みなさんこんにちは。
今週末にはいよいよグランプリ・京都2019が開催されます。ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019からメタがどのように動いたのか、今回の連載では先週末に日本国内で開催された「第13期スタンダード神挑戦者決定戦」の入賞デッキを見ていきたいと思います。
第13期スタンダード神挑戦者決定戦
多様性に富んだ環境
2019年3月16日
- 1位 Mono White Aggro
- 2位 Sultai Midrange
- 3位 Rakdos Aggro
- 4位 Temur Reclamation
- 5位 Esper Control
- 6位 Sultai Midrange
- 7位 Mono Blue Tempo
- 8位 Mono White Aggro
中道 大輔
トップ8のデッキリストはこちらから。
グランプリ・京都2019直前ということで注目が集まった、第13期スタンダード神挑戦者決定戦。参加者は300人以上と大盛況の大会になりました。
プレイオフはSultaiからMono Blue Tempo、Esper ControlやMono White Aggro、《荒野の再生》コントロールなど多種多様なデッキが見られ、特定のデッキが支配することなく様々なデッキが活躍できる環境であることが再確認できました。
第13期スタンダード神挑戦者決定戦・デッキ紹介
「Mono White Aggro」「Mono Blue Tempo」「Sultai Midrange」「Temur Reclamation」
Mono White Aggro
-土地 (20)- 4 《不屈の護衛》
4 《空渡りの野心家》
3 《短角獣の歩哨》
4 《アダントの先兵》
4 《徴税人》
4 《ベナリアの軍司令》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (27)-
白系のアグロデッキはNexus系やEsper Controlなどとの相性の改善のため、打消し呪文を擁する青をタッチしたバージョンが主流でしたが、中道 大輔選手は単色を選択しています。
ショックランドによるダメージは対赤単やミラーマッチで響くため、アグロデッキとのマッチアップが多くなりそうなメタでは、単色の方が安定します。
☆注目ポイント
メインは一般的なリストとそれほど大きな違いは見られませんが、単色にしたことによりショックランドによるライフロス、タップインランドによるテンポロスがなくなり、動きが安定します。
ヘイトベアーの《徴税人》はNexus系やMono Blue Tempo、Esper Controlなどとのマッチアップで特に強さを発揮します。「死後」を持つため除去されても1/1飛行が残り、アドバンテージが取れる優秀な2マナ域です。
単色になったことでカウンターにアクセスできなくなったため、スイーパーに耐性を付けるための《不敗の陣形》がメインから採用されています。自分のメインフェイズにキャストした場合は、「附則」の効果により全体強化されるためエンドカードにもなり得ます。
サイドの《トカートリの儀仗兵》は、旧環境からGolgari Midrangeの《翡翠光のレインジャー》や《貪欲なチュパカブラ》といったETB能力(戦場に出たときの能力)持ちのクリーチャー対策として使われていました。現環境でもそれらのクリーチャーを採用したSultai Midrangeはトップメタの一角で、最近よく見られるようになった《人質取り》や《ゴブリンの鎖回し》対策になることも考慮すると、今まで以上に重要なカードとなりそうです。
サイド後は《黎明をもたらす者ライラ》を投入できるので、Mono RedやMono Blue Tempoとのマッチアップはかなり有利に進めることができます。
Mono Blue Tempo
ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019で優勝したことにより、以前よりも更に人気が増したMono Blue Tempo。現在はSultai Midrangeと並んで環境のトップメタに位置しています。
デッキの強さは証明済みですがプレイングの難易度は高く、ひとつのミスがそのまま敗北に直結することもあります。
Nexus系やコントロールに強く、逆にMono Redなど速いアグロデッキを苦手とします。資産的にも組みやすいこともあり、グランプリでも多く見られそうなデッキなので、このデッキとのプレイテストはしっかりとしておきたいところです。
☆注目ポイント
ミシックチャンピオンシップで優勝を果たしたオータム・バーチェット/Autumn Burchett選手のリストと比べると、《幻惑の旋律》と《否認》がメインから抜け、追加の《霧まといの川守り》と20枚目の土地がメインから採用されているなど、一部のカード選択に微妙な違いが見られます。1マナ域のクリーチャーを増量することによって、僅かですが《執着的探訪》+クロックによる勝ちパターンが成立しやすくなっています。
《幻惑の旋律》はメイン、サイドと合わせて4枚採用されたリストが一般的ですが、齋藤 慎也選手は《幻惑の旋律》の枚数を減量して《排斥する魔道士》をサイドに2枚採用しています。効果は一時的なものですが対象によっては《幻惑の旋律》よりも軽く、特に同型では《執着的探訪》の付いたクリーチャーをバウンスしたり、《幻惑の旋律》で奪われたクリーチャーを取り返すことも可能で、《呪文貫き》に引っかからないのも利点となります。このデッキにとって対処が難しい、《再燃するフェニックス》や《パルン、ニヴ=ミゼット》をバウンスできることも採用する理由の1つです。
Sultai Midrange
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
4 《水没した地下墓地》
4 《森林の墓地》
3 《内陸の湾港》
-土地 (25)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《培養ドルイド》
4 《正気泥棒》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《エリマキ神秘家》
3 《人質取り》
1 《殺戮の暴君》
-クリーチャー (22)-
2 《強迫》
2 《渇望の時》
2 《否認》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《エリマキ神秘家》
