みなさんこんにちは。
今月は、グランプリ・ナイアガラフォール2019がレガシーで開催されます。9月にはグランプリ・アトランタ2019も開催されますので、そちらも楽しみですね。
さて、今回の連載ではSCGO Cincinnati、Legacy Premier、Legacy MCQの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Cincinnati
非青デッキが活躍
2019年3月23-24日
- 1位 Four-Color Loam
- 2位 Death and Taxes
- 3位 UR Delver
- 4位 Lands
- 5位 Golgari Depths
- 6位 Death and Taxes
- 7位 Miracles
- 8位 UR Delver
Minor/Ambrosio/Cresopo jr
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チーム戦で競われたSCGO Cincinnatiでは、UR Delverがプレイオフに2チーム勝ち残り安定した勝率を出していました。
Death and TaxesやLoamなども多数勝ち残っており、特にDeath and Taxesはマジック25周年記念プロツアーでも、チームを優勝に導いた実績のあるアーキタイプです。Death and Taxesはプレイ難易度が高めですがDelver系に強いこともあり、Steve Rubin選手やEthan Gaieski選手、Andrew Tenjum選手といった強豪プレイヤーが選択していました。
SCGO Cincinnati デッキ紹介
「UR Delver」
UR Delver
SCGO Syracuseでも同デッキで結果を残していたAustin Collins選手。同大会で優勝していた《舞台照らし》を採用したバージョンよりも《呪文貫き》 など打ち消しを多めに採用しているリストの方が、コンボデッキに強いため人気があるようです。
Grixis Delverと異なり基本地形を採用できるため、アンチ特殊地形にも耐性があるのがこのバージョンの強みです。
回避能力持ちのクリーチャーと火力が多めで、ほかのDelver系よりもスピードで勝りますが、主な妨害手段が《意志の力》以外だと《目くらまし》と《呪文貫き》なのでコンボとのマッチアップでは不利が付きます。
☆注目ポイント
《プテラマンダー》は、《真の名の宿敵》とともにこのデッキのフィニッシャーを務めます。《グルマグのアンコウ》と異なり、墓地にカードがない場合でも最低限プレイできます。ブロックされることも少ないので、安定してダメージを通すことができるのが強みです。Miraclesにとっては単純にマスト除去が増える分、厄介な脅威となります。
ANTなどコンボデッキとのマッチアップを考慮すると、追加の《呪文貫き》は欠かせません。《二股の稲妻》は、最近復権してきているDeath and Taxesや同型戦に強いことから、メインでも採用されるようになりました。サイドの《イゼットの静電術師》もDeath and Taxesに対して有効です。同型戦においては、《若き紅蓮術士》やトークン対策になり、《プテラマンダー》を牽制できるので投入されます。
相手によっては詰む可能性のある《血染めの月》を無理なく運用できるのが、UR Delverの明確なメリットです。《幻惑の旋律》は、追加の勝ち手段のように機能する優秀なスペルです。相手の《プテラマンダー》やLandsのマリット・レイジを奪うことができます。
Legacy Premier
Death and Taxesの復権
2019年3月24日
- 1位 4C Leovold
- 2位 Sneak and Show
- 3位 Maverick
- 4位 Death and Taxes
- 5位 Death and Taxes
- 6位 Sultai Depths
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Sultai Midrange
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Legacy Premierとは、Magic Online(以下:MO)のリーグや毎週末に開催されるChallengeで、入賞することによって稼げるQualifier Pointsを35点以上集めたプレイヤーが参加できるイベントです。
普段からMOのイベントで結果を残しているプレイヤーが中心であるためレベルも高く、今大会での結果はグランプリなどの大規模なイベントのメタゲームにも影響が出ることが予想されます。
Legacy Premier デッキ紹介
「4C Leovold」「Death and Taxes」「Grixis Delver」
