Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/05/22)
はじめに
みなさんはじめまして。ヨナタン・アンゲレスク/Jonathan Anghelescuと申します(Magic Onlineのアカウント名であるJPA93と紹介した方がピンと来るかもしれませんね)。今回は、私がレガシーで愛好しているデッキをテーマにした記事を晴れる屋に寄稿することになり、本当に嬉しく思います。楽しくも情報量の多い記事となるよう精一杯頑張りますね!
さて、ここ数か月の私のMagic Onlineの成績をチェックしてみると、あることに気づくはずです。《狡猾な願い》を採用したスニーク・ショー(以下、オムニ・スニーク)と昔ながらのタイプとを行ったり来たりしているのです。
こうしてデッキを入れ代わり立ち代わりしている理由を尋ねられることは何度もありました。その時々のメタのトレンドが一因となっているのも事実ですが、ほとんどは単純に色々な構築を試してみたいからです。ただ勝利を目指すだけであれば、おそらくオムニ・スニークを使うでしょうね。
オムニ・スニークの歴史
オムニ・スニークは、2016年が始まって間もない頃に開催されたMagic Online Championship(MOCS)のために創り出したもので、デス&タックスとの相性改善、《実物提示教育》ミラーで有利をつけることを狙いとしていました。
《狡猾な願い》を採用し、《全知》に重きを置いたスニーク・ショーは過去にもいくつかありましたが、洗練されておらず、カードの選択に疑問が残る部分もあったのです。数か月間の調整をした結果、私は以下のデッキリストへとたどり着きました。MOCSのレガシー部門で3-0を収め、トップ4に入賞するきっかけになったのです。
それから数年にわたり、デッキリストは小さな変化を遂げていきましたが、デッキの根幹となる構築はオリジナルのものから大きく変わることは一度もありませんでした。昔ながらのスニーク・ショーに戻ることは何度もありましたし、デッキ単体としては安定度が高い構築だと認めざるを得ないでしょう。しかしながら、私個人のプレイスタイルに合っていること、《狡猾な願い》によって1ゲーム目の対応力が高いこと、デス&タックスや《虚空の杯》デッキとの相性が劇的に改善されたこともあり、私はオムニ・スニークの方が好みだったのです。
マジック25周年記念プロツアーの調整はとても興味深いものとなりました。大会のたった1か月前に《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》が禁止されたのです。私が参加したレガシー調整チームは、ジャービス・ユー/Jarvis Yu、ロブ・ピサーノ/Rob Pisano、トミー・アシュトン/Tommy Ashton、パスカル・メイナード/Pascal Maynard、スコット・リップ/Scott Lipp、マット・リンデ/Matt Linde、クリス・ピキュラ/Chris Pikulaという豪華なメンバーが揃っていました。新たに開けた環境になったレガシーがどうなるのか気になっていましたし、どんなものでも試してみようという心構えでした。しかし同時に、最後には《実物提示教育》を使ったデッキに収まるだろうという確信もありました。
チームは青単《アンティキティー戦争》やスティールストンピィといった非常に出来が良さそうなものを調整していましたが、私が最愛のデッキから離れようと思えるほどではありませんでした。そういうわけで、ティムール《ボーマットの急使》やエスパーデルバーなどの一風変わったオリジナルデッキを試した後に、すぐにスニーク・ショーの最善の形を模索することに特化し始めました。
ティムールデルバーは新環境において仮想敵となり、レガシーに精通している多くのプレイヤーが選択してくるであろうと予想していました。そこで私は《猿人の指導霊》や《目くらまし》を試し、デルバーとの相性を改善しようと考えました。
実際の感触は良かったものの、ティムールデルバーに対する勝率は50%を超えられませんでした。いついかなるときも、ほぼ全てのデルバー系統のデッキに対してせいぜい50:50の相性であるということは、スニーク・ショーというアーキタイプを使う以上受け入れなければならない宿命のようなものです。
《全知》を失ってみると、その偉大さがわかるようになり、プロツアー権利を獲得したグランプリ・サンタクララ2018で準優勝したときのデッキリストに近しいものを調整するようになりました。
1 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
3 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》
-土地 (19)- 4 《グリセルブランド》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー (8)-
《猿人の指導霊》を採用したタイプと《全知》を採用したタイプはプロツアーの調整段階で勝率が66%台を超えませんでした(それぞれ42勝21敗と104勝57敗)。また、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciのエルドラージ・ストンピィに立て続けに負けたため、オムニ・スニークを再び試してみようという気になったのです。それはデッキ提出締切の8日前のことでした。
私はオリジナルのデッキリストに小さな変更点をいくつか加えました。4枚目の《水蓮の花びら》、2枚目の《すべてを護るもの、母聖樹》を加え、ティムールデルバーを想定して21枚目の土地として運用しようと考えたのです。ここでもティムールデルバーに対する勝率は50%を超えることはありませんでしたが、全体的な勝率は劇的に改善されました。
滞在していたミネアポリスのホテルで最後に2回だけリーグに参加し、10-0を記録。最終的なデッキリストの勝率は77%(54勝16敗)で調整を終え、デッキに確信を持ったところでリストを提出しました。プロツアー本番では、チームの成績が9-5で20位、世界でも屈指のレガシーが揃う中で個人の成績も10-4であり、大満足の結果に終わりました。
プロツアー(2018年の8月)以降、私のオムニ・スニークのリストは当時の75枚のまま全く変わっていませんし、どんな大会でも使用候補の筆頭であり続けています。
ここからは、このデッキリストの構築やカード選択について詳細に解説していきます。
オムニ・スニークの構築について
メインデッキ
コンボパーツ
サイドボードに《狡猾な願い》からサーチできる《直観》がもう1枚あります。
