Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/05/13)
はじめに
やぁみんな!
以前のイゼットフェニックスの記事から随分時間が経ってしまったね。でも、幸運にもグランプリ・リバプール2018のときよりも遥かに良い結果を残すことができた。
ミシックチャンピオンシップで2度目のトップ8に入れたんだ!
TOP8 of the #MythicchampionshipII !!!!!!!!!!!!!!!!! AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
— Javier Domínguez "Thalai" (@JavierDmagic) 2019年4月27日
「ミシックチャンピオンシップトップ8!!!!!!!!!!!!!!!!!
うわあああああああああああああああああああああああ」
本番前
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019は、いくつかの点において前回のミシックチャンピオンシップとは様相が異なっていた。まず、構築フォーマットがモダンであるということ。モダンが好きであろうと嫌いであろうと、スタンダードの大会とは一線を画す。調整の仕方も両者では異なるんだ。
次に、ロンドンマリガンが試験的に導入されたのも特徴的だ。ロンドンマリガンとは「あなたがN回目のマリガンを行うとき、あなたはカードを7枚引き、その後N枚のカードをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く」というルールだね。
更なる特異点は、5回戦以降では相手のデッキリストの大半を知った状態で対戦できるということだ。もう少し正確に言うと、メインデッキはカード名とカード枚数を知ることができるが、サイドボードはカード名だけがわかり、枚数は伏せられている。相手が《虚空の力線》をサイドボードに採用しているのはわかるけど、何枚入れているのかはわからないっていう感じだね。
これらの特異点が従来のミシックチャンピオンシップとは大分違ったものにしたわけだけど、実はまだサプライズがあった。リミテッドが『灯争大戦』のプレリリースと並行して行われたんだ。実質的に、ミシックチャンピオンシップ・プレリリースになったわけだね。俺はリミテッド環境を理解するのに時間を要することが多いから、今回の大会は全体的に風向きが良くないなと感じていた。
でも……見当違いだったね。
調整方法を考えるよりも先に、ひとつ確定していたことがあった。ミシックインビテーショナルの覇者、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciと一緒に調整することになっていたんだ。すでにアンドレアとは親しくなっていたけど、共に練習に励んだおかげで切磋琢磨できたのではないかと思う。今後は彼抜きで調整するなんて想像もできないくらいさ。
『灯争大戦』ドラフト
最初の課題は、どうやって『灯争大戦』リミテッドを練習するかだった。おそらく他のチームも同様の課題にぶち当たったことだろう。まず最初に言っておきたいのは、俺はチームメイト同士で行うドラフトがあまり好きではないということだ。あくまでミシックチャンピオンシップまでの練習期間がいつもどおりたっぷりある場合は、だけどね。というのも、チーム内の誰しもが環境に対して同様のアプローチを取ってしまう段階まで行ってしまうと、同じ考えを持つ人間だけの卓ができてしまい、特定のアーキタイプに必要なカードが流れない状況になってしまうんだ。こうなれば、チーム内で人気のアーキタイプが調整しづらくなる。
しかし今回は訳が違った。本番前にオンライン上で『灯争大戦』をドラフトできないため、チームで籠って練習する以外に選択肢がなかったんだ。ドラフトを練習するのに8人必要ということだね。リミテッドの調整に付き合ってくれたのは、マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho、ゴンサロ・ピント/Goncalo Pinto、ベルナルド・サントス/Bernardo Santos、ベルナルド・トーレス/Bernardo Torres、ジョアン・アンドラーデ/Joao Andrade、ホセ・カベサス/Jose Cabezasだった。