4C Leovold
1 《沼》
2 《Underground Sea》
2 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
1 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
3 《沸騰する小湖》
1 《血染めのぬかるみ》
3 《燃え柳の木立ち》
-土地 (21)- 4 《悪意の大梟》
3 《瞬唱の魔道士》
1 《トレストの使者、レオヴォルド》
-クリーチャー (8)-
4 《思案》
2 《思考囲い》
1 《コジレックの審問》
1 《致命的な一押し》
3 《罰する火》
1 《突然の衰微》
1 《暗殺者の戦利品》
1 《悪魔の布告》
1 《毒の濁流》
1 《コラガンの命令》
4 《意志の力》
1 《虚無の呪文爆弾》
3 《ダク・フェイデン》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ヴェールのリリアナ》
-呪文 (31)-
《死儀礼のシャーマン》が禁止になって以来、マナ基盤に負担がかかる4色コントロールは数を減らしていましたが、このデッキの苦手とするプリズン系のデッキが減少傾向にあるため、また姿を現し始めました。
《罰する火》エンジンが搭載されており、Stonebladeを始めとしたクリーチャーデッキに強い構成となっています。
☆注目ポイント
《ダク・フェイデン》は、装備品や《霊気の薬瓶》対策になるので、復権してきているStonebladeやDeath and Taxesなどとのマッチアップで活躍します。それ以外のマッチアップでは、「+1能力」によって不要牌を有効なものに変換することができます。《罰する火》を墓地に落とした後に、《燃え柳の木立ち》で回収する動きは無駄がなく強力です。
《罰する火》エンジンは、StonabladeやDeath and Taxesなど小型のクリーチャーを多用するデッキにとって非常に効果的です。
《真の名の宿敵》に対しては、《ヴェールのリリアナ》や《毒の濁流》といったカードがありますが、対処法が限られているのでハンデスで優先的に落としていきたいところです。サイド後は《紅蓮破》や《餌食》、《破滅的な行為》などが追加されるので対処しやすくなります。
サイドのカードで最も印象に残ったのは《概念泥棒》です。相手のドロースペルに合わせれば多大なアドバンテージを稼ぐことが可能で、《ダク・フェイデン》の「+1能力」ともシナジーがあります。
Death and Taxes
最近復権の兆しを見せているDeath and Taxes。このデッキのエキスパートであるBahraは、今大会の予選ラウンドを全勝で通過していました。
《スレイベンの守護者、サリア》などのヘイトベアーや追放系の除去を多数搭載しているのでDelver系やSneak and Show、Depthsなど、現環境にはこのデッキにとって相性の良いマッチアップが多数存在しています。
☆注目ポイント
《宮殿の看守》は、StonebladeやMiraclesでも採用されたリストを見かけるクリーチャーです。Miraclesなどのクリーチャーが少ないデッキとのマッチアップでは、対処されにくいアドバンテージエンジンとして機能します。
マナ加速として多くのリストに《古えの墳墓》が採用されています。《リシャーダの港》や《不毛の大地》を展開を遅らせることなく使用することができ、《宮殿の看守》やサイド後のプレインズウォーカー、《歩行バリスタ》などをキャストしやすくなります。
サイドの《絶対の法》は、多くのデッキの主力除去である《稲妻》対策になり、UR Delverなどがサイドに忍ばせてあることも多い《イゼットの静電術師》などにも耐性ができます。
Grixis Delver
3 《Underground Sea》
3 《血染めのぬかるみ》
2 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
3 《闇の腹心》
3 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (12)-
最近はUR Delverが主流になっていますが、Grixisもまだまだ負けていません。
《剣を鍬に》を採用した青白系のデッキを意識した結果、《グルマグのアンコウ》が抜けて《闇の腹心》や《もみ消し》が採用されているなど変更が加えられています。
☆注目ポイント
《もみ消し》は各種コンボや「奇跡」の誘発、フェッチランドの起動を妨害したり、《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボを妨害することで1ターンの猶予を得たりと現環境では活躍の機会も多いスペルです。
