途半端なクリーチャーを、絶対に除去しなければならないクリーチャーに変更するわけですからね。勝利が確定するカードとは程遠いですが、相手に突きつけるプレッシャーやカードアドバンテージを生成する能力は、3マナのカードに要求するものをはるかに上回っています。
個人的に驚いたのは、環境に存在するアグロデッキ2種のいずれにも効果的であることでした。一見すると、守りに入ったときには弱そうに思えるでしょうし、事実、《ショック》で除去されたときには相手に大きなテンポアドバンテージを与えてしまいます。しかし、先ほども言った通り、現在の環境で赤単は鳴りを潜めています。そして、その他のアグロデッキ2種は除去の枚数が少ないのです。
青単に対しては、2/2飛行はブロッカーとして大いに価値があります。白単ウィニーとの対戦では、1ターンに唱える呪文の枚数が継続的に増加し、奪った1マナのカードで盤面を埋めていくことになるため、相手の軍勢を抑え込む効果的な手立てなのです。
驚くべきことに、最初はミラーマッチのためのカードだと思っていたものが、ほぼすべてのマッチアップの改善につながることになりました。《正気泥棒》はアグロデッキに対してはとても弱いカードだと思われていましたが、実際に試してみたところ、決してそんなことはないとわかりました。そのため、あらゆるマッチアップで非常に優秀な軽量の脅威として、採用し続けることになったのです。
《思考消去》3枚
環境初期のころ、《思考消去》はスタンダードでベストカードだ、というライターもいました。ですが、私は単に強いカードだと考えています。《正気泥棒》と同様、直感的にはわかりづらいですが、手札破壊呪文は奇しくも環境に存在するアグロデッキに対して有効だとわかりました。
《思考囲い》の効果は、青単のゲームプランに穴を開ける有用な方法なのです。また、白単ウィニーとの対戦では、でたらめな小型クリーチャーによるビートダウンで負けることは滅多にありません。いつも敗因になるのは、悪さをする強力なカードたちのいずれか、主に《敬慕されるロクソドン》なので、《思考消去》が頼りになります。したがって、手札破壊呪文は、ほぼすべての相手に対して強力な武器になります。
白単ウィニーは違いますが、現在のスタンダードでは、手札を使い切ってトップデッキ勝負になるようなデッキはあまりありません。ですから、《思考消去》が腐って敗北に繋がる機会も抑えられます。たとえば、ミラーマッチにおいて、相手がトップデッキした《ハイドロイド混成体》をすべてのマナを使って唱えてきたとすれば、手札破壊呪文を使えるチャンスが巡ってきます。妨害手段の選択肢が全体的に増加することはいつでも歓迎ですね。土地を伸ばす目的であれば、「諜報1」は基本的に《マーフォークの枝渡り》の「探検」能力の代わりになります。
《エリマキ神秘家》1枚
《エリマキ神秘家》は楽しいから入れているという部分もありますが、ある明確な狙いがあります。ゲーム終盤でも広く活躍が見込めるカードですし、1枚しか採用していないとしても《ビビアン・リード》で見つけ出すことができます。
ライフを狙っていきづらいデッキですから、少なくとも妨害要素をため込んでおける手段があるのは、《荒野の再生》やコントロールデッキに対して大きな意味を持ちます。また、これらのマッチアップの1本目においては、《人質取り》で《エリマキ神秘家》を追放しておく戦略もとれます。
マナベース
ここまで紹介してきたカードを入れようとすると、2つの問題点が浮上します。まず、序盤において盤面を構築する力があまりないこと。そして、マナベースに大きな負担がかかることです。土地の枚数は絶対に25にしたいので、最初から《愚蒙の記念像》を使わないことを意識していました。単色のタップインランドで、チェックランドがアンタップインできないのは許容できません。いずれにせよサイドボードの打ち消し呪文を唱えられるようなマナベースにしたいため、マナベースに《愚蒙の記念像》を入れることには非常に慎重になってしまうのです。