#Valenciatesting limited meeting is done.This has been a very humbling experience. Ill use a @Mengu09 picture. @KbolMagic and @JavierDmagic are in a different league, i knew @Bernardocssa was very good. joao_andrade and @P22Bernas surprised me and @u_mad_bro_MTGO eats healthy❤️ pic.twitter.com/Ut0YZI6mnQ
— Jose Cabezas (@JoseCabezas_pok) 2019年4月23日
チームによる調整はとても上手くいった。多大な努力を共に重ねたから、親友たちと過ごすような感覚すらあったんだ。マルシオやジョアンがドラフトを制し始めたところで、リミテッドの調整はある程度できたのではないかと感じた。しかし、本当の戦いはこれからだ。
デッキ選択
重要な構築の大会が迫ると、俺は両極端なモードになる。使うデッキが決まっているか、決まっていないかだ。言葉を換えるなら、事前から知り尽くしたデッキがなく、使用するデッキが確定的でない場合(たとえば、前回のミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019で使用したスゥルタイ)、何を使うべきなのか苦労してしまうパターンが多いんだ。今日のマジックでは、デッキの立ち位置が非常に重要な要素だと思うからね。
それに、モダンのデッキ選択はいつだって難しい。モダンで相性が悪いと言った場合、とても相性が悪いことがほとんどだからだ。つまり、メタゲームに合っていないデッキを選んでしまった場合、1回戦が始まる前から敗色濃厚というわけさ。正しいデッキを選択することが如何に難しいかを認識していたから、使用するアーキタイプは火曜日までに決めることにした。水曜日の夜が公式のデッキ提出日締切だったから、デッキの詳細を詰め切るために1日の猶予を設けたんだ。
ミシックインビテーショナルに参加したプレイヤーは、多くの時間・労力をスタンダードに割いてきたから、モダンとは少し距離を置いてしまっていた。調整の初期段階からほぼ確定的だったのは、アンドレアが《発明品の唸り》プリズンを使うこと、そして俺はそれを使わないことだ。アンドレアが「強すぎるから絶対に使うべきだ!」と言ってきたなら話は別だったけど、そうはならなかった。
数日間Magic Onlineでリーグを繰り返すうち、個人的な候補がトロン、5色人間、イゼットフェニックス、青白コントロール、アミュレットタイタンになった。しかし、これでも選択肢が多すぎるぐらいだ。最終的にアミュレットタイタンを使わなかったのは、デッキを適切に回せず、プレイレベルにバラつきが出てしまい、それをデッキパワーでは埋め合わせできないと感じたからだ。本番前の数週間に渡って一番使ったのは、間違いなくアミュレットタイタンだと思うけどね。
青白コントロールは、事が上手く運ばない要素が多いと感じたため、選択肢から外した。俺がデッキを使いこなせないとか、《謎めいた命令》などから完璧に立ち回るプレイヤーに勝てないとかね。それに、どんなときでもアンドレアは「コントロールデッキは絶対に使わない方が良い」って言ってくるんだよ。
トロンは本当にいい線まで行っていた。ロンドンマリガンの恩恵を最も受けるデッキだからね。懸念点は、最も数が多いデッキであると同時に、対策カードからデッキ選択まで、目の敵にされやすいデッキと予想していたことだ。アミュレットタイタンやアドグレイス、《高山の月》のようなカードが多いかもしれない環境でトロンをプレイするようなことは避けたかった。俺がトロンを諦めることになったのは、イゼットフェニックスを使用したマルシオにサイドボード後に何度も何度も敗北を喫したからだ。
こうして候補に残ったのは、5色人間とイゼットフェニックスだけになった。使い慣れているのはイゼットフェニックスだが、多くのプレイヤーが《外科的摘出》のような墓地対策を積み込んでいることを踏まえれば、5色人間は非常に良いポジションにいると考えられた。イゼットフェニックスにとって大きな痛手となったのは、マルシオが様々な角度からイゼットフェニックスで俺に勝ちながらも、5色人間に移行したことだった。それから間もなくして、アンドレアも《発明品の唸り》プリズンを諦め、いつの間にか俺は5色人間の調整チームに参加していた。
しかしご存知の通り、俺はイゼットフェニックスを使って二度目のトップ8を達成した。