コンボのパーツとなるものです。昔ながらのスニーク・ショーと違い3枚積みを多くしているのは、追加の《全知》を1枚と《狡猾な願い》を採用するための枠を作りたかったからです。《直観》は3枚積みが多いこの形に非常にフィットしており、欠けているコンボパーツを探すことができます。また、ときには打ち消し呪文をサーチしたり、複数のコンボパーツが必要な際には《渦まく知識》をサーチすることもあります。
《狡猾な願い》
《狡猾な願い》がなければ、オムニ・スニークは《全知》が3枚入っただけのスニーク・ショーになってしまいます。《狡猾な願い》は汎用性が高く、1ゲーム目からサイドボードのカードにアクセスできますし、《全知》があればインスタントタイミングでの勝利も可能です(下記のサイドボードの項目を参照ください)。また、《裂け目の突破》や《直観》を手札に加えれば、実質的にフィニッシャーを出す呪文になったり、コンボパーツになったりするのです。
キャントリップ呪文
デッキの安定性を求め、《定業》を3枚まで増やしたことが過去にありますが、キャントリップ呪文は上記の組み合わせ・枚数がデッキ全体のバランスとして最適です。《狡猾な願い》や《直観》は《定業》よりも遅いですが、正に求めているものを見つけられる確率は限りなく高いでしょう。《衝動》はサイドボードに採用されている《火想者の予見》からサーチしてくる2マナ域の呪文ですが、単体としても十分なスペックを持ったキャントリップ呪文です。
打ち消し呪文
採用している打ち消し呪文は、とても素直なものとなっています(《狡猾な願い》は《狼狽の嵐》や《紅蓮破》として機能することも覚えておいてください。普通は4マナかかってしまいますけどね)。当初は《呪文貫き》1枚、《狼狽の嵐》2枚の構成ではなく、《呪文貫き》を3枚にしていました。今後《時を解す者、テフェリー》や《覆いを割く者、ナーセット》、《大いなる創造者、カーン》が見た目通りの活躍をするならば、《呪文貫き》3枚の構成に回帰した方が良いかもしれません。
《狼狽の嵐》の魅力は、こちらがコンボを開始するターンに心強いことです。相手が2マナを余らせている状態でも《意志の力》を打ち消せますからね。また、オムニ・スニークと相性が互角であるストームに対しても効果は抜群です。この2枚の打ち消し呪文の枚数配分は予想されるメタゲームによって調整可能ですが、開けた環境やグランプリ規模の大会であれば《狼狽の嵐》2枚、《呪文貫き》1枚にするでしょう(繰り返しになりますが、『灯争大戦』のプレインズウォーカーの影響次第で変化します)。
マナベース
大きな確信を持って言えますが、これがオムニ・スニークにとって最高のマナベースです(これは他のスニーク・ショー系統のデッキの多くにも当てはまります)。基本土地の《山》はあまり必要ではありません。この構築では赤の要素が大きく減っていますし、初手に来て嬉しいことも滅多にありませんからね。
元々のデッキリストでは60枚に抑えるために《水蓮の花びら》を3枚にしていましたが、早々にコンボを決める確率を高めたり、マナ基盤を攻撃してくる相手に対抗するには4枚目が必須でした。
また、《水蓮の花びら》は《グリセルブランド》と相性が良いです。《騙し討ち》から展開し、効果によってドローした中に《水蓮の花びら》と《引き裂かれし永劫、エムラクール》があればそのターン中に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を《騙し討ち》から展開できるのです。あるいは《グリセルブランド》を展開した後、2回目の《実物提示教育》でコンボをスタートさせることもできます。
サイドボード
インスタントタイミングで勝つために必要なパッケージ
《狡猾な願い》で手札に加えるものであり、《全知》が戦場に出ている際にインスタントタイミングで勝つために必要なパッケージです。まず、《狡猾な願い》で《火想者の予見》を手札に加え、《火想者の予見》から《狡猾な願い》、《衝動》、《渦まく知識》をサーチします。必要があれば《衝動》を唱え、《引き裂かれし永劫、エムラクール》、《グリセルブランド》、《全知》といった点数で見たマナコストが重い呪文を探しに行き、《渦まく知識》でその呪文をライブラリーのトップに置きます。《狡猾な願い》で《蟻の解き放ち》を手札に加え、「激突」によって繰り返し唱え続けることで致死量のダメージを相手に与えられます。
《もみ消し》効果
《狡猾な願い》から加えられる《計略縛り》の《もみ消し》効果は、多くの場面で活躍が見込めるカードです。ですが、《計略縛り》の主な使い道は、相手の《秋の騎士》や《灰燼の乗り手》、《難題の予見者》などの誘発能力がスタックにある状況で、《火想者の予見》によるインスタントタイミングのコンボが決まらなかった場合の「安全弁」です。
例えば赤黒リアニメイトとの一戦で《実物提示教育》をキャストし、こちらは《全知》を、対戦相手が《灰燼の乗り手》を選んだと仮定しましょう。《灰燼の乗り手》の能力がスタックにある状況で、こちらが《グリセルブランド》やキャントリップ呪文しか見つけられなかった場合、相手のデッキには4枚の《グリセルブランド》が入っていることを考えると、《蟻の解き放ち》の「激突」で確実に勝つことはできません。
そういった場合は《狡猾な願い》で《計略縛り》を持ってくれば、《灰燼の乗り手》の能力を打ち消すことができます。そうすれば、こちらは自由に《グリセルブランド》やキャントリップ呪文を唱えられるようになるのです。
《狡猾な願い》で手札に加えるカード
《狡猾な願い》で手札に加えることができて有用性の高いものが揃っています。直面した状況に応じ、コンボパーツやフィニッシャーを展開する呪文、打ち消し呪文、単体除去、全体除去、バウンス呪文、墓地対策を持ってくることが可能です。《急流》を《残響する真実》や《拭い捨て》にする選択肢もありますが、デス&タックスやエルドラージが展開してくる厄介なパーマネントを複数バウンスしたい場面に何度も遭遇しました。
打ち消し呪文への最適解
《すべてを護るもの、母聖樹》は、伝統的なスニーク・ショーよりもオムニ・スニークの方が遥かに上手く運用できます。《実物提示教育》や《狡猾な願い》と相性が良いからですね。奇跡に対して最も頼りになるカードであり、相手に打ち消し呪文を使うタイミングをほとんど与えません。また、ミラーマッチでも非常に効果的ですし、デルバーデッキには20枚目、21枚目の土地として有用で、《不毛の大地》ですぐにでも破壊しなければならない状況も多いですね。
追加の全体除去
追加の除去。デス&タックス、部族デッキ、デルバーなどに対して時間を稼ぐためにサイドインします。
