みなさんこんにちは。
グランプリ・京都2019も終了し、現環境のスタンダードは一段落がつきました。新セットの『灯争大戦』のカードが徐々に公開され始め、次なる新環境を楽しみにしていることでしょう。
今回の連載では、グランプリ・京都2019とミシックインビテーショナルの入賞デッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・京都2019
グランプリ初参加のプレイヤーが栄冠に輝く
2019年3月22-24日
- 1位 Gruul Aggro
- 2位 Sultai Midrange
- 3位 Gruul Aggro
- 4位 Jeskai Control
- 5位 Sultai Midrange
- 6位 Sultai Midrange
- 7位 Mono Red
- 8位 Mono Red
ベ・デギョン
トップ8のデッキリストはこちら
最も高い2日目進出率だったのは、タッチ黒、緑を含めたMono Red系のアグロでした。その次点でSultai Midrange、Gruul Aggroと続いており、プレイオフもその3種類のデッキが中心でした。
今大会を優勝したGruul Aggroは、Mono RedやMono White Aggroなどほかのアグロと比べるとクリーチャーのサイズと質で勝り、コントロールに対してもプレインズウォーカーなどを追加の勝ち手段として投入することで互角に渡り合えるので、環境の多くのデッキに対してチャンスがあるデッキとして注目を集めていました。
グランプリ・京都2019 デッキ紹介
「Mono Red」「Jeskai Control」「Gruul Aggro」
Mono Red
-土地 (21)- 4 《ギトゥの溶岩走り》
3 《狂信的扇動者》
4 《遁走する蒸気族》
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》
4 《ゴブリンの鎖回し》
1 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー (20)-
《危険因子》を採用したバージョンもありますが、ロングゲームに強い《実験の狂乱》を採用したバージョンの方を好むプレイヤーが多いようです。
現環境で最もポピュラーなデッキのひとつで、低マナのクリーチャーと火力によって速攻でライフを攻めつつ、《実験の狂乱》によって中盤以降も息切れを起こしにくいのがこのデッキの魅力です。
単色で動きが安定しており、火力呪文はコントロールに対しても無駄になりにくいので、BO1で競われたミシックインビテーショナルでも人気があったアーキタイプでした。
☆注目ポイント
《ゴブリンの鎖回し》は、Mono White AggroやMono Blue Tempo、《ラノワールのエルフ》などタフネス1のクリーチャーが多い現環境では第一線で活躍します。《遁走する蒸気族》は、《舞台照らし》や《実験の狂乱》をキャストするためのマナを確保することが可能で、上手くいけば連続でスペルを唱えることができます。
《実験の狂乱》は中盤以降の息切れを防止してくれます。サイド後はゲームが長引く傾向にあるので、《実験の狂乱》によるカードアドバンテージは重要です。4枚目の《実験の狂乱》と《宝物の地図》を投入し、Big Red寄りにシフトしていきます。
Jeskai Control
《ケイヤの怒り》が登場して以来、Esper Controlが代表的なコントロールでしたが《パルン、ニヴ=ミゼット》も負けていません。
旧環境で代表的なコントロールとして幅をきかせていたJeskai Controlは、基本的な構成に大きな変化はなくAdrian Sullivan選手がグランプリ・ミルウォーキー2018で使用し優勝を果たした《宝物の地図》型がベースとなっています。
☆注目ポイント
『ラヴニカの献身』で再録された《吸収》によって、相手を妨害しつつ時間を稼ぐことができるようになり、《パルン、ニヴ=ミゼット》に繋げやすくなりました。《万全》は軽い除去として序盤から活躍します。このデッキにとって対処が難しかった《アダントの先兵》を対策できるのは、地味ながら重要です。トークンを生成する《番人》は、タフネスが4なので《轟音のクラリオン》の巻き添えを食らわず、両モード共にこのデッキで使える分割カードです。
サイドの《拘留代理人》は、除去が少ないMono White Aggroとのマッチで特に有効に機能します。このクリーチャーに除去を使ってくれれば、それだけ《パルン、ニヴ=ミゼット》が生き残りやすくなります。コントロール対決に強いハンデスを搭載したEsper Controlや《パルン、ニヴ=ミゼット》対策が多いSultai Midrangeとのマッチアップは厳しくなりますが、Mono Red、Mono White Aggro、Mono Blue Tempoといった単色系のアグロデッキに強いデッキです。
Gruul Aggro
1 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《根縛りの岩山》
4 《手付かずの領土》
2 《グルールのギルド門》
-土地 (24)- 4 《成長室の守護者》
4 《クロールの銛撃ち》
3 《凶兆艦隊の向こう見ず》
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《グルールの呪文砕き》
4 《再燃するフェニックス》
3 《スカルガンのヘルカイト》
-クリーチャー (26)-
Gruul Aggroは単色系のアグロと比べてクリーチャーのサイズと質で勝り、2色ながら《手付かずの領土》によって色拘束が強い《ゴブリンの鎖回し》を安定して3ターン目にキャストできるマナ基盤を持ち合わせています。
今大会で見事に優勝を収めたベ・デギョン選手のリストは、色マナを確保するためにタップインランドの《グルールのギルド門》も採用されているなど、構築面でも工夫が見られます。
☆注目ポイント
《手付かずの領土》はクリーチャータイプを戦士に指定することで、《ゴブリンの鎖回し》や《成長室の守護者》のほかにも《グルールの呪文砕き》、《クロールの銛撃ち》といったクリーチャーを唱えることができます。