チームデッキから離れるというのは、決して気持ちの良いものではなかった。大会に参加する上では情報や知識の交換があまりにも大きなアドバンテージとなるため、俺の成功は共に調整してきた人々によるところが大きい。自分だけがチームメイトと違うデッキを使うのは、精神的に厳しいものがあったが、それは自分で乗り越えるしかなかった。そしてついに、俺にとってはイゼットフェニックスがベストデッキだという結論を出した。
結論の一因は、スタンダードとモダンの違いにある。プレイングに要求されるスキルはモダンの方が複雑であるため、特定の状況における経験値を非常に重要視している。一見わかりづらいカード間の作用であったり、未経験の状況に遭遇した場合、それが敗因になることもあるんだ。他方、スタンダードで最も重要なのは、マクロな視点で分類されたアーキタイプに対して、キーとなるポイントを明確にしておくことだ。些末的な部分よりも、自分のデッキが全体として強いか弱いかの方が重要である。
火曜の夜にはイゼットフェニックスに心を決め、水曜日の日中はイゼットフェニックスについてできるかぎり研究しようということにした。デッキの基本を理解したら、ゲームを繰り返すよりも他人に意見を求めた方が実りあることが多いと俺は思っている。
イゼットフェニックスと共に
数時間かけ、インターネットで見つけたあらゆる関連記事、掲示板投稿、グループトーク、サイドボードガイドに目を通した。ブラウザのタブを何個も開いたのは言うまでもないね。ひとつ面白いなと思ったのは、イゼットフェニックスに精通しているプレイヤー間でも、総意が見られる部分が少ないことだ。イゼットフェニックスが如何に奥深いのかを物語っているね。
採用されているカードの理解を深めるために、イゼットフェニックスのエキスパートであるタリク・パテル/Tariq Patel、Magic Onlineで全勝数が最も多いNaisirc、あるいはJenara19による記事、サイドボードガイドを参考にすることにした。これらの情報はどれも有用で、最終的なデッキリスト作成につなげることができた。
ここまでの検討の結果、このようなデッキリストになった。
メインボード
マナベース
マナベースは一般的なものに近い。唯一気になっていたのは、《硫黄の滝》だった。ゲームの序盤から中盤にかけてアンタップインできる多色土地がもう1枚だけ欲しかったんだ。実際に《尖塔断の運河》が中盤戦でタップインしたことで落としてしまったゲームが何度かあり、大分フラストレーションがたまったね。でも結局は、土地が《硫黄の滝》だけの初手だった場合のデメリットが大きすぎる、という結論になった。それと、ゲームプランを《血染めの月》にするならフェッチランドからサーチしてくるのは忘れず《島》にしよう。
脅威
あまりにも強力な《氷の中の存在》と《弧光のフェニックス》の8枚は確定として、《弾けるドレイク》は2枚採用するのが一般的だった。プランB、プランCとして有用なのは間違いないけど、サイドボード後に真価を発揮するものだと感じることが多かった。
1ゲーム目は、特に後手の場合、コントロール以外の相手には遅すぎるんだ。こういった事実を踏まえ、メインデッキに《弾けるドレイク》を2枚入れるのではなく、1枚はサイドボードに移し、デッキ全体の総枚数が変わらないように元々サイドボードにあったカードをメインデッキに移し替える形にした。
イゼットフェニックスがモダンの覇権争いに加わることができているのは、《紅蓮術士の昇天》があってこそだと考えている。このカードのおかげでデッキにコンボ要素が加わり、自然とクリーチャー除去だけでは負けないようになっているんだ。もしこれがなければ、比較的アグレッシブなデッキというだけで、クリーチャー除去だけで対処されてしまうだろうね。
《紅蓮術士の昇天》の最大の問題点は、墓地対策が有効であること、2枚目以降の価値が低下してしまうことにある。これらの問題点に対する俺なりの解答は、採用枚数を2枚に抑え、1枚しか欲しくない場面で重ね引きする確率を劇的に減らすことだ。今後メタゲームがクリーチャーに敵意を向けてくるのであれば、3枚目の《紅蓮術士の昇天》を入れることになるだろう。
《手練》か《選択》か
何と言ったらいいか、みんなが望むような解答はできないかもしれない。世間ではイゼットフェニックスにおける《手練》は「補助輪」として知られている。俺も異論はない。でも、補助輪は幼い子が転ばないようにしてくれるものだ。そうでなくてもイゼットフェニックスはプレイスキルが要求されるから、こういった補助輪は総じてありがたいものだと思うよ。
《手練》よりも《選択》の方が好ましい重要な場面は2つある。まず、打ち消し呪文が手札にある際、《選択》であればマナを構えたままにしておける。2つ目は、《氷の中の存在》をインスタントタイミングで変身させたいときだ。
