みなさんこんにちは。
今週末には『モダンホライゾン』のプレリリースが開催されますね。モダン向けのセットではありますが、レガシーでも使えそうなカードが多数確認できます。
そして、ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019で試験的に導入されていた新マリガンルールが、来月、正式に採用されます。コンボデッキの爆発力が増す一方で、サイド後はフェアデッキも対策カードを引きやすくなるので、トータル面では良い変更となりそうです。
さて、今回の連載では第13期レガシー神決定戦の入賞デッキを見ていきたいと思います。
第13期レガシー神決定戦
『灯争大戦』のあのカードを搭載したUR Delverが優勝
2019年5月25-26日
- 1位 UR Delver
- 2位 ANT
- 3位 Sneak and Show
- 4位 Death and Taxes
- 5位 Miracles
- 6位 UR Delver
- 7位 Miracles
- 8位 Lands
幸正 智哉
トップ8のデッキリストはこちら
第13期となる今大会も例に漏れず、上位には高橋 優太選手、サワタリ カイ選手、小林 龍海選手、滝坂 透選手といった強豪プレイヤーが見られ、非常にレベルの高い大会でした。
『灯争大戦』がレガシー環境に与えた影響は大きく、プレイオフに入賞したデッキの半数以上が『灯争大戦』のカードを採用していました。
第13期レガシー神決定戦 デッキ紹介
「UR Delver」「Miracles」「ANT」「Humans」
UR Delver
1 《山》
1 《冠雪の島》
3 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
2 《溢れかえる岸辺》
1 《乾燥台地》
1 《汚染された三角州》
1 《樹木茂る山麓》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
4 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (14)-
今大会見事に優勝を果たし、神の座を射止めた幸正 智哉選手が使用していたのは、《戦慄衆の秘儀術師》を採用したUR Delverでした。
SCGO Syracuseで優勝して以来、Delver系の代表格として定着しているUR Delver。『灯争大戦』後の環境では今大会を優勝、先週末のLegacy Challengeでもワンツーフィニッシュ(プレイオフに半数)と勝ち続けています。
☆注目ポイント
《戦慄衆の秘儀術師》は、《稲妻》や《渦まく知識》、《思案》といった軽いスペルを多用するこのデッキにフィットしています。サイド後は、《外科的摘出》、《紅蓮破》、《破壊放題》、《水流破》といった、特定のデッキに刺さるスペルを使い回せる強力なクリーチャーです。プレイオフでも《渦まく知識》を使い回したり、《稲妻》でクロックを早めたりと大活躍していました。今後もUR Delverの主力のクリーチャーとして、よく見かけることになりそうです。
このデッキにとって天敵である《虚空の杯》を対策するために、《削剥》がメインから採用されています。追加のクリーチャー除去としても機能し、StonebladeやDeath and Taxesなどの装備品も対策できるので腐りにくいスペルです。
Miraclesで採用されている《覆いを割く者、ナーセット》は、このデッキでもサイドに採用されています。3マナは少し重いのですが、コンボデッキに対してはクロックが遅い《真の名の宿敵》と入れ替えられそうです。
《無のロッド》は、最近流行りのEldrazi Post、Death and Taxes、Stoneblade、ANTなど多くのマッチアップで使えます。幸正選手は、今大会の数日後に開催されたLet’s 5 レガシーでも、同様のリストで5-0していました。サイドの《覆いを割く者、ナーセット》と《無のロッド》が、《冬の宝珠》に差し替えられており、Miraclesなどコントロールとの相性が改善されています。
Miracles
3 《平地》
1 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
