Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/03/22)
はじめに
やあ、久しぶり。先週はグランプリ・ビルバオ2019にグランプリ・タンパベイ2019、そしてフィラデルフィアでのStar City Games Openとモダン尽くしの週末だったね。
フォーマットのほかにも、これらのイベントには共通点が1つある……どれも、《信仰無き物あさり》を使ったデッキが優勝しているんだ。
おっと、心配しないでくれよ。今回は《信仰無き物あさり》をバッシングし、禁止すべき理由を述べるような記事じゃあない。むしろ、さらにあと数か月は禁止されるべきではない理由を説明しようと思っているんだ。
俺は違うと思っているが、《信仰無き物あさり》は皆にとってもっとも恐ろしいカードになってしまった。その理由を考えてみようじゃないか……。
ドレッジの問題点
ドレッジというデッキはかなり長い間存在していたが、安定して5ターン前後で決着をつけるなんてことは決してできなかった。当時すでに、《信仰無き物あさり》はドレッジにとって最高の呪文の1枚だったけどね。
さて、《這い寄る恐怖》が印刷された。これこそが、ドレッジの安定性を高め、5ターン前後での決着を安定させたカードなのだ。
この理由としては、《信仰無き物あさり》が2枚引いて2枚捨てられるから……ではなく、ドレッジの持つフリースペル、そして毎ターン掘り進めることができる枚数に起因している。フリースペルの枚数を覚えていてほしいので、軽く列挙しておこう。
《燃焼》が2枚、そして《秘蔵の縫合体》に《恐血鬼》、《ナルコメーバ》と《這い寄る恐怖》が4枚ずつだ。合計で18枚フリースペルがあり、これは大体デッキの1/3を占めている。ここでは《信仰無き物あさり》は除外しているけどね。
《信仰無き物あさり》は最大10枚のカードを掘り進めることができ(《臭い草のインプ》を2枚「発掘」した場合だ)、フリースペルは大体2~3枚見つけられることになる。
じゃあ《信仰無き物あさり》が禁止になり、ドレッジで青いカードを使うことになった、と簡単に仮定しよう。デッキには《思考掃き》を入れるが、これは最大7枚まで掘り進めることができる(2枚山札を削り、《臭い草のインプ》を「発掘」するときだ)。7枚でも、平均で2枚はフリースペルを見つけられるだろう。
数学は得意ではないが(専門の物理学しかやってないんだ)、もし《信仰無き物あさり》ではなく《這い寄る恐怖》が禁止されたら、フリースペルの枚数が14枚にまで減る。1ターンに10枚掘り進めたとしても、以前は3枚だったのが、平均して2枚しか見つけられなくなるんだ。
愛しき《弧光のフェニックス》
さて、我らが愛しき《弧光のフェニックス》はどうだろう?《信仰無き物あさり》なしでは、彼らを捨てられず、手札で腐らせることになってしまう!
これはいくらかは事実だが、このデッキも同様に、別のカードに問題があると思っている。2ターン目に1、2体の《弧光のフェニックス》が攻撃してくることにはみんなぼやいているし、本当に強力な動きだ。これは俺も認めざるを得ない。
今回は確率の計算はしないよ。2ターン目に《弧光のフェニックス》2体で殴れたゲーム(実際、10回のリーグで1回しか起こらなかったけどね)がどれだけ幸運だったかなんて見せびらかそうとは思わないし、計算はそこまで必要でもないからね。
このデッキの安定性の要となるカードは、《魔力変》だ。2ターン目、《魔力変》から《思考掃き》、《信仰無き物あさり》……《弧光のフェニックス》で攻撃!この動きは《魔力変》無しでは成り立たない。《信仰無き物あさり》と何かファイレクシアマナの呪文、1マナの呪文を1枚ずつ、これが平均的なハンドだと思っているなら別だけどね。
また、《弧光のフェニックス》デッキの持つ別角度からの攻めとしては、《氷の中の存在》がある。こいつは3ターン目に変身することもできるが、これも大体は《魔力変》のおかげで、《信仰無き物あさり》ではない。
さて、《魔力変》が禁止になったと仮定しよう。3/2の飛行・速攻クリーチャーを1~2体、3ターン目に出して、本当に試合に勝てるのか?3ターン目までには、ほとんどのデッキは自分のやりたいことをするチャンスがある。この1ターンの遅れは大きな違いになるだろう。