最終的に解決しなかった、最大の妥協点。それは、1ターン目にアンタップインする緑マナソースが若干少なく、《ラノワールのエルフ》を唱えられる確率が低かったことです。1ターン目に使える緑マナソースは10であり、1ターン目に《ラノワールのエルフ》を唱えられる確率はおよそ80%しかありません。そして、そこから《正気泥棒》を唱えるとなると、さらに大きく確率は下がります。ですが、私は1マナから3マナへ加速することよりも、《ハイドロイド混成体》を大きなマナで叩きつけたいという狙いがあるので、1ターン目に《ラノワールのエルフ》を唱えられる確率が低かったとしても、納得がいっています。《培養ドルイド》は、終盤でマナ拘束に苦しむ場面があっても、1ターンに2度呪文を唱えられるサポートをしてくれます。
基本的なゲームプラン
ゲーム序盤に盤面を作る能力が低いため、現状のデッキリストでは多くの相手に対してコントロールの立場になる傾向があります。ダメージレースをする機会はあまりないため、アドバンテージをコツコツとためていくことに意識を向けましょう。
《ビビアン・リード》を守る軽量のクリーチャーが不在であるため、すぐに除去されてしまうのではないか?と危惧する人もいるかもしれませんね。ですが、そのような流れになることは滅多にありません。彼女の大きな魅力のひとつは、その高い忠誠度にあります。なんとパワーが3のクリーチャーがいたとしても、安心してキャストできますからね。よくあるパターンとしては、《ビビアン・リード》を出した次のターンに、その効果によって手札に加えた《人質取り》や《ハイドロイド混成体》で盤面を安定させるという流れです。
序盤の展開力がないという弱点が表面化しやすいのは、《運命のきずな》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》を使うデッキと戦うときです。この弱点を改善しようと、《成長室の守護者》を試してみましたが、あまりにも精彩を欠くマッチアップが多かったですね。ただでさえマナが必要なデッキに、マナが必要なクリーチャーを追加してしまったのです。普通であれば、ここでサイドボードに弱点の埋め合わせをするようなカードを探すのでしょうが、《正気泥棒》がいればゲームに勝つことができます。
「探検」隊を使うべきかどうかの総評ですが、私が単に間違った考えを持っている可能性もあるでしょう。あるいは採用しているデッキリストが多く、《野茂み歩き》に関するポジティブな意見が出回り、多くのプレイヤーが「探検」隊を使うようになってしまっているのかもしれません。確かなことはわかりませんが、繰り返し言っておきたいのは、私が使用したデッキはとてもスムーズに回り、本番に向けた調整に非常に満足できたということです。
ミラーマッチでは1本目からサイドボードをしたような構成になっているので、サイドボードにはアグロやコントロールに対して突き刺さる軽量の妨害カードばかりになっています。概して言えば、このデッキが使用している呪文は環境で最高レベルのものばかりですから、問題になることはほとんどないはずです。
今後の改善点
今後の構成に関しては、サイドボードの《肉儀場の叫び》と《疫病造り師》の枠に、追加の《クロールの銛撃ち》を2枚入れる可能性が高いと考えています。このカードにはよく助けられましたね。クリーブランドで好成績だったスゥルタイのリストで人気のカードでしたし、青単が栄冠を勝ち取ったことも踏まえれば、もっと枚数を多くすべきだったことを示唆しています。
《疫病造り師》は、《ビビアン・リード》で手札に加えられる《ドミナリアの英雄、テフェリー》への解答でしたが、過剰に対策し過ぎていました。《肉儀場の叫び》は白単ウィニーに対しては有効なカードですが、自分自身のクリーチャーも多く巻き込んでしまうため、白単相手にですら疑問が残ります。
更なる変更点として、メインデッキの《秘宝探究者、ヴラスカ》を《殺戮の暴君》にしようと考えています。ミシックチャンピオンシップ前までは避けられてきた1枚ですが、本番では多くのプレイヤーが採用していました。もはやミラーマッチにおける切り札でもないですし、コントロールデッキは《轟音のクラリオン》から《ケイヤの怒り》に切り替えていますが、たった1枚でもその稀有な能力は期待できますから、《秘宝探究者、ヴラスカ》よりも優先して採用すべきでしたね。
