みなさんこんにちは。
来月にレガシーのグランプリがアメリカのNiagara Fallsで開催されます。レガシーのグランプリは開催数が少ないので楽しみですね。
さて、今回の連載ではSCGO Syracuseの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Syracuse
フォーマットを跨いで活躍するサラマンダードレイク
2019年3月2-3日
- 1位 UR Delver
- 2位 Golgari Depths
- 3位 BR Renimate
- 4位 UW Delver
- 5位 UR Delver
- 6位 Grixis Control
- 7位 Mono Red Prison
- 8位 Miracles
Rich Cali
トップ8のデッキリストはこちら
SCGO Syracuseのプレイオフでは、Delver系のデッキが3名勝ち残り、その内1名が優勝と今大会の勝ち組でした。
最近は、MiraclesやUW Stonebladeに強いSneak and Showなどのコンボデッキや、Eldrazi Postといったデッキが数を増やしていたため、それらのデッキに有利なDelver系はよい選択だったようです。
現環境には、《基本に帰れ》や《血染めの月》、《不毛の大地》といったアンチ特殊地形カードが多数存在するため、フェアデッキの多くは2色のバージョンが安定した成績を残す傾向にあります。
SCGO Syracuse デッキ紹介
「UR Delver」「UW Delver」「Miracles」「Grixis Phoenix」
UR Delver
1 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
3 《汚染された三角州》
1 《血染めのぬかるみ》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《プテラマンダー》
4 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (14)-
従来のUR Delverは《不毛の大地》がなく、《僧院の速槍》や《嵐追いの魔道士》と火力を中心にしたバーン寄りの構成が一般的です。しかし今回結果を残したのは、《不毛の大地》や《若き紅蓮術士》、《真の名の宿敵》を採用したGrixis Delverから黒をカットしたようなバージョンでした。《グルマグのアンコウ》の枠には《プテラマンダー》が採用されており、ハンデス枠は《稲妻の連鎖》に差し替えられています。
5位に入賞したAustin Collins選手のように、サイド後《血染めの月》を投入し、EldraziやLands、Grixis Controlなどのデッキに効果的なプランを採用しているリストも見られます。
☆注目ポイント
今大会で見事に優勝を果たしたUR Delverは、『ラヴニカの献身』の新カードを2種類採用した新たなスタイルのデッキでした。スタンダードやモダンでも第一線で活躍している《プテラマンダー》は、レガシーにおいても通用するようです。軽いスペルを多用するこのデッキでは、速い段階から「順応」することが可能です。
《舞台照らし》は、Delver系にとって貴重なアドバンテージカードです。火力スペルを多めに搭載したこのデッキでは使いやすく、レガシーではフェッチランドや《意志の力》などで相手もライフを失うことが多いので「絢爛」を達成しやすいのです。点数で見たマナコストが3なので、《相殺》や《虚空の杯》といったカードの効果に影響されにくいこともこのカードの強みです。
《蒸気の絡みつき》は、このデッキにとって処理が難しい《グルマグのアンコウ》やマリット・レイジ対策になり、「絢爛」の達成にも貢献してくれます。
復権してきたStonebladeの装備品対策として、《無のロッド》が採用されています。また、コンボデッキがよく使う《水蓮の花びら》や《ライオンの瞳のダイアモンド》にも有効な使いやすいサイドボードカードです。《硫黄の渦》は、《梅澤の十手》や《殴打頭蓋》によるライフゲイン対策になり、Miraclesに対しても対処されにくいダメージ減として活躍します。
UW Delver
UW DelverはUR DelverやGrixis Delverと異なり、中速寄りの構成となっています。《稲妻》に代わり《剣を鍬に》を採用できるので、クロックが遅くなる代わりに《グルマグのアンコウ》など高タフネスのクリーチャーを処理しやすくなっています。
土地が20枚とDelver系の中では多く、《精神を刻む者、ジェイス》もメインから採用されていることから、ロングゲームを想定した構成であることが分かります。
Harlan Firer選手は同様のデッキでSCG Classics Baltimoreでも優勝しており、今大会では同じUW Delverを使用したJacob Haversat選手が似たリストでトップ16という好成績を残しています。
☆注目ポイント
装備品パッケージにより、ほかのDelver系よりも《真の名の宿敵》をより強力なクロックとして運用できるのがこのバージョンの強みです。2色なので《不毛の大地》や《血染めの月》に耐性があり、サイド後は《基本に帰れ》で相手をロックすることもできます。
《天界の粛清》、《封じ込める僧侶》、《議会の採決》などサイドの選択肢が豊富です。《天界の粛清》は、マリット・レイジや《最後の望み、リリアナ》も含めた厄介なパーマネントを処理できる便利な除去スペルです。
