みなさんこんにちは。
ミシックチャンピオンシップがアメリカのクリーブランドで開催され、日本勢からは井川 良彦選手がプレイオフに入賞しました。
準々決勝で最悪の相性とされていたSimic Nexusを駆るMichael Bonde選手とのマッチで勝利し、準決勝でも殿堂プレイヤーのLuis Scott-Vargas選手とのマッチで見事に勝利しました。決勝戦ではMono Blue Tempoを使うAutumn Burchett選手相手に善戦の末敗れ惜しくも優勝は逃したものの、準優勝という素晴らしい成績を残しています。
さて、今回の連載ではそんなミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019の入賞デッキを見ていきたいと思います。
ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019
Mono Blue Tempoマスターが初のミシックチャンピオンシップを制する
2019年02月22-24日
- 1位 Mono Blue Tempo
- 2位 Esper Control
- 3位 Mono Blue Tempo
- 4位 Izzet Drake
- 5位 Mono White Aggro
- 6位 Simic Nexus
- 7位 Mono Blue Tempo
- 8位 Mono Red
Autumn Burchett
トップ8のデッキリストはこちら
ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019を制したのは、今大会直前に開催されたSCGO Dallasやグランプリ・メンフィス2019でも結果を残し続けていたMono Blue Tempoでした。
プレイオフにはLuis Scott-Vargas選手、Reid Duke選手 、Marcio Carvalho選手といったプレイヤーが勝ち残っており、タレント揃いのトップ8となりました。
トップ8に残ったデッキはMono Blue Tempo、Esper Control、Izzet Drake、Simic Nexus、Mono White、Mono Redと多種多様なアーキタイプが活躍しています。
ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019 デッキ紹介
Mono Blue Tempo
今大会見事に優勝を果たしたAutumn Burchett選手はストリーマーとしても精力的に活動しており、Mono Blue TempoやDelver系などテンポデッキのエキスパートとしても知られています。
高額なパーツが少ないのでデッキを組みやすく、MTGアリーナでも人気のあるデッキの一つです。
Esper ControlやSimic Nexusなどに強く、《執着的探訪》を付けたクリーチャーでアドバンテージを取りながらビートダウンしていく戦略は強力です。しかし、Mono WhiteやMono Redなどアグロデッキとのマッチアップでは苦戦を強いられ、特に同型戦はプレイングの難易度が高めです。
☆注目ポイント
Autumn Burchett選手がメイン、サイドと合わせて3枚(Reid Duke選手は4枚)採用している《本質の把捉》は、クリーチャーデッキが大半を占める現環境では優秀な確定カウンターとして機能します。このデッキにとって厄介な《ゴブリンの鎖回し》や同型戦でキーとなる《大嵐のジン》をカウンターしつつクロックを強化します。
《霧まといの川守り》と《航路の作成》の枚数が減り、《幻惑の旋律》や《否認》といったカードがメインから採用されています。《潜水》もフル搭載されており、これにより《執着的探訪》による必殺パターンを成立させやすくなっています。
《幻惑の旋律》はアグロデッキとのマッチアップでキーとなるスペルで、サイド後はほかのアグロデッキとの相性がかなり改善されます。
Mono Redとのマッチアップでは《波濤牝馬》を投入し、相性の改善を図ります。0/5と固いので火力で除去しづらく、地上をきっちりと止めてくれます。《狡猾な漂流者、ジェイス》は、Esper Controlとのマッチアップで処理されにくい追加の脅威となります。
Esper Control
3 《喪心》
1 《渇望の時》
1 《否認》
3 《吸収》
3 《屈辱》
2 《肉儀場の叫び》
3 《薬術師の眼識》
3 《ケイヤの怒り》
3 《ヴラスカの侮辱》
2 《アズカンタの探索》
1 《最古再誕》
1 《ウルザの後継、カーン》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
Esper Controlは、Simic Nexusを除いた環境の多くのデッキと互角以上の勝負ができるデッキとされています。
メインにクリーチャーを採用していないため、相手の除去が腐り疑似的なアドバンテージを得ることができます。
☆注目ポイント
井川選手のリストは、多くのリストでメインからフル搭載されていた《ケイヤの怒り》が3枚に抑えられており、サイドに採用されていることが多い《肉儀場の叫び》がメインから採用されています。単色のアグロデッキとのマッチアップでは、《ケイヤの怒り》よりも軽く色拘束も緩い《肉儀場の叫び》が使いやすく、《アダントの先兵》を処理することができます。メインから採用されている《渇望の時》も《アダントの先兵》やMono Redに有効で、アグロデッキを意識していたことが分かります。
Esper Controlにはメインのフィニッシャーとして《変遷の龍、クロミウム》が採用されていることがありますが、井川選手は《ウルザの後継、カーン》を選択しています。4マナと軽く、多くのマッチアップで活躍するカードです。そのほか、コントロール同型やSultai Midrangeに強い《最古再誕》がメインから採用されています。
