Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/03/12)
はじめに
やぁみんな!アメリカから帰国したよ。
みんなはもう知っているかもしれないけど、俺はアゾリウスアグロを使って、ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019でトップ8に入ったんだ。今回は、本番に向けて、俺がどうやってデッキを選び、そして何を思い、夢見たのかを話そう。
デッキに求める条件
調整の初期段階から、構築で使うデッキには求める条件があった。それは”青単の脅威”と《運命のきずな》を使った、いわゆるネクサスデッキに打ち勝てることだ。そして同時に、スゥルタイにも互角に渡り合えることも条件のひとつだった。あの手のミッドレンジは、メタゲーム上で十分に優位でなくても、好き好んで使う層が一定数いるからね。
ミシックチャンピオンシップに参加するに当たって、個人的な鉄則がある。それは、自分だけがなんでもできるだなんて思わないことだ!マジックは大きく発展を遂げてきたから、世の中には情報が溢れかえっている。知識は平等に与えられていて、ほぼすべてのテクニックを誰しもが使える。そう考えた場合、相手の動きに対応する立場になりたくない。俺が望むのは能動的に動けるデッキだ。何度も何度も脅威を盤面に投げつける立場でありたい。
情報化した現代において、受動的なデッキ、コントロールデッキをミシックチャンピオンシップで使うのは本当に困難だ。予想されるメタゲームに対して的確な解答を使ったデッキリストにしなければならないからね。もし少しでも構築を間違えれば、デッキは紙束になってしまう。しかし、この理屈は能動的なデッキには当てはまらない。最終的に相手を倒せばいいだけだからね!
ミシックチャンピオンシップに向けた調整
ここまでの条件を踏まえ、ミシックチャンピオンシップに向けて選択肢は2つに絞られていた。ひとつは、無難なスゥルタイ。そしてもうひとつは、俺が一番好きなデッキ、青をタッチした白単ウィニーだ!
《拘留代理人》
白単を調整し始めた段階では《拘留代理人》を採用していた。結果、ミラーマッチではとても頼もしいものの、青のカードをメインデッキに入れたくないと感じた。マナベースの点から、手札を効率よくすべて使っていくという長所を損なう可能性があるからだ。
《不可解な終焉》
デッキ登録の締め切りが近づくなか、エドゥアルド・ヴィエラ/Eduardo Vieiraという体格のいいブラジル人プレイヤーが白単ウィニーで大成功を収めていた。MTGアリーナのミシックランクで1~2位に入っていたほどだ。カード選択について、いくつか気になることがあったから、俺は彼に尋ねることにした。すると彼は《不可解な終焉》をメインデッキに採用しているらしく、その根拠まで説明してくれた。それはとても理に適っていて、さまざまなマッチアップで抱えていた、いくつかの問題点を解消するものだった。
エドゥアルドの教え通り、俺はメインデッキに《不可解な終焉》を2枚入れる構築にすっかり惚れ込んだ。
《追われる証人》を《アダントの先兵》へ
マイナーな変更ではあるけど、《追われる証人》を2枚カットした。まったく気に入らなかったからね!語弊がないように言っておくけど、《追われる証人》は手札が強いときには素晴らしい働きを見せる。3ターン目に《軍団の上陸》を変身させやすくなるし、《敬慕されるロクソドン》を使った圧倒的な初動を決めやすくなる。
この枠には少し打点の高いクリーチャーが欲しいと感じていたため、そこで俺は《アダントの先兵》を2枚入れることにした。こいつはかつてルイス・フィーゴのような頼れる存在だったが、クリスティアーノ・ロナウドこと《徴税人》が登場し、それと時期を同じくして環境のコントロールの王様がジェスカイからエスパーへと移り変わったことで、時代遅れのカードになってしまった。エスパーには、《アダントの先兵》を容易にさばける除去が豊富だからね。
また、チェルシーFCを彷彿とさせる青単はミシックチャンピオンシップで一大勢力になるだろうと予想していて、そのマッチアップにおいてクリスティアーノ・ロナウドは非常に強力なんだ!
《不敗の陣形》を《暴君への敵対者、アジャニ》へ
そして、デッキ登録までの”ロスタイム”に入ろうかというころ、メインデッキの最後の1枚に悩んでいた。《不敗の陣形》は、おそらくミラーマッチで最強の1枚だが、それ以外のマッチでは……ダメだ。最高のドローになるマップアップもあれば、明らかに残念なカードにもなる、明暗が分かれやすいカードのように思えた。
俺はもう少しデッキにパンチ力と安定性が欲しいと感じていた。そこで、頼りになる《暴君への敵対者、アジャニ》(パウロ・ディバラ)に助けを求めることにしたんだ。この選択を後悔してはいない……ほぼすべてのマッチアップにおいて、予想をはるかに上回る働きを見せてくれたんだからね!!
