Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/06/19)
はじめに
みなさん、ごきげんよう。
先日、ロンドンマリガンの正式な採用が発表された。モダンやそれ以下のフォーマットに多大な影響が出ると予想しているプレイヤーも多いことだろう(私もその一人である)。ウィザーズがミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019でどんなデータを回収したのかはわからないため、この変更そのものに対する意見は控えさせてもらおうと思う。
明らかなのは、最も恩恵を受けるのがコンボデッキだということだ(実際にはあらゆるデッキが恩恵を享受するだろうが、対戦相手はこちらのデッキ内容を知らないということが差を生む。コンボデッキはパーツを揃えることに集中できるが、それ以外のデッキはキャントリップ呪文やクリーチャー呪文を唱えることに時間を割くことになる)。
このように考えると、いつもの疑問ーーー「どのデッキを使うべきなのか?」という疑問に行き着く。最近になって私はこの疑問への回答を見つけた。純鋼ストームだ(純鋼ストームは海外ではチェリオと呼ばれる。どうしてこのような名前なのか長いこと気になっていたのだが、0マナの呪文が多いデッキであることから、0の形をしたスナックであるチェリオにちなんでいるようだ。ロシアではチェリオを見たことがなかった)。
では、私のデッキリストをご覧いただこう。Magic Online Championship(MOCS)予備予選の成績は7-1(唯一負けたのはグリクシス《死の影》である。勝利の内訳は、青白コントロールが2回、トロンが3回、イゼットフェニックスが1回、もうひとつは失念してしまった)。本選である2018 MOCSでは2-2であった。
デッキリスト
なぜ純鋼ストームを使うのか
さて、なぜ純鋼ストームなのだろうか?このデッキを一日使用した友人の言葉を借りるなら「人生でこんなに2ターンキルをしたことがない」からだ。青赤ストームと同様にキーとなるクリーチャーが生き残れば勝てるという強みを持っているが、青赤ストームよりも2ターンキルの確率が高く、コンボパーツの条件が緩い(相手の除去に弱くなってしまっているという弱点はある)。しかも対処するには非常に限定的な対策カードを要求する。
デッキの勝ち筋
次に勝ち筋を解説しよう。まず、2ターン目に「聖騎士」を出す(《上級建設官、スラム》は聖騎士ではないが、先輩を敬って「聖騎士」と総称している)。そして0マナの装備品をドローへと変換し続け、《オパールのモックス》と《撤収》を揃えることができたなら、ほぼ決着はついたようなものだ。ストームカウントを稼ぎ、《ぶどう弾》で相手に致死量のダメージを与えて幕を引く。
デッキの短所
純鋼ストームには強みが多いが、どんなデッキもそうであるように、メタゲームの風向きがよくなければならない。まずはこのデッキの弱点から見ていくことにしよう。みなさんが事実として知っていることや、大会に向けて想定すること次第では別のデッキを使用した方がいいこともあるだろう。
軽量除去と手札破壊に弱い
純鋼ストームというデッキは軽量除去と手札破壊をベースにしたデッキにあまりにも弱い。グリクシス《死の影》やマルドゥパイロマンサーには散り散りにされてしまう。除去と手札破壊のいずれか一方であれば対応できるが、両方同時に使われると対応できない。
緑黒ベースのデッキが苦手
従来から黒緑系を苦手としている。1マナ除去を多く採用した3色のタイプになるとさらに相性が悪くなる。たとえばジャンドには《稲妻》と《致命的な一押し》があり、アブザンには《流刑への道》と《致命的な一押し》がある。黒緑の2色は、マナカーブが高く、脅威も動きが鈍いため、比較的戦いやすい。依然として相性が悪いことに変わりはないが、コンボを決められる確率は段違いだ。