《成長室の守護者》は「順応」のコストが比較的軽く、継続的に攻め手を用意できるのでコントロールにも強いカードです。《グルールの呪文砕き》はアグロデッキ相手には4/4というサイズが硬いブロッカーになり、サイズの関係ないコントロール相手には速攻で攻めたりと柔軟な動きができます。
サイドに1枚だけ《混沌をもたらす者、ドムリ》が採用されています。「+1」能力はクリーチャーを多用するこのデッキでは有用で、特に《成長室の守護者》のように「順応」持ちのクリーチャーとシナジーがあります。勘違いされやすい点として「+1」能力によって生み出されるマナはクリーチャースペル以外でも使うことができます。
《席次/石像》は、《ゴブリンの鎖回し》や《スカルガンのヘルカイト》といったクリーチャーとシナジーがあり、相手側のクリーチャーを一方的に一掃することができます。
ミシックインビテーショナル
競技マジックの新たな時代の幕開け
2019年3月28-31日
- 1位 Esper Control/Mono White Aggro
- 2位 Mono Blue Tempo/Mono Red
- 3位 Esper Control/Mono White Aggro
- 4位 Esper Control/Mono Red
Andrea Mengucci
トップ4のデッキリストはこちら
マジック・プロリーグ(MPL)に所属しているトッププレイヤーや人気の配信者、MTGアリーナの厳しい予選を勝ち抜いたプレイヤーのみ参加が許されたミシックインビテーショナル。視聴数は100,000を超え、競技マジックの大きな可能性を感じさせるイベントでした。
本大会は、各プレイヤーはふたつのデッキを使用して競うデュオ・スタンダードというフォーマットが用いられました。一本勝負なのでサイドボードが使用できないことから、Mono Red AggroやMono White Aggroなどのアグロデッキを選択するプレイヤーが多くなる傾向にあります。そういったメタになることを想定してか、アグロを対策した構成のEsper Controlを選択したプレイヤーが最多でした。
ミシックインビテーショナル デッキ紹介
「Esper Control」「Mono White Aggro」
Esper Control
2 《喪心》
1 《渇望の時》
1 《否認》
4 《吸収》
3 《屈辱》
2 《肉儀場の叫び》
3 《薬術師の眼識》
3 《ケイヤの怒り》
3 《ヴラスカの侮辱》
1 《首謀者の収得》
2 《アズカンタの探索》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (34)-
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《啓蒙》
1 《強迫》
1 《治癒の恩寵》
1 《精神純化》
1 《鮮血の秘儀》
1 《漂流自我》
1 《悪賢い隠蔽》
1 《集団強制》
1 《浄化の輝き》
1 《イクサランの束縛》
1 《ミラーリ予想》
1 《天上の赦免》
1 《魔術遠眼鏡》
-サイドボード (15)-
アグロデッキが多くなる傾向にあるこの環境では、除去を多く搭載したEsper Controlは安定した選択となります。《首謀者の収得》が採用されている以外で、基本的な構成はBO3のときと大きな変化は見られません。
一本勝負の形式でも《首謀者の収得》用にサイドボード自体を用意することはルール上問題なく、状況に応じて様々なカードをサーチするシルバーバレット戦略を取れるのがこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
《首謀者の収得》は、サイドボードからカードをサーチしてくることができるので、一本勝負の今大会においても《啓蒙》 、 《漂流自我》、《魔術遠眼鏡》、《天上の赦免》などといった特定のデッキに対して劇的な効果が期待できるカードを活用できるようになります。
《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は、「-1」能力により単色系アグロの多くのクリーチャーを除去することが可能です。単色系アグロが多い環境である今大会では、メインから採用したリストが多く見られました。
Mono White Aggro
Mono White Aggroは、今大会で人気があったアーキタイプのひとつでした。今大会で優勝を飾ったAndrea Mengucci選手もふたつ目のデッキとして選択していました。
一般的なスタンダードではカウンターのために青をタッチしたバージョンがポピュラーですが、サイドボードが使えない一本勝負の今大会では単色が主流です。
☆注目ポイント
《暴君への敵対者、アジャニ》などプレインズウォーカーは不採用で、《錆色翼の隼》など1マナのクリーチャーが多めとなっており、速さを強く意識した構成となっています。
このデッキの最大の特徴は、多めに採用されている《不敗の陣形》です。《ケイヤの怒り》に対しては打ち消しのように機能し、同型でも破壊不能を与える効果はコンバットトリックとして機能します。除去は《議事会の裁き》のみと必要最低限で、相手のクリーチャーに干渉するよりも多くのクリーチャーを展開して《不敗の陣形》や《ベナリアの軍司令》など全体強化で押していくことに特化しています。
総括
『灯争大戦』のカードが公開され始め、現環境もいよいよ終盤に突入しました。この環境は環境初期から、Esper Control、Mono Red、Mono White Aggro、Mono Blue Tempo、Sultai Midrange、Izzet DrakesそしてGruul Aggroなど、様々なデッキが活躍する面白い環境だったので『灯争大戦』も楽しみです。
カードを集めやすく気軽に遊べるMTGアリーナもあるので、スタンダードは以前よりも気軽に楽しめるようになりました。『チャレンジャーデッキ』もリリースされる予定なので、今後もスタンダードは盛り上がりそうです。
USA Standard Express vol.144は以上です。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
この記事内で掲載されたカード
Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。