サイドには見慣れないプレインズウォーカーも採用されています。《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は、Mono Redとのマッチアップでは時間稼ぎになり、墓地対策も兼ねているのでIzzet Drakeとのマッチアップでも活躍します。「-1」能力は、小型クリーチャーを多用するMono Blue Tempoに有効な対策として機能します。
サイド後は《正気泥棒》や《人質取り》、《黎明をもたらす者ライラ》などのクリーチャーが投入されます。《正気泥棒》は多くのEsper Controlがサイドに4枚採用しており、Simic Nexusとのマッチアップではこのクリーチャーを着地させればゲームをかなり有利に進めることができます。Mono Blue Tempoとのマッチアップでも、小型の飛行クリーチャーに対するブロッカーとして機能します。《人質取り》はSultai Midrangeなどが使う《ハイドロイド混成体》に対する回答になります。
Simic Nexus
4 《成長のらせん》
4 《根の罠》
3 《一瞬》
3 《悪意ある妨害》
4 《薬術師の眼識》
1 《予知覚》
4 《運命のきずな》
3 《アズカンタの探索》
4 《荒野の再生》
-呪文 (34)-
3 《アゾカンの射手》
2 《生体性軟泥》
2 《否認》
2 《押し潰す梢》
1 《僧帽地帯のドルイド》
1 《ハイドロイド混成体》
1 《原初の潮流、ネザール》
-サイドボード (15)-
前週に開催されたグランプリ・メンフィス2019で原根 健太選手が使用し、プレイオフに入賞していたことでその強さは認識されていた《運命のきずな》デッキ。今大会でも勝率が高かったデッキの一つでした。
環境で最も壊れたカードの1枚と評価されている《荒野の再生》によって大量のマナを生み出し、《運命のきずな》を連打して巨大な《ハイドロイド混成体》でゲームを終わらせます。
このデッキの存在自体がほかのデッキのサイドボードの構成に影響を与えており、《否認》や 《強迫》といった妨害スペルを用意することは重要です。
☆注目ポイント
《荒野の再生》を引き当てるために、デッキ内には《成長のらせん》や《アズカンタの探索》、《薬術師の眼識》などドロースペルやライブラリー操作が多数搭載されています。
《悪意ある妨害》や《一瞬》は時間を稼ぎつつデッキを掘り進むことができるので、このデッキの方向性にマッチしています。青緑という構成上クリーチャーを除去する手段に貧しいので、メインは《根の罠》で延命しつつ《運命のきずな》までつなげていきます。
除去が少ないことがこのデッキの弱点で、相手の妨害が増えるサイド後のゲームはメインと一転して難しくなります。サイド後は追加のフィニッシャーとして《生体性軟泥》やマナクリーチャーの《僧帽地帯のドルイド》、《培養ドルイド》が追加されます。
《アゾカンの射手》はMono Blue Tempoを含めた単色のアグロデッキとのマッチアップで活躍します。《生体性軟泥》はマナが大量に出るこのデッキでは毎ターントークンを生み出すことが可能で、速やかにゲームを終わらせてくれます。
《押し潰す梢》はMono Blue Tempo以外にも、《正気泥棒》や《アズカンタの探索》対策としてEsper Controlとのマッチアップでも使えます。
Merfolk
5 《島》
4 《繁殖池》
4 《内陸の湾港》
4 《手付かずの領土》
-土地 (22)- 4 《水底の生術師》
4 《翡翠をまとう者》
4 《クメーナの語り部》
4 《深根の精鋭》
4 《マーフォークの霧縛り》
4 《銀エラの達人》
2 《マーフォークのペテン師》
4 《オラーズカの暴君、クメーナ》
-クリーチャー (30)-
スタンダードラウンドを8-2と優秀な成績で終えた殿堂プレイヤーのRaphael Levy選手はMerfolkを使用していました。
Merfolkは今まで目立った活躍がありませんでした。しかし、『ラヴニカの献身』から《水底の生術師》、《孵化+不和》といった新戦力を獲得し、《繁殖池》の再録によってマナ基盤が安定したことで結果を残すに至りました。
☆注目ポイント
《銀エラの達人》は、モダンやレガシーのMerfolkでも活躍している優秀なクリーチャーです。下環境ほどではありませんが、スタンダードにも《マーフォークの霧縛り》というロードクリーチャーが存在し、打点を底上げしてくれます。
《オラーズカの暴君、クメーナ》は、このデッキの要となるクリーチャーです。3つの起動型能力を状況によって使い分け、勝利を目指します。
《水底の生術師》はこのデッキの新戦力で「順応」はフラッド防止にもなります。《孵化+不和》は優秀なサーチスペルとして機能するだけでなく、このデッキが苦手とする《再燃するフェニックス》を除去できる手段にもなります。
単体除去には《深根の水域》や《オラーズカの暴君、クメーナ》、《銀エラの達人》などアドバンテージが取れるカードに恵まれているので耐性がありますが、スイーパーは厳しくなります。Mono Blue Tempoと同様に高額なパーツが少ないので組みやすく、プレイしていて楽しいデッキなのでお勧めです。
総括
環境トップだと思われていたSultai Midrangeは、Mono Blue TempoやSimic Nexusなどの台頭により、母数の多さに反して上位に残ったのは少数でした。
Mono Blue TempoとSimic Nexus、Esper Controlは安定した成績を残しており、今後もよく見ることになりそうです。メタがある程度まで固まってきた感はありますが、Merfolkなどトップメタ以外のデッキも活躍しており、現環境のスタンダードには、まだまだ研究の余地がありそうです。
以上USA Standard Express vol.142でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
この記事内で掲載されたカード
Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。