-土地 (20)- 4 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (4)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
3 《呪文貫き》
2 《先触れ》
1 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
4 《意志の力》
3 《終末》
3 《相殺》
2 《基本に帰れ》
1 《時を解す者、テフェリー》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (36)-
2 《外科的摘出》
2 《ドビンの拒否権》
2 《仕組まれた爆薬》
1 《水流破》
1 《解呪》
1 《議会の採決》
1 《基本に帰れ》
1 《大祖始の遺産》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード (15)-
『灯争大戦』から加入した3マナのプレインズウォーカーによって、さらに強化されたMiracles。
最近は同型対策として赤をタッチしたリストをよく見かけますが、『灯争大戦』から《大いなる創造者、カーン》と《人知を超えるもの、ウギン》いう新戦力を得たEldrazi Postが幅を利かせている現在は、《基本に帰れ》を無理なく運用できる青白の2色の方が安定しそうです。
☆注目ポイント
高橋 優太選手のリストには、『灯争大戦』の新カードが多数採用されていました。《時を解す者、テフェリー》は、《グルマグのアンコウ》など相手の脅威をバウンスしつつドローを進められます。打ち消しを無力化する常在能力は、青いデッキが強いレガシーでは非常に強力です。
《渦まく知識》や《思案》といったドロースペルが飛び交うレガシーでは、《覆いを割く者、ナーセット》の常在型能力は絶大な効果を誇ります。ほぼ確実にアドバンテージを稼げる[-2]能力は、現代の《時を越えた探索》とも評価されています。ドロースペル以外にも、《グリセルブランド》や《宮殿の看守》などの能力も封じるので多くのマッチで活躍してくれます。
新カード以外で特徴的なところは、メインから3枚と多めに採用されている《呪文貫き》です。採用理由については高橋選手本人の記事で詳しく説明されています。Miraclesにとって脅威となるのは、プレインズウォーカーやクリーチャーでない呪文なので、カウンターされない《ドビンの拒否権》や軽い《呪文貫き》を、《対抗呪文》よりも優先することは理にかなっています。
ANT
1 《冠雪の島》
2 《Underground Sea》
1 《Tropical Island》
1 《Volcanic Island》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
-土地 (14)- -クリーチャー (0)-
ANTの名手であるサワタリ カイ選手のリストは、メインの《目くらまし》などほかのリストと比べて特徴があります。
☆注目ポイント
このデッキの《目くらまし》は読まれにくく、《虚空の杯》や《スレイベンの守護者、サリア》といった厄介なスペルをカウンターできます。《狼狽の嵐》も採用されているので、青いデッキやほかのコンボデッキにも強い構成となっています。
他のリストで見られる《巣穴からの総出》は不採用で、勝ち手段は《苦悶の触手》のみです。最近は《巣穴からの総出》を見越し、サイド後相手も全体除去を残してくるので、《苦悶の触手》だけの方が安定しそうです。似たような理由で、サイド後に除去を残されることを想定し、定番の《ザンティッドの大群》も不採用となっています。これにより除去が不要牌となる分、追加されたハンデスやカウンターでコンボが決まりやすくなります。
《突然の衰微》は追加のヘイトベアーやクロック、《虚空の杯》、《相殺》対策で、カウンターされない確実性のある除去です。サイドの《花の絨毯》により、《狼狽の嵐》や《呪文貫き》などソフトカウンターにも耐性が付きます。妨害をソフトカウンターに頼っているデッキにとってはほぼマストカウンターとなるので、その後のプランが立てやすくなります。
Humans
モダンで活躍しているHumansのレガシー版。同じ《霊気の薬瓶》デッキでもコントロール寄りのDeath and Taxesとは異なり、アグレッシブなデッキで《スレイベンの守護者、サリア》などヘイトベアーで相手の行動を制限しつつ、優秀な人間クリーチャーで圧倒していきます。
