スタンダードを攻略せよ!

Luis Salvatto

Translated by Ryosuke Igarashi

原文はこちら
(掲載日 2019/06/07)

はじめに

スタンダードで何を使うべきか?この問いを何度も何度も見てきたわけだが、未だに100点満点の解答を目にしたことはない。メタゲームは時と場所によって変化するし、大抵の場合は周期的なため、今日のベストデッキが明日はベストデッキではなくなってしまっている……そんなフォーマットだからね。

赤単

さて、まずは手堅い赤のデッキから見ていこうじゃないか。

シャハールがMPLの4週目に選択したデッキがこの赤単アグロだ。《実験の狂乱》を3枚にするか4枚にするかは違いが出るけど、大きなイノベーションが起きる余地はないね。採用されているカードが全て強いからだ。

遁走する蒸気族舞台照らし実験の狂乱炎の職工、チャンドラ

赤単は《遁走する蒸気族》《舞台照らし》といったカードで早期決着を目論むデッキではあるが、《実験の狂乱》《炎の職工、チャンドラ》という驚異的なアドバンテージ源をも兼ね備えている。

無頼な扇動者、ティボルト

非常に優秀な常在型能力を持つ、イケてるプレインズウォーカーも仲間入りだ。役に立たない忠誠度1のプレインズウォーカーでも、盤面にいる限りはライフ回復を封じてくれるため、コントロールデッキにとって厄介な存在だ。ときにはクリーチャーデッキでさえ、《無頼な扇動者、ティボルト》を除去することができずにライフを得られない、といった展開もあるだろう。

エスパーミッドレンジ/コントロール

もしも赤単を倒したいなら……エスパーミッドレンジ/コントロールを使うのがいいだろう。

思考消去ドミナリアの英雄、テフェリーヴラスカの侮辱灯の燼滅

先ほども述べたように、赤単は非常に強力なデッキだ。他のデッキへのガードを下げることなく赤単に勝てるデッキを組む……というのは全くもって簡単なことではない。しかしエスパーカラーなら《実験の狂乱》が手札にあろうと盤面にあろうと対処できるし、《炎の職工、チャンドラ》に対しても《ドミナリアの英雄、テフェリー》《ヴラスカの侮辱》《灯の燼滅》といったカードで常在型能力によるダメージを受けることなく対処が可能だ。それに加え、赤いデッキ相手に対して重要である全体除去、相打ち要員、いくばくかのライフ回復カードも併せ持っている。

しかし「フェア」デッキ(正直、テフェリーは全く「フェア」ではないものの……)を選ぶときは、《集団強制》《戦慄衆の指揮》《世界を揺るがす者、ニッサ》からの《ハイドロイド混成体》など、恐ろしいほどのアドバンテージを生み出すカードと戦う覚悟をしておこう。

「アンチ」フェアデッキ

集団強制戦慄衆の指揮世界を揺るがす者、ニッサハイドロイド混成体

この2つのデッキはかなり良くできていて、全てのフェアデッキを粉砕することができる。その一方、赤単相手には苦戦を強いられることになるね。こういった場合は、メタゲームを読み、最も多いであろうデッキに対応する……という考え方をすればいい。

もちろんこれはモダンではないから、9:1のマッチアップなんてものはないが、最も人気なデッキに強いデッキを選ぶことはできる。それに今のスタンダードでは、特定の1枚のカードがゲームの勝敗を決することがままある。

古呪

おっと、これは何も重い呪文だけに限った話じゃない。例えば《古呪》もデッキ1つを丸ごと吹き飛ばすことができる。ジェスカイプレインズウォーカーのようなデッキを使う場合には、仮に全てが順風満帆に見えても、たった2マナと1枚のカードで全てを失ってしまわぬよう気をつけておこう。

白単/アゾリウスアグロ・シミックネクサス

さてメタの概観を済ませるには、あと2つ重要なデッキがあるね。白単/アゾリウスアグロ、そしてシミックネクサスだ。

黒き剣のギデオン時を解す者、テフェリー

白単は依然として序盤の動きがずば抜けているうえに、強力なカードも採用されている。『灯争大戦』では優秀な3マナのプレインズウォーカーくらいしか得られなかったため、そこまで強化されたわけではないものの……現実的な選択肢の1つであり続けているし、もしも人々がこのデッキへの対策を怠るようならば、大会で優勝することもあるだろう。

爆発域

シミックネクサスも似たような立ち位置で、今現在(6月の初め)では非常にいい選択肢だ。《爆発域》を3枚採用しているものの、《時を解す者、テフェリー》の対処に手こずり、この3マナプレインズウォーカー1枚だけで負けていたこともあったのだが、今はエスパーが環境から数を減らしてきているからね。

友人が2019ミシックチャンピオンシップⅢ、そして2019ミシックチャンピオンシップIVへの権利を手に入れたリストを紹介しよう。

伝承の収集者、タミヨウ覆いを割く者、ナーセット

この環境が始まってすぐ、《伝承の収集者、タミヨウ》を採用したシミックネクサスに心を奪われ、その後《覆いを割く者、ナーセット》を採用したものについても同様だった。2枚の強力なプレインズウォーカーにより、このデッキの一貫性が高まったね。

《伝承の収集者、タミヨウ》は説明するまでもないだろう……このデッキではとてつもないカードだよ。《覆いを割く者、ナーセット》には2つの役割があるね。まず、わずか3マナでコントロールデッキや《ハイドロイド混成体》デッキに対し、なかなかのプレッシャーをかけることができる。そして、[-2]能力はこのデッキのゲームプランに完璧なまでにフィットしている。4ターン目に《荒野の再生》を設置し、5ターン目に10マナがある状態で《覆いを割く者、ナーセット》から《運命のきずな》へと繋げられれば最高だ。

このメタゲームを踏まえて……

野茂み歩きハイドロイド混成体世界を揺るがす者、ニッサ戦慄衆の指揮

最初に言ったように、現在のメタゲームではタイミングが大事だ。メタゲームに合っていると自分が感じるデッキを使い、しっかりとサイドボードを調整しよう。

さてMPL、最後の2週間に向けて俺が選んだデッキはこれだ。

MTGアリーナでのミシックチャンピオンシップ予選において、セバスティアン・ポッツォが2日目に進んでいたのだが、そのリストに触発されたんだ。

このデッキには凄まじいコンボが2つある。

赤単への相性を改善するには苦労したが、全体的に良くできた、楽しいデッキになっているよ。

おわりに

ゴブリンの鎖回し

さて、ここまでがこの変動し続けるメタゲームに関する俺の考えだ。メタゲームの変化に敏感であることがカギだが、実際問題、まず赤単には負けないようにしておくことだ。俺は赤単がベストデッキだと思っているからね。

では、今回も読んでくれてありがとう!

ルイス・サルヴァット (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

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Luis Salvatto 長きにわたってプロツアーでの成功を夢見ていたルイスは、2016年に開催されたプロツアー『イニストラードを覆う影』で悲願のトップ8入賞を成し遂げた。その後さらなる研鑽を積み、プロツアー『イクサランの相克』ではアルゼンチン出身のプレイヤーとして初となるプロツアー王者に輝く。この優勝によりプレイヤーオブザイヤーへの足掛かりを得たルイスは、熾烈なタイトル争いの末にセス・マンフィールドを下し年間最優秀賞のタイトルをも獲得。史上最高の南米選手の1人として認知されるほどの成長を遂げ、2019年にはマジック・プロ・リーグに選出された。 Luis Salvattoの記事はこちら