デッキリスト
ここまで説明した調整をもとに、俺は以下の75枚を最終的にデッキ登録した。
4 《神聖なる泉》
4 《氷河の城砦》
-土地 (20)- 4 《不屈の護衛》
4 《空渡りの野心家》
4 《短角獣の歩哨》
4 《徴税人》
2 《アダントの先兵》
4 《ベナリアの軍司令》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (26)-
サイドボードは、さまざまな種類の対策を取れるようにしてある。
大会レポート
本番の結果がどうだったかって?上出来と言って差し支えないだろうね!
1日目
ドラフト
The easy part is over hot in my wheels 3 0 with this temur deck #2019MC1 #hareruyalatin #dogsareproud pic.twitter.com/y2oyr5Inpq
— Marcio A Carvalho (@KbolMagic) 2019年2月22日
訳:「簡単な部分は終わった。このティムールで会心の3-0だ」
強豪プレイヤーが集う卓に入ってしまったものの、完成度の高いティムールで全勝を収める幸運に恵まれた。
チームでリミテッドについて話し合うタイミングがあったんだけど、そこで俺は「この環境には”神話コモン”が2枚ある」と伝えた。その2枚とは《刃の曲芸人》と、《霜のタイタン》としても知られている《冷気をもたらす者》だ。
俺の戦略としては、「多色カードだからといって、《エアロムンクルス》や《欲深いスラル》、《最後の支払い》を初手でピックすることを恐れない」というものだ。この環境は多色カードがすべてだから、細かい理屈は抜きにして、単色カードは基本的に劣っていると思って信じて欲しい。
もうひとつこのセットには面白いことがある。『ラヴニカのギルド』では、いつもボロスやディミーアなど、何らかのギルドに所属する必要があったけど、今回はそうではない。普段から3色のデッキが大好きという訳ではないけど、今回のセットに限っては、いつもよりも3色になることが多い。もちろん、可能な限りマナベースには配慮するようにしている。俺のドラフトを見たことがある人は知っているかもしれないけど、少し変わったドラフトをしていて、《開門》やギルド門の点数を高く設定しているんだ。
スタンダード
さて、次はスタンダードラウンドだ……。デッキ選択に手ごたえはあったけど、ドラフトで全勝するといつもこんな考えがよぎってしまう。「もしデッキが弱かったらどうしよう?」ってね。人生で最悪の感情ってどんなのか知ってるかい? ドラフトで3-0したとしても、構築で全敗してしまえば、2日目に進出することすら叶わない……そんなの悲しすぎる!
スタンダードの第1回戦(4回戦)の相手は、最大勢力のスゥルタイだった。確か、1ゲーム目に相手は《森》と《内陸の湾港》を出しただけで、呪文を一切唱えなかったんだ。だから俺はてっきり相手がネクサスデッキだと思い、打ち消し呪文を全部サイドインしてしまった。そして、次のゲームの2ターン目に相手が《野茂み歩き》を出してきたとき、俺は口をあんぐりさせそうになった。
でも結果的にはデッキを見誤ったことが災いすることはなかった。あまりにも手札が強く、3ターン目にはクリーチャーが5体並び、それらを「召集」のコストに使って《敬慕されるロクソドン》を唱えたんだ。しかも手札には《否認》があったし、記憶が正しければ相手はダブルマリガンしていたはずだ。
5回戦はミラーマッチで、相手よりも引きが強く、勝つことができた。続く6回戦は、《ハダーナの登臨》入りのスゥルタイを使用するベン・フリードマン/Ben Friedmanと対戦し、ほとんどなす術なく、叩きのめされてしまった。7回戦は、デンマークの巨人、クリストファー・ラーセン/Christoffer Larsenと大接戦の末、運に恵まれた俺が勝利をものにした。もちろん衝撃的だったさ!
ここまでの成績は6-1であり、順風満帆だった。初日の最終ラウンド、勝てば7-1というところだ。しかしそこで立ちはだかったのは伝説のプレイヤー、ジョン・フィンケル/Jon Finkelだった。まぁ、大したことない……よな?