マッチアップとサイドボードガイド
奇跡
新戦力である《時を解す者、テフェリー》や《覆いを割く者、ナーセット》は《実物提示教育》戦略に効果的な能力を持つプレインズウォーカーですが、奇跡はかなり楽な相手であり、マッチングしても気になりません。
1ゲーム目では、《終末》や《剣を鍬に》など、ほぼ使い道のないカードが奇跡側には多く存在しますし、仮に《意志の力》、《対抗呪文》、《呪文貫き》といった必要な部分をドローされたとしても、1~2枚程度の打ち消し呪文を乗り越えて勝利するのはそう難しくないはずです。土地を順調に伸ばせる見込みがあるならば、《呪文貫き》をケアしたプレイを心がけましょう。
2ターン目に無防備な《実物提示教育》を唱えるか、次のターンに備えて《狡猾な願い》で《紅蓮破》か《狼狽の嵐》を手札に加えるかの選択肢があるなら、私は次のターンに備えることの方が多いです。コンボを仕掛けるタイミングを判断するのは、ある程度練習すればそこまで難しくないですし、《時を解す者、テフェリー》や《覆いを割く者、ナーセット》が奇跡の頼みの綱になりつつある現状では、3ターン目にタップアウトしてくることも珍しくないでしょう。返しのターンにコンボを開始できない、もしくは手札がキャントリップだらけの場合を除き、3ターン目の《覆いを割く者、ナーセット》に《意志の力》を使わなくてはならない状況はほとんどありません。
また、サイドボード前は無防備に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を《実物提示教育》から展開すると危険なので注意しましょう。そうせざるを得ない場合や、他に選択肢がないならば仕方ないですけどね。というのも、《終末》という明確な解答がありますし、《精神を刻む者、ジェイス》や《時を解す者、テフェリー》、《議会の採決》もありますから。
対 奇跡
相手がサイドインしてくる可能性があるものは《封じ込める僧侶》、たまに《ヴェンディリオン三人衆》、《エーテル宣誓会の法学者》、《宮殿の看守》があり、《狼狽の嵐》や《紅蓮破》、《赤霊破》などの追加の打ち消し呪文が投入されることも考えられます。さらに、《解呪》は《全知》を介したコンボを妨害してくるので、できることならばケアしてプレイしたいところです。
サイドボード後に最も優先すべきことは、《すべてを護るもの、母聖樹》を引き込むことです。2戦目以降も《実物提示教育》を序盤から押し通すプランもアリですが、相手の《狼狽の嵐》があるため、こちらも打ち消し呪文でバックアップできたとしても1戦目とは比較にならないほど通りづらくなっています。
相手が2ターン目に《平地》と青い土地を立ててきたら、《封じ込める僧侶》の可能性を考えるべきでしょう。この場合、《実物提示教育》からの《全知》が非常に有効となります。相手は《狼狽の嵐》か《封じ込める僧侶》のどちらかを選ばなければならないのですが、《封じ込める僧侶》を選択した場合に裏目に出るのです。
もし《全知》がない場合でも、《実物提示教育》で何らかのクリーチャーを出す動きを《意志の力》でバックアップできるなら、《封じ込める僧侶》の可能性があるにしろ《実物提示教育》を唱えるべきです。なぜならば、ここで1ターンを与えてしまうと、相手は《封じ込める僧侶》に加えて《狼狽の嵐》や《紅蓮破》を構えることができるからです。ですが、《平地》と青マナの出る土地の代わりに、青マナの出る土地2枚でターンを返してきたときは、あまり2ターン目に始動したくはないですね。
サイドボード後は《外科的摘出》の存在を忘れないようにしましょう。《すべてを護るもの、母聖樹》で安全なように思えても、《狡猾な願い》から《直観》を手札に加えるプランを台無しにするカードですからね。
十分に対戦経験を積み、相手の動きから手札にある妨害手段を察知できるようになれば、サイドボード後も自信が持てるようになるでしょう。もし不安があるのならば、《すべてを護るもの、母聖樹》を引くまで待つのが吉です。
デス&タックス
かつては、昔ながらのスニーク・ショーにとって最も戦いづらい相手の1つでした。《スレイベンの守護者、サリア》と《リシャーダの港》によるマナ否定戦略や、《騙し討ち》を指定した《ファイレクシアの破棄者》と《カラカス》による強固なロックを1ゲーム目から使ってくるのです。
対して、オムニ・スニークでは遥かに戦いやすくなり、相手にとっては非常にやりづらいデッキになりました。あらゆる角度からの攻撃を完全に塞ぐには、対策カードを適切な組み合わせで用意しなければならず、実質的に不可能であることも多々あります。
他の多くのマッチアップと同様に、《実物提示教育》から無防備の《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出すことを避け、《全知》や《グリセルブランド》、《騙し討ち》を引き込むまで待つようにしましょう。《宮殿の看守》が複数枚採用されることも増えてきたので、以前よりも《引き裂かれし永劫、エムラクール》を対処する手段が断然多くなっています。
《狡猾な願い》は《直観》から《全知》を手札に加えるルートにも使えますし、《突然のショック》や《コジレックの帰還》といった単体除去、全体除去も手札に加えることができます。《狡猾な願い》の一般的な用途は他にもあり、それは《古えの墳墓》や《裏切り者の都》によって2ターン目に唱え、除去を手札に加えた後に、フィニッシャーが手札にある状態で《騙し討ち》を3ターン目に設置することです。相手がメインデッキから《議会の採決》や《レオニンの遺物囲い》を採用していることはあまりありませんから、マナ否定戦略に引っかからないように思い切って《騙し討ち》を出してしまいましょう。
遅めの手札ならば、《霊気の薬瓶》は確実に打ち消さなければなりません。《霊気の薬瓶》のカウンターが2個になる前にコンボを決められるのなら、《霊気の薬瓶》を打ち消す必要はなく、《意志の力》を2ターン目の《スレイベンの守護者、サリア》や《ファイレクシアの破棄者》のためにとっておきましょう。1ターン目に《霊気の薬瓶》を設置されなければ、非常に戦いやすくなります。相手はクリーチャーを展開するか、それとも《リシャーダの港》の能力を起動するためにマナを温存するのか、難しい判断を迫られるのです。
対 デス&タックス
《突然のショック》は、3を指定してきた《聖域の僧院長》へのひとつの解答としてサイドインします。デス&タックス側の対策カードはメインデッキにすでに搭載されているため、サイドボード後に投入されるものは多くありません。入れてくる可能性があるとすれば、《全知》に対する追加の除去・解答です。《解呪》や《議会の採決》、《レオニンの遺物囲い》、《エーテル宣誓会の法学者》がそれに該当しますね。