レガシーにはデュアルランドがあるので、マナ基盤に《古代の聖塔》などを含める必要性が薄くなりました。《剣を鍬に》や《安らかなる眠り》 、《梅澤の十手》といった非クリーチャースペルを無理なく採用できるようになったことで、デッキ構築の面で自由度が増しています。
☆注目ポイント
モダンと同様に《スレイベンの守護者、サリア》、《帆凧の掠め盗り》、《翻弄する魔道士》など妨害能力を内蔵したクリーチャーで相手の行動を制限しつつ、《サリアの副官》でプレッシャーをかけていきます。レガシーでは、《護衛募集員》、《聖域の僧院長》、《宮殿の看守》、《ルーンの母》といったより強力な人間クリーチャーにアクセスできます。《護衛募集員》で《サリアの副官》をサーチしてこれるので、モダンよりも安定して盤面を強化できます。
クリーチャーデッキなので《終末》などに弱くなりますが、《翻弄する魔道士》や《聖域の僧院長》で対策可能で、相手の単体除去に対しては《ルーンの母》で保護することができます。
『モダンホライゾン』の注目カード
フルスポイラーも公開されたので、レガシーで使えそうなカードを見ていきたいと思います。
《否定の力》
ピッチスペルとなった《否認》。レガシーでは追加の《意志の力》として使われそうです。代用コストによってキャストできるのは相手のターンのみなので、コンボデッキがコンボを通すためのカウンターとしては難しいですが、MiraclesやStonebladeなどフェアデッキに追加のコンボ対策として採用されそうです。ReanimateやANTなどハンデスから仕掛けてくるデッキに対しては、《意志の力》だけでは対応が難しいこともあったので、青いフェアデッキにとっては収穫となりそうです。
《疫病を仕組むもの》
《仕組まれた疫病》を内蔵したクリーチャー。置物ではなくクリーチャーになったことで、クロックになる反面対策されやすくなりましたが、メインから採用しても腐りにくくなったのはプラスです。《真の名の宿敵》を対策する手段として、黒を使う様々なデッキで採用されそうです。
《レンと六番》
2マナという軽さで除去としても機能する《世界のるつぼ》。[+1]能力で《不毛の大地》を使いまわせるのは、特殊地形に頼った多くのデッキにとって脅威となります。《スレイベンの守護者、サリア》や《若き紅蓮術士》など、タフネス1のクリーチャーが多数存在する現環境では、[-1]能力も優秀な除去として機能します。
《虹色の眺望》
基本地形限定のフェッチランド。基本地形を多く採用したデッキの追加のフェッチランドとして、マナ基盤の安定性の向上に一役買います。Death and TaxesやDelver系など《不毛の大地》デッキとのマッチアップでは、特に重要となってきます。
ホライゾンランド
《地平線の梢》が対抗色のみでシリーズ化されました。マナを出すたびにペイライフが必要になる性質上、コントロールよりもDeath and TaxesやMaverickなど能動的な戦略で採用されることが考えられます。《育成泥炭地》は、ElvesやDepths系のデッキで採用されそうです。特にDepths系は、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》によって黒マナを捻出するのにライフを支払う必要がなくなり、中盤以降有効牌に変えることができるので収穫となりそうです。《灼陽大峡谷》は、赤タッチのDeath and Taxesに入りそうです。
《真理と正義の剣》
能力は《火と氷の剣》の方に軍配が上がりそうですが、プロテクション白と青は《真の名の宿敵》や《僧院の導師》のモンクトークンで止まらず、《剣を鍬に》にも耐性ができるので、現環境のフェアデッキの代表格であるMiraclesやStonebladeとのマッチアップでは、重要な能力となります。
《溜め込み屋のアウフ》
クリーチャーになった《石のような静寂》。緑のクリーチャーなので《緑の太陽の頂点》でサーチ可能で、《雲上の座》デッキや《モックス・ダイアモンド》、《水蓮の花びら》を使うデッキとのマッチアップ用にElvesやMaverickで使われそうです。
総括
『灯争大戦』が環境に与えた影響は大きく、今後は『モダンホライゾン』やロンドン・マリガンの影響でさらなる変化が予想されます。
以上USA Legacy Express vol.154でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!