彼のチームメンバーは、全員が青単を選択していた。俺は引きが強い展開が何度かあり、2-0で勝つことができた。これで初日を7-1で終えることができたんだ!!!ヒャッホー!初日はとても楽しかったし、結果にも大満足だった。あとは、しっかりとした食事と睡眠をとって、2日目に備えるだけだ!
2日目
ドラフト
まただ……、また超強力な卓に入ってしまった。ほぼ全員知っているプレイヤーじゃないか!
1パック目の1手目、俺は《ヒレバサミダコ》か《ケイヤの怒り》かという悩ましい選択を迫られる。《ヒレバサミダコ》は、《門の巨像》に次ぐベストアンコモンだ。そのパックにはオルゾフのカードが多く、《ヒレバサミダコ》はシミックで唯一の優秀なカードだった。しかも、同卓のプレイヤーが強豪である場合、全体除去はその価値を下げる。誰一人として、全体除去でお手上げ状態になるようなプレイをしないからだ。そう考えた俺は、すべてのオルゾフのカードをウィリアム・ジェンセン/William Jensenに流し、《ヒレバサミダコ》を選ぶことにした。
それは2パック目に報われることを願っての判断だったが……そう、上手くいったんだ!自分の2パック目からは2枚目の《ヒレバサミダコ》が出たし、その後は《培養ドルイド》、さらには《エリマキ神秘家》が2枚流れてきたんだ。これで2日目のデッキも超強力になり、《野蛮な一撃》や《野生の律動》を使った、赤を少しタッチしたシミックに仕上がった。
6 0 the limited portion i guess crabs beat mythics to a 10 1 score letsss go std #dogsstillproud #hareruyalatin #2019MC1 pic.twitter.com/ozyEZ8OeX0
— Marcio A Carvalho (@KbolMagic) 2019年2月23日
訳:「リミテッドラウンドは6-0。カニは神話レアにも勝てるみたいだ。これで10-1になった。さて、スタンダードラウンドへ行こうか」
2日目のドラフトも全勝を収め、成績を10-1とした。想像がつくと思うけど、驚きを隠せなかったよ。第1回ミシックチャンピオンシップでトップ8が目前に迫っている!
スタンダード
第12回戦、再び手ごわい相手と戦うこととなった。相手の名前はリード・デューク/Reid Duke。彼もまた青単を使用していた。
1ゲーム目は非常に接戦だったけど、かなり上手くプレイできていたと思う。でも《プテラマンダー》の「順応」に必要だった土地を最後の最後でリードは引き当て、手に汗握る一戦で負けてしまったんだ!2~3ゲーム目を取り返した俺は、成績を11-1とした!
第13回戦は、マイケル・ボンデ/Michael Bondeのネクサスデッキと対戦することになった。相性はとてもいいと思うけど、世間で思われてるほどではない。1ゲーム目、俺もかなり強いドローができていたが、マイケルは乗りに乗っていて、圧倒的な強さの前に屈してしまった。2本目、3本目はプレイが冴えわたり、勝つことができた。これで総合成績は12-1。残る3回戦で1回でも引き分ければトップ8がほぼ確定だ!!!
14回戦の相手は井川 良彦であり、もっとも相性が悪い相手のひとつであるエスパーコントロールと戦うことになった。でも、2-1で逃げ切ることができ、これで13-1となった。最後の2戦は、IDをし、予選ラウンド1位でトップ8に入ることになった。これで6度目のミシックチャンピオンシップ/プロツアートップ8となり、直近4回のミシックチャンピオンシップ/プロツアーで3度目のトップ8だ!!このような大きな大会を連続で勝ち続けることができたのは、本当に驚きだ。もちろん運が巡ってきているのはわかっている。だから今のうちにできるだけこの恩恵にあやかりたいものだね。
13 1 locked my 6th Pt top 8 and in my last 4 pro tours played i top 8 3 times running hottt #prouddogs #2019MC1 #Hareruyapros #blessed
— Marcio A Carvalho (@KbolMagic) 2019年2月23日
訳:「13-1で6度目のミシックチャンピオンシップトップ8が確定。そして直近の4回で3回目のトップ8。絶好調だ!」
3日目
準々決勝。相手はイゼットフェニックスを使う、伝説のルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasだ。相性は互角だろうと考えていたが、事は彼の有利に働き、1-3で敗退してしまった。
大会は素晴らしいものになったし、それを取り囲む人々もまた素晴らしかった!優勝したオータム・バーチェット/Autumn Burchettには大きな祝福を!
おわりに
俺はもう少し辛抱する必要があるようだ。チャンピオンになるという栄誉を掴むその時までね。
今回も読んでくれてありがとう。また会おう。