1 《島》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
4 《水没した地下墓地》
4 《森林の墓地》
2 《内陸の湾港》
-土地(25)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《培養ドルイド》
4 《正気泥棒》
1 《翡翠光のレインジャー》
3 《人質取り》
1 《エリマキ神秘家》
1 《殺戮の暴君》
-クリーチャー(22)-
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《強迫》
2 《渇望の時》
2 《否認》
1 《エリマキ神秘家》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード(15)-
マッチアップ
ミラーマッチ(「探検」隊を採用したもの)
対 ミラーマッチ
以前まで《喪心》はミラーマッチでサイドアウトされるものでしたが、今では青のクリーチャーが採用されるようになったため、サイドボード後も頼りになるカードとなりました。とはいえ、先手であれば《ラノワールのエルフ》よりもサイドアウトすべきカードでしょう。
《殺戮の暴君》の対処方法としては、《思考消去》、「順応」して3/5になった《培養ドルイド》を含む複数のブロック、あるいは単に《ハイドロイド混成体》でサイズを上回る、といったことが考えられます。しかし、《採取/最終》と合わせて使われた場合には、そう上手くはいかない場面も出てくるでしょう。だからこそ、《殺戮の暴君》が1枚は欲しいという考えになりました。その他の点については、マジックにおけるいつものミッドレンジデッキのマッチアップと同じです。私のリストでは「探検」パッケージのない分、わずかにマナを伸ばし、カードアドバンテージを得ることができる構成になっています。
可能であれば、すべてのマナを注ぎ込んだ《ハイドロイド混成体》を出す前に、《培養ドルイド》を「順応」させておきたいところです。そうすれば、アドバンテージが連鎖していきます。また、《思考消去》を使えば、序盤で相手のテンポを奪い、《正気泥棒》やプレインズウォーカーで勝ち切るプランが成立します。ただ、それ以外の場合には《ハイドロイド混成体》を巡る戦いに向けて捨てさせる手札を考えるべきです。《人質取り》や《採取/最終》、あるいは《ハイドロイド混成体》自体を選んでもいいでしょう。
エスパーコントロール
対 エスパーコントロール
ここ最近の典型的なコントロールとミッドレンジが対戦した場合、1本目は、ミッドレンジ側が十分に盤面を展開する前に、エスパーコントロールが《ドミナリアの英雄、テフェリー》で勝つパターンが多く、サイドボード後の2戦はミッドレンジが制します。私のデッキリストの場合は、《正気泥棒》がいるため、1本目も勝つことが可能です。
《クロールの銛撃ち》をすべてサイドインするのは、序盤のクリーチャーとして期待しているのと、相手の《正気泥棒》に困ることが減るからです。エスパーがサイドインしてくる《人質取り》が厄介になることもありますが、《喪心》はあまり残したくありません。上記のサイドボーディングでも《ヴラスカの侮辱》・《暗殺者の戦利品》・《軽蔑的な一撃》・《エリマキ神秘家》・《思考消去》といったカードがあるので、十分に対策ができているはずです。サイドボード後はクリーチャーの枚数が17枚まで減ってしまい、《ビビアン・リード》でクリーチャーを手札に加えられないこともあると思いますが、土地が手に入るのであればまったく問題ありません。
《アズカンタの探索》の破壊よりも優先される事項はあまりありません。変身してしまうと、あっさり負けてしまう可能性がありますからね。コントロールを使うプレイヤーにとって、ミッドレンジとの相性がよいと考えることが定石になっているようですが、私はスタンダードにおいて簡単に搾取されてしまうような戦略を使う側に決してなりたくはありません。
白ウィニー
対 白ウィニー