《闇の腹心》は、コンボ相手にはカードアドバンテージを稼ぎつつ攻めることを可能にしてくれます。MiraclesやStonebladeにとってもマスト除去となり、現環境では《グルマグのアンコウ》よりも優先されるようです。
Grixisの強みといえば、妨害手段である《思考囲い》や、マリット・レイジ、《真の名の宿敵》などを処理できる《悪魔の布告》にアクセス可能なことです。現在のMOのレガシーのメタは、ANTなどコンボデッキがリアルよりも多いので、Grixis DelverはUR Delverよりも有力な選択肢となり得ます。《苦花》も黒を使う理由の一つで、Grixis ControlやMiraclesとのマッチアップで対策されにくい脅威として機能します。
Legacy MCQ
レガシーの代表的なコンボデッキが優勝
2019年4月7日
- 1位 ANT
- 2位 Sneak and Show
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Maverick
- 5位 Dredge
- 6位 Golgari Depths
- 7位 Lands
- 8位 Rector Miracles
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MOで開催されたレガシーのMCQの上位は、フェアデッキとコンボデッキの両方が見られ、結果優勝を果たしたのは、レガシーの代表的なコンボデッキであるANTでした。
ミシックチャンピオンシップへの参加権をかけたMCQは、Legacy Premierと同様にレベルの高いイベントなので、グランプリ・ナイアガラフォール2019のメタを考えるうえで参考になりそうです。
Legacy MCQ デッキ紹介
「Rector Miracles」「Sneak and Show」
Rector Miracles
1 《平地》
1 《沼》
2 《Tundra》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《汚染された三角州》
1 《湿地の干潟》
1 《ファイレクシアの塔》
-土地 (19)- 2 《瞬唱の魔道士》
3 《競技場の首長》
2 《僧院の導師》
-クリーチャー (7)-
4 《思案》
4 《定業》
4 《陰謀団式療法》
4 《剣を鍬に》
2 《狼狽の嵐》
4 《意志の力》
3 《終末》
1 《相殺》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《王神、ニコル・ボーラス》
1 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (34)-
2 《封じ込める僧侶》
2 《狼狽の嵐》
2 《外科的摘出》
2 《思考囲い》
1 《魂の洞窟》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《至高の評決》
1 《最後の望み、リリアナ》
-サイドボード (15)-
《競技場の首長》と多くのプレインズウォーカーが特徴のオリジナル色の強いMiracles。
《競技場の首長》の能力と相性の良い《陰謀団式療法》のために黒がタッチされており、コンボデッキやほかのコントロールとのマッチアップで有利が付きそうなバージョンです。一般的なMiraclesと同様に除去が搭載されているとはいえ、色を足している分《不毛の大地》に弱くなり、4マナ以上のスペルが多めなのでアグロデッキには苦戦しそうです。
デッキの動きとしてはMiraclesと同様に除去、打ち消しなどでゲームをコントロールしつつ、《競技場の首長》を戦場から墓地に落として《王神、ニコル・ボーラス》や《精霊龍、ウギン》といったカードパワーの高いプレインズウォーカーのコストを踏み倒してゲームを有利に進めていきます。
☆注目ポイント
《競技場の首長》を墓地に落とすために、《陰謀団式療法》をフラッシュバックしたり《ファイレクシアの塔》を起動していきます。特にマナ能力である《ファイレクシアの塔》は、《競技場の首長》の能力の解決後即座にプレインズウォーカーの能力を起動できるようになるので、死亡させる手段としては最適です。《競技場の首長》を確実に通すために、サイドには《魂の洞窟》も採用されています。しかし、《外科的摘出》などの墓地対策で妨害されてしまうので、特にサイド後は注意していきたいところです。
《陰謀団式療法》は《僧院の導師》ともシナジーがあり、サイドの《思考囲い》と合わせて相手のプランを妨害していきます。プレインズウォーカーを多めに採用しているためデッキパワーが高く、Stonebladeなどほかのミッドレンジやコントロールとのマッチアップにも強くなります。