1ゲーム目では腐っていた《狼狽の嵐》を抜き、《紅蓮地獄》をサイドインできるため、相性はさらに良くなります。2本目以降のゲーム展開は、1ゲーム目と大差はありません。ただ、相手が解答を増量させてくるので、《騙し討ち》を展開する際には注意が必要ですけどね。
《封じ込める僧侶》はオムニ・スニークに対してそれほど効果的とは言えず、デス&タックス自身の方が困ってしまう局面も多々あります。というのも、《霊気の薬瓶》が使えなくなりますし、《全知》を対処するために《実物提示教育》から《レオニンの遺物囲い》や《ちらつき鬼火》を展開することもできなくなるからです。
過度に気をつける必要もないですが、中には《外科的摘出》をサイドインしてくるプレイヤーもいるので、《直観》を使うルートを辿る際には《外科的摘出》の存在を頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
デルバー(青赤、グリクシス、青白)
オムニ・スニークの歴史の項で書いたように、デルバー戦略は《実物提示教育》デッキにとってほぼ50:50の相性であり、間違いなく当たりたくない相手のひとつです。青赤デルバーはグリクシスカラーよりもクロックが早いですが、スタック上で介入するしか方法がなく、手札破壊や《リリアナの勝利》(ここ最近までは《悪魔の布告》でしたね)を使えません。したがって、デルバー戦略の中でも最も戦いやすいものとっています。
《不毛の大地》で負けないように毎ターン土地を置いていくことを心がけ、相手がタップアウトするか、できるだけ多くの不確定打ち消し呪文に対してマナを支払えるようになるまで待ちましょう。最近は《呪文貫き》を3枚もメインデッキに入れていることが多いため、できることならば《目くらまし》1枚、《呪文貫き》1枚をケアしたうえで動きたいところです。フィニッシャーを展開する手段が手札に複数あることも多いでしょうから、そのような場合に往々にして正しいプレイは、1枚目は《目くらまし》だけをケアしてプレイしてしまい、それが《呪文貫き》に打ち消されてしまったのなら続くターンに2枚目を唱えることです。
相手が1ターン目に《秘密を掘り下げる者》を展開してタップアウトし、こちらの先手2ターン目に《意志の力》のバックアップや《目くらまし》にマナを支払う余裕がある状態でコンボを開始できそうなら、大抵はコンボを開始してしまって構いません。《思考囲い》を擁するグリクシスカラーであれば尚更です。相手が《目くらまし》と《意志の力》を持っていたり、《意志の力》を2枚持っていたら敗色濃厚ですが、相手にターンを返してキャントリップ呪文から打ち消し呪文を探されたり、《呪文貫き》を構える余裕を与える方がよっぽど危険であることが多いです。
対 青赤デルバー
対 グリクシスデルバー
対 青白デルバー
《全知》と《狡猾な願い》のパッケージは動きが鈍いので、大抵のデルバー戦略には不要です(青白デルバーには《封じ込める僧侶》への対策として《全知》を残します)。代わりに《狡猾な願い》の対象となる、影響力の大きいインスタント呪文をサイドインします。
《すべてを護るもの、母聖樹》を《不毛の大地》から守るために《計略縛り》をサイドインして何度か上手くいったこともありましたが、それよりも腐ってしまう局面の方が圧倒的に多かったですね。もしもマナが潤沢な手札であり、《すべてを護るもの、母聖樹》と《実物提示教育》もあるのなら、相手の《不毛の大地》を2マナ土地や《Volcanic Island》で釣りだしましょう。
デルバーは追加の打ち消し呪文を投入してくるでしょう(どの色であれ《狼狽の嵐》をサイドボードに採用していますし、赤を含むタイプは《紅蓮破》もあります)。時には1枚積みの《真髄の針》や、確率は低いですが《ヴェンディリオン三人衆》で妨害してくることもあります。
青白デルバーは《封じ込める僧侶》、《エーテル宣誓会の法学者》、《解呪》系を使用できます。赤を含むデルバーはクロックや《稲妻》、《稲妻の連鎖》を部分的にサイドアウトしてくるでしょうから、普通は2本目以降の方がマナベースを構築する猶予が与えられます。《紅蓮地獄》と《突然のショック》は相手のクロックを低下させ、手札を整えてからコンボを適切なタイミングで開始する時間を創出してくれますね。
青白石鍛冶
ここ数か月で多少の人気を取り戻したアーキタイプです。1ゲーム目は相手の《呪文貫き》の採用枚数に左右されます(2~3枚が一般的なようです)。とはいえ、《呪文貫き》があったとしても1ゲーム目は相性が良いです。相手には《剣を鍬に》のような腐るカードがありますからね。
《石鍛冶の神秘家》は無視できないクロックで攻めてきますが、2ターン目に《石鍛冶の神秘家》を展開するためにタップアウトしてきたら、その隙をついてコンボを決められることも多々あります。このマッチでも無防備に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出すのは危険です。相手には《議会の採決》が2枚、《精神を刻む者、ジェイス》が2~3枚、場合によっては《カラカス》や《宮殿の看守》が入っていますからね。
タップアウトしてでも《騙し討ち》を設置した方が良い場合もあります。《議会の採決》で除去されてしまうリスクよりも、《呪文貫き》や《対抗呪文》で打ち消されるリスクが高いと判断したような場合です。
対 青白石鍛冶
奇跡と同様に、サイドボード後に相手は《封じ込める僧侶》や《宮殿の看守》といったヘイトベア―、追加の打ち消し呪文である《狼狽の嵐》、《解呪》系の呪文を投入してきます。
奇跡と事情が異なるのは、《すべてを護るもの、母聖樹》を引き込むまで待ちづらいことです。《石鍛冶の神秘家》から導かれる《殴打頭蓋》や《火と氷の剣》が素早くクロックを刻んできますからね。
相手が《意志の力》のバックアップもなしに2ターン目に《石鍛冶の神秘家》を展開してタップアウトしてくることは滅多にありません。ですが、こちらも打ち消し呪文によるバックアップがあるのなら、すかさずその隙を狙っていきましょう。2ターン目の《石鍛冶の神秘家》に《紅蓮地獄》を使うのも、序盤にありがちな流れです。《石鍛冶の神秘家》にはためらわずに除去を使いましょう。《封じ込める僧侶》に対抗する術は多く残されています。
グリクシスコントロール
《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》が禁止されてからというもの、グリクシスコントロールは安定した勢力を保っています。ここ数週間、数か月で人気が多少落ちてきているようですけどね。