ストームのカウントが少し煩わしい
紙でこのデッキを使うとなると、ストーム数をカウントし損なうことがあるため煩わしい印象があるが、実際はそれほどでもない。呪文を唱えるたびにストームカウントをするのではなく、このターンに唱えたアーティファクトを脇にひとまとまりにしておけばよい。《撤収》を使う際には、それらの枚数をカウントし、メモを取る。こうすればスムーズに進められるのだ。
デッキリストの公開は好ましくない
デッキリストの事前公開がない大会の方が好ましいが、本番前から大勢は決まっている。事前の公開情報よりも、メタゲームに合致しているかどうかが何よりも重要なのだ。
デッキの長所
さて、次は明るい話題をしよう。このデッキは、妨害してこない相手との速度勝負に負けない。邪魔さえなければ、2ターンキルは十分に現実的であり、3ターンキルは80%近くの確率で達成できる。これだけコンボが決まりやすいのは、コンボがシンプルであることが大きい。基本的に「聖騎士」とタイミング良く《撤収》を引ければコンボが成立する。装備品は0マナであれば何でもよく、デッキの1/3を占めている。
これから紹介するのは、一般的なマッチアップにおけるこのデッキの利点だ。(この記事は『モダンホライゾン』発売前に執筆しているが、現在のMagic Onlineのメタゲームは《甦る死滅都市、ホガーク》に支配されている。私も実際に相手をしたことがあるが、《甦る死滅都市、ホガーク》デッキを倒すためにメタゲームがどう変化していくのか、純鋼ストームが新環境でどれだけやっていけるのかは見通しが立たない)。
ドレッジ(《甦る死滅都市、ホガーク》なし)やトロンに有利
古参であるドレッジやトロンとの対戦は、不戦勝のようなものだ。妨害要素が皆無、またはあったとしてもわずかであるし、サイドボードから投入できる対策の数も非常に限定的である。トロンが《大いなる創造者、カーン》を採用した構築に移行してからは、3ターン目に《大いなる創造者、カーン》の[-2]能力から《三なる宝球》を設置できるようになった。この動きだけは問題になりかねない。しかし、《撤廃》に解決できない問題などないのだ。
現状は《甦る死滅都市、ホガーク》デッキに有利
《甦る死滅都市、ホガーク》デッキとの対戦についてだが、5マッチ消化して全勝している。現状は純鋼ストームが有利であると言えそうなものの、相手のドローが芳しくなかったのも事実だ。相手に3ターン目を迎えさせていれば負けていただろうが、私が先手であったり、2ターンキルを決められた対戦であった。いずれにせよ、サイドボードを少し調整する必要があるだろう。
過去の対戦ではあらゆる墓地対策がゲームに影響を与えなかった。相手の速度に全く追いつかないのだ。《外科的摘出》が役割を果たせるかはわからない(すでに《有毒の蘇生》が採用されている)。第一候補は《虚空の力線》だろう。
直線的なランプデッキに有利
アミュレットタイタンや《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》のような直線的なランプデッキとの相性は抜群によい。《撤廃》の利点のひとつは、稀に採用されている《虚空の杯》を対処できることだ。コンボを開始するならドローに変換して構わない。
直線的なアグロデッキに有利
次は直線的なアグロデッキだ。具体的には、鱗親和、通常の親和、赤単フェニックス、ホロウワンが該当する。最後に挙げた2つは《稲妻》という軽量除去を抱えているが、最初の3ターンの間にずっと1マナを構えておくことはゲームプランから考えて現実的ではない。
その他のコンボデッキに有利
モダンには《グリセルブランド》を軸にしたデッキ、ストーム、アドグレイスといったコンボデッキも存在する。先ほども言ったように、純鋼ストームの方が速く、コンボパーツも集めやすい。《新生化》デッキは1ターンキルができるものの、このデッキにもできないことはない。それに《新生化》デッキの1ターンキルの確率はそれほど高くはないだろう。
《スレイベンの守護者、サリア》デッキに対しても戦える
5色人間やスピリット、エルドラージ&タックスなど、《スレイベンの守護者、サリア》を採用しているデッキは脅威的だろうと当初は思っていたが、実際はそうでもなかった。間違いなく最悪のシナリオは、相手が先手で1マナ域に続いて妨害クリーチャーを連打してくることだ。この展開を打開するのは難しい。しかし、「聖騎士」は《翻弄する魔道士》への耐性がないだけで、相手が間違った方の「聖騎士」を宣言する可能性も残されているし、少なくとももう片方の「聖騎士」は機能する。
こちらが先手ならば状況は非常によくなる。2ターン目にコンボを開始し、相手を倒せなかったとしても、《純鋼の聖騎士》は大量の装備品を身にまとっているし、手札にもカードがいくらか残っているはずだ。それに相手は返しのターンで1回しか行動できない。
バーンに対して、相性は悪いものの絶望的ではない
バーンも悲惨な相性だろうと考えていた。豊富な除去、《大歓楽の幻霊》、早いクロックがあるからだ。しかし実際には、バーンの1マナ除去は4枚だけであり、(「上陸」を必要とする《焼尽の猛火》を含めても)2マナの除去も8枚しかない。確かに相性は悪いだろうが、絶望的ではない。1本目も勝てる余地はいくらかあるが、注目すべきはサイドボード後だ。
2本目以降にキーカードとなるのは《ブレンタンの炉の世話人》と《神聖の力線》である。これらを4枚ずつ投入する枠を作るため、《上級建設官、スラム》を1枚、《有毒の蘇生》を2枚、《撤廃》を2枚、《ハーキルの召還術》を1枚、《極楽のマントル》を2枚サイドアウトする。《神聖の力線》がプランAであり、《ブレンタンの炉の世話人》がいなければ相手はプレッシャーをかけ続けるためにタップアウトしてくるはずだ。そうなればコンボを決める隙を作ることができる。
もし《神聖の力線》に加えて《ブレンタンの炉の世話人》や装備品も揃えば、攻撃を開始することも可能だ。ただし、《頭蓋割り》を使われると《ブレンタンの炉の世話人》の「プロテクション」はダメージ軽減をできなくなるため、その隙を突かれないように注意が必要である。プランBはコンボを開始するターンに《ブレンタンの炉の世話人》で自分の身を守ることだ。《大歓楽の幻霊》を1ターンの間だけ抑え込んでくれる。
小技集
《有毒の蘇生》と《撤廃》に関しては、もう少し詳しく話しておこう。
《有毒の蘇生》
このデッキで最も複雑なカードだと言えるだろう。しかし、その利便性は確かなものだ。実際にできることを列挙してみよう。
《撤廃》
主に2つの役割がある。1つ目は、あらゆるものに対処できる、比較的軽量の解答(《虚空の杯》、《スレイベンの守護者、サリア》、《減衰球》、《翻弄する魔道士》など)。2つ目の役割は、単に「サイクリング」することだ。自分のアーティファクトを対象にとれば1ターン目から「サイクリング」できるし、《オパールのモックス》の「金属術」が達成されていれば0マナのキャントリップ呪文になる。「聖騎士」がいれば2ドローとなり、「聖騎士」が2体いれば《Ancestral Recall》だ!
もうひとつアドバイスしておこう。1ターン目に《撤廃》を「サイクリング」したくない場合、《神聖なる泉》をタップインで出すか、フェッチランドから《神聖なる泉》をサーチしよう。そうすれば、相手が青白コントロールだと思い込んでくれる可能性がある。アグレッシブに攻めてきた隙を狙ってコンボを開始するのだ。
おわりに
今回の記事はここまでとなる。《甦る死滅都市、ホガーク》が溢れかえったメタゲームで純鋼ストームがどうなるかはわからないが、今のところはガッカリする結果になっていない。
ここまでお付き合いいただきありがとう。ぜひご活用いただければと思う。
ドミトリー・ブタコフ (Twitter)