調整の結果から言えば、これらの状況は比較的珍しいものであった。様々な人からフィードバックをもらい、俺には《手練》の方が向いているという結論になった。俺はイゼットフェニックスをかなりアグレッシブな形で使うからだ。守りに回ることは滅多にない。攻める立場でいたいことが多いから、《氷の中の存在》が変身するのであれば、相手のターンまで待つことは稀だ。もちろんインスタントタイミングであることが重要な場面もあるけど、そこまでの頻度で起きるものではないし、仮にそのような場面が巡ってきたとしてもデッキにはインスタントが他にもたくさんあるからね。
《手練》が輝くのはそれ以外のシーンであって、たとえば《紅蓮術士の昇天》が機能し始めるターンだ。つまり、《選択》をメインフェイズで唱えるぐらいなら、情報量の多い《手練》の方が明らかに強力なんだ。先ほどとは違い、この状況が発生する頻度は非常に高いし、その度に小さなアドバンテージが積み重なっていく。《手練》が《選択》よりも優れていると気付くには、実際に唱えた際に深く考えてみないとわからないものだ。
反対に、《選択》の方が好ましい場面は非常にわかりやすく、気づきやすいし、記憶にも残りやすい。これこそが《選択》が好まれやすい最大の理由なのではないかと思う。《手練》だったから負けたゲームは記憶に鮮明だけど、その逆は成立しないというわけだね。
《手練》の方が好ましい状況の中でも、最もありがちなものを説明しておこう。何か特定のカードを探していて、《選択》の占術でそこそこのカードが捲れても(たとえば更なるキャントリップ呪文)、できればライブラリーのトップに置きたくない。この状況で取り得る選択肢は2つだ。
1)ライブラリーのトップに置き、更なるマナを支払ってそれをプレイする。
2)ライブラリーのボトムに置き、ライブラリーのトップから2枚目のカードが良いものであることを願う
ところがこれが《手練》であれば、1マナでライブラリーのトップの2枚を確認し、その中からよりよい物を手札に加えられる。こういった事情があるため、《手練》の方がデッキを安定して回せるというわけだ。
というわけで、「《選択》は《手練》よりも明らかに良い」という考え方に待ったをかけてみてはどうだろうか。
Here’s my Playset of Opts for Izzet Phoenix #MythicchampionshipII pic.twitter.com/uZfwvMF2Fu
— Javier Domínguez "Thalai" (@JavierDmagic) 2019年4月27日
「これが俺の《選択》だ。」
フリースロット
《外科的摘出》、《はらわた撃ち》
《外科的摘出》と《はらわた撃ち》は、《氷の中の存在》と《弧光のフェニックス》による爆発的なスタートを切るための必要悪だ。これらのファイレクシアマナ呪文の問題点は、特定のマッチアップにおいてフリースペルであること以外にメリットがないことだった。しばらくの間はメインデッキに《外科的摘出》を3枚採用していたが、最終的に3枚目をカットすることにした。
効果的でない相手に当たった際に、2枚も引いてしまうと悲惨なことになるからだ。同時に、ドレッジやミラーマッチを意識するため、2枚未満にしたくもなかった。《はらわた撃ち》は3枚目のファイレクシアマナ呪文の枠を埋めるものであり、デッキ構築段階からの仮想敵であった5色人間に有効だ。《稲妻》と合わせて使えば《氷の中の存在》を除去できるため、それが《はらわた撃ち》をメインデッキに採用する最後の一押しとなった。
《稲妻の斧》、《炎の斬りつけ》
《稲妻の斧》や《炎の斬りつけ》は、5~6枚目の除去だ。《紅蓮術士の昇天》と噛み合わないが、この枠は異なるカードを採用した方が良いだろう。《稲妻の斧》は《グルマグのアンコウ》を対処できるが、《炎の斬りつけ》は《氷の中の存在》に対する最善の解答であり、コントロールプランを取る場合にも総じて優秀な除去だ。
《漂流》
汎用性の高い解答として《残響する真実》ではなく、《漂流》を採用した。《漂流》はカードアドバンテージを損しないし、同一ターンに複数の呪文を唱え、《弧光のフェニックス》を蘇らせやすい。《罠の橋》や《死の影》などは戦場に複数並ぶパーマネントであり、《残響する真実》の格好の的となるが、総合的に見れば《漂流》の方が好みだ。これは「《手練》か《選択》か」に通ずるものがあるかもしれない。
《漂流》は消耗戦に向いているため、デッキの方向性と噛み合っているんだ。《残響する真実》の方が明確に良い状況は、《安らかなる眠り》や《虚空の力線》と対面したときだ。その場合は《漂流》が最悪になる。環境がこれらのカードを重視するようになったら、《弾けるドレイク》がものの見事に問題を解決してくれるだろう。
《呪文貫き》
メインデッキに入っていた2枚目の《弾けるドレイク》と入れ替わる形で入ったのが《呪文貫き》だ。時折《安堵の再会》を打ち消せる場面もやってくるが、この呪文をメインデッキに入れた最大の理由は、勝敗を分かつターンでライブラリーを掘り進められるものの、メインデッキには相手のゲームプランに干渉できるカードが一切ないというパターンがしばしば起きたからだ。具体的には《精霊龍、ウギン》や《むかつき》と対面したときに感じたね。
そこで俺はキャントリップ呪文で引き込める可能性があるように、何らかの対策を入れようと考えた。序盤から干渉していかなければ負けてしまうという確信がない限り、相手の準備段階の呪文を打ち消すことは滅多にない。そのため、キャントリップ呪文を唱えるか、《呪文貫き》を構えるかで頭を抱えることもあまりないね。最初の数ターンで打ち消す選択肢があるのは素晴らしいけど、この枠のカードに期待するのは、後々に相手が展開してくるであろう最大の脅威を弾くことだ。
例のごとく、「何もしない」タイミングを判断するのがイゼットフェニックスで最も難しいところだ。同じ状況が二度も巡ってくることはないけど、何らかの理由で2ターン目に《氷の中の存在》を出さないという判断が、そこそこの成績とトップ8の分かれ道になり得るんだ。
サイドボード
《弾けるドレイク》、《呪文貫き》
メインデッキに1枚挿しされているものを補完する。墓地対策が増えてくるならば、3枚目の《弾けるドレイク》を入れても良いだろう。
《炎の斬りつけ》
《氷の中の存在》を対処する。《引き裂く流弾》と枠を争うが、鱗親和を意識したため、こちらを採用した。
《儀礼的拒否》、《高山の月》
《高山の月》がトロンに対する最善のカードだが、鱗親和やエルドラージ、《虚空の杯》を採用したデッキにも対応できるように、《儀礼的拒否》と散らして採用することにした。この2枚の差が特別大きなものだとは思わないが、トロンが多く、無色のデッキがほとんどいないと予想されるのならば、《高山の月》を増やすだろうね。
《削剥》
サイドボードで一番弱いだろうけど、利便性が高いのも事実であり、早い段階から少なくとも2枚は採用すると心に決めていた。特筆して良いカードになることも少ないが、多様な相手に対してサイドインできるものであり、腐ってしまう《外科的摘出》と入れ替えたりする。
《血染めの月》
これほど意外性のないカードもないだろうね。《血染めの月》はこのデッキにとてもマッチしている。イゼットフェニックスは本質的にアグレッシブであるから、ディフェンシブなデッキではなし得ないような役割を《血染めの月》には期待できるんだ。《血染めの月》は直接勝利を狙うのではなく、少しだけ時間を稼いでくれればそれで十分なのさ。
《貪欲な罠》
ドレッジ対策として最高の1枚。これをケアして立ち回るのは中々できることじゃない。
《反逆の先導者、チャンドラ》
《弾けるドレイク》と比較するとプレインズウォーカーは見劣りすることがほとんどだから、イゼットフェニックスにプレインズウォーカーをあまり入れたいと思わない。《反逆の先導者、チャンドラ》の最大の魅力は、アグレッシブなデッキに対して比較的サイドインしやすいことだ。優秀な除去とは言えないけど、除去であることに変わりはない。
イゼットフェニックスでは驚くほど平凡だった《精神を刻む者、ジェイス》を採用するならば、2枚目の《反逆の先導者、チャンドラ》を使うだろうね。《イゼット副長、ラル》は、唱えられれば十分な働きを見せてくれることがほとんどだったけど、このデッキに5マナは重すぎるという印象が拭えない。
《粉砕の嵐》
《発明品の唸り》プリズンを使うアンドレアに何度も負けた後、彼のアドバイスに従って採用したカードだ。《発明品の唸り》プリズンと対戦する場合、単体のカードでこれほど勝率を高めてくれるものはない。ミシックチャンピオンシップ本番では、見事に《発明品の唸り》プリズンと当たり、実際にこの《粉砕の嵐》を引き込むことができた。
《神々の憤怒》
単体で見ればそこまで優秀ではないが、5色人間とドレッジのいずれにもサイドインできるものが欲しかったんだ。両方のデッキに有効なカードを見つけるのは骨が折れる。それにこのカードをケアするのはとても難しいし、デッキリストが公開されているから《翻弄する魔道士》で指定しなければならない場面も出てくるんだ。
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン本番
初日
ドラフト
初日のドラフトは、《進化の賢者》を初手で取り、その後も緑のカードを何枚かピックしたが、最終的には卓で非常に空いていると感じた黒赤になり、そこそこの出来に仕上がった。
1回戦は、3ターン目《ビヒモスを招く者、キオーラ》、4ターン目《世界を揺るがす者、ニッサ》、5ターン目《灯の分身》とテンポ良く展開されて敗北。ドラフトラウンドを1-2で終え、(見当違いにも)今大会は流れが良くないなと思っていた。
構築
構築ラウンドの初戦はアミュレットタイタン。1ゲーム目は勝利、2ゲーム目は2ターンキルで敗北。3ゲーム目は、記憶に残るかなり劇的な逆転だったね。《集団意識》による契約死を回避し、そこから唯一の勝ち筋であった《血染めの月》を引き込んで勝利したんだ!
それからというもの、カードが俺の味方をしてくれたため、初日を6-2で終えることができた。最終戦は、《虚空の杯》、《罠の橋》、《虚空の力線》をメインデッキに入れた珍しいプリズンデッキに勝利した。彼のデッキリストを見たときは、やばいデッキを踏んでしまったなと思ったよ。
Bounced back like a (UR) Phoenix into a decent 6-2 day. Seeing how it started, Modern went well. More tomorrow! #MythicChampionshipII pic.twitter.com/TdcomZogU6
— Javier Domínguez "Thalai" (@JavierDmagic) 2019年4月26日
「不死鳥のように勢いを取り戻して初日を6-2で終えることができた。ドラフトの成績を考えれば、モダンは好調だったね。明日も頑張ろう!」
2日目
ドラフト
2日目のドラフトは《ラゾテプの肉裂き》という残念なスタートになった。青いカードをたくさん取っていくと、《龍神、ニコル・ボーラス》を2パック目の初手でピックできたため、以降のドラフト方針が決まったんだ。青を濃く、黒を少し、赤をタッチしたピックをしていたところ、遅めの順手で流れてきたのは《炎の職工、チャンドラ》。しかし、マナベース的に厳しいだろうと判断し、ピックしないことに。運が再び味方してくれたようで、数時間後に《龍神、ニコル・ボーラス》でその《炎の職工、チャンドラ》を破壊できたんだ。
《龍神、ニコル・ボーラス》ですべてのゲームを勝利した俺は2連勝し、ペトル・ソフーレク/Petr Sochurekとの全勝対決もものにした。総合成績を9-2という十分な成績で構築ラウンドに向かうことになった。
My draft decks from the #MythicChampionshipII 1-2 and 3-0 respectively. Full Bolas flavor in both drafts! pic.twitter.com/eLVYipMvHY
— Javier Domínguez "Thalai" (@JavierDmagic) 2019年4月30日
「ミシックチャンピオンシップのドラフトデッキ。左の写真が初日のもので1-2、右の写真が2日目で3-0。どちらもニコル・ボーラス要素満載だね!」
構築
いくつかの構築ラウンドを終えると、トップ8を賭けた戦いで立ちはだかったのはマジック・プロリーグ所属のセス・マンフィールド/Seth Manfieldだった。彼はどんな時でも強敵であり、今回はドレッジを使用していた。決して最高の状況とは言えないけど、成功を収めるには最強の敵を倒さなくちゃいけないときもあるんだ。
セスに勝利し、2度目のミシックチャンピオンシップトップ8!とても運に恵まれたと感じると同時に、友人のサポートに本当に感謝しようと思った。グランプリ・ロンドン2019が併催されていたため、普段ミシックチャンピオンシップで見かけない友人たちと、トップ8に入れた喜びを分かち合うことができた。
3日目
日曜日。準々決勝の相手は、この大会を優勝することになるイーライ・ラヴマン/Eli Lovemanだ。彼はとてもフレンドリーなプレイヤーであり、チャンピオンにふさわしいのは目に見えて明らかだった。
笑顔と共に会場を後にした。ついこの間まで、ミシックチャンピオンシップでトップ8に入ることは夢のまた夢だと感じていた。しかしそれも昔の話。今は再びこの偉業を成し遂げられた喜びを噛みしめている。あ、それから中華料理でどんちゃん騒ぎするのも楽しみだったね。
サイドボードガイド ~各種マッチアップ解説~
ここまで全部読んでくれた人たちはいるかな……?おお!ありがとう!
ここから読み始めた人たち……こんにちは!
ここでは主要なマッチアップでのサイドボード入れ替え、それから戦い方についても軽く触れていくよ。前もって言っておくけど、《弾けるドレイク》はほとんどのマッチアップでサイドインする。
イゼットフェニックス
《氷の中の存在》は、デッキの中で一番重要な存在だ。《紅蓮術士の昇天》も干渉されづらいため、非常に頼もしい。
対 イゼットフェニックス
トロン
《紅蓮術士の昇天》が手札にあったり、《弧光のフェニックス》が劇的にクロックを早めるのであれば話は別だけど、相手がトロンとわかっているならば、1ゲーム目は1ターン目から《思考掃き》の対象を相手にするようにしている。手札に《外科的摘出》がなかったとしてもね。相手のウルザ土地が《思考掃き》で墓地に落ちることを祈ろう!
対 トロン
5色人間
《霊気の薬瓶》のカウンターが2つのときは、《目覚めた恐怖》で攻撃するのに注意が必要だ。《幻影の像》が返しのターンに襲いかかってくるかもしれないからね。
対 5色人間
ドレッジ
対 ドレッジ
黒緑ミッドレンジ、ジャンド
対 黒緑ミッドレンジ、ジャンド
《死の影》
《死の影》に対しては、可能なら後手を取る。また、長期戦で最終的に勝ちやすいのは相手であることが多いため、長期戦になって勝ちがあまり見込めないのであれば、《頑固な否認》1枚に負ける状況だとしても相手を倒しに行った方が良い。
サイドボード後は、《弧光のフェニックス》が4マナ3/2飛行速攻としても心強いことが多々ある。《信仰無き物あさり》で捨てる前に少し考えてみよう。
対 《死の影》
アミュレットタイタン
対 アミュレットタイタン
バーン
《血染めの月》を入れるのは、相手の白いカードに干渉するためだ。設置できれば相手は間違いなくそれらを唱えられなくなる。
対 バーン
鱗親和
対 鱗親和
《実験の狂乱》親和
対 《実験の狂乱》親和
アドグレイス
《紅蓮術士の昇天》が手札にない限りは、《思考掃き》は常に相手を対象に唱えよう。《外科的摘出》で追放する目的もあるけど、相手の勝ち筋となるカードをたまたま墓地に落とすこともあるからだ。
対 アドグレイス
青白コントロール
対 青白コントロール
タイタンシフト
ここでも《思考掃き》の対象は相手にしよう。
対 タイタンシフト
マルドゥパイロマンサー
対 マルドゥパイロマンサー
《発明品の唸り》プリズン
このマッチアップは、腕が試される。多種多様なプレイが想定され、その判断が大きな違いを生んでしまうんだ。たとえば、《思考掃き》で《アカデミーの廃墟》による回収を遅らせるとかね。先手でキャントリップ呪文が多い手札なら、2ターン目は《紅蓮術士の昇天》や《氷の中の存在》ではなく、キャントリップ呪文を2つ唱えるようにした方が良い。そうすれば、《虚空の杯》によるリスクを最小限に抑えることができるんだ。
対 《発明品の唸り》プリズン
ここまで読んでくれてありがとう!またね!