マジック25周年記念プロツアーの調整では、オムニ・スニークで11-0を記録した相手です。それほどまでに一方的な相性差ではないですが、それでも間違いなく非常に有利なマッチアップです。グリクシスコントロールにはほぼ間違いなくメインデッキに2枚の《リリアナの勝利》(従来は《悪魔の布告》)が入っているので、無防備に《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を展開すると1ゲーム目も負けてしまう可能性があります。とはいえ、キャントリップ呪文、または《狡猾な願い》を相手のターンに唱えるといった選択肢を持ちあわせていないのであれば、奇跡や青白石鍛冶戦とは異なり、大抵は待つのではなくコンボを仕掛けるべきです。なぜかと言いますと、相手のデッキには《リリアナの勝利》よりも手札破壊呪文の方が多く入っているからです。
序盤に《思考囲い》や《トーラックへの賛歌》が唱えられているなら、《瞬唱の魔道士》で再利用されてしまいますしね。手札破壊呪文を多く引かれてしまうと厄介なことになりますが、1ゲーム目は相手の除去が腐るので、大抵は余裕を持ったゲーム運びができるでしょう。《グルマグのアンコウ》は大きなクロックですから、序盤の手札破壊呪文から4~5ターン目の《グルマグのアンコウ》が1ゲーム目に最も負けやすいルートとなります。
対 グリクシスコントロール
相手が《グルマグのアンコウ》を抜いてくるようなら、《古えの墳墓》ではなく《裏切り者の都》をサイドアウトします。
ゲーム展開はサイドボード前とあまり変わりません。ただ、プレイは難しくなります。というのも、相手は腐っていた除去の代わりに《狼狽の嵐》や《紅蓮破》、《水流破》といった打ち消し呪文を入れてくるからです。
手札破壊呪文があるため、《すべてを護るもの、母聖樹》は他の黒を含まないコントロールデッキとの対戦に比べて少し見劣りします。しかし、手札破壊呪文が少なく、打ち消し呪文が多い手札に対しては決定打となるカードです。
また、グリクシスコントロールには手札破壊があるため、奇跡や青白石鍛冶よりも《外科的摘出》を断然上手く運用できます。
サイドボード後に最も頼りになる勝ち筋のひとつが《騙し討ち》です。グリクシスコントロールは《呪文貫き》よりも《狼狽の嵐》を優先していることがほとんどだからです。1枚挿しの《真髄の針》や《水流破》で負けてしまう可能性も残りますが、基本的には《意志の力》があるかどうかをチェックするために《騙し討ち》を唱えてしまって良いでしょう。
黒緑 ターボ/ミディアム/スローデプス
黒緑デプス、特にターボデプスは互角の相性です。《真髄の針》は《騙し討ち》や《グリセルブランド》を封じるのに非常に効果的で、特に試合前から相手にデッキがバレていると悲惨です(Magic Online上の私のことです)。また、相手は高速でマリット・レイジを出せるので、ゲームは速度勝負になることがほとんどですね。相手は呪文を一切唱えることなく《暗黒の深部》と《演劇の舞台》でコンボを成立させることがしばしばあるため、こちらの打ち消し呪文が相手に与える影響よりも、相手の手札破壊呪文がこちらに与える影響の方が遥かに大きいです。
マナが多くかかってしまいますが、《狡猾な願い》でマリット・レイジ対策に《急流》を持ってきてくるのも手です。1ターン目から相手のデッキがターボデプスとわかったら、2マナ土地と《水蓮の花びら》から《狡猾な願い》を唱え《急流》を手札に加えないといけない場合もあります。特に相手が1ターン目に手札破壊呪文を唱えてこなかったときです。
待つ余裕があるなら、《実物提示教育》から展開するための《グリセルブランド》や《全知》を引きこむようにしましょう。《引き裂かれし永劫、エムラクール》も、《カラカス》をサーチしようとする《輪作》を《意志の力》で打ち消せるのなら仕事をしてくれることが多いです。ターボ/ミディアム/スローデプスのいずれも、現在は《カラカス》をメインデッキに入れていることはあまりありませんけどね。
戦場に《暗黒の深部》がある場合、相手は《実物提示教育》から《吸血鬼の呪詛術士》を戦場に出し、その能力でマリット・レイジを目覚めさせてくることがあります。こういった状況では、こちらは《引き裂かれし永劫、エムラクール》でマリット・レイジをブロックしなければならなくなってしまうため、注意しましょう。
ミディアム/スローデプスはメインデッキに《真髄の針》ではなく、《突然の衰微》を採用しているため、比較的戦いやすい相手です。《トーラックへの賛歌》は痛烈な一撃ですし、《モックス・ダイアモンド》からマリット・レイジを高速で展開できる力がありますけどね。
対 ターボ/ミディアム/スローデプス
スローデプスの《闇の腹心》を対策するために《紅蓮地獄》を入れてみるのもアリですが、私はいずれのタイプにも《突然のショック》のみを入れるようにしています。《吸血鬼の呪詛術士》は着地後にすぐ生け贄に捧げられることがほとんどないので、《突然のショック》が少し意地悪なやり方で勝利をもたらすこともあります。
相手は《暗殺者の戦利品》を数枚入れてくるでしょうから、《全知》によるコンボを妨害されたり、起動するマナがないときに《騙し討ち》を設置して咎められることもあります。それでもなお、手札破壊呪文をケアするためにプレイすべきタイミングが多いですけどね。
《外科的摘出》や追加の手札破壊呪文があるので(ミディアム/スローデプスは《トーラックへの賛歌》を4枚まで増量してきます)、サイドボード後は少々やりづらくなりますが、総じて互角の相性であり、相手は手札破壊呪文がない手札をキープすれば報いを受けることになるでしょう。
スニーク・ショー
ミラー、準ミラーはとても滑稽な展開になります。大抵の場合、私は可能な限りこちらからは仕掛けないようにします。先にコンボを仕掛けたプレイヤーは打ち消し合戦に敗れ、返しのターンの相手のコンボに何も介入できなくなって負けてしまうことが多いのです。
ミラーマッチにおいて、キャントリップ呪文を《呪文貫き》や《狼狽の嵐》で打ち消すシーンを何度も目にしましたが、相手がマナに詰まっている状況でも、私ならまずそんなことはしません。どちらがコンボを仕掛けるにせよ、打ち消し呪文はそのときに備えて全て温存しておきたいのです。
マナが伸びたとしても、《呪文貫き》や《狼狽の嵐》が腐ってしまうことはまずありません。相手も不確定打ち消し呪文を持っていますし、《呪文貫き》は《実物提示教育》から《騙し討ち》を起動するプランを妨害できます。2マナが余っている状態での《騙し討ち》も《呪文貫き》にマナを支払わせ、ターンを終了させれば、返しのターンに勝つことができるので、半ば打ち消したような効果を得ることができるのです。