《競技場の首長》に頼らずともゲームが長引けば、プレインズウォーカーを素でキャストするためのマナも確保できるようになり、《王神、ニコル・ボーラス》や《精霊龍、ウギン》を着地させれば速やかにゲームを終わらせられます。
Sneak and Show
JPA93ことJonathan Anghelescu選手は、シルバーレベルのプロでありHareruya Hopesの一員でもあります。昨年開催されたグランプリ・サンタクララ2018でもチームを準優勝に導いた強豪プレイヤーです。
Sneak and Showの扱いを得意とし、MOの大会を中心にコンスタントに結果を残しています。
デッキの性質上MiraclesやStonebladeに対しては、《剣を鍬に》が不要牌となるのでメイン戦は基本的に有利です。妨害手段の多いGrixis Delverやヘイトベアーを多数搭載したDeath and Taxesなどは、苦手なマッチアップとなります。BG Depthsもマリット・レイジを速い段階で出されない限りは、基本的に有利なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
《ファイレクシアの破棄者》、《封じ込める僧侶》、《真髄の針》など《騙し討ち》の起動を妨害してくるカードを対策するために、《全知》を数枚採用したリストが主流になっています。しかし、彼のリストには《狡猾な願い》とサイドに追加の勝ち手段である《蟻の解き放ち》なども採用しており、Omni-tellに近い構成となっています。
《狡猾な願い》は、《コジレックの帰還》、《突然のショック》、《急流》、《計略縛り》など状況に応じたインスタントをサーチできます。《全知》と《狡猾な願い》を採用することによって《騙し討ち》に頼る必要がなくなり、Death and Taxesとの相性は改善されているようです。
個人的に《狡猾な願い》の選択肢で、最も印象に残ったスペルが《計略縛り》です。《実物提示教育》解決後に、《全知》を狙った《再利用の賢者》や《灰燼の乗り手》といったクリーチャーの場に出たときの能力を妨害したり、《カラカス》や《ヴェンディリオン三人衆》の対策にもなります。同型戦では、相手の《引き裂かれし永劫、エムラクール》の誘発能力を妨害したりと様々なシチュエーションで活躍します。
ボーナストピック:『灯争大戦』
新セット『灯争大戦』のカードが公開され始めました。フルスポイラーの公開はまだですが、レガシーでも使えそうなカードがすでに数種類見られます。
《時を解す者、テフェリー》
3マナと軽めのコストでありながら高めの初期忠誠度を持ち、自分自身を守る能力(カードもドローできるおまけ付き)と、優秀なプレインズウォーカーである条件を一通り満たしています。
常在型能力により、エンド時に《突然の衰微》や火力で除去されることもなく、処理するためにはターンを丸々費やすことになります。Miraclesの新戦力になる可能性があるカードで、「+1能力」は《思案》や《定業》を相手のターンにキャストすることで、《終末》や《相殺》を仕込むことができるようになります。
《ドビンの拒否権》
《否認》が青白になったら、カウンターされなくなる効果が追加されました。青いデッキとのマッチアップや、カウンターで強引にコンボを通してくる《実物提示教育》系など多くのマッチアップで活躍が期待できそうなカードです。MiraclesやStoneblade系のサイドボードに1~2枚ほど採用されそうです。特にStoneblade系にとっては、クロックを保護する最適な手段となります。
《戦慄衆の秘儀術師》
様々なところで注目をされているクリーチャー。UR Delver、Grixis Delver、Grixis Controlなどに数枚入りそうです。サイズは2マナ1/3と極めて平凡で、トランプルも強化スペルを使わない限り活かされることはなさそうですが、攻撃に参加するだけで能力を使えるので《稲妻》や《渦まく知識》、《思案》、《思考囲い》などを使い回すことでアドバンテージを稼ぐことができます。サイド後は《外科的摘出》や《紅蓮破》など選択肢がさらに広がります。
《高名な弁護士、トミク》
《護衛募集員》ではサーチできませんが、2マナパワー2飛行という基本スペックに加えて相手の《不毛の大地》、《壌土からの生命》、《暗黒の深部》コンボを止めることができるので、新たなヘイトベアーとしてDeath and Taxesで使われそうです。
総括
MOとリアルのイベントの結果を一通り見ていきましたが、現在のレガシーはRector Miraclesのようにオリジナルのデッキも見られるなど、様々なデッキが活躍できる面白い環境です。
新セットの『灯争大戦』からも強そうなカードが数種類確認できたので、新環境が楽しみです。
USA Legacy Express vol. 152は以上です。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!