信仰無きデッキたち
また、《信仰無き物あさり》を使うデッキは他にも多くある。マルドゥ・パイロマンサーや赤単《弧光のフェニックス》、ホロウワンなどなど……。マルドゥ・パイロマンサーと赤単《弧光のフェニックス》は現在そこまで流行っていないが、これはドレッジやイゼットフェニックスほどに一貫性のあるフリースペルを持ってないからだ。
ホロウワンには多くのフリースペルがあるが、《燃え立つ調査》は自分のデッキを回す一方、相手にもフリースペルを提供してしまうことになる。あまりいいようには思えないし、このデッキを最近見ない理由の1つだろうね。
《信仰無き物あさり》の禁止に伴って現れる問題としては、イゼットフェニックスが消えてしまうかもしれない、というものだ。カードの禁止により、デッキが完全になくなってしまうのは好きではない。それに、フリースペルという真の問題は解決されていないのだ。たとえば、ドレッジは軸となるカードが失われず、生き残るだろう。少しカードを変えるだけで十分じゃないかな。
少し長くなってしまったが、ドレッジやイゼットフェニックスにおいて、《信仰無き物あさり》ではなく、フリースペルがどれほど違いを出しているのか、どうしても伝えたかったんだ。おそらくはこれらのフリースペルのせいで、どちらのキルターンも1、2ターン早まっていると思うよ。
フリースペル反対!
実際、フランク・カーステン/Frank Karstenの記事のデータにあるように、プレイヤーはこれらのデッキに対し順応し始めている。数字を見てもらうと、《発明品の唸り》プリズンは2日目、最も勝率の高いデッキであることが分かるだろう。これは上振れ、というわけではない。
好きな時にサーチできる、強力なカードを多く採用することで、このデッキは《信仰無き物あさり》デッキと戦うために構築されているのだ。(X)=1の《虚空の杯》はイゼットフェニックスの大量ドローを防ぎ、《罠の橋》はドレッジ、イゼットフェニックスの攻撃を全て封じ込める。そして《墓掘りの檻》は墓地関連のフリースペルを否定する。理由を挙げ始めたらキリがないくらいだね。
さて、フランク・カーステンの素晴らしい表をもう少し見てみよう。今度は青白コントロールだ。このデッキは《安らかなる眠り》をメインに入れることもできる。そうすれば、ドレッジは呪文を無理して手札から唱えなくてはいけなくなる。これは《弧光のフェニックス》も同様だね。
次にトロンも見てみようか。ぶん回らなかったとしたら、どうやってドレッジは3ターン目に着地した《ワームとぐろエンジン》に勝つんだ?また、イゼットフェニックスはどうすればトロンの重いカードに対抗できる?ああ、たいていのトロンは今や最大で4枚もの《大祖始の遺産》をメインに入れていることも忘れないでおこう。サイクリングできるとはいえ、すべてのフリースペルを否定するためだけにね。
先述したデッキは全て、何らかの方法でフリースペルに対抗するか、それを乗り越えて勝とうとしている。もしモダンプレイヤーにもうちょっと時間を与えれば、適応し、ちゃんとフリースペルと戦う方法を見極めるだろう。もちろん、モダンは《信仰無き物あさり》デッキしかいないわけではないので、他のデッキにも勝ちつつね。
そして『モダンホライゾン』へ……
6月、『モダンホライゾン』が発売される。フリースペルへの対策カードを手に入れる、またとない機会だ(《封じ込める僧侶》、君のことさ!)。だが、もしウィザーズが何かを禁止するつもりなら、《信仰無き物あさり》ではなく、《魔力変》や《這い寄る恐怖》のようなフリースペルを禁止してほしいものだね。そうすれば、みんなは自分のデッキを使い続けられるし、ドレッジやイゼットフェニックスも1、2ターン遅くなるだけで済むだろう。自分の力の限り、一人回しをするだけではなくなるんだ。
ん?待てよ……『モダンホライゾン』で再録されてほしいカード、そして逆に絶対に再録されてほしくないカードを紹介せずに記事が終わる、そんなことがあるか?
再録されてほしいカード
再録されてほしくないカード
読んでくれてありがとう、それではまた次回。