《秘密を掘り下げる者》と《剣を鍬に》、《目くらまし》と《精神を刻む者、ジェイス》など一見するとコンセプトが矛盾しているように思えますが、コンボデッキに対しては速いクロックとカウンターがあり、《虚空の杯》デッキに対しては、《石鍛冶の神秘家》や《真の名の宿敵》といった別のクロックを展開できる柔軟性があります。
軽いクリーチャーを搭載しているので、ほかの青白系のフェアデッキと比べるとプレインズウォーカーを処理しやすくなります。このようにUW Delverは、極端に相性が悪いマッチアップが存在しないのが魅力的です。しかしその分環境の理解力が求められるデッキでもあるので、しっかりと練習しておきたいところです。
Miracles
一時期は同型対策として赤をタッチしたバージョンも見られましたが、今回入賞したリストは青白のみとなっています。
Aiden Brier選手のリストは、昨年開催されたグランプリ・リッチモンド2018で優勝を果たしたAndrew Cuneo選手のリストがベースのようで、基本地形10枚、《Tundra》もわずかに1枚です。
☆注目ポイント
《紅蓮破》、《赤霊破》にアクセス可能なタッチ赤は、デッキパワーも上がるので捨てがたいところですが、現在はリスクの方が高く《基本に帰れ》をフル活用することを考えると2色の方が安定します。Aiden選手のリストには《基本に帰れ》がメインから2枚、サイドに追加の1枚が採用されており、相手の行動を制限することを重視しています。
フィニッシャー枠には《僧院の導師》と《精神を刻む者、ジェイス》が、メインから3枚ずつと多めに採られています。《僧院の導師》を展開して相手に処理することを迫り、隙を見せたら《基本に帰れ》で完封するという動きは強力です。
最近Miraclesで採用されるようになった《任務説明》は不採用で、代わりに《瞬唱の魔道士》が3枚採用されています。《任務説明》は《僧院の導師》とのシナジーもあり強力なスペルではありますが、デッキの性質上フェッチランドで《平地》をサーチしてくることも多く、ダブルシンボルの負担を考慮してか採用が見送られています。
Grixis Phoenix
1 《沼》
3 《Underground Sea》
2 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州》
3 《沸騰する小湖》
1 《血染めのぬかるみ》
-土地 (16)- 4 《闇の腹心》
3 《若き紅蓮術士》
4 《弧光のフェニックス》
-クリーチャー (11)-
2 《狼狽の嵐》
2 《外科的摘出》
2 《削剥》
2 《残響する真実》
2 《トーモッドの墓所》
1 《ゴブリンのクレーター掘り》
1 《ラクドスの魔除け》
1 《最後の望み、リリアナ》
-サイドボード (15)-
《弧光のフェニックス》が登場したことにより生まれたGrixis Phoenix。《暗黒の儀式》や《生き埋め》を利用することによって、最速1ターン目から複数の《弧光のフェニックス》を走らせることができます。
《陰謀団式療法》や《思考囲い》で除去や墓地対策スペルを落としておくことで、安全に《弧光のフェニックス》を走らせることができます。相手を妨害しつつ《弧光のフェニックス》を復活させることができるので、ハンデスはこのタイプのデッキの主要な妨害スペルとなります。
☆注目ポイント
《水蓮の花びら》はマナ加速の定番で、1ターン目に《水蓮の花びら》や《暗黒の儀式》から《生き埋め》をキャストし、《弧光のフェニックス》をサーチすることがこのデッキの最高のアクションとなります。
《闇の腹心》と《若き紅蓮術士》は墓地に依存しないので、《虚空の力線》など墓地対策の影響を受けないのが強みで、アドバンテージ源となるクロックとして活躍します。
《陰謀団式療法》は、このデッキで最も重要なカードのひとつです。《暗黒の儀式》からの《生き埋め》というアクション前の安全確認(多くの場合《意志の力》 や《外科的摘出》などを指定)のためだけでなく、自分を対象にすることで手札に来てしまった《弧光のフェニックス》を墓地に落とすという使い方も可能です。《若き紅蓮術士》とのシナジーももちろんあり、特にコンボデッキに対して強力な妨害スペルとして機能します。「フラッシュバック」にマナがかからないので《弧光のフェニックス》のスペルカウントにも大きく貢献します。
サイドには《虚空の力線》や《トーモッドの墓所》などの置物対策になる《残響する真実》や《削剥》、クロックにもなる《ゴブリンのクレーター掘り》のほかに、墓地対策にもなる《ラクドスの魔除け》も見られます。全体的に軽さとフレキシブルさが優先されているようです。
総括
MOの大会で結果を残していたGrixis Phoenixは、リアルの大会の上位でも見られるようになりました。SCGO Syracuseの結果から、《剣を鍬に》や《基本に帰れ》をメインから無理なく入れられるMiracles、UW Delver、Stonebladeは、現環境で最も安定した選択肢となりそうです。
《基本に帰れ》がメインから当たり前のように採用されている現環境では、Delver系はGrixisよりも青赤の2色の方が安定するようです。『ラヴニカの献身』が環境に与えた影響は大きく、《プテラマンダー》と《舞台照らし》を採用したUR Delverが活躍したりと、現在のレガシーはここ数年で最も面白い環境です。
USA Legacy Express vol.151は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
この記事内で掲載されたカード
Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。