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《暗殺者の戦利品》
1 《軽蔑的な一撃》
-サイドボード (15)-
安定した成績を残し続けているSultai Midrange。瀧村 和幸選手のリストはミシックチャンピオンシップの構築ラウンドでPiotr Glogowski選手が8-2という好成績を残したことで知れ渡った型で、Omega Sultaiとも呼ばれています。「探検」クリーチャーの不在、メインから4枚採用された《正気泥棒》などが一般的なリストとの相違点です。
一般的なSultai Midrangeが、軽い「探検」持ちのクリーチャーによるアグロプランも取れるのに対し、Omega Sultaiはコントロール寄りのスタイルになっています。《野茂み歩き》を解雇したことで白系アグロとのマッチアップは少し不利になりましたが、その分サイドにはタフネスが4と固く、置物対策にもなる《打ち壊すブロントドン》や《渇望の時》、《肉儀場の叫び》といった軽い除去やスイーパーが採用されています。《トカートリの儀仗兵》が対策として機能しにくくなるのも、このバージョンの強みです。
☆注目ポイント
追加のマナクリーチャーである《培養ドルイド》は、「順応」することでブロッカーとしても十分に機能する上に、マナ能力も強化されるため《ハイドロイド混成体》とも相性が良いクリーチャーです。
メインからフル搭載された《正気泥棒》は対Mono Blue Tempoでは飛行クリーチャーの攻撃を止める役割を果たし、同型ではカードアドバンテージ源として活躍します。Piotr Glogowski選手は自身の記事でも、「あらゆるマッチアップで非常に優秀な軽量の脅威」と絶賛していました。
- 2019/03/07
- オメガ・スゥルタイ完全攻略ガイド
- Piotr Glogowski
手札破壊呪文である《思考消去》によって、Mono Blue Tempoやコントロールとのマッチアップでは相手のゲームプランを妨害しつつ、必要な土地を探したり中盤以降のドローの質を向上させることもできます。
このようにOmega Sultaiは、一般的な「探検」クリーチャーを多数搭載したSultai Midrangeと異なりアグロプランが取りにくくなる代わりに、よりロングゲームに強くなり、コントロールとのマッチアップでも互角以上に渡り合えるようになっています。お勧めのデッキの一つです。
Temur Reclamation
1 《山》
4 《蒸気孔》
3 《繁殖池》
3 《踏み鳴らされる地》
4 《根縛りの岩山》
4 《硫黄の滝》
3 《内陸の湾港》
-土地 (24)- 2 《パルン、ニヴ=ミゼット》
-クリーチャー (2)-
2 《選択》
2 《中略》
4 《成長のらせん》
2 《一瞬》
4 《悪意ある妨害》
2 《焦熱の連続砲撃》
4 《薬術師の眼識》
4 《発展+発破》
2 《アズカンタの探索》
4 《荒野の再生》
-呪文 (34)-
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《生体性軟泥》
2 《否認》
2 《押し潰す梢》
2 《楽園の贈り物》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
1 《焦熱の連続砲撃》
-サイドボード (15)-
パスカル・メイナード/Pascal Maynard選手がミシックチャンピオンシップで使用していたTemurカラーで《荒野の再生》を用いたコントロールデッキ。ミシックチャンピオンシップの構築部門で8-2という好成績を残していたことで、密かに注目を集めていました。
《荒野の再生》の効果により多くのマナを生み出し、《発展/発破》などを唱えることでカードアドバンテージを得られるため、Sultai Midrangeなどに有利が付けられます。
軽い除去として《シヴの火》やスイーパーの《焦熱の連続砲撃》、フィニッシャーに《パルン、ニヴ=ミゼット》を採用しているため、Mono Blue Tempoに対しても互角以上に渡り合えるのも特徴的です。
☆注目ポイント
このデッキのフィニッシャーとして採用されている《パルン、ニヴ=ミゼット》は特にMono Blue Tempoに強く、メイン戦では1体で勝てる程の強さです。このマッチアップでは、このクリーチャーをキャストするまでに《シヴの火》や《焦熱の連続砲撃》といったスペルで時間を稼ぐのが基本のプランとなります。《焦熱の連続砲撃》はインスタントスピードでのスイーパーで、Mono Blue TempoやMono Redなど、小型のクリーチャーで攻めてくるデッキとのマッチアップで役に立ちます。
《荒野の再生》自身の効果により、《悪意ある妨害》や《否認》といったカウンター呪文が構えやすいのも特徴です。また、《発展/発破》は大量のマナによる《発展/発破》によってカードアドバンテージを獲得することもできる一方、《発展/発破》のモードも相手のカウンターや《思考消去》などのコピーと、様々な場面で使い道があります。
サイドには追加の除去として《溶岩コイル》や《押し潰す梢》などが採用されています。《溶岩コイル》は《再燃するフェニックス》や《大嵐のジン》など、環境の厄介なクリーチャーに対する回答になり、《押し潰す梢》はMono Blue TempoやSimic Nexusなど、多くのデッキに対して有効なサイドカードです。
齋藤 裕基選手はアグロデッキや《荒野の再生》デッキとのマッチアップで活躍する《打ち壊すブロントドン》も採用しています。《楽園の贈り物》は時間を稼ぎつつマナ加速ができるカードで、白系アグロやMono Red相手には重宝するカードです。Pascal Maynard選手のリストでは1枚だけの採用でしたが、齋藤 裕基選手はもう1枚追加で採用しています。
総括
白系アグロはタッチ青も含めてMagic Onlineでも高い勝率を出しており、Mono Blue TempoやEsper Control、Sultai Midrangeと並んで安定した選択となりそうです。
今回の連載でご紹介したTemur Reclamationはミシックチャンピオンシップでも結果を残しており、第13期スタンダード神挑戦者決定戦でも入賞していたこともあり要注目のデッキとなっています。
USA Standard Express Vol.143は以上です。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。