Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/06/10)
メタゲーム概観
マジックフェストやらStar City Gamesのイベント、ミシックチャンピオンシップ予選といった大会が控えてる時期だから、スタンダードへの関心は大いに高まっているんじゃないかい?みんなも練習に励み、デッキリストを決めようとしていることだろう。今回はスタンダードでもポジションのいいデッキの一角、赤単について話そうと思う。
今のスタンダードは非常に幅が広く、素早く進化を続けている。『灯争大戦』がリリースされて最初の数週間は赤単、そしてエスパーカラーのデッキが環境を支配していたのだが……ここ数週間では、メタゲームが強力なミッドレンジ戦略に傾いてきている。ジェスカイプレインズウォーカーやエスパープレインズウォーカー、そして4色《戦慄衆の指揮》なんかだね。
今週活躍したデッキの多くが赤単に強いカードを採用している。グランプリ・カンザスシティ2019を優勝したベン・フリードマン/Ben Friedmanは《聖堂の鐘憑き》を4枚採用していたし、赤単の多い環境でグルールミッドレンジが準優勝したことは予想通りだろう。《茨の副官》や《グルールの呪文砕き》、《再燃するフェニックス》といったカードはメインの赤単にめっぽう強いんだ。
赤単を倒そうとチューンされたミッドレンジデッキが、今回のグランプリやミシックチャンピオンシップ予選で結果を残したことから、メタゲームはコントロール寄りのエスパーデッキやジェスカイプレインズウォーカーに寄っていくのではないかと予想している。そうなれば、しばらくは赤単の独壇場だ!
さて、スタンダードの現状や赤単をベストデッキだと思う理由についてざっと話してきたことだし、一番重要な点……デッキリストとサイドボードガイドに入ろうじゃないか。
デッキリスト
まさに一般的なリストだね。唯一目を引く点があるとしたら4枚目の《実験の狂乱》くらいだろう。ミラーマッチで最も強力なカードであり、赤単の人気を鑑みるに2枚目の《炎の職工、チャンドラ》よりやや優れていると考えている。
サイドボードガイド
ミラーマッチ(赤単)
対 ミラーマッチ(先手)
対 ミラーマッチ(後手)
先手でのサイドボードプランはまあ、いつも通りのものだ。どちらかが《実験の狂乱》をプレイするまでリソースを交換しあう……というゲームになることが多く、たくさんの《ギトゥの溶岩走り》からちょうどよく《軍勢の戦親分》や《ゴブリンの鎖回し》がやってきてパパっと勝ち!なんてゲームもあるっちゃあるが、珍しいね。
しかし、後手ではかなり変わったサイドボーディングを行っている。2ターン目の《遁走する蒸気族》を対処するためだけに《狂信的扇動者》を1枚残し、《炎の職工、チャンドラ》より《再燃するフェニックス》を優先するんだ。《再燃するフェニックス》を予想しておらず、それゆえに《溶岩コイル》を積極的に使ってしまうプレイヤーも多い。
《溶岩コイル》や《凶兆艦隊の向こう見ず》がちょうどデッキの一番上に来なければ非常に対処が難しいため、《実験の狂乱》の返しのアクションとしては《再燃するフェニックス》が《炎の職工、チャンドラ》よりも優れているね。
ジェスカイプレインズウォーカー
対 ジェスカイプレインズウォーカー(先手)
対 ジェスカイプレインズウォーカー(後手)
経験上、赤単がわずかに有利なマッチアップだが、ジェスカイプレインズウォーカー側が《次元間の標》を引き込んだ枚数によって劇的に変化するね。《次元間の標》でライフゲインされてしまうと、《轟音のクラリオン》を唱えられた後に相手のライフを押し込むのが非常に難しくなる。
また、後手では《溶岩コイル》を2枚サイドインするようにしている。《主無き者、サルカン》に遅れを取ってしまうことも多いし、《ショック》や《ゴブリンの鎖回し》、《稲妻の一撃》、《狂信的扇動者》のいずれかと組み合わせれば《黎明をもたらす者ライラ》を除去することもできる。
エスパーコントロール
対 エスパーコントロール
先手後手どちらでも、サイドボードプランがあまり変わらないマッチアップの1つだ。メインではエスパーコントロール側が有利だが、役に立たない火力呪文を優れた脅威と入れ替えてしまえば、たちまち相性は改善される。ただ、《黎明をもたらす者ライラ》や《正気泥棒》、《人質取り》が予想されるようなら《稲妻の一撃》を3、4枚残しておくようにしているね。
エスパーミッドレンジ
対 エスパーミッドレンジ
このマッチでの《溶岩コイル》はかなり優秀だ。《聖堂の鐘憑き》は人気が急上昇中だし、《秤の熾天使》への解答にもなる。他の呪文と組み合わせれば《黎明をもたらす者ライラ》も除去できるね。
デッキに採用できるカードの選択肢が幅広いため、エスパーミッドレンジは最も厳しい相手の1つだ。赤単に勝てるリストを作ろうと思えば、簡単に作れてしまう。
4色《戦慄衆の指揮》
対 4色《戦慄衆の指揮》
《無頼な扇動者、ティボルト》が4枚欲しくなる稀有なマッチアップだ。《野茂み歩き》を何とかしつつ、ライフにもプレッシャーを与えなければならない。赤単と《戦慄衆の指揮》デッキはどちらも非常に人気なため、今のスタンダードを代表するマッチアップの1つだね。
先手では、《軍勢の戦親分》のために《ヴィーアシーノの紅蓮術師》は全て抜いてしまっていいかもしれない。全体的に有利なマッチアップだし、《戦慄衆の指揮》デッキと当たって困ることはないね。
グルールミッドレンジ
対 グルールミッドレンジ
ここ最近、グルールミッドレンジは目覚ましい復権を果たしてきているね。エスパーコントロールやシミックネクサスに弱いもののそれらは数を減らしており、赤単には有利……とあればさほど驚きはないだろう。
グルール側にはタフネスが4(赤いデッキにとって魔法の数字だ)であるクリーチャーが多いため、非常に厳しいマッチアップになる。サイドインされる《打ち壊すブロントドン》はこちらのクリーチャーを受け止めつつ、《実験の狂乱》への解答にもなる。サイドボードの4枚の《溶岩コイル》、そして相手の《溶岩コイル》も利用できる《凶兆艦隊の向こう見ず》をサイドインすれば、五分五分の戦いに持ち込めるだろう。
今後のスタンダード
グランプリ・カンザスシティ2019の結果から、赤単のようなアグロデッキに非常に厳しいメタゲームであったことは一目瞭然だ。だが心配ご無用、現在のスタンダードは多様性があり、環境の変化も早いためそこまで大きな問題ではない。おそらくは《運命のきずな》デッキやエスパーコントロールが、グルール・エスパーカラーのミッドレンジに対抗して再浮上してくることだろう。
そう考えると、しばらくの間は赤単がいい選択になるんじゃないかと思っている。サイドボードにはかなりの柔軟性があり、アグロやコントロール、ミッドレンジといった戦略全てに適応することができる。これは赤単にしてはかなり珍しいことだ。これまでの大きなスタンダードの大会でも赤単はトップ8に残ってきているし、近々これが変わるなんて思えないね。
ブランドン・エアーズ (Twitter)