先ほどお話した通り、《正気泥棒》は白ウィニーに対して驚くほど活躍します。調整段階では、白ウィニーを使うプレイヤーが私のデッキを「探検」入りだと勘違いし、《トカートリの儀仗兵》をサイドインしてくることも多かったです。こちらにとって一番の懸念が《敬慕されるロクソドン》なので、相手が《トカートリの儀仗兵》を使ってくれるのはありがたいことでした。
ミシックチャンピオンシップでは白ウィニーと2回対戦し、1度負けました。それはマックス・マクビーティ/Max McVetyとの一戦で、彼は見事に《トカートリの儀仗兵》をサイドインしていなかったように思います。結果的に《敬慕されるロクソドン》にやられてしまったのです。その他に対戦した白ウィニーの相手は、1本目を勝利したものの、2本目も3本目も1/3の能力なしのクリーチャーのおかげで展開が遅くなってしまっていました。不思議なものですね。相手がこちらのデッキリストを知り、それらを十分に踏またサイドボードをしてきた場合に、「真の」マッチアップとなり、こちらにとっては厳しい戦いになり得るのです。
ミシックチャンピオンシップでは手札破壊呪文をサイドアウトしてしまいましたが、《思考消去》は《敬慕されるロクソドン》への最善の対策です。小型のクリーチャーであれば対処できますし、ゆくゆくは大きな《ハイドロイド混成体》を唱えられます。《思考消去》をサイドアウトしたのはミスだったと思いますし、今後は残すことになるでしょう。
青単
対 青単
勝ち筋がダメージレースになることはまずあり得ず、相手にマナ差をつけ、1ターンに複数の呪文を唱えることで勝利を目指します。総じて青単が優秀なのは、他のデッキに比べてマナコストが断然低いからです。マナクリーチャーがいれば、こちらも複数の呪文を唱えられるので、相手と同じ土俵に立てることになります。余裕があるときに《培養ドルイド》を「順応」しておくと、有効なケースが多いですね。そこから巨大な《ハイドロイド混成体》を唱えたり、手札破壊を唱えてから除去を1~2枚使ったりするわけです。
気をつけたいのは《幻惑の旋律》ですね。ミシックチャンピオンシップが開催される前までは、オンライン上でメインデッキに採用されているデッキリストをほとんど見かけませんでしたが、今となってはメインデッキに1枚採用する傾向にあります。スゥルタイにとっては向かい風です。
《培養ドルイド》でマナ加速できたりするので、《ビビアン・リード》は青単に対しても悪くないと思います。同様の理由から、《殺戮の暴君》も有効ではないカードだと言い切れる自信がありません。
《人質取り》は扱いにくい場面があります。このクリーチャーが着地する前に、相手の唯一のクリーチャーに《潜水》を使われてしまうと、自分がコントロールしている他のクリーチャーを追放しなくてはならないのです。逆に、相手のクリーチャーの追放ができて、大きな《ハイドロイド混成体》を唱えられたら、勝てるでしょう。青単との相性は判断しづらい面があります。初めて青単を使ったプレイヤーと比べ、熟練の青単使いにはなかなか勝てないですからね。
シミックネクサス
対 シミックネクサス
サイドボード後に残す除去をどんな組み合わせにするのかは難しいところですね。ただ、《生体性軟泥》に対して弱すぎる構成にはしたくありません。そこで活躍してくれるのは《思考消去》・《軽蔑的な一撃》・《エリマキ神秘家》です。また、《ビビアン・リード》で解答を見つけられるように《人質取り》を少なくとも1枚残しておくのは理に適っています。
相手のキーカードは《アズカンタの探索》です。このエンチャントが場に残って変身してしまわない限り、妨害を使っていけば相手を封じることができるケースが非常に多いはずです。ぜひとも《アズカンタの探索》は破壊しましょう。変身を早めないためにも、ときには《正気泥棒》で攻撃しないことも視野に入れます。《培養ドルイド》がいれば、奪った《運命のきずな》を唱えることも夢ではありません。
終わりに
記事の最後に総評しておきましょう。再三お伝えしている通り、この構築にはとても満足していますし、記事内で提案した変更点さえ踏まえてもらえれば、今後もこのデッキリストをおすすめできます。今回紹介したような、守備的なミッドレンジがお好きな方には、特に試していただきたいですね。採用しているカードも強く、目立った弱点もない、そしてとても楽しいデッキに仕上がっています。
それではまた。