リスクの高いプレイになりますが、手札に《全知》と《狡猾な願い》があるなら相手の《実物提示教育》を通した方が良いこともしばしばあります。特に《意志の力》が2枚も手札にある場合は、《全知》によって2枚とも唱えられるようになるので、通してしまった方が良いでしょう。それ以降の一般的なプレイは、《狡猾な願い》で《火想者の予見》を手札に加え、《火想者の予見》から《狡猾な願い》、《衝動》、《渦まく知識》(稀に《狼狽の嵐》)をサーチし、《狡猾な願い》で《計略縛り》を手に入れ、《全知》から唱えられた《引き裂かれし永劫、エムラクール》の追加ターンを得る誘発能力、または《騙し討ち》の起動型能力などに備えます。
相手が《全知》からキャントリップ呪文を唱える展開にしてきたら、基本はこちらもその展開に付き合います。ただ、例外的に《狡猾な願い》が手札にある場合は、そのキャントリップ呪文に対応して《急流》で《全知》をバウンスします。
《騙し討ち》から《グリセルブランド》か《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出す選択肢がある場合、ほとんどの場合《引き裂かれし永劫、エムラクール》が正解となります。特に《騙し討ち》を通すために《意志の力》を何枚か使ってしまったのであれば、「滅殺6」から相手が1ターンでリカバリーしてくる確率よりも、《グリセルブランド》の能力を1~2回起動しても《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《水蓮の花びら》が見つからず、返しのターンに負けてしまう確率の方が圧倒的に高いからです。
対 スニーク・ショー
対 オムニ・スニーク/オムニ・テル
相手がスニーク・ショーで《外科的摘出》を使ってきたのであれば、オムニ・スニークやオムニ・テルに対するサイドボードと同様の入れ替えをしましょう。《すべてを護るもの、母聖樹》はミラーマッチで勝敗を分かつ力を持っているので、サイドボード後は最優先で探すべきカードとなります。相手は《血染めの月》をサイドインする余裕もなければ、サイドインすべきでもないでしょうから、基本的に《すべてを護るもの、母聖樹》への解答はありません。最も多い勝ちパターンのひとつは、《すべてを護るもの、母聖樹》から《狡猾な願い》を唱えて《裂け目の突破》を手札に加えることです。
スニーク・ショーのサイドボードの中で一番ゲームに影響を与えるのは《ヴェンディリオン三人衆》ですが、相手の選択肢が《ヴェンディリオン三人衆》を唱えるかこちらのコンボに備えて不確定打ち消し呪文を構えるかである場合、熟練のプレイヤーなら普通は安全をとって《狼狽の嵐》や《呪文貫き》などを構えてくるでしょう。ですから、リスクがない場合を除いては、基本的に《ヴェンディリオン三人衆》をケアしたプレイをする必要はありません。《秘儀の職工》はフィニッシャーを展開する手段として追加されることがあり、返しのターンでこちらがコンボを開始できない場合は、打ち消さなければならない状況が多いですね。
ANT
ANTの弟分であるTES(The Epic Storm)は、基本的にANTよりもキルターンが1ターン早いです。そのTESと比べれば、ANTはまだ戦いやすい相手ですね。もっとも、難しい相手のひとつであることに変わりはないのですが。
最も勝つ見込みが高くなりやすいパターンは、《渦まく知識》や不確定打ち消し呪文、時には《意志の力》を使って序盤の手札破壊から身を守り、早々に《実物提示教育》で《グリセルブランド》や《全知》を展開することです。
《狡猾な願い》は確定打ち消し呪文を加えるために使うことが多いですが、《狼狽の嵐》や《外科的摘出》で《炎の中の過去》を使ったルートを破綻させることもできます。必ず優先すべきは、《狼狽の嵐》や、《外科的摘出》ないしは《狼狽の嵐》を持ってくることのできる《狡猾な願い》を構えておくことです。タップアウトして《騙し討ち》を出したり、《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を展開するよりも優先すべきことがほとんどです。
ただし、1ターン目に《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出せる状況は例外です。ほぼ間違いなくコンボに向かうべきですね。先手2ターン目でも同様にコンボをスタートさせた方が良いこともあります。
《引き裂かれし永劫、エムラクール》か《グリセルブランド》が手札にある状況で《狡猾な願い》を構えておけば、相手のターン終了時に《狡猾な願い》から《裂け目の突破》を手札に加え、返しのターンに「滅殺」や《グリセルブランド》の攻撃を決めることができます(《狡猾な願い》で《狼狽の嵐》や《外科的摘出》を加える必要がない場合)。手札に非クリーチャーのコンボパーツがあったり、《裂け目の突破》に必要なマナがない場合は、相手のターン終了時に《狡猾な願い》で《直観》を加えるのもひとつの手であり、大抵は安全なプレイとなります。相手が次のターンにコンボを開始させてきたとしても、《直観》から《意志の力》を持ってくることができますからね。
相手は手札破壊呪文を7~8枚採用していますが、キャントリップ呪文に《狼狽の嵐》を使う必要は基本的にありません。ただ、遅めの手札であれば、2ターン目の《渦まく知識》に《呪文貫き》を使うと功を奏することがあります。返しのターンにコンボを決められるようなら、《渦まく知識》の後に唱えられる手札破壊呪文や《暗黒の儀式》のために《呪文貫き》を温存しましょう。
原則として、サイドボードの入れ替えはありません。例外的に相手が《根絶》を使ってきた、使ってくるであろうときは《直観》を抜き、《紅蓮破》を入れます。
サイドボード後、ANTはこのマッチアップで非常に重要な《狼狽の嵐》にアクセスできるようなります。とはいえ、2枚しか採用されていないので、明らかに手札にあるとわかる場合を除いて、《狼狽の嵐》をケアしてプレイすべきではありません。手札破壊呪文で《実物提示教育》を失ってしまう確率の方が断然高いですからね。
相手が《狼狽の嵐》を持っているサインは、たとえばキャントリップ呪文でタップアウトした後に《水蓮の花びら》を設置してターンを返してくるような場合です。もちろんそれがブラフであったり、こちらの《狼狽の嵐》をケアしている可能性もあります。概して私は《狼狽の嵐》をケアしてプレイしないようにしています。
《ザンティッドの大群》はとても煩わしいため、大抵は《意志の力》を使うはめになります。ですが、幸いにも1枚しか採用していないデッキリストがほとんどです。相手が《ザンティッドの大群》に加えて《巣穴からの総出》を投入してくるようなら、《紅蓮地獄》を2枚サイドインするのも一考に値します。
《根絶》もコンボに介入してくる煩わしいカードであり、ここ数か月で採用率が高まってきています。
赤黒リアニメイト
デルバー系と同様に、赤黒リアニメイトはTier1の中でも若干不利~不利なマッチアップだと考えています。手札破壊呪文が豊富に採用されているうえに1ターン目からコンボをあっさりと決めてきます。また、《別館の大長》の能力も厄介ですし、《実物提示教育》から展開できる《灰燼の乗り手》や《潮吹きの暴君》といった妨害クリーチャーをメインデッキから採用しているので、かなり困難なマッチアップなのです。
ただ、最初の数ターンを生き延びることができた場合は(たとえば《意志の力》で《納墓》を打ち消し、相手が墓地にクリーチャーを送る手段を見つけるのにもたついている場合)、勝利が見えてくるでしょう。
《狡猾な願い》からの《外科的摘出》や《騙し討ち》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》のプランが有効で、《実物提示教育》から《グリセルブランド》、もしくは《全知》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》でも大抵は早々にゲームに決着が着きます。
他に選択肢がないのならば、《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出さざるを得ないことも多いでしょう。ですが、仮に相手が《実物提示教育》で《灰燼の乗り手》や《潮吹きの暴君》を出してこなかったとしても、《グリセルブランド》が登場してしまえば、上記2種類をリアニメイトする手段に辿り着いてしまうことが多々あります。
打ち消し呪文は《納墓》やリアニメイト呪文のために取っておきましょう。相手が土地3枚から《信仰無き物あさり》を「フラッシュバック」し始めたら、《狼狽の嵐》や《呪文貫き》を使ってしまって構いません。しかし、あえて《信仰無き物あさり》を通すことで、《実物提示教育》を上手く使えるようになるというメリットもあります。こちらの《実物提示教育》から展開することができたであろうクリーチャーを手札から捨ててくれる場合があるからです。
また、《直観》で《グリセルブランド》をサーチすれば、《死体発掘》を打ち消したかのような効果を得られます。《グリセルブランド》をリアニメイトできますからね。これも覚えておいていただきたいのですが、《全知》からの《引き裂かれし永劫、エムラクール》は《別館の大長》の誘発型能力への耐性があります。
サイドボードの入れ替えはありません。
相性を改善したいならサイドボードに《墓掘りの檻》を採用することが考えられますが、この構成だと入れる枠がないですし、《墓掘りの檻》を2~3枚採用したスニーク・ショーと比較しても勝率に違いがありませんでした。不慣れな赤黒リアニメイトのプレイヤーや、こちらがオムニ・スニークだと認識できていないプレイヤーは《墓掘りの檻》に負けないように《削剥》などのアーティファクト対策を入れてくることが多々あります。《摩耗/損耗》や《暗殺者の戦利品》は《削剥》ほど腐りはせず、《全知》パターンやタップアウトで出した《騙し討ち》を咎められることがあります。それを除けば、ゲーム展開はサイドボード前と大差ありません。
赤単プリズン
《実物提示教育》系のデッキにとって相性の良いマッチアップでしたが、オムニ・スニークであれば更に楽になります。メインデッキに《罠の橋》が採用されることが減っているため、《罠の橋》への耐性があるという強みがなくなりつつあるものの、《定業》を2~4枚減らして《狡猾な願い》を採用しているので、《虚空の杯》への耐性が大幅に向上しています。とはいえ、キャントリップ呪文が多い手札に刺さってしまうこともあったり、《意志の力》を《虚空の杯》に使わざるを得なかったりする状況もあります。
《ゴブリンの熟練扇動者》や《軍勢の戦親分》は恐ろしいクロックであり、ゲーム展開が速度勝負へと変わります。コンボをいち早く完成させるか、それができないようなら《狡猾な願い》からの《コジレックの帰還》で時間を稼ぐことを余儀なくされます。
赤単プリズンはまず《グリセルブランド》とダメージレースできません。ゴブリン・トークンは攻撃しなければならず、《実物提示教育》から展開された《グリセルブランド》に突っ込んでしまうので、相手ターンにも絆魂でライフを回復できるのです。
最近は《三なる宝球》がメインデッキに入っているリストも多く、《全知》から唱える呪文が1ターン遅れますが、大抵はゲームに大きな影響を与えません。
対 赤単プリズン
サイドボード後、相手は《罠の橋》、《魔術遠眼鏡》、《瘡蓋族の狂戦士》を投入してくるでしょう。
ほとんどの場合《罠の橋》は意味がありません。有効になるとすれば、こちらが《実物提示教育》か《騙し討ち》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出すプランで、《急流》を加えるための《狡猾な願い》がタイミング良く引けないときぐらいなものです。
《騙し討ち》や《グリセルブランド》を封じ込める《魔術遠眼鏡》は非常に厄介ですが、こちらには解答が十分にありますし、《実物提示教育》や《狡猾な願い》で《魔術遠眼鏡》とは無関係に攻めることも可能です。
《瘡蓋族の狂戦士》は《ゴブリンの熟練扇動者》や《軍勢の戦親分》と同様に早いクロックで攻めてくるうえに、《紅蓮地獄》への耐性も備わっています。《紅蓮地獄》は3マナのゴブリンたちを全滅させ、時間を稼いでくれます。一度に複数の3マナゴブリンを除去できればこの上ないですが、1体でも戦場に出たらほぼ間違いなくすぐに《紅蓮地獄》を使った方が良いでしょう。
エルドラージ系
赤単プリズンの項でも似たようなお話をしましたが、エルドラージ系に対しては昔ながらのスニーク・ショー系よりもオムニ・スニークの方が戦いやすいです。《狡猾な願い》は相手のヘイトカードへの解答になりますし、一般的な構築では(X)=1の《虚空の杯》を比較的苦にしません。
《エルドラージのミミック》を採用したエルドラージ・アグロは、かつてはエルドラージの中でも最大勢力でしたが、今では大分勢いが衰えてしまいました。そのポジションは《大いなる創造者、カーン》を使うことが多いエルドラージ・ポストに取って代わられています。
《大いなる創造者、カーン》の登場によって、このマッチアップは変化を迎えました。《大いなる創造者、カーン》や《マイコシンスの格子》を打ち消す《意志の力》や《呪文貫き》を持っていない場合、速度勝負の様相を呈するのです。
通常、相手は《マイコシンスの格子》を《実物提示教育》で出すために手札に持っておくようなことはせず、すぐに唱えてきます。そうしないと、《騙し討ち》や《実物提示教育》+《全知》で負けてしまう可能性があるからです。
メインデッキには《三なる宝球》、時には《魔術遠眼鏡》が入っていますし、《大いなる創造者、カーン》がサイドボードのカードを1ゲーム目から使用可能にするため、いくらか手こずるおそれがあります。また、マナ加速から《難題の予見者》を展開されると非常に厳しい戦いになります。
単純に《実物提示教育》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を展開する場合を筆頭に、《終末を招くもの》や《カラカス》が勝利に直結してしまうことも珍しくありません。ですが、総じて良好なマッチアップであり、対戦することになっても嫌な気持ちにはなりませんね。相手の妨害カードが1枚程度であればかなり戦いやすいでしょう。
対 エルドラージ・アグロ
相手がエルドラージ・ポストの場合は入れ替えはありません。
《紅蓮地獄》は、2枚連続で使えば《難題の予見者》を破壊できますが、それも稀なケースであり、基本的にエルドラージ・ポストには何も役割を果たしません。《狼狽の嵐》は《意志の力》のコストに使えますし、大抵は《歪める嘆き》を打ち消すことになります。
《歪める嘆き》はサイドボード後のゲーム展開を変える大きな要因となります。サイドボード前では相手はインスタントタイミングで介入できませんでしたからね。相手の手札に序盤から《歪める嘆き》があると、無色マナが浮いている状態でターンを返してくるので、普通は手札にあることを読み取りやすいです。
サイドボードに4枚採用されることがほとんどですから、余裕があるならケアしてプレイすべきですし、かなり読み取りやすいということも念頭に置いておくべきです。また、最近のデッキリストでは《歪める嘆き》か《アメジストのとげ》のいずれかのみを採用していることがほとんどなので、どちらかを確認したらもう片方は採用されていないと踏んでほぼ間違いないでしょう。
《アメジストのとげ》が厄介になる場面もあるので、《水蓮の花びら》はすぐに出すようにします((X)=0の《虚空の杯》をケアするという意味合いもあります。相手がそうせざるを得ないこともありますからね)。こちらのマナベースには《古えの墳墓》や《裏切り者の都》があるので、追加でマナを要求する効果には上手く対応できるようになっています。また、エルドラージ・ポストには《アメジストのとげ》以外にマナ否定戦略をサポートするようなカードが採用されていないため、他のデッキよりも《アメジストのとげ》は脅威的ではありません。
マーベリック
ここでもスニーク・ショーよりオムニ・スニークに分があります。マーベリックとの対戦はデス&タックスと似た部分がありますが、《霊気の薬瓶》や《リシャーダの港》がない分、遥かに戦いやすいものになっています。
《聖遺の騎士》は早いクロックであると共に、《実物提示教育》から出た後に《カラカス》をサーチできるため大きな脅威となります。そのため、繰り返しになりますが、他に選択肢がない場合を除き、《実物提示教育》からの《引き裂かれし永劫、エムラクール》はできるだけ避けたいところです。
《グリセルブランド》は《カラカス》があっても7~14枚ドローできるので、理想は《全知》や《騙し討ち》からもう一度コンボを仕掛けることですね。《クァーサルの群れ魔道士》や《秋の騎士》は《全知》に対する強力な解答ですが、《全知》+《狡猾な願い》はマーベリックではまず太刀打ちできないでしょう。
対 マーベリック
《外科的摘出》が不安ならば《直観》を抜いて《突然のショック》を入れても良いですが、私は《突然のショック》をサイドボードに残し、《狡猾な願い》から手札に加えられるようにしています。
時間に猶予があるなら、《外科的摘出》をケアしたうえで《直観》を使えるパターンもあります。たとえば、6マナがある状態で《直観》から《実物提示教育》を手札に加え、相手が優先権を得て《外科的摘出》する前に《実物提示教育》を唱えてしまうのです。奥の手ですが、《意志の力》で《外科的摘出》を防ぐこともあります。
《窒息》が一番使われたくないサイドボードカードです。《窒息》を打ち消す《意志の力》や《呪文貫き》が手札にないなら、それを警戒した立ち回りを心がけましょう。具体的には、相手が3マナに到達する前のターンのメインフェイズにキャントリップ呪文を複数唱えないようにするなどです。もちろん、《窒息》をケアしたプレイができないこともありますが、《島/Island》を何枚か《窒息》された後に《水蓮の花びら》と2マナ土地から勝てることもしばしばあるでしょう。
中にはサイドボードに《払拭の光》などの《忘却の輪》の効果を持つカードを採用している人もいます。これらのカードは、こちらのクリーチャーに対しては追加の《聖遺の騎士》のように機能し、《全知》に対しては《秋の騎士》のような役割を果たすものの、容易に対処できます。
相性ランキング
各マッチアップの勝率を正確に出すことは非常に難しいですが、おおよその戦いやすさを示しておきましょう。環境のデッキを戦いやすい順にランキングを作りました。
ランキングは話半分に聞いていただければと思います。デッキ構築が変わればランキングも変わりますし、ランク間の差が非常に小さいものもあります。また、私の相性評価も今後変化するかもしれません。念のためお伝えしておくと、私が相性の悪いと思っているマッチアップは赤黒リアニメイトとグリクシスデルバーだけです。
オムニ・スニークのこれから
ロンドンマリガンが導入されることになれば、メタゲームが変化し、新環境に適合した《実物提示教育》デッキを色々と試してみることになるでしょう。ロンドンマリガンがMagic Onlineで数週間運用されていましたが、《全知》を抜き《猿人の指導霊》と《目くらまし》を採用した高速のスニーク・ショーが非常に強力でした。《全知》はコンボをするためにカードを3枚必要としますから、マリガンの頻度・積極性が高まる世界では少々弱体化してしまうのです。
オムニ・スニークに関しては、《呪文貫き》3枚の構成に戻るかもしれません。新しいナーセットとテフェリーに世間は興奮していますし、数も増えてきていますからね。その他については今のところデッキリストを変えるつもりはありません。果たして『灯争大戦』の強力なプレインズウォーカーはメタゲームを変える可能性があるのか、そしてどのように変えていくのか。現在のレガシーへの影響力が過大評価されていないのかも気になるところです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!