みなさんこんにちは。
新環境のスタンダードを楽しんでいますか? 『灯争大戦』がリリースされ、SCGO Richmondや『灯争大戦』環境初陣戦、また各地でMCQが開催されましたね。
今回の連載ではSCGO Richmondと先週末にMagic Onlineで開催されたStandard MCQの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Richmond
新環境を焼き尽くすMono Red Aggro
2019年5月4-5日
- 1位 Mono Red Aggro
- 2位 Mono Red Aggro
- 3位 Mono Red Aggro
- 4位 Esper Control
- 5位 Selesnya Tokens
- 6位 Bant Midrange
- 7位 Esper Control
- 8位 Bant Midrange
Will Pulliam
トップ8のデッキリストはこちら
大会直前のMOリーグの結果からSimic Nexusが有力な選択肢とされていましたが、苦手なMono Red Aggroが多く勝ち残り、旧環境で相性が良かったEsper Controlも以前ほど有利でなくなったこともあり、2日目のラウンドで失速していきました。
Mono Red Aggroは環境初期で勝ちやすい傾向にあり、速度に加えて《実験の狂乱》や《炎の職工、チャンドラ》によってロングゲームにも対応できます。新セットからの収穫は少なかったものの今大会の勝ち組でした。
新しいカードを多数採用したデッキでは、Bant MidrangeとEsper Midrangeがトップ16以内に入賞していました。
SCGO Richmond デッキ紹介
「Mono Red Aggro」「Esper Control」「Bant Midrange」「Esper Midrange」
Mono Red Aggro
旧環境からお馴染みのMono Red Aggro。速いクロックと火力は《根の罠》ではカバーしきれず、Simic Nexusにとって非常に不利なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
今大会で見事に優勝を果たしたWill Pulliam選手は、メインから《炎の職工、チャンドラ》をフル搭載していました。《実験の狂乱》と同じ4マナのアドバンテージ源ですが、《実験の狂乱》と異なり2枚目以降も腐りにくく、《屈辱》などで破壊されないのが強みです。同型戦では《実験の狂乱》と比べ、より確実なフィニッシャーとして機能します。Esper Controlなどに強い《危険因子》と一緒に使うことを考えると、《炎の職工、チャンドラ》の方が主流になりそうです。
アドバンテージ源となるカードの枚数、選択は各プレイヤーによって差異があります。同型戦を意識していた選手はメインから《実験の狂乱》や《炎の職工、チャンドラ》採用していたのに対し、今大会で準優勝したCollins Mullen選手は、コントロールに強い《危険因子》をメインから採用していました。
《無頼な扇動者、ティボルト》はEsperカラーのデッキが使う《永遠神の投入》や《黎明をもたらす者ライラ》、《ケイヤの誓い》などのライフゲインを対策可能で、今回上位入賞していた全てのMono Red Aggroのサイドに採用されていました。
Esper Control
2 《暴君の嘲笑》
2 《ドビンの拒否権》
2 《渇望の時》
4 《吸収》
2 《屈辱》
4 《ヴラスカの侮辱》
3 《ケイヤの怒り》
2 《薬術師の眼識》
2 《アズカンタの探索》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-呪文 (34)-
3 《強迫》
2 《肉儀場の叫び》
2 《時を解す者、テフェリー》
1 《灯の燼滅》
1 《渇望の時》
1 《永遠神の投入》
1 《ケイヤの誓い》
1 《人知を超えるもの、ウギン》
-サイドボード (15)-
SCGO RichmondではMono Red Aggroが猛威を振るいましたが、Esper Controlもプレイオフに2名入賞しています。『灯争大戦』から追加されたカードが多く、旧環境で苦手としていたNexus系のデッキとのマッチアップも以前と比べると改善が見られます。
モダンのSCGOをEsper Controlで入賞していたZach Allen選手は、スタンダードのSCGOでもEsper Controlで結果を残したコントロールデッキの名手です。《危険因子》型のMono Red Aggroに惜しくも敗れましたが、構成次第で互角以上に戦えます。
☆注目ポイント
《戦慄衆の将軍、リリアナ》は、《ドミナリアの英雄、テフェリー》と共にこのデッキのフィニッシャーを務めます。[-4]能力はこのデッキにとって厄介な《殺戮の暴君》に対する回答になります。
レガシーやモダンでも活躍している《覆いを割く者、ナーセット》は、クリーチャーデッキに対して《ケイヤの怒り》を探してこれたり、ドロースペルを多用するIzzet Drakeやコントロール同型に強いプレインズウォーカーです。
《時を解す者、テフェリー》は環境のほとんどのマッチで活躍します。コントロール同型では、相手がカウンターを使えなくなるので確実に脅威を通せるようになり、Nexus系の《荒野の再生》もまともに機能しなくなります。[-3]能力でテンポ面でも有利になり、[+1]能力によってインスタントタイミングで《ケイヤの怒り》や《思考消去》をキャストできるので、速攻クリーチャーやトップデッキにも対応しやすくなります。
サイドの《人知を超えるもの、ウギン》は、どちらの能力も使いやすく《戦慄衆の将軍、リリアナ》と同様にこのデッキのフィニッシャーとして採用されています。
Bant Midrange
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
4 《内陸の湾港》
3 《陽花弁の木立ち》
2 《氷河の城砦》
-土地 (24)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《成長室の守護者》
4 《培養ドルイド》
4 《ハイドロイド混成体》
2 《秋の騎士》
2 《拘留代理人》
4 《エリマキ神秘家》
2 《豊潤の声、シャライ》
3 《永遠神オケチラ》
-クリーチャー (29)-
2 《黎明をもたらす者ライラ》
2 《ドビンの拒否権》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《時の一掃》
2 《ビビアン・リード》
1 《拘留代理人》
1 《秋の騎士》
-サイドボード (15)-
《成長室の守護者》や《培養ドルイド》といった「順応」持ちのクリーチャーや《ハイドロイド混成体》など、Sultai Midrangeでも使われたカードが多く見られますが、黒の代わりに白を足すことで《時を解す者、テフェリー》などにアクセスできるようになりました。
《ハイドロイド混成体》や《時を解す者、テフェリー》などにより、ほかのミッドレンジやコントロールに強い構成ですが、今大会で多数入賞していたMono Red Aggroのようにクロックが速いデッキを苦手とします。
☆注目ポイント
《時を解す者、テフェリー》や《野獣の擁護者、ビビアン》を《ラノワールのエルフ》から2ターン目に展開できれば、相手ターンに自由に動けるのでプレッシャーをかけやすくなります。場に出たときの能力を持つクリーチャーを多数採用しているので、《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力で使い回すことによってさらにアドバンテージを稼ぐことができます。特に《ハイドロイド混成体》を使い回せばアドバンテージに大きな差を付けられます。
フィニッシャーの《永遠神オケチラ》は、中盤以降に引いてきたマナクリーチャーを有効活用する手段になり《成長室の守護者》ともシナジーがあります。
サイドの《時の一掃》は、《ハイドロイド混成体》や《エリマキ神秘家》などを回収しつつ場を一掃するので、このデッキと相性が良い全体除去です。
Esper Midrange
1 《沼》
4 《神聖なる泉》
4 《神無き祭殿》
4 《湿った墓》
4 《孤立した礼拝堂》
4 《氷河の城砦》
4 《水没した地下墓地》
-土地 (26)- 4 《第1管区の勇士》
4 《正気泥棒》
3 《人質取り》
-クリーチャー (11)-
2 《ドビンの拒否権》
2 《灯の燼滅》
4 《屈辱》
2 《永遠神の投入》
3 《時を解す者、テフェリー》
1 《復讐に燃えた血王、ソリン》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
2 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-呪文 (23)-
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019でもプレイオフ進出を果たし、好調のBrian Braun-Duin選手。今大会ではプレインズウォーカーを多数搭載したEsper Midrangeで惜しくもプレイオフ進出は逃したものの、トップ16という好成績を残していました。
ほとんどのスペルが多色で《第1管区の勇士》とのシナジーを重視した構成になっています。『灯争大戦』からのカードが多く、多色カードが中心なのでデッキパワーが高めです。
☆注目ポイント
Esper Controlと異なりEsper Midrangeは、2ターン目《第1管区の勇士》、3ターン目《正気泥棒》と能動的に動きます。メインから採用された《永遠神の投入》によってMono Red Aggroに対して有利にゲームを進めやすくなっています。
フィニッシャーとして《戦慄衆の将軍、リリアナ》が2枚採用されています。[-4]能力で《第1管区の勇士》のトークンをドローに変換しつつ相手の場を捌く動きは強力です。6マナと重いので土地の枚数はミッドレンジとしては多めの26枚となっています。
《復讐に燃えた血王、ソリン》は、除去されやすい《第1管区の勇士》や《正気泥棒》を場に戻したり、[+2]能力で相手のプレインズウォーカーに対して牽制することができます。また、常在型能力のライフゲインも無視できません。
新たに加入した《灯の燼滅》は、《戦慄衆の将軍、リリアナ》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》、《人知を超えるもの、ウギン》などフィニッシャー級のパーマネントをわずか2マナで追放できる非常に優秀な除去です。
Standard MCQ
Izzet Phoenixが2週連続で予選通過
2019年5月13日
- 1位 Izzet Phoenix
- 2位 Esper Midrange
- 3位 Azorius Aggro
- 4位 Esper Midrange
- 5位 Mono Red Aggro
- 6位 Azorius Aggro
- 7位 Mono Red Aggro
- 8位 Grixis Midrange
トップ8のデッキリストはこちら
今回おこなわれたStandard MCQは、先週末から引き続いてIzzet Phoenixが優勝を果たしました。《肉儀場の叫び》が減少傾向にあったのも追い風です。Esper Midrangeは優勝こそ逃したものの、今大会ではプレイオフに3名と安定した成績を残していました。
Standard MCQ デッキ紹介
「Izzet Phoenix」「Azorius Aggro」
Izzet Phoenix
6 《山》
4 《蒸気孔》
4 《硫黄の滝》
-土地 (21)- 3 《ボーラスの占い師》
3 《ゴブリンの電術師》
4 《弧光のフェニックス》
3 《弾けるドレイク》
-クリーチャー (13)-
4 《ショック》
1 《呪文貫き》
4 《航路の作成》
3 《約束の終焉》
3 《急進思想》
2 《溶岩コイル》
2 《苦しめる声》
1 《稲妻の一撃》
1 《標の稲妻》
1 《発見/発散》
-呪文 (26)-
3 《焦熱の連続砲撃》
2 《溶岩コイル》
1 《ボーラスの占い師》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
1 《呪文貫き》
1 《シヴの火》
1 《否認》
1 《終局の始まり》
1 《アズカンタの探索》
-サイドボード (15)-
2週連続で予選通過者を出し注目を集めているIzzet Phoenix。《ショック》など軽い火力除去や優秀なブロッカーである《ボーラスの占い師》のおかげで、SCGO Richmondで猛威を振るったMono Red Aggroに対しても強いデッキです。
☆注目ポイント
再録された《ボーラスの占い師》は、軽いスペルを多数採用したこのデッキに合ったクリーチャーで、Mono Red Aggroの序盤の猛攻を食い止めます。
《約束の終焉》は墓地が肥える中盤以降に強力なアドバンテージ源として機能します。墓地にソーサリーとインスタントが2枚以上あれば、このカード1枚で《弧光のフェニックス》を墓地から戻すことができます。
サイド後は《軍勢の戦親分》や《パルン、ニヴ=ミゼット》が投入され、多角的な攻めができるのもこのデッキの特徴です。《終局の始まり》は、過去のスタンダードで活躍していた《奔流の機械巨人》+《天才の片鱗》を彷彿とさせます。カウンターされないのでコントロールとのマッチアップで切り札になります。
Azorius Aggro
4 《神聖なる泉》
4 《氷河の城砦》
-土地 (20)- 4 《不屈の護衛》
4 《空渡りの野心家》
4 《短角獣の歩哨》
3 《法ルーンの執行官》
3 《アダントの先兵》
4 《ベナリアの軍司令》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (26)-
フォーマットを跨いで活躍している《時を解す者、テフェリー》は、Azorius Aggroでも採用されています。
Azorius Aggroは、小型クリーチャーを展開しながら《敬慕されるロクソドン》や《議事会の裁き》といった「召集」スペルを活用し、相手を速やかに倒すことを目的としたデッキです。《ベナリアの軍司令》や《ベナリア史》といった全体強化によって押し切りやすく、弱点である《ケイヤの怒り》や《肉儀場の叫び》といった全体除去をカウンターできるよう青をタッチしたバージョンが主流です。
☆注目ポイント
環境の様々なデッキに採用されている《時を解す者、テフェリー》は、このデッキでも《残骸の漂着》や《根の罠》といったカードの対策になり、特にSimic Nexusやコントロールとのマッチアップで活躍します。[-3]能力で《議事会の裁き》を使い回せることは覚えておきましょう。《黒き剣のギデオン》と《時を解す者、テフェリー》を並べられれば、安全に《黒き剣のギデオン》の攻撃を通しに行くことができます。
《ゴブリンの鎖回し》をケアしてタフネス1のクリーチャーの採用は最低限に留められています。《法ルーンの執行官》はタフネス2であり、能力で《黎明をもたらす者ライラ》など大型クリーチャーを止められる優秀なクリーチャーです。
《否認》に変わって採用された《ドビンの拒否権》は、能動的な戦略であるこのデッキにとっては大きな収穫です。《時を解す者、テフェリー》がメイン、サイドと合わせてフル搭載されているので、追加の青マナ源として《島》がサイドに忍ばせてあります。
総括
『灯争大戦』は前評判通り、環境を激変させる強力なセットでした。Mono Red AggroやEsper Controlなど既存のデッキも強化されていますが、Esper MidrangeやBant Midrangeなど旧環境では比較的マイナーな立ち位置だったデッキも、各種プレインズウォーカーなど新戦力を多数獲得し大きな大会でも結果を残しています。
今週末にはアメリカではSCGO Syracuse、MOCS2019が開催されるのでスタンダード好きの方はお見逃しなく。
以上USA